宵崎奏の幻想入り   作:nyagou

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25時のナイトメア 〜『セカイ』サイド①〜

まふゆの夢の中。

 

キラキラが噴出する黒い裂け目に向かって必死に走っている。裂け目の前には髪の長い、眠っている女の子が1人。今にも吸い込まれそうだ。

 

「起きて!!」

 

そう叫ぶ…と同時に、自分が目を覚ましてしまった。黒板の文字が数行進んでいる。

 

(あ、寝ちゃってた…いつもならこんなことしないのに…)

 

急いで進んでいた部分をノートに書き写す。一言一句間違いがないように、丁寧に正確に。

 

黒板を何回も見直す。もう写し忘れたところはないはずだ。しかし、まふゆは思った。

 

(何か…大事なものを書き忘れてる気がするんだけど…)

 

「…では、この問題を朝比奈さん、解いてください」

 

「はい!」

 

優等生らしく、元気よく振る舞って立ち上がる。

 

(…気のせいか)

 

そう思うことにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「『雪』、曲出来た?」

 

絵名がまふゆに尋ねた。

 

「まだ。…でももう少しで出来そう」

 

奏が作曲したという現実は全てまふゆがやったと書き換えられてしまった。

 

「そう…じゃ、今は絵の練習でもしてるから終わったらセカイでね」

 

「わかった…はあ」

 

気まずい沈黙が流れる。パソコンの画面から冷たい空気でも出てるみたいだ。

 

「いつもより辛気臭くなってるじゃん!まるで葬式みたいになってるよ?どうしたのさ?」

 

陽気な瑞希が話に入ってくる。

 

「いつも通りでしょ、『Amia 』。何か変なところある?」

 

「え、いや、まあ、そうかな?…ごめん、何でもないです…ところでさ、『雪』、ナイトコードに入ってる『K』って誰?」

 

「え?」

 

確かに、メンバーに『K』という謎の人物が入っていた。

 

「ほんとだ…繋がってはないみたいだけど入ってる…」

 

「何それ、怖!今まで知らない他人に聞かれてたってこと?」

 

「落ち着いて、『えななん』。入ってるだけで繋がってはないから」

 

瑞希が絵名をなだめる。

 

「でも、入ってるだけでも十分怖いよ!早くその人出して!」

 

「わかった」

 

まふゆがカチカチとパソコンを操作する音が響く。

 

「…どう?出せた?」

 

「だめ、管理者権限が『K』にあるみたい」

 

「「ええ?!」」

 

「一回出て、新しくナイトコードのルーム作り直すね」

 

「そうしよっか。流石にまずいもんね」

 

瑞希が賛成する。数分後、3人のナイトコードが出来た。

 

「ふうー、怖かった…っていうかなんで言われるまで気づかなかったんだろ…」

 

絵名が一安心する。

 

「全く違和感なくナイトコードにいたもんね…ボクもぱっと見じゃ気づかなかったよ」

 

瑞希も頷いている様子だ。

 

「…曲のラフ出来たけどどうする?」

 

まふゆが尋ねた。

 

「お、昨日までスランプだったのにもう出来たんだ?」

 

瑞希が反応する。

 

「スランプ…?まあ、学校でもメロディー考えてたからかな…」

 

「それじゃ、セカイに行きましょうか。やれやれ、ヒヤヒヤしたわ、全くもう」

 

絵名の愚痴を聞き流しながら、「untitled 」を流す。キラキラに包まれる。

 

「あ、いらっしゃい」

 

セカイに到着。ミクが出迎える。

 

「もう出来たの?昨日帰ったばっかりなのに早いわね」

 

MEIKO も迎える。帰った後の事件は覚えてないようだ。どうやらセカイの住民も記憶を書き換えられてしまったらしい。

 

「じゃ、流すよ」

 

曲が流れる。全員が真剣な面持ちで聞いている。

 

「今回は大切な人を失ったという設定でやってみたんだけど、どうかな?」

 

曲が終わるとまふゆは聞いてみた。

 

「いいんじゃない?失ったという絶望感がメロディーにしっかり出てるよ」

 

