ブレインコントローラーウォーズ   作:ロクサス1313

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〜この作品を読んでくれた皆様へ〜

 この作品は人または文化の否定的かつ、不当な描写を含んでいます。

 これらは誤ったものです。
 しかし、削除するよりも、これらを通して有害な影響を認識し、学び、より一体化した未来の創造に向けた対話の糸口にしたいと考えております。

 作者としてはこの作品を読んだ方々を傷つける意図もなければ、差別を煽る意図もありませんのでご了承ください。




Chapter1 「ヒナコは完璧な女子高生」

 

 

ふいに目が覚めた。

 

泥のように長く眠った感覚があり、体全体が心地よく痺れている。

 

ベッドから降りて、目を擦る。

 

視力が悪いせいで世界がボヤけている。

 

手元にあった眼鏡を装着し、ぼやけた視界を整える。

 

辺りを見渡すと、そこは知らない誰かの部屋であった。

 

ピンクを基調とし、ベッドに子犬のぬいぐるみが置かれた高校生くらいの女子の可愛らしい部屋。

 

そして、セーラー服。

 

それが、今僕が着ている服だった。

 

 

ブレインコントローラーウォーズ 

chapter1

「ヒナコは完璧な女子高生」

 

 

 

ふと、思い立ったかのように、この部屋にある全身鏡の前に僕は立つ。

 

「今日から... 。僕は女子高生なんだ... 。」

 

僕の鼓膜に透明感のある少女の声が響く。

 

そこに写るのは、念願のセーラー服を着た可愛らしい少女の姿だった。

 

ボブヘアの黒髪で、背が低く中学生と間違われそうな幼い顔立ちだが、Eカップの巨乳がなんともけしからんではないか。

 

もう一度言う。Eカップの巨乳がなんともけしからんではないかっ!(おい!)

 

僕は鏡に写る自分をまじまじと見つめ、モデルのようにポーズを決めていく。

 

「(やばい!やばい!やばい!これが本当に僕なのか!)」

 

モデルになりきった、鏡の中の少女は恥じらいに頬を紅潮させている。

 

僕の耳の中ではドクドクと心臓の音が鳴り響く。

 

胸元に目を移すとセーラー服の胸が鼓動で大きく波打っている。まるで心臓が爆発しそうだ!

 

10分間くらい鏡の中の自分に見とれ、僕は夢心地でいた。

 

その時だった。

 

???

「起きなさい!入学式早々遅刻なんてあなたらしくないじゃなーい!」

 

その時、一階から見知らぬ女性の声が響く。

 

知らない声でも僕は怖くない。

 

「はーい!今行きまーす!」

 

僕はできるだけ冷静さを保った声を作り、返事をした。

 

今日が日曜日だったら尚更良かったけど、ここは仕方がない。

 

木製の勉強机に置かれてあった、生徒手帳をパラパラとめくる。

 

そこには、先ほど鏡の前に写っていた可愛らしい少女の顔写真が貼られている。

 

そして、円香(まどか)女子高等学校一年B組氷山ヒナコ(こおりやまひなこ)と書かれていた。

 

確認を終えた僕は、生徒手帳を閉じカバンの中にしまった。

 

そして、僕は再び鏡の前に立つ。

 

ヒナコ

「しっかし... 。見るからに、真面目な生徒会長って感じな見た目だな... 。そこがいいんだけど。」

 

セーラー服姿のヒナコは、眼鏡がよく似合う賢そうな女子高生そのもので、

 

ヒナコ

「ワタクシ、学園の規律を乱す真似は許しません!」

 

調子に乗って左手を腰に当て、右手は眼鏡をくいって上にやりながらこんなセリフを言ってみるとまさにそれだった。

 

てれている上に、慣れない言葉で、口がもつれそうで多少棒読みセリフなのは見逃してほしいが。

 

おとっと。あんまり部屋にいると、怪しまれる。

 

僕は不安な気持ちを押し殺し、意を決して部屋を出る。

 

スカートで歩くのに慣れてないため、階段を一段、一段転ばないように慎重に降りる。

 

入学式の日にずっこつけるとか、あまりにも縁起が悪すぎる。

 

そして、ゆっくりとドアノブをひねり、一階のリビングがあるであろう部屋に入る。

 

すると、そこには見知らぬ男女がいた。

 

二人は朝食を食べながら、楽しそうに談笑しているようだ。

 

偽お父さん

「おう!目が覚めたか!俺は君の偽お父さんだ。よろしく!」

 

偽お母さん

「そして、私はあなたの偽お母さんよ。ほらほら、遅刻しちゃうから、さっさと朝ごはんを食べなさい。」

 

ヒナコ

「おはようございます... 。偽お父様。偽お母様。」

 

