ダンジョンで英雄を目指すのは間違っているのだろうか   作:おやしお

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12 鍛冶神(ヘファイストス)誇り(プライド)

「フレイヤ様、昨夜宴からお帰りになってから随分とご機嫌が宜しいようですが何か嬉しい事があったのですか?」

 

「オッタルそうね……」

 

 ダンジョンの蓋でありオラリオで最も高い摩天楼のバベルの最上階。そこをフレイヤの住居として貸し出されているのだ。

 そこから彼女は女王として朝の街並みを見渡していた。

 そして後方には忠実な従者。身の丈2M(メドル)を越える猪人(ボアズ)の武人オッタル。

 その重厚な肉体は二つ名【猛者(おうじゃ)】に相応しく間違いなく都市最強LV.7を納得させる威風の男である。

 

「宴で面白い噂を聞いたわ」

 

 そしてベルの名を出さなかったがフレイヤの美貌の噂とその崇拝と寵愛を得る為に戦いの野(フォールクヴァング)での死闘を聞いて決して入団しないと宣言したこどもが居たとか「オッタルはどう思う?」と聞いたのだ。

 

「そうやって、苦手な事から逃げるようでは大成しないが、フレイヤ様が気にすると言う事はまだ他が有るのですね」

 

「そうね、逃げるのでは無くてダンジョンでの女性との出会いを求めるのに戦いの野(フォールクヴァング)に籠っていたら出来ないとか、私一人より多くの出会いでハーレムが希望だから嫌だと言ったらしいのよ」

 

 コロコロと笑いながら「ねっ、楽しいでしょ」と続けるのだった。

 

「もし、フレイヤ様を見て同じ事を言えたのなら大物ですな」

 

「嬉しいわ。他の眷属()、特にアレンやガリバー兄弟なら問答無用に八つ裂きにしかねない言葉でも落ち着いて返答するから」

 

「恐縮です」

 

 そのまま頭を下げるオッタルだが内心は敬愛する主神を軽く扱う名も知らぬ冒険者に怒りを覚えていたのだった。

 そして、魂の色を見る事が出来るフレイヤが見覚えのある特徴ある魂の輝きの持ち主がダンジョン(バベル)に駆けて来るのを見ていたのだった。

 

 この日も無事にバベルから戻ったベルだが昨日神様が言われたように数日留守にすると言われ不在でも不安では無いが誰も居ない寂しい部屋と言うのはお祖父ちゃんが亡くなった当時を思い出しそれを忘れる為にも中庭で刀を振るう事にしたのだ。

 

 

 

「それで、何時までその変な格好をしているの?」

 

 昨夜ガネーシャの所でヘスティアからお願いと言われ最後まで聞かずに拒否をしたヘファイストスだが、そのまま執務室にまでやってきたヘスティアはタケミカヅチ直伝のドゲザで彼女にヘファイストスの所の武器を譲って欲しいと願っているのだ。

 下界に降りてきて面倒を見ていたが一向に独立をする気が無く居候を決め込んでいた事に腹を立てて、追い出したら神の力(アルカナム)の無い彼女は文字通り零能力者で生活が出来ないと当座の生活資金を渡しても生活費が稼げないと泣き付かれバイト先の世話を焼き、住居として廃教会の隠し部屋を融通と毎回これが最後と言いながらも世話をしたがこればかりは首を縦に振れなかった。

 

「自慢では無いけどヘファイストスのロゴは安くないのよ。オラリオだけでなく都市外の世界中に知られるブランドでその為に多くの眷属(こどもたち)が研磨をしてきて、鍛冶師でありながら必須技能である発展アビリティ【鍛冶】を得る為に上級冒険者を同時に目指してきた彼らの努力は決して安売り出来ないのよ」

 

 彼女の言葉にもそれでもヘスティアはドゲザで頼むしか無かった。

 

「第一冒険者になって半月足らずの子に身の丈の合わない武装は身を亡ぼす元よ。それが判っていないあなたでは無いでしょう」

 

 更に溜息を吐いて言葉を重ね「何故それ程こだわるか?」と再び問い質す彼女。

 

「ベル君は今強くなろうと足掻いているんだ」

 

 ヘファイストスの言葉に説得するのは今しかないと己の想いを全てぶつけるヘスティア。

 

大きな壁(ベート)にぶつかりそれでも越えて目指す頂きに立ち向かおうとしている時に、ボクは君も知っているように無力で何も出来ない。それでは嫌なんだ、せめて少しでも力になりたい、駄目なボクを慕ってくれたあの子を後悔させたくない我儘だと知っているが上を目指すのに相応しい武器を与えたいんだ」

