ダンジョンで英雄を目指すのは間違っているのだろうか   作:おやしお

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何番煎じかのベル強化物です。
刀使いが好きだからこそのクロス相手キシュラナ流剛剣術使いのベルの活躍をお楽しみください。
一部独自解釈も含まれています。


01 出会い

 

 ダンジョンに英雄を求めるのは間違っているのだろうか?

 ギルドで冒険者に登録して剣一本でのし上がる。

 向かう先には数多のモンスター。それらを斃し更なる力を得ていつかはお爺ちゃんが絵本から語ってくれた英雄たちの様に。そして僕に力を与えてくれたお師匠の様に英雄になりたい。

 

 そう思っている時期が有りました。

 冒険者になって2週間。ゴブリン、コボルト相手に4階層迄潜り続け今日5階層を挑戦したら上層部LV.1の冒険者が挑戦できる12階層迄には居ない筈の中層部のLV.2のモンスター。

 それも15階層以下に出現する中層最強のモンスター、ダンジョンの代名詞でもある「ミノタウロス」と遭遇したのだ。

 165C(セルチ)の冒険者「ベル・クラネル」の前に居たのは2M(メドル)に達する巨大な牛頭人体の「ミノタウロス」

 ベルが持つその手にある武器は小柄な彼には大き目な刃長80C(セルチ)余りの片刃の軽く湾曲して極東にあるような刀その鍔は安物の刀に不釣り合いな四枚の中央部に鈴の形の花弁を模してある芸術的な美しさを持っている一品であった。

 決して登録2週間の新人貧乏冒険者が持つのに相応しいとは言えなかった。

 

(とうっ)!」

 

 一声と共に腰溜めに構えた刀と共にミノタウロスに躊躇いなく突進するベル。

 低い姿勢と体格差により掻い潜り抜き胴を放ったが、ガキン!岩を切った様な否今のベルなら切り裂ける。むしろ鋼の鎧に斬り付けた様な感触に顔をゆがめる。

 そのまま、恐れずに同じ場所の脇腹めがけて切り返すベル。

 それだけ攻撃しても漸く外皮を切り裂く程度だった。

 そしてその様な攻撃なども意に反さずにその蹄をダンジョンの床を踏み抜いてベルに目掛けて拳を振るうミノタウロス。

 LV.1とは比較にならない速さのギルドに中層最高ランクのモンスターに認定される攻撃に辛うじて躱すがそのまま床を砕き、その破片がベルの顔を傷付ける。

 今までの探索と違う脅威にダンジョンを舐めていたと自覚しツツーッとこめかみから冷汗を垂らし恐怖に囚われそうになる。

 

『僕には英雄は無理なのか?』

 

 そんな弱気に駆られるがそれでも育ての祖父の言葉「いいかベル。(おのこ)ならどんな時も笑って(おなご)を守るんだ。それがハーレムの道じゃ」を思い出し LV.1の女性(ここ重要)冒険者が遭遇したら惨劇となる。

 ここで食い止めないと。

 と英雄と言うのには色々と台無しな内心で決意を新たにしたのだ。

 だが、実際は次々と拳、蹄の攻撃を避けるので精一杯でベルの切り札を出す溜めの時間を稼げなかったのだ。

 それでもミノタウロスの攻撃へカウンターとして刃を合わせて切りかかるのだが硬い外皮に効果が薄く、逆に刀を庇い受け流すのでやっとであった。

 そしてミノタウロスが吠えた。

 咆哮(ハウル)、格下相手には一発で行動不能になる、己と戦う資格の無い者には強制停止(リストレイト)に追い込む怪物の叫び。

 そうなったら蹂躙されるだけである。だが。

 

()は折れていない、まだ戦える』

 

 ベルの心は折れていなかった。

 

 10分?30分?それともまだ1分?体感時間が曖昧になってきた時に簡単に当たらないとミノタウロスは苛立って体当たりを行ったのだ。それを刀身で受け止めて反動を使って後方へ飛び間合いがやっと開いたのだ。