これはこれは、偽お父さん、偽お母さんおはようございますっと。

 

彼らは僕の本当の両親ではない。

 

僕は偽お母さんに言われた通りに席につき、むちゃむちゃと朝食を口に運んでいく。

 

ご飯に味噌汁、魚、納豆も、味のなくなったガムと同じ。

 

無味無臭以外の何者でもなかった。

 

味のしない朝食を終えた僕は、家を出て学校へと向かう。

 

スカートのパンツ一枚で歩いてるかのような、スースーする感じ。

 

長い髪がふわふわと風になびく感触。

 

一歩、一歩あるくたびに僕のEカップの爆乳が上下して、ブラジャーの肩ヒモに力が加わる感覚。

 

僕にとってはどれもが新鮮だった。

 

ただ、歩いてるだけなのに周りの視線が気になって仕方がない。

 

端から見たら、普通の女子高生が通学しているように見えるだろうが、僕にとってはまるで女装して街を出歩いてる気分だ。

 

学校に着くまで、あと数百メートル。

 

僕には分かる。そろそろ彼女が来る頃だ。

 

モコ

「久しぶりだね!ヒナちゃん!」

 

背後から、誰かが優しく僕の肩を叩く。

 

薄井モコ(うすいもこ)。

 

背が少し高く、ショートヘアーがよく似合うボーイッシュな顔立ち。

 

そして何よりも、ハスキーな声が魅力的な眼鏡女子だ。

 

彼女は... 。僕の親友だ。

 

唯一彼女だけが、僕のことを分かってくれている。

 

ヒナコ

「はい... 。久しぶりですね。ワタクシ... ずっとあなたにまた会いたかったんですよ。」

 

僕は泣きそうになる気持ちを押さえながら、飛びっきりの笑顔で答える。

 

なんで泣きそうになったかって?

 

それはまだ内緒。

 

モコ

「あはは。私の前では、無理にキャラ作んなくていいよ。ヒナちゃん、こういう子がタイプなの?」

 

ヒナコ

「うっ... 。もう、モコったらそんなこと言わないでよ!恥ずかしいからっ!」

 

僕は思わず、顔を真っ赤にして腕をブンブンして否定をする。

 

恥ずかしいったらありゃしない。

 

そんな、僕でも変わらず受け入れてくれる彼女には感謝しかない。

 

モコ

「ヒナちゃん。セーラー服、似合ってるよ!キラキラしてるよ!」

 

モコはちょっといたずらっぽい笑顔で、いつもやっていたように僕を誉めてくれる。

 

その言葉が彼女の嘘の言葉でも、僕はたまらなく嬉しい。

 

ヒナコ

「ありがとう!モコに誉められるのが一番嬉しい!」

 

それで僕はお返しにちょっと小首を傾げるようなそぶりで、思いっきり女の子っぽく、思いっきり可愛らしく笑い返した。

 

モコとこうして同じ制服を着て、同じ高校に通えて青春を過ごせることが僕は堪らなく嬉しいのだ。

 

もうすぐ学校というところで、人通りの少ない路地裏の前を二人が通った時。

 

事件が起きた。

 

モコ

「ヒナちゃん!見て!あれ、うちの生徒じゃない?」

 

ヒナコ

「あっ!本当だ!何があったんだろ?」

 

他校の不良の生徒が、うちの高校の女子生徒をいじめている様子がそこにはあった。

 

不良たちは、彼女が持っていたウルトラマンのソフビ人形を取り上げからかっているではないか。

 

不良A

「キッヒヒヒ!高校生にもなって、ウルトラマンかー。可愛いねー。」

 

これでもかと、満面の笑みでからかう不良A 。

 

不良B

「悔しかったら変身して取り返してみろや!ほれ!ほれ!」

 

不良Bは手をパンパンと叩いて、彼女を挑発する。

 

少女

「これは私の大事なものなの... 。返して... お願いします。」

 

少女は泣きそうになりながらも必死に抵抗しているが、効果がないようだ。

 

モコ

「あの不良たち、ここら辺ではケンカが強くて、有名なやつらだよ... 。どうする?」

 

ヒナコ

「どうするも何も、あの子困ってるみたいだし、いくよモコ!」

 

モコ

「そうだね!困っている人は放っておけない!」

 

僕とモコは不良に絡まれる、少女の元へ駆けつける。

 

ヒナコ

「お兄様方。うちの可愛い生徒に何かご用ですか?」

 

僕はできるだけ油断させるため、清楚でおしとやかな女子高生を気取る。

 

不良A

「お茶に誘っただけなのに、こいつが生意気な態度をとったんだよ!」

 

不良B

「で、罰としてこの人形は俺たちがもらいましたああ!ごめんなちゃい!」

 

なんだ、ナンパか。

 

