ダンジョンで英雄を目指すのは間違っているのだろうか 作:おやしお
「給仕君、踏み台を持って来てくれ!」
「俺がガネーシャである」
ガネーシャの宴会の挨拶を他の神々同様に聞き流し談笑せずに
そのかでも日持ちのする物は持参のタッパーにせっせと詰め込み給仕に微妙な顔をされていたが、これもベル君の為と心に棚を作って見えない振りをしていたのだ。
「おーい、ドチビ~」
そこへ、ヘスティアの嫌いな。聞きたくない声がして嫌々振り向いた先には、珍しくドレスで着飾ったロキがやって来ていたのだった。
「なんで君が来たんだよ」
「今宵は宴や~というノリやろ。理由を探す方が無粋や」
そこで嫌らしく笑って続けるロキ。
「単純にドレスも着れない貧乏女神を笑いに来たんや」
彼女はフォーマルな装いに誤魔化しているが実際は普段着なのでドレスコードには怪しかったのである。
「……」
「あら~お二人とも久しぶりね~」
反論をしようとしたら色っぽい声が聞こえてきて振り返ると案の定ロキとは違うベクトルで嫌い(苦手)な女神がワイン片手に微笑んでいた。
「フレイヤ……」
「なんや自分珍しくこんな所に出て来るとはどうしたんや?」
フレイヤ。美の女神、ただその場に居るだけで人だけでなく神々、男神だけでなく女神すら魅了する黄金律を越えた肢体と美貌を持つ存在であった。
それだけに人目に触れるだけで混乱を起こすのを嫌ってこの様な催しに参加するのは珍しかったのだ。
ロキと共に黒いドレスで違いが良く判る(胸部装甲の差が)から更に不機嫌になるロキであった。
「ふふふ、私だって偶には遊びたいわよ」
「ふん、どうせ男を食いたいだけだろ」
ヘスティアが珍しく口調も荒く話しかけるが、これも処女神と性愛も司る美神の相性の悪さだろうか。
「ヘスティアも酷い顔をしているわよ」
「ヘファイストス!」
フレイヤの陰から出たのは紅い髪と線が鋭く意思の強さを表した顔立ちの美貌と右目に大きな眼帯をした麗人が同じく深紅のドレスに身を包んで呆れた顔をして現れて来たのだ。
「さっき、そこでフレイヤと出会って久しぶりと挨拶して一緒に回っていたら彼女があなたを見付けて向かったから一緒に来たのよ」
「か、軽いよヘファイストス」
「フェイたん久しぶり」
ロキも同じく軽く挨拶を交わして機嫌も直していた。
「ロキの所の
「大成功しているファイたんに言われるとはうちも出世したなー」
眷属を褒められて先ほどまでのヘスティアとの諍いやフレイヤの登場を忘れデレるロキ。
天界でのトリックスターとしての悪名を忘れる位ファミリアを愛しているのが判る程態度が軟化していた。
これはチャンスとばかりにヘスティアが話しかける。
「ロキに聞きたいんだけど……」
「ドチビがうちに願い事……?」
警戒をするロキを無視して言葉を続ける。
「君の所のヴァレン何某に付き合っているとか、想っている子がいるのかい?」
「【剣姫】の話なら私も興味あるわ」
ヘファイストスもヘスティアの言葉に乗って興味を示す。
「アイズたんはうちのお気に入りや、手を出そうとする男が居たら八つ裂きや。
先日もアイズたんの手を握った馬鹿が居たが、これはベートに袋叩きにされとったわ」
「あらあら、第一級冒険者にやられて逃げ帰ったのかしら」
それまで黙って聞いていたフレイヤが口を挿んできた。
「ベートも下級冒険者相手に消し飛ばさない様に手加減を苦労していたが、それでも根性を見せて立ったまま気絶していたんや」
フレイヤに糸目を小さく開いて知っているだろと気配を滲ませても知らない振りを見せていた。
「まぁ、兎に角根性を見せても兎野郎にはアイズたんはやらないがな」
「ほう、
ヘファイストスもベート相手に引かなかった冒険者に興味を持ったようだ。
だがヘスティアはこの流れは不味いと内心冷汗をダラダラ流していた。
「いや違う。ヒューマンだが白い髪に
「ヘスティア。君んところのたった一人の眷属も確かベルと言って白髪の少年だった筈では?
