ワンパンマン ~原作ちょこっと改変~   作:ララコッペパン

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アニメで言うと丁度一期が終わったあたりからのお話です。




 

 【速報です】

 

 【Z市に非常に凶悪な怪人が現れました】

 

 【A級ヒーローたちが向かったものの、皆戦闘不能状態にされた模様です】

 

 【災害レベルは竜。怪人は今も破壊を続けており、このままだと他の市にも被害が及ぶ可能性がーー】

 

 暗黒盗賊団を名乗る宇宙船が襲来し、早一ヶ月。

 壊滅状態だったA市は、S級ヒーローメタルナイトにより殆どが復興された。

 しかしそれでも、どっから湧いているのか。怪人というのは立て続けに出てくる。

 今日も、怪人の被害による速報がテレビで流れていた。

 

 「よしーー」

 

 そんな速報を見て、立ち上がる男が一人。

 黄色い服を着て、白いマントを纏い、手袋を嵌める。そして最も特筆すべきは、その頭だ。ハゲだ。見事にハゲている。

 ツルツルの頭をピカリと光らせ、彼は自宅のドアを開けた。

 彼は、キツすぎるトレーニングのストレスにより、ハゲると同時に最強の力を手に入れた男。

 地球上…いやこの宇宙で、彼に勝てるものなど存在しない。

 

 名を、サイタマという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ーーいくか」

 

 

 正義執行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒーロー協会から、Z市に災害レベル竜の強力な怪人が現れたので至急向かってほしいとの連絡が来た。

 その為、丁度時間を持て余していた彼女ーータツマキは暇潰しとしてZ市に向かった。

 ぷかぷかと浮かびながら通りを歩くと、噂通り怪人があちこちに蔓延っており、S級の首を取ろうと狙ってくる怪人どもが次々と襲ってくる。

 しかし、それらは全ていってもせいぜい災害レベル鬼程度。

 S級、しかも序列2位に位置するタツマキにとって、こんなのものは片手どころが指一本で処理できた。

 

 そして、報告された強力な怪人とやらと、タツマキは対峙する。

 身長は大体190cmほどで、背中から翼が生えており、恐らく男とみられる怪人。性別の区別が曖昧なのは、顔が不気味な仮面で隠されているから。ちなみにこの男、ふんどしは履いているがほぼ全裸だ。

 一般人が見れば、この男の禍々しいオーラにしょんべんでも漏らすだろうが………。

 

 (ふんっ…)

 

  彼女はタツマキ。戦慄のタツマキだ。災害レベル竜でも何も問題にはならない。

 手のひらを男に向け、力を込め超能力を行使しする。

 

 今から使うのは捻じ切り。

 相手の気やオーラに干渉し、相手の体に影響を与えるというものだ。

 タツマキレベルになると、相手を歪ませ、そのまま体を潰す事ができる。

 

 そして奴の体はぐにゃりと歪み、原型を留めずにその生を閉じた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ということにはならず。なぜかその男はそのまま立っていた。無傷だ。

 

 「なっ!?」

 

 驚愕。

 タツマキはこれ以上ないほどに驚く。

 今まで、タツマキの超能力に耐えられる者など誰一人していなかった。それはどんな強力な怪人であろうと人間であろうと、タツマキの超能力は絶対不可避。

 

 なのに。

   

 「……っ!」

 

 今度はさっきよりも力を込めた。

 周りのビルや電柱が徐々に歪んでいく。いや、それどころかこのZ市自体が歪んでいた。

 

 しかし、それでも奴には効かない。

 

 「なんでっ…」

 

 「…どうした?戦慄のタツマキよ」

 

 初めてその男が口を開いた。

 ニチャニチャと、こちらを馬鹿にする様に。

 

 「あんた何者?なんで私の超能力が効かないの?」

 

 問うと、男は「ふむ」と少し考えるそぶりを見せ、再び口を開いた。

 

 「私は元々超能力が効かない体質なんだよ」

 

 タツマキは一瞬疑う。こいつの言っている事は本当なのか。

 こちらを欺く為の嘘の可能性もある。それに惑わされて敗北するなど一生の恥だ。

 だが、先程も全力とはいかないもののそれなりに力を込めて能力を使った。にも関わらず、あいつは無傷で足で立っている。死んでもないし、歪んだりもしてない。これまでの奴らとは違う。

 そして仮に、こいつの言っている事が本当ならば、最悪だ。

 本当に最悪だ。

 超能力が効かない怪人など、超能力者にとって天敵にもほどがある

 

 (こうなったら…)

 

 先程はこの怪人の気に干渉し捻じ切りを行使した。

 しかし、この相手の気に干渉するというのは何も人間や生きている生物だけに限られた話ではない。

 無機物に干渉する事だってできるのだ。

 学校など宙に浮かせたりすることなど容易。

 即ち、隕石を降らす事だってできる。

 タツマキは隕石を使い、この怪人を焼失させようと思っていた。

 