不良A

「グフッ!」

 

ムカついた僕は、人差し指と中指を付きだし、不良Aに対して目潰し攻撃を食らわせる。

 

不良A

「何するんだあ!!痛ってええ!」

 

不良Aは顔を抑えながら、あまりの痛さに苦しむ。

 

ヒナコ

「自分が思い通りにならなかったって、その子の大切なものを奪うなんて卑怯ものがやることです!」

 

僕は不良たちに正論を振りかざす。

 

不良B

「親分大丈夫ですか!?」

 

不良A

「あぁ... 。なんとかな... 。小娘め!ふざけやがって!」

 

不良B

「おい!そんなことしてると、この人形がどうなるか分かってるのか!」

 

不良Bはライターを取り出し、ウルトラマンの人形に火をつけようとした。

 

不良B

「あれ?」

 

だが、それはウルトラマンの人形ではなく、空の缶コーヒーに変わっていた。

 

モコ

「残念!あなたたちが油断してる隙に、すり替えておきましたー!」

 

なんと、モコが得意の手品で、ウルトラマンの人形を空っぽの缶コーヒーにすり替えていたのだ。

 

小学生の時から、鍛えていた大道芸のテクニックは伊達ではない。

 

モコ

「どうぞ!怪我はなかった?」

 

少女

「大丈夫... 。ありがとう... 。」

 

モコは安心させるような笑顔で、少女にウルトラマンの人形を返す。

 

すると、少女もモコの笑顔につられるかのように、リラックスした様子で人形を受けとる。

 

ヒナコ

「いいですか!他人の好きなものを笑う権利なんか、誰にもありません!人の好きに年齢や性別なんか関係ないのです!」

 

不良A

「ひぃぃぃ!ごめんなさい!!許してくれええ!」

 

不良B

「俺たちが間違っていたよ!ここは退散~!退散~!」

 

不良たちもヒナコの圧に押されたのか、逃げさっていく。

 

ヒナコ

「ワタクシ、学園の規律を乱す真似は許しません!」

 

僕は止めと言わんばかりに、彼らの逃げていく背中に向かって決めセリフを言う。

 

今度は上手く決まった!

 

一度、鏡の前で練習をしておいた甲斐があったようだ。

 

こんな簡単に不良に勝ってしまうとは、なんとも清々しい気持ちになる。

 

少女

「二人とも助けてくれてありがとう。えっと、何さんと何さんだっけ... ?」

 

少女が助けてくれたお礼と同時に、僕たちの名前を尋ねてきた。

 

ヒナコ

「ワタクシは一年の氷山ヒナコです!」

 

モコ

「同じく一年の薄井モコです!よろしくね!」

 

ハル

「私は春野ハル(はるのはる)!二人と同じ一年生だよ!今日から私たち三人友達だねっ!」

 

こうして、僕たちは簡単すぎるくらいに友達になった。

 

あんなに苦しんだ友達作りがここでは簡単にできてしまうのかと、思わず笑いそうになってしまう。

 

ハルが手に持っていたウルトラマンの人形をカバンにしまおうとした時、僕はこう尋ねる。

 

ヒナコ

「これはウルトラマン... 。ティガですよね... ?」

 

僕はハルの手に持っている人形を指差す。

 

そのウルトラマンティガのソフビは相当使い古されているのか、ところどころ塗装が剥がれていた。

 

小さい頃から、大切にしていたことが分かる。

 

ハル

「うん!そうだよ!ヒナコちゃんもウルトラマン好きなの?」

 

想像していた通りの答えがハルから帰ってくる。

 

ずっと僕はウルトラマンのことを語り合える、友達が欲しかったから嬉しい。

 

ヒナコ

「はい。大好きです。ワタクシにとってウルトラマンはずっと心の支えでしたから。今までも、そしてこれからも... 。」

 

僕は遠い目をしながら物思いにふける。

 

きっと僕はウルトラマンがいなければ、今こうして生きていないだろう。

 

彼らはただの創作物だ。だけど、心の中にはいつだって彼らがいてくれた。

 

辛いときや苦しいときは、何度も何度も助けてくれた。

 

ウルトラマンはいないけど、ちゃんといるんだ。

 

ハル

「ちなみに、ヒナコちゃんはウルトラマンの中で誰が好きなの?」

 

ヒナコ

「ワタクシが一番好きなのは、ウルトラマンコスモスですね。4歳の時からずっと私のヒーローでした。リアルタイムでいつも見ていたのが、今も心に焼き付いてます!」

 

僕は興奮して、思わず早口でそう答える。

 

オタクの悪い癖だ。

 

ハル

「コスモスか~!あれっ?コスモスがテレビ放送したのって、20年前だから、私たちが産まれる前の作品だよね。どうやって、リアルタイムで見てたの?」

 

