リンリンのお兄ちゃん   作:U.N.

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七話

D月D日

ロックス海賊団は複数の海賊団が集まって出来た海賊団である。そのためこの船には航海士や船大工、料理人、船医など同じ役職を持った海賊が複数人いた。まあ、役職持ちが多くて困るってことはないんだが、効率的な運営のために便宜上のトップを決める事になったのだ。

しかし、此処に集まったのは選りすぐりの荒くれ者である。当然、便宜とは言え誰かの下に着こうと思うものはいないし、話し合いで解決するなんてまともな考えがあるわけもなく、玉が坂道を転げ落ちるように自然と話し合い(物理)が始まった。

 

 

「──テメェやりやがったな!?」

「うるせぇ!? テメェみてえなヒョロイ野郎に船大工が勤まるかよ!?」

「あァ!? テメェみてえなド三流が大工語ってんじゃねえぞ!? 大工長はおれがやる!? ザコは死んでろ!!」

「がはっ!!」

「クカカカ!? この程度で死ぬからテメェはザコなんだよ!?」

「だったらお前もザコだなぁ!? 大工長は俺がやるに決まってんだろ!?」

「て、テメェ!?」

 

一瞬にして話し合いが怒鳴り合いに、怒鳴り合いが殺し合いに変わった。しかも、それが各役職ごとで起こっていると言う悲劇。なんなのこの船。

 

俺は巻き込まれたら堪らんと、人気の少ないトイレの扉の前まで逃げてきた。

しかし、何のイタズラか男子トイレから出てきた男がデケエ声でいらんこと抜かしやがった。

 

「ひゃほーい!船医長は俺がやるぜぃ!」

 

バカ! お前! バカだろ! お前そんなこと言ったら大変なことになるぞマジで!

 

当然そんな勝手な言い分看過できない同じ役職の男達が怒りながら、男の方、つまり俺の近くに下りてきた。

 

「おいこら?寝言は寝て言えやヤブ医者が!」

「テメェが船医長だぁ?ふざけてんじゃねえぞ?!」

「冗談は顔だけにしろや!」

「何で俺がテメェみたいなヤブ医者の下につかなきゃならねえんだよ!」

 

蜂の巣をつついたように次々と人が集まり、下品な言葉飛んでくる。

男も元より気が長い方ではないので、すぐに沸点を越え、腰に掛けた剣に手を掛けた。

 

「ヤブ医者だぁ? 上等だぁ!? ヤブ医者かどうかお前の体で確めてやるよ!? お前を切り刻んでなぁ!?」

 

切りかかる男。

迎え撃つ男。

まとめて殺そうとする男。

俺の目の前は一瞬で殺し合いの場へと変化した。

ちなみに、何故切り刻むことでヤブ医者じゃない証明になると思ったのかは不明である。

 

「ぐぇえええ!」

「死ねやぁ?!!」

「ぐはっ!テメェ殺りやがったな!?」

「ごほぇ!?」

「テメェが死ねや!」

「うるせぇ!テメェが死ね!」

「テメェらまとめて殺してやる!」

 

一人死に、二人死に、三人四人五人と死に、

流石にこのまま船医が減り続けるのは不味いと思ったのか、ロックスが立ち上がった所で、俺の隣のドアが開き、船医箱を持った女が出てきた。

 

「何の騒ぎ?」

 

女は喧騒に眉を寄せながら、丁度近くにいたクリムに話しかける。クリムは唐突に知らない女に話しかけられ驚いたが、苦笑いして答えた。

 

「あ、ああ、船医長を誰にするかって騒いでるんだ」

「船医長?くだらないわね」

「だよな。話し合いで決めりゃ───」

「船医長は私だぁ!? 認めねぇ奴はぶっ殺す!?」

「え〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️〰️!お前もかよ!」

 

女は咆哮を上げながら突進する。

その後ろ姿を俺は唖然と見送る。

 

何だったんだ。あの゛くだらない゛は。え?なに?もしかして、どうせ私がなるんだからお前らの゛くだらない゛争いには意味が無いって意味のくだらない?

分かるか!

てか、普通に戦いに行くの見送っちゃったけど、女一人で怒れる野獣の群の中に行かせて大丈夫だったのか?

この世界でも基本的に女は男より弱いのが常識である。女の中にも化け物みたいな強者がいるのは確かだが、そう言う奴等は大抵体がデカイ。一目で強者と分かる体格をしている。

しかし、あの女は身長も体格も普通の人間と大差なかった。いや、すげーグラマラスではあるし、エロい体つきではあるんだが、それは戦闘には関係ないし、むしろレイプとかされるって意味で悪いくらいだ……。

しかし、クリムの心配は全くの杞憂であった。

 

女は走って戦場へ行くと、一番外にいた男を蹴り飛ばす。その蹴りは女の細足から出た蹴りとは思えない程の威力で、男は何人かを巻き込みながら恐るべき勢いで吹き飛んでいき、船の壁に激突し、煙を上げた。

しかも、蹴られた男も巻き込まれた男も何故か女体化し、

さらには、その周りにいた男達も次々と女体化していく。

 

「な?!体が女に!?」

「どうなってんだ!?」

「誰の仕業だ!?」

 

女は、混乱する男達を恐るべきスピードで殴打して回り、一瞬で10人以上を気絶させた。

そして、誰もが聞こえるようなデカイ声でこう宣言した。

 

「私が船医長だ!? 文句ある奴はいねぇよな!? いてもぶっ殺す!」

 

それに文句を言う奴は当然いたが、例外なくぶっ殺された。

こうして船医長が決まったのである。

 

まあ、クリムにとっては船医長が誰だろうがどうでも良いことであった。

それよりも気になるのがあの女の使っていた悪魔の実の能力。俺の予想が正しければあれはホルホルの実か、シクシクの実の能力である。触れていない者にも効果があった事を考えると、おそらくシクシクの実だと思われる。

クリムは逸る気持ちを抑えて、女に確認を取る。

 

「お前悪魔の実の能力者なのか?」

「ああ、私はシクシクの実を食べた発病人間。この世のありとあらゆる奇病を操ることができるのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロックス海賊団結成初日。死者38人。負傷者多数。

成果 シクシクの実の能力者を発見

能力者の名 王直

 

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