 (いや、だめ。今降らせれる隕石は、どれも他の市にすら影響を及ぼしちゃう…)

 

 チっと、タツマキは舌打ちする。

 なにかと性格がきついやら言われているタツマキだが、彼女も彼女なりにちゃんとヒーローの心を持っていた。  

 

 (なら取り敢えずは…)

 

 彼女は近くにあるビルを浮かせると、怪人に向けて飛ばす。

 先程は超能力が効かないことに焦りすぎたのかも知れない。いきなり隕石なんか降らせなくても、そこら辺の建物をぶん投げて潰せばいいじゃないか。

 地面が抉れ、轟音が鳴り響く。

 

 だが。

 

 「…あぁ…もうくそっ!」

 

 怪人は傷ひとつついていなかった。

 もはや驚きを通り越し、怒りが湧いてくる。相性が悪すぎる相手に対する怒りもそうだが、自分への怒りもある。

 災害レベル竜なら、そりゃ建物なんかぶん投げても効くはずがない。さっきから、どんどん冷静さを失っている自分に対して怒りを感じているのだ。

 

 「もう終わりか…?その程度か、戦慄のタツマキ。S級ヒーローが聞いて呆れるな」

 

 「う…る…さい!」

 

 挑発。

 プライドの高いタツマキにとって、それは非常に効果的だった。

 冷静さを取り戻そうとしていたタツマキだったが、またもや激情に駆られ、次々と建物を、岩を、電柱を、周りにある全てを投げつけた。

 

 「ぐっ!?」

 

 しかし、怪人もただ攻撃を受けるだけではない。

 怪人は少し屈んだかと思えば、鳴り響く爆音と共に、一瞬にしてタツマキとの距離詰め、ボディを喰らわした。

 タツマキの表情が悲痛に変わっていく。久しく感じる痛みに狼狽ていたがすぐに切り替え、バリアを張る。

 

 (これでひとまずは…)

 

 このバリアは鉄壁の強度を誇る。どんな怪人であろうと、このバリアを壊せたものはいなかった。

 タツマキの張るこのバリアは、絶対壊すことはできない。そう断言できる。断言できる…はずだった。

 

 「は…?」

 

 バリアは、怪人が追撃を仕掛けてきたかと思えば、パリンという音を立てて一瞬にして砕け散ったのだ。

 

 「言っただろタツマキ!私に超能力は効かない!つまりお前が超能力を使って張ったバリアも!私には効かないのだ!」

 

 怪人から告げらるその事実も、もはやタツマキの耳には届かない。

 

 ジャブ、アッパー、ストレート、ボディ、キック。

 怪人の度重なる攻撃によって、彼女の体はズタボロになっていた。頭から、鼻から、口から血を吹き出して、体の全てが赤色に染まっていく。

 やがて蓮撃は止まり、タツマキはドサッと床に落ちた。

 

 「ふぅ…まあこんなものですか」

 

 怪人は地面に降り立つと、タツマキへと歩みを進める。

 やがて彼女の元へ辿り着くと、見下ろした。蔑むように。

 

 「ほう…あなたよく見ればなかなか凛々しい顔をしているではないか。なに。どうせ死ぬんだ、使わせてもらおうか」

 

 怪人は血の間から除くタツマキの顔を見ると、そう囁いた。

 使うというのはつまり、彼女の体を犯す気なのだろう。

 

 「嫌…やめて…」

 

 か細い、弱々すぎる声が、タツマキの口からこぼれ落ちる。本当に彼女はタツマキなのか。そう疑ってしまうほど、普段の彼女には似つかわしくなかった。

 しかし。

 今彼女の体に駆け巡るのは、ただ一つ。恐怖。

 戦慄と怪人から恐れられていたタツマキの姿は、もうそこにはない。持ち前のプライドも、もう機能しない。

 

 【いざという時、誰かが助けてくれると思ってはいけない】

 

 ふと、そんな言葉が思い浮かんだ。

 これは、タツマキが研究所で怪人に襲われた時、彼女を助けたブラストが言った言葉だ。

 あれ以来、タツマキは人を信用しなくなってしまった。妹のフブキにも、他人なんか当てにならないと言いつけた。いつだって自分を助けれるのは自分自身しかいないと、あの時からずっと思っていた。

 助けなんか求めても、誰も助けになんかきてくれない。そう、思っていた。

 

 でも…

 

 「たす…け…て」

 

 先程の声よりもか細かい声が、ポツンと響いた。

 誰も助けてくれないなんてわかっている。

 でも、それでも、今この状況を誰かに助けてほしい。そう願わずにいれなかった。

 

 「死にたく…ない」

 

 まだ、生きていたい。

 妹と生きたい、ブラストにも会えていない。まだまだ、やりたいことは沢山あるのに…。

 