ヒナコ

「あ... 。あ... 。違うんです。あぁ... 。」

 

つい嬉しくなりすぎて、喋りすぎてしまった。

 

僕は頭の中が真っ白になり、あわあわと言葉にならない言葉を繰り返すことしかできなかった。

 

その時、モコがそんな僕を見かねてか、さりげなく助け船を出してくれた。

 

モコ

「お父さんがリアルタイムで見てたんだよって事が言いたかったんでしょ!もう!ヒナちゃんたらハルちゃんが勘違いしちゃったじゃない!」

 

モコは僕だけにしか分からないように、ウィンクをする。

 

僕は彼女に助けられてばかりで、駄目だな。

 

ハル

「あっはははは!そりゃそうだよね!これからも沢山ウルトラトークしようね!」

 

ヒナコ

「はい!」

 

モコ

「ヒナちゃん、友達が出来て良かったね!ヒナちゃんは優しい子なんだから、これからもいっぱい友達できるよ。」

 

ハル

「そうだよ!ヒナコちゃんは絶対クラスの人気者になれるよ!」

 

ヒナコ

「そうですね。ワタクシは完璧な女子高生ですから... 。」

 

僕は二人に向かって、ニヤリと笑ってそう答えた。

 

心の奥底に眠る、虚しい気持ちに鍵をかけるかのように。

 

今はまだそれは話したくない。

 

校門を入ると、靴箱のところにそれぞれのクラスを書いた紙が貼られていた。

 

それによると僕のクラスはA 、B、C 、3クラスあるうちのB組だった。

 

ヒナコ

「ワタクシはB組みたいです。お二人はどうですか?」

 

ハル

「あっ!私B組だ!」

 

モコ

「私も!じゃあ、三人とも同じクラスだね!」

 

ハルとモコも僕と同じクラスのようだ。

 

そして、僕たち三人は、入学式が行われる体育館へと向かった。

 

気が付いたら、入学式は無事に終わったみたいだ。

 

時の流れというものは早いものだ。

 

時に美しく。時に残酷なほどに... 。

 

僕が教室に入ると、クラスメイトたちはやたらと僕に話しかけてきた。

 

女子生徒A

「氷山さんって、誰に対しても敬語なの?そういうキャラ?」

 

女子生徒B

「氷山さんは何のクラブに入るの?可愛い顔してるから演劇部が良いんじゃない?」

 

女子生徒C

「氷山さんってめちゃめちゃ頭がいいって噂あるけど、塾かなにかいってるの?」

 

僕は次々に発せられる質問にいちいち答えなければならなかった。

 

それは嬉しい反面、気疲れも多かった。

 

何かマズイことを言ってしまわないかと気が気じゃない。

 

入学式の時から、可愛い娘がいると思っていたという娘や、中には僕がモコと共に、ハルを不良から助けたのを見てた娘がいたのには驚いた。

 

そういうのに、あまり慣れていなくて、なんとも気恥ずかしい限りだ。

 

しばらく経つと担任の先生がやってきた。

 

生徒たちもそれに合わせて、ぞろぞろと席につく。

 

塚内先生

「私が今日からこのクラスの担任になる、塚内ナツコです。これから三年間よろしくお願いします!」

 

先生はなかなか快活そうな女の人だ。歳は20代後半か30代過ぎくらいだろうか?

 

ポロシャツにパンツというラフな服装の上にジャージを羽織っている。体育の先生だと一目でわかる。

 

塚内先生

「あなたたちにこれだけは、伝えたいことがあります。あなたたちは今日から少しだけ大人になります。それは、大きな責任を伴うということも意味します。君たちには自分自身の行動一つ、一つに責任を持って生きていってください。」

 

塚内先生は真面目な目をして、生徒たちの顔を一人、一人見つめながらこう言った。

 

塚内先生

「真面目な話はここまで。で、いきなりなんだけど、ここでテストを初めます!」

 

クラスの生徒全員

「えええええ!!」

 

常識的に考えて、入学式初日にテストなんかやらない。

 

でも、ここではありえるのだ。

 

前の席から、順々にテスト用紙が配られていく。

 

僕は、テスト用紙を受けとるとさっそく問題に取りかかった。

 

※是非、みんなもやってみよう!