初めての眷属で喜んでいたが自分よりもダンジョンに出会いを、一攫美少女を狙っていると言って怒っていた」
ロキの言葉からかつての愚痴を思い出したヘファイストスの発言に彼女は反論する。
「口ではハーレムは男の浪漫と言っても女の子とまともに口を利けずに固まっているだけだから無罪だよ。
とにかくダンジョンと女の子に夢を持たせ過ぎた育ての
フレイヤの存在から男神たちも耳を傍立てていたがヘスティアの発言から彼女の眷属について共通認識を持ってしまった。
「DTだな」
「間違いない」
【悲報】神々にベルはDTと知られてしまう。
「ふ、ふ、ふ。それならロキと気が合いそうだけどあなたの所を選んだのね」
「ロキん所は門前払いされたと言っていた。他のファミリアも皆断れていて落ち込んでいたからボクみたいな眷属ゼロでも喜んでくれたんだけどね」
「ウチんトコの門番には希望者には面説させるから勝手に追い出すなと言っている筈だぞ」
「ベル君曰く、これから遠征で団長たちが不在になって戻ってくるのが半月以上先だから滞在費が持たないって言っていたよ」
「ウチが居るんだから呼べばよかったのに、信用しなかったのか」
能力よりも趣味や面白そうで選ぶロキ単独で面接は大きくなった今は控える様に
実際酒場での動きと台詞から気に入っていたロキには逃がした魚は大きすぎたようだ。
「というかフィンたちが遠征の時に眷属になったのなら半月程度で5階層に挑戦する素質があったのにどこも受け入れんかったのか?」
「自分も眷属にした後話をしたけど、最初は連敗記録で項垂れていて頼りなく見えていたし、元気になったら目をキラキラさせて冒険者とダンジョンに夢を見過ぎな会話をしてきてちょっと引いちゃう位だから眷属の居る所だとリスクが高いと判断されたみたいでね更に落ち込んでの悪循環だったよ」
そのままグラスをテーブルに置いたフレイヤは身を翻して四人から離れようとしていた。
「何か用事があると言っていたのにもう帰るのか?」
一緒に会場を歩いていたヘファイストスがそう疑問を投げ掛けるが。
「面白い話も聞けたし、ここの男たちはみんな食べ飽きちゃったもの」
周囲の男神たちは悪びれもせずに「サーセン」と言っていたがヘスティアは違った。
「だからベル君はロキん所には行っても君の所には行かなかったんだよ」
「あら、どうして?」
振り返り妖艶な笑みを浮かべ問い質す彼女に、ダンジョンで美女、美少女との出会いを望むベル君がダンジョン探索よりもホーム内で争って君の寵愛を受けようと必死な所だと出会いは望めないから説明を聞いた瞬間に候補から外したと。
「面白い子ね」
更に笑みを深めて今度こそ帰る姿に男神たちは「自分はあんなDTと違ってフレイヤ様一筋です」と声を掛けていたのだ。
「やっぱりフレイヤも「美の女神」でだらしがないよ」
「でも愛や情欲を司るためにはそれも仕方が無い事だよ」
「ダメダメ、ドチビの様な処女神には理解出来ないし、だからこそ彼女を恐れたDTが眷属になるのも納得や。
それでもウチのアイズたんを褒める目の高さだけは感心だがな」
「ベル君はロキに上げないからね。それとも【剣姫】をボクのファミリアに入れてくれる」
「それこそアホか認める訳が無いし彼女も行く訳が無い」
「せめてタケの様に仲の良いファミリア同士ならワンチャンあったんだけどね」
ヘスティアの言葉にかつての大騒動を思い出し懐かしそうな顔をするヘファイストス。
「そう言えばヘラのお気に入りに手を出して生き延びた
「ああ、居たな。無事に産まれたと聞いたが両ファミリアとも壊滅したし今頃どうなっているのか、幸せになっていれば良いが」
「???」
地上に降りて間が無いヘスティアには過去を思い出す二人の会話は疑問だけであった。
「ドチビを揶揄いに来ただけだったが珍しい神物に会ったり面白い話を聞けて久々の宴に出て満足だったわ」
そう言い残してロキも会場を後にしたのだ。
「あなたはどう? もし残るのなら一緒に飲み直さない?」
彼女の言葉に本来の目的を思い出し一大決心で言葉を紡ぐ。
「ヘファイストス。君にお願いがあるんだ」
その言葉に目をスッと細めるヘファイストスであった。
フレイヤが先に居たため喧嘩にならずベルの所属が知られました。
そして神々にも【剣姫】を口説く
15巻だと遠征帰りだけどそれだとロキファミリアが1週間足らずで遠征再開だから無かった事にしました。
日持ちのする料理。クッキーなど焼き菓子や果物くらいかな?下手に調理済みだと傷んでしまいそうだし。