 お願い…。

 お願いします…神様。いや、この際誰でもいい、誰か私を…私を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ーー助けて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くだらない。誰も助けになんか来ないよ。この市に住んでるやつなんかいないし」

 

 「ぁ」

 

 絶望。

 やはり、誰も助けてなんかくれないんだ。

 ブラストの言っていたことは正しかった。少しでも期待した自分が馬鹿だった。

 タツマキは諦めた。

 

 

 その瞬間だった。

 

 

 「な…なんだお前は?」

 

 タツマキの目の前に、一人の男が、まるで彼女を守るかのように降り立った。

 

 黄色い服に、白いマントと手袋、赤いブーツ。そして、スキンヘッドの頭。

 普段のタツマキなら、そのハゲた頭を馬鹿にして爆笑していたかもしれない。

 しかし、今の今まで、彼女は絶望の淵に立たされていた。今の彼女からしてみれば、その男の背中は何よりも逞しくてーー

 

 

 「助けを呼ぶ声、聞こえたぜ。あとは俺に任せろ」

 

 

 ーー彼女が憧れた、ヒーローの姿そのものだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーー

 

 

 

 

 

 「さてと」

 

 サイタマはタツマキの前に降り立ち、そう呟くと何やら狼狽ている怪人へと目を向けた。

 

 「誰だ…おまえは」

 

 問い。

 

 「ヒーローをやっているものだ」

 

 答え。

 

 「ヒーロー…私を倒しにきたのか」

 

 疑問。

 

 「なにやら少女を強姦しようとしている怪しいやつを見つけたんでな。ぶっ飛しにきた」

 

 理由。

 

 「っ!舐めるなよこのハゲがぁぁあぁぁあ!!!」

 

 怒り。

 自身のプライドを傷つけられたと感じた怪人が、サイタマへ襲い掛かる。

 もはやその速度は音速を超え、音すら置き去りにした。

 

 長きに渡る超常決戦が、始まろうとしていた!

 

 「ハゲいうな」

 

 「ぷぎゃぁぁあぁ!!」

 

 終わった。

 

 パラパラと、怪人の破片が地面に落ちる。

 

 「たくっもう…強姦にハゲ呼ばわり。なんだこいつ。格好も変だしって…そうだ」

 

 頭に怒りのマークを浮かべながらぶつぶつ呟いていたサイタマだったが、被害者の方の少女を思い出すと、少女へと体を向ける。

 

 「もう大丈夫だ。すぐ病院に連れていくからな」

 

 安心させるために慰めの言葉をかけるサイタマ。

 少女はサイタマにそう言われるなり、目に涙を浮かべ、体をブルブルと震わせる。

 

 「辛かったよな。大丈夫だ、俺が助けに来たから」 

 

 「ぁ」

 

 少女ーータツマキの中で、何かが崩壊した。

 

 「う…うわあぁあぁあん!」

 

 「え!?ちょちょちょちょ!!?」

 

 普段あんなに子供扱いされることを嫌うタツマキも、今はまるっきり子供のように泣き喚き、サイタマの胸に顔を埋めている。

 一方サイタマは、そもそもこの少女(28歳)がタツマキだということに気づいていないので、ずっと中学生ぐらいの年齢の子供だと勘違いしている。

 血濡れの中学生の女の子が、見知らぬハゲの胸に体を埋めている。しかも泣いている。怪しいにも程がある。

 というわけで、サイタマはこれ以上ないほど狼狽していた。

 

 (どどどとどどどど、どうすんだこれ!?こんなん見られたら即警察行きだ!社会的に終わる!)

 

 そもそもここは、Z市なので警察どころか人間すらいないのだが、サイタマはそんなこととっくに忘れていた。

 

 (な、なにか。何か慰めの言葉を!)

 

 サイタマはいつものポケーっとした表情から一転、キリッとした表情になるサイタマ。

 そしてタツマキの背中をポンポンと摩りながら、言った。

 

 「大丈夫。お前は俺が一生守るから」

 

 ………

 …………

 ……………

 

 (何言ってんのおれぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ!!!!?????)

 

 そのあまりにも寒すぎるキザな慰めに、サイタマは自分でも引いていた。

 タツマキの泣き声がピタリと停止する。

 

  (あぁ、おわったぁ、おれおわったあ)

 

 さいたまは、かんがえるのをやめた!

 そんな放心状態のサイタマへ、彼女は顔をあげ、満面の笑みで言った。

 

 「うん…よろしくおねがいします…」

 

 さながら告白のワンシーン…ていうかタツマキは告白だと思ってるのだが…。

 完全に思考を放棄したサイタマにはわからない。そもそもサイタマは慰めのつもりで言っただけだ。

 

 完全なすれ違いによって、二人はサイタマの知らぬうちに付き合うことになったとさ。

 

 おしまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




⚠︎お終いじゃないです。

 まあ続きは気分が乗ったら書きます。
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