 

もんだい

こどもが3にんいます。ですが、2りかえりました。

こどもは、みんなでなんにんになりましたか。

 

            こたえ

 

もんだい

あなたはにんげんです。をえいごにやくそう。

 

             こたえ

 

もんだい

かん字のよみかたを( )にかこう

 

( )

じんせいをやり直す

 

ふぅ... 。取り敢えず、回答用紙に空欄は一つもなかった。

 

何点取れるか楽しみだ。

 

テスト終了後、僕たちは三人でテストのことについて語り合っていた。

 

モコ

「今日のテスト難しかったー!!高校生にもなると、やっぱ勉強のレベルが高くなるね!」

 

ハル

「そうそう、あなたはにんげんです。って英語で何て言うのか、私分かんなかったよ!」

 

ヒナコ

「その答えはYou are human.です。ワタクシにとっては簡単すぎる問題でしたね。」

 

僕は涼しそうな顔をして、すっと答える。

 

ハル

「すごい!ヒナコちゃん!こんな難しい問題解けるなんて、東大に入れるレベルだよ!」

 

モコ

「そうそう。ヒナちゃんは天才なんだよー。」

 

ヒナコ

「ワタクシの頭脳はナンバーワンですから。」

 

僕は今まで下がりきっていた自己肯定感が満たされていくことに、快感を覚えていた。

 

もう、お前は馬鹿だとからかわれたり、成績が低いことを教師や親に怒鳴られることはもうないのだ。

 

それからの最初の一週間は、まさに僕が送りたかった学園生活そのものであった。

 

僕にはもったいないくらいの、とても優しい親友のモコ。

 

お調子者なところがたまに傷だけど、同じ趣味を語り合える仲であるハル。

 

僕は、そんな二人とよく行動をともにし、遊ぶときも昼食の時もいつも一緒だった。

 

僕のことはどうかって?

 

入学式の日のテストは学年一位、スポーツも万能、他校の男子からもモテモテ、それに友達もいっぱい。

 

氷山ヒナコという存在は誰からみても、一つの欠点もない完璧な女子高生。

 

そんな完璧女子高生のヒナコのメッキが剥がれる出来事が起こることになるとは、この時は知るよしもなかった。

 

あんな慌ただしい毎日を送っていたわけだから、僕は疲れてグッスリ眠ってしまったようで、月曜の朝、寝坊してしまった。

 

起きた時には、どう足掻いても間に合わないどころか遅刻確定の時間だった。

 

ヒナコ

「うわああ!!10時45分!?大遅刻じゃん!」

 

僕はゾッとするあまり思わず声をあげる。

 

実際、僕は朝起きるのがとても苦手だ。

 

気持ちが落ち込みすぎると身体が石像のように動かなくなり、起き上がることすらできない日もある。

 

先週一週間は、スマホのアラームを何個もセットして対策していた。

 

だが、今日に至っては疲れのあまりアラームのセットを思わず忘れてしまったのだ。

 

僕は急いでセーラー服に着替えると、朝食も食べずに家を出た。

 

なんとか、学校にたどり着いた僕は教室に向かうがそこには人っ子一人いなかった。

 

ヒナコ

「そっか。4時間目は体育の時間か... 。急がなきゃ... 。」

 

セーラー服から体操服に着替え、僕は体育館へと向かう。

 

そこには、バレーボールを行うクラスメイトたち、それを教える塚内先生がいた。

 

ヒナコ

「はぁ... 。はぁ... 。寝坊して遅刻しちゃいました... 。ごめんなさい... 。」

 

僕は乱れた呼吸を整えながら、遅刻したことを塚内先生に詫びる。

 

絶対怒られる。僕は一瞬身構えた。

 

だが、それは僕の杞憂だった。

 

塚内先生

「いつも優秀な氷山さんが珍しいね... 。今度から遅刻しないためにはどうしたらいいか、私と一緒に考えていこうね!」

 

彼女は優しい表情で遅刻した僕のことを責めなかった。

 

それどころか、今後どうしたらいいかまで一緒に考えてくれるようだ。

 

どうやら、彼女は今までの教師とは違うようだ。

 

ヒナコ

「遅刻したのに、ワタクシのこと殴らないんですか?」

 

僕はふと疑問に思ったことを聞く。

 

今までの教師は僕が悪いことをすると、殴ったり蹴ったり、一時間ずっと正座をさせるなどは当たり前だったからだ。

 

塚内先生

「殴る?そんなことしませんよ... 。可愛い生徒を殴る教師なんか、あってたまるもんですか!」

 

ヒナコ

「なんか変なこと聞いちゃいましたね。ワタクシ、みんなのところにいきますっ!」

 

僕は変な質問をしたことが恥ずかしくなり、作り笑いをしてクラスメイトたちの元へと向かった。

 

この世界ではどんな理由があっても、僕に暴力を奮う人間はいない。

 

もう安心してもいいのだ。

 

女子生徒A

「よっ!ヒナコ!遅刻なんて珍しいじゃん!」

 

ヒナコ

「えっ。まぁ、ワタクシとしたことが、恥ずかしいです。」

 

僕は罰が悪そうに目を反らし、もじもじしながらそう言った。

 