瑞希が言う。まふゆはほっとする。

 

「私も。ただ…」

 

絵名が言い淀む。

 

「何?曲に対する意見なら遠慮なく言ってほしい」

 

「…この曲、救いがないなって」

 

「え?」

 

「まふゆはこの世界で絶望してる誰かを救うために曲を作ってるんでしょ?これじゃ、誰も救えないよ」

 

まふゆは思いもよらない指摘に困惑しながらも言い放った。

 

「…違うんだけど」

 

「何が?」

 

「私が曲を作るのは、私の絶望を知ってもらうことで共感してもらうため。人間は同じ絶望を持っている人を見つけると安心するものだから」

 

「…今まで嘘ついてたの?」

 

「別に嘘はついてないよ。今までだってそうやってきた…はず…」

 

まふゆは今まで自分が作ってきたはずの曲を思い出す。

 

(おかしい…言われてみれば、救われるような暖かさが滲み出る曲ばっかりなのに…。何でだろう…?こんな曲、自分には作れないって思えてしまう…)

 

「嘘つき!!」

 

絵名が怒鳴る。

 

「そんな想いで今まで曲作ってたの?私はまふゆの曲を聞いてて、救われたって思いながら今日まで絵を描き続けられたのに!最初から救おうって思ってなかったんだ!」

 

「違うの…私だって救われたいから…」

 

「まあまあ、音楽性が変わったってことじゃない?」

 

瑞希が仲裁に入る。

 

「まふゆがそうなるなら、ボクはそれを尊重するよ。だってそれはまふゆの自由なんだから。ニーゴの一員なんだから絵名もそれを…」

 

「許さない!」

 

絵名はきっぱりと突っぱねる。

 

「私はニーゴに入った時に言ってた、まふゆの、曲で人を救いたいという想いに応えたくてニーゴで絵を描いてるの。そんな…絶望の先に進もうとしない曲のためなんかに…絵なんて描いてやらない!技術なんかに騙されるもんか!」

 

絵名の周りからキラキラが出てくる。現実世界に帰ってしまうようだ。

 

「待ってよ、絵名!」

 

瑞希の呼びかけにも応じないで消えてしまった。

 

「やれやれ…今日はもうお開きかな?何か絵名怒って帰っちゃったし…まあ、明日には機嫌直ってると思うよ!じゃ、ボクも帰るね」

 

「…瑞希」

 

「どうしたの?」

 

「私の曲、今回のはいつものと違うって思った?」

 

「たまには違う曲を作ってみたかったんでしょ?それでいいじゃん」

 

「うん…そうだね…」

 

瑞希も帰った。1人、まふゆが取り残される。

 

「違うよね…やっぱり…今までの曲、まるで自分で作ってないみたい…」

 

「大丈夫?」

 

ミクが心配そうに声をかける。

 

「ううん、大丈夫。また明日来るよ」

 

「無理はしないでね、まふゆ」

 

「あ、そうそう、これ」

 

MEIKOがまふゆにパソコンを渡す。

 

「昨日の忘れ物。置いていってたわよ。このセカイのものじゃないから、まふゆのものかなと思って」

 

「え、私のじゃないけど…?」

 

「とりあえずまふゆが持っておけば?充電もなくて使えなくなってるし」

 

「そうだね…じゃ、また」

 

まふゆはパソコンを受け取り、手を振ってくれるミクとMEIKO に手を振って、自分の部屋に戻る。

 

(誰のなんだろう、このパソコン…)

 

自分のパソコンの充電器を挿してみる。同じ型なので、充電が始まった。

 

(あれ、このパソコン、パスワードとかかかってない?)

 

Enterキーを押す。スリープモードが解けて、待ち受け画面になる。

 

(これは…!)

 

まふゆは急いで自分のパソコンに向かって何かを打ち込み始めた。




幸か不幸か、結界の現実改変作用によりまふゆのシンセサイザーは部屋に戻ってます。
ニーゴのメインストーリーの方も現実改変によりむちゃくちゃになってるという設定で書きました。
重いな、ほんと。どうか、ニーゴに救いを。
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