 これを逃したら逆転は出来ないと切り札を出す決意をするベル。

 

「闘の一文字を心に懐け…」

 

 闘気を高めている最中に突如とミノタウロスの身体に銀線が走ったと思ったら線に沿って今迄掠り傷しか与えられていなかった肉体がバラバラになったのだ。

 その様を見て思わず力が抜けそうになるのを慌てて力を入れ直して新たな存在に残心をして脅威があるのか対応をしようとして。

 

 そこに現れた人影を見て全ての心構えが吹き飛んだ。

 蒼色の軽装の美少女。

 ベルよりわずかに低い身長の細身の身体。

 女神と見紛う美しい(かんばせ)に腰まで伸びる金髪に同じく金色の瞳。

 銀色の胸当てと手甲には道化のエンブレム=オラリオ最強の一角ロキ・ファミリア所属の第一級冒険者。

 女性冒険者としてオラリオ最強の一角と名高いLV.5の【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。

 オラリオに田舎から来て二週間のベルですら噂で知っている有名人。

 そこで今までの死と隣り合わせの緊張も強大な敵との対峙による脅威も消えた時にアイズが可愛く首を傾げて尋ねた。

 

「大丈夫ですか?」

 

 その言葉にベルは限界だった。

 

「ありがとうございます。僕はヴァレンタインさんのファンです。出会えて嬉しいです」

 

 思わず最初のミノタウロス相手の踏み込みに匹敵するスピードでアイズに近付き手を握るベル・クラネル。

 体重移動だけで足などをほとんど動かさず初動を消す独特の歩法を使ったのだ。

 これはやはり英雄への憧れと同時に祖父からの絵本と共に教えられ(洗脳)ていた英雄になればハーレムが出来る。

 ハーレムは男の浪漫。などと文字が読める様になってから繰り返し語られた言葉もベルの性格形成に影響が有ったのだ。

 だからこそまだ見ぬ(女性)冒険者の為にミノタウロス相手に足止めをして初対面のアイズの手を握ると言う暴挙も行ったのだ。

 

 突然の事に流石のアイズも反応できず、我に返ったベルは顔を真っ赤にして「ごめんなさ~い」とドップラー音を残しながら駆け去っていた。

 気が付いたら刀も背中に戻していたのは冷静なのか、日頃の修練の結果か?

 

「っっく…くっく」

 

 その様子を見た狼人(ウェアウルフ)の冒険者。

 同じLV.5の同僚であるベート・ローガが可笑しくてたまらないと笑っていた。

 

「千人斬りのアイズに新人が見事に特攻とは度胸だけは認めてやる」

 

 そして「鎧は新人っぽい安物だがミノタウロスに耐えた武器やあの動きは新人らしくないな」ともアイズが介入する直前の動きを見ていて、怯えるだけのただの雑魚では無いと内心認めてもいたのだ。

 そしてベルの腕前ではなく刀の性能で耐えたと勘違いしていた。

 

 一方アイズは強大な敵に一人敵わなくても抵抗を続ける姿にかつての幼い自分とも父親とも重ねて見ていたのであった。

 

「白い兎と……」

 

 ベルの白い肌と白い髪、深紅(ルベライト)の瞳とヒューマンでありながら兎人(ヒュームバニー)よりも兎を連想させるのはその姿か動きの早さからか?

 そんな彼にアイズも何故か記憶に残ったのだ(幼いアイズが兎をモフモフしている心象風景が生まれていた)。

 そしてその戦闘能力に『私と似た様なスキル?』という微かな疑惑も……

 

 そうやってベルがダンジョンを出る頃にはアイズたちも他のロキファミリアと合流して遠征からの帰途に付いていたのだった。

 




 祝大森先生6か月連続刊行での見切り発信です。
 ベル君強化物です。
 微妙にベルの呪文の言葉が違いますがその理由は次回に。
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