そんな僕を見て、彼女たちは僕の感情を乱すようなことを言ってきた。

 

女子生徒B

「あらあら!もしかして、昨日はモコとデートしてたり?二人ともラブラブだもんねー!」

 

女子生徒C

「ヒューヒューお熱いね!」

 

ヒナコ

「きぃぃぃ!!ワタクシをからかわないでくださいっ!ただ寝坊しただけなんですうう!」

 

僕はバカにされたと思い、顔を真っ赤にして怒る。

 

女子生徒A

「冗談だよ!冗談!ごめんってば!」

 

女子生徒B

「あはははは!ヒナコマジになっちゃって本当可愛いね!!」

 

どうやら、この子たちは遅刻した僕をネタにしていじめようとしているようだ。

 

ヒナコ

「(もう失敗するのは嫌だったのに... 。)」

 

僕は彼女たちのからかいにじっと耐え、その場をやり過ごすしかなかった。

 

⚫学校の屋上にて

 

その日の昼休み、僕はモコと二人っきりで昼食を食べている。

 

ハルにはモコに相談事があるからと言ったら、簡単に了承してくれた。

 

彼女から、文句を言われると身構えたが、そんなことはなかった。

 

この学校に入るまで、僕は嫌われることが多かったせいだろう。

 

どうしても、他人の優しさに慣れない自分がいる。

 

僕はモコに、今日あった遅刻をからかわれた件について話す。

 

すると彼女は、僕の不器用な説明を、いつものように親身になって聞いてくれた。

 

モコ

「そっか。そんなことがあったんだね... 。」

 

ヒナコ

「僕はもう誰かに馬鹿にされたり、笑われるのは嫌なんだ!モコ... 。僕はどうしたらいいんだ!」

 

モコ

「でもさ... 。話し聞いてる限り、その子たちはヒナちゃんを馬鹿にしてるわけじゃないんじゃないかな?JK特有の茶化しあいみたいな。」

 

まるで、モコは妹を嗜めるかのように、優しい笑顔で僕を諭す。

 

言われてみれば確かにそうかもしれない。

 

それでも、僕はその茶化しがエスカレートするのが怖い。

 

彼女には失礼だけど、彼女はいじめられたことがないからそんなことが言えるんだ。

 

僕は震える手で、自分のスカートの裾をぐっと握りながらこう言った。

 

ヒナコ

「そうかな... 。でもさ、明日また遅刻したら... 。そして、明後日も遅刻したら... 。その時は本当に馬鹿にされていじめられちゃう... 。僕はいじめられるのが本当に怖いんだ... 。」

 

モコ

「大丈夫!その時は、私がそいつらをぶっとばしてあげるから!今度は私が親友として側にいるから、ヒナちゃんは安心して!」

 

ヒナコ

「それは駄目だよ!そのせいで、モコまでいじめられたらどうするんだよ!」

 

自分のせいで、大切な誰かが傷つけられてしまう。

 

それは、自分が傷つけられることより何倍も辛いのだ。

 

少なくとも、モコにはそんな目にあってほしくない。

 

そんな僕の悲しそうな表情を優しく包みこむかのように、モコはこう返した。

 

モコ

「もう!ヒナちゃんは過度にネガティブなんだよ。もう少し、楽に生きれたらいいんだけどね... 。」

 

ヒナコ

「僕はポジティブな人間にはなれないよ... 。僕は弱い人間なんだ... 。」

 

僕はふと、自分が掛けているメガネのことが頭をよぎった。

 

実は、これは普通のメガネではない。

 

この世界を揺るがす力を持った産物なのだ。

 

その一つが「改変能力」。

 

既に決められた物事や出来事を作り変えてしまう、恐ろしい力。

 

できるだけ、この力を使いたくない。

 

だが、もうこの方法しかない。

 

もう我慢の限界だ!

 

僕は覚悟を決め、目をカッと赤く光らせる。

 

そして、人差し指を頭上に突き上げこう叫んだ。

 

ヒナコ

「メモリーブレイクアクセラレーション!」

 

晴れた空に、一筋のカミナリがドンッと響く。

 

モコ

「えっ!ヒナちゃん今何したの!?あのカミナリ何?」

 

モコが気が動転したかのように、僕の肩を揺らしながら聞いてくる。

 

ヒナコ

「時期に分かるよ... 。」

 

だが、僕は敢えて濁した。

 

その瞬間、ブーっと携帯のバイブレーションが鳴る。

 

携帯のニュース画面を開くと、

 

ヤッホーニュース

明日から、全国の学校の登校時間を遅らせる方針に決定。

午前8時半から午後1時に変更へ。

 

と言った内容が記載されていた。

 

僕は遅刻しないため、改変能力で学校の登校時刻を大幅に遅らせたのだ。

 