 

「わかったわ。作ってあげる」

 

 ヘスティアの願いに神意を全てぶつけた事に応えてやろうと「甘やかせ過ぎ」と自覚しながらも彼女は立ち上がった。

 

「それでも何十年、何百年掛かろうともあなたが代金を支払うのよ。ただで渡す事はあり得ないんだからね」

 

 釘を刺し彼女の決意を確かめ、ついでに怠惰な性格を改める好機だとも思わないとやっていられなかった。

 

「あなたの子供の使う得物は確か極東の刀だったわね」

 

 ロキとの口喧嘩でサムライでミノタウロス相手に凌いでいたと言っていたのを覚えていたのだ。

 

「そうだよ。研ぎ直したけれどガタが来て寿命が近いんだ」

 

 だからこそ入手の難しい刀で出来るだけ上等なのが欲しいと続けるのだった。

 

「ソロで上層ならそろそろ帰っているわよね」

 

「えっ? 本当だもうこんな時間になっている。うん、いつもなら戻って来ている筈だけど?」

 

 疑問に思う彼女を他所に、その言葉を聞いたヘファイストスは魔道具(マジックアイテム)の呼び鈴を鳴らしたのだ。

 

「主神様お呼びですか?…… おや久しぶりに元居候殿も居られるのですか」

 

 しばらくして現れたは派閥の団長である椿・コルブランド。極東のヒューマンの女性と大陸のドワーフの男性との間のハーフドワーフで170C(セルチ)に届く長身の褐色の肌と黒髪赤眼の端正な女性であり主神と反対の左目を眼帯で隠している彼女は挨拶通りに豪放快活な性格でドゲザから痺れが取れずに床に座ったままのヘスティアにも気にせずに挨拶をしていたのだ。

 

「あなたに来て貰ったのは、ヴェルフを呼んでほしいの」

 

「ヴェル吉を? いよいよ売れないから最後通牒ですかな」

 

 カラカラと笑いながら物騒な事を告げて主神を呆れさせていた。

 

「違うわよ。今日はバベルに納品に向かっているから連れてきてね」

 

「あい、判った」

 

 そのまま特に理由を聞かずに出かける椿。

 

「バベルだから直ぐに戻ると思うから待っていてね」

 

「そのヴェルフって人の作品を売ってくれるの?」

 

「まさか! これはあなたとの完全なプライベートな案件なのよ。他の団員を巻き込む事は出来ないわよ」

 

「それじゃぁ、神匡の君が打ってくれるんだ。これ以上嬉しい事は無いよ」

 

「忘れているかもしれないけれど神の力(アルカナム)を封じられている私には一切の力も使えないのよ」

 

 むしろ発展アビリティのある上級鍛冶師の方が特殊効果のある強力な武器を打てるだろう。

 

「でもそれでも君に打って貰う方が嬉しいよ」

 

 ヘスティアの裏表のない笑顔にこれだから嫌いになれないと内心思っていたりする。

 しばらくして片手に青年を引き摺って椿が現れた。

 LV.5の椿にLV.1(ヒラ)団員のヴェルフが敵う筈もなく強引に走ってきたのが伺える青い顔をしていた。

 

「ヘファイストス様、何か用事があるとお聞きしましたが」

 

 椿が冗談で口にしたように自分の作品が売れていない事を自覚していて、無茶な移動だけでなく緊張で顔を青くしていたのだった。

 

「ちょっとお使いに言って貰いたいの。椿だと目立つからこの地図の所のベル・クラネルという冒険者を武器を持って来て欲しいと告げてここに案内して」

 

「???」

 

 ヴェルフが態々主神が気に掛ける冒険者を自分が呼ぶ理由が判らず、他の女神も同席しているのを見て尚更疑問が重なっているが敬愛する女神からの叱責ではなく依頼だったから「判りました」と素直に応じて「出来るだけ急いでという言葉に頷いて部屋を出て行ったのだ。

 

「椿も仕事に戻ってよいのよ」

 

「主神様が気に掛けるベル何とかという冒険者と、何をするのか興味が有って残らせてもらう」

 

 そう言って椿も同席してヴェルフの帰還を待つことになったのだ。

 




 原作よりも早く折れたヘファイストスは甘いのか?
 椿も彼の存在を早く知った模様
 そしてオッタルのベルへの感情は今後どうなるか?
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