リンリンのお兄ちゃん 作:U.N.
「セムラ〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️!!」
俺が初めてリンリンの食い煩いを認知したのは海賊団を立ち上げて、そう時間の経たない頃だった。
B月B日
その日もクリムは何時ものように船の鋼板でバーベル使って筋トレをしていた。時刻は早朝。まだ日が登り始めたばかりで、穏やかな海風が肌を撫でる。
気持ちのよい和やかな朝だ。
クリムはこの早朝の静けさが好きだった。何時もの喧騒も嫌いではないが、故郷の朝を思い起こさせる緩やかな時間はやはり捨てられないものがある。
「今日もこっちは平和だよ、父さん、母さん」
その言葉がフラグになったわけでは無いだろうが、直後、唐突に寝室の扉が目の前に飛んできた。
クリムはとっさにその木片全てを避けるかバーベルで叩き落とし、何事かと油断無く腰を落とし、壊れた扉の奥を見る。すると、冒頭の言葉を叫びながら、鬼のような形相で歩くリンリンがいた。
「リ、リンリン!?大丈夫か?」
「セムラ〰️〰️〰️〰️〰️!!」
その姿は正に怪物と呼ぶに相応しい形相で、覇王色の覇気を撒き散らしながら怪獣のように暴れまわる。おまけに急激にスリムになるわ、俊敏になるわ、会話は出来ないわ、船は半壊するわ、危うく海の藻屑になりかけるわで散々だった。
幸い起きていたシュトロイゼンがセムラをリンリンの口に放り投げたことで事件は収まったが、それまでに生じた被害は甚大で直ぐ様緊急会議が開かれた。
それからリンリンの食い煩いを治すために奔走することになる。色んな医者に話を聞きに行ったり、文献を読んだり、思い付く限りの方法を試し、治療法を血眼になって探した。しかし、どんな本を読んでも同じ病は見当たらず、どんな名医に見せても匙を投げられた。こんな病は見たことない。私の手には余る、と。
しかし、とある王国で出会ったとある女医だけは無理と言いつつ、面白い事を言っていた。
「食い煩い?聞いたことがない病だね。悪いが私にも治せないよ」
「そうか」
なんとなく予想していた答えであったが、どんな病も治すかなり腕の良い医者と聞いていたので、少なからず落胆を覚える。
その様子を見てどう思ったのかは分からないが、女医は独り言のように呟いた。
「ただ、まあ、お伽噺みたいな話で良いって言うなら可能性が無いわけじゃあない」
「ほんとか?」
「昔こんな男がいた。その男は500を越える不治の病にかかっていたが、それぞれ相反する不治の病を持っていたので、なんの不自由もなく生活をしていたとさ」
「相反する病?」
「例えば、高熱を出す病と体温が下がる病。痩せる病と太る病と言ったふうにね」
「なるほど」
「食い煩いにそんな相反する病があるのかは知らないが、もしあるならそれに掛かれば普通に暮らせるようになる………かもしれない。ま、お伽噺みたいな話さ。話し半分に聞いときな。そもそも仮にあったとしてどうやってその病にかけるのかって話でもあるしねぇ」
その時は文字通り話し半分に聞いていたのだが、後にシクシクの実と言う一風変わった悪魔の実の存在を知る。
なんでもシクシクの実を食べた者はこの世に存在する全ての病を扱う事が出来るようになるらしい。その能力ならあるいは、リンリンの食い煩いを治せるかもしれない。
そう思ってシクシクの実を探し始めたが、五年以上探しても見つけることは叶わなかった。
そして、半ば諦めかけていた時、ロックスの儲け話を聞いた。
ロックスにも、ロックスの儲け話にも興味は無かったが、儲け話を聞きつけてやってくる猛者達の中にはシクシクの実の能力者がいるかもしれない。あるいはその能力者の所在を知ってるものがいるかもしれない。
「よし、決めた。海賊島ハチノスに行こう」