モコ

「明日から学校が一時から始まる... ?これって、ヒナちゃんがやったの?」

 

モコが僕のスマホ画面を心配そうな顔を浮かべ、横から覗きこんでいる。

 

ヒナコ

「そうだよ。これで、僕だけじゃなく、遅刻して苦しんでいる世界中の人間が救われるよ!素晴らしいと思わない?」

 

僕はモコに誉めてもらいたくて、溢れんばかりの笑顔でそう言った。

 

だが、彼女の言葉は僕が期待していたものとは、大きくかけ離れていた。

 

モコ

「そっか。ヒナちゃんの好きにしたらいいよ。」

 

ヒナコ

「モコ... ?もしかして、怒ってる?」

 

モコ

「怒ってないですよ。」

 

そう言った、彼女の敬語と真顔がとても怖かった。

 

彼女の、胸の中に秘めた本心はどうなのだろうか?

 

それが、僕にはどうしても分からなかった。

 

その頃、教室にいたハルや他の生徒、先生たちもそのニュースに混乱していた。

 

ハル

「これは、深夜までウルトラ作品見放題だゾイ!」

 

女子生徒A

「まじ!朝から学校ってダルいって思ってたんだよねー!」

 

女子生徒B

「て、ことは夜まで学校あるってことかな?」

 

女子生徒C

「いや、下校時間は変わんないから、単純に授業の数が減るみたいね!」

 

教師A

「日本政府は馬鹿なのか!これじゃあ、日本の教育は衰退してしまう!」

 

教師B

「まぁ、私たちの給料は減らないみたいだし、仕事が楽になっていいんじゃないですか。」

 

教師C

「はぁー。朝は寝床でグーグーグーって鬼太郎じゃないすか。」

 

こんな風に日本中が混乱で陥ってるなか、さらに大変な出来事が起こった。

 

この街に巨大な未確認生物が空から突然現れ、変な声をあげながらズシンズシンと闊歩しだした。

 

???

「ジリー!ジリー!」

 

その、未確認生物は、巨大な目覚まし時計のようだが、大きな二つの目玉が爛々と輝いている。

 

そして、何よりもシステムのバグかのように時折体が乱れ、ノイズを発生させている。

 

奴の名前はタイムボン。

 

時空を司る機械生命体だ。

 

街の住民A

「世界の終わりだあ!!助けてくれ!」

 

街の住民B

「怪獣が出るってことは、ウルトラマンも出るってことだろ!早く来てくれよ!」

 

街の住民たちはSFチックであり得ない事態に慌てふためき、逃げ惑っていた。

 

学校の屋上から、それを見ている僕たち二人。

 

モコ

「ヒナちゃん!今から一緒に逃げるよ!」

 

ヒナコ

「いや... 。僕は逃げない。ウルトラマンならきっとそうする。」

 

モコ

「何馬鹿なこと言ってるの?あなたはウルトラマンじゃないでしょ!ほらっ!行くよ!」

 

モコは僕の腕を力強くギリギリとつかみ、僕を強引に避難させようとする。

 

意外と彼女の力は強くて敵わない。

 

だが、僕は渾身の力で彼女の腕を振り払いこう言った。

 

ヒナコ

「コスモスは逃げない!何があっても!どんなときも!」

 

これは、ウルトラマンコスモスの変身者であるムサシの名言。

 

僕は自分を奮い立たせる意味でも、この言葉を言いはなった。

 

だが、タイムボンは待ってはくれない。

 

僕とモコが言い合いをしている時だった。

 

タイムボン

「ジリンジリン!」

 

タイムボンの特殊な力だろうか?

 

タイムボンが体の秒針をぐるぐる回すと、世界が時間停止したかのように止まってしまった。

 

何故か動けるのは、僕とモコだけになってしまった。

 

やはり、もう行くしかない。

 

(ブレインコントローラー!ガンモード!)

 

僕はメガネを外し、小型の銃に変形させる。

 

ヒナコ

「やっぱり、止めにいかなきゃ... 。」

 

モコ

「止めるって... 。そんな銃じゃ無茶だよ。」

 

ヒナコ

「無茶じゃない!この世界では僕はヒーローになれるんだああ!」

 

僕は彼女の言葉を遮り、銃を高々と上空へと構えた。

 

そして、空の彼方上空へと銃塊を打ち上げる。

 

すると、僕の肉体は黒い闇に包まれ、黒い球体へと変化する。

 

その黒い球体はタイムボンの前に降りたつと、一人の巨人へと姿を変えた。

 

メカニックなボディに、黒い体色、つり上がった赤い目。

 

その巨人の名は... 。

 

アルファリオン。

 

アルファリオン

「◇▲▩#■※▥」

 

(デジタルフィールド)

 

アルファリオンになった僕は、この世界に被害が出ないために、デジタル状のシールドで張り巡らせた空間を作る。

 

これで、しばらくはモコたちに危害が加わらない。

 

だが、このシールドを展開できるのは3分。

 

それまでに、この事態をどうにかしなければ。

 

僕は、タイムボンに悠然と向かっていく。

 

そして、高々と飛び上がり、ジャンピングキックを食らわせる。

 

その衝撃で、背中からタイムボンは豪快に倒れる。

 

その隙を狙って、タイムボンの頭部を僕は手刀で何度も叩く。

 

ある程度はダメージがあるのだろうか。

 

タイムボンからバリバリと言った、バグの電子音が響く。

 

すると、タイムボンは僕をギッと睨み付ける。

 

そして、天敵を見つけたとばかりに、ジリジリジリと騒音攻撃を食らわせてきた。

 

タイムボン

「ジリジリジリー!」

 

アルファリオン

「■◇▩▲▥」

 

僕はあまりの騒音に、後方に吹き飛ばされてしまう。

 

鳴りやまない騒音に、思わず僕は耳を塞ぐ。

 

巨人になった分、そのダメージの負担も大きい。

 

このままでは、爆音でこの世界が壊れてしまう。

 

何か手立てはないのか... 。

 

ウルトラシリーズの怪獣には、何か必ず弱点があった。

 

タイムボンにも、きっと弱点があるはずだ。

 

僕はバカな頭で、考えを必死に張り巡らす。

 

その時、僕の中でピカッと何かが閃いた!

 

人間追い詰められると、案外とんでもない力が発揮できるものだ。

 

タイムボンは時計から生まれた存在。

 

中に入ってる電池を取り出せば、動きを停止させられる。

 

アルファリオン

「▥▲※+#▩◇▲」

 

(カオスアイ)

 

僕は目からレーザー状の熱線を、タイムボンの電池ケース目掛けて放つ。

 

タイムボン

「ジリー!」

 

タイムボンの電池ケースは剥き出しになり、二本の電池が丸出しになった。

 

アルファリオン

「▲◇▩#■▥※」

 

(デジタルウェブ!!)

 

まるで、蜘蛛糸を出すかのように、腕から電子状の糸を吐き出した。

 

糸をタイムボンの電池に巻き付け、いとも容易く取り出してしまう。

 

スパイダーマンの映像を、何度も研究してきた甲斐があったようだ。

 

その瞬間、あれだけ暴れていたタイムボンは、人形かのようにパタリと動かなくなった。

 

僕は、タイムボンから間合いをとる。

 

普通のヒーローなら、このままタイムボンを破壊するのだろう。

 

僕には、どうしてもそれは出来なかった。

 

ウルトラマン... 。

 

いや... 。何よりも、ウルトラマンコスモスから教えてもらった大切な気持ち。

 

優しさがそうはさせなかったのだ。

 

アルファリオン

「※▥#▩▩▲◇」

 

(ムーンリフレクト!)

 

僕は半透明に輝く浄化光線を、タイムボンに向けて放った。

 

頼む。どうか、届いてくれ。

 

僕の憧れだったウルトラマンコスモスに、少しでも近づきたいんだ。

 

僕の願いが通じたのか、タイムボンは浄化光線を受け、みるみる小さくなっていく。

 

そして、タイムボンは小さな小さな目覚まし時計へと姿を変えた。

 

良かった。これで一件落着だ。

 

アルファリオンになった僕の肉体は、闇の粒子となって消えていく。

 

アルファリオンに変身するということは、一旦元の世界に変えらなければいけないのだ。

 

さよならじゃない。

 

またこちらに戻ってくればいい。

 

今度はもっと長く、もっと上手くヒナコでいれるといいな。

 

消えゆく、僕の前にデジタル状のこんな画面が表示される。

 

セーブシマスカ?

 

YES or No

 

僕は迷わずYESを押した。

 

僕は帰ってきた。

 

いや、帰ってきてしまったというほうが正しい。

 

今の僕の姿は、セーラー服を着た可愛い女子高生とはかけ離れていた。

 

闇野。25歳男性、ニート。それが、僕の本当の姿。

 

僕は装着していた、VRゴーグルのようなものを外してベッドに放り投げる。

 

そして、机に置いてあったコスモプラック(ウルトラマンコスモスの変身アイテム)を手に取る。

 

そのコスモプラックの羽は全て折れており、輝石がむき出しで金色のメッキは剥がれて黒ずんでいた。

 

まるで、今の僕みたいに。

 

闇野

「コスモス... 。僕はもう飛べないんだよ... 。」

 

僕は憧れだったヒーローに懺悔するかのように、その言葉をぼそりと言うしかできなかった。

 

 

to be continue ...

 

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