ダンジョンで英雄を目指すのは間違っているのだろうか 作:おやしお
「ここが俺の工房だ」
北西のメインストリートにあった支店からホームもある工業区の北東のメインストリートに移って案内されたのは平屋の如何にも鍛冶屋という小さな建物だった。
「ほわぁ!」
建物を見て口を開けて感心するベルを中に入れてから改めて刀をチェックして罅など目に見える傷こそ無いが何度も打撃を受けて寿命が近いのが見えていた。
目釘を抜き焼き直しから打ち直して「いちご丸」は生き返ったのだ。
「遅くなったがこれで戻ったぞ」
「ありがとうございますクロッゾさん」
「クロッゾは止めてくれ俺は家名が嫌いなんだ」
「ではヴェルフさん? ありがとうございます」
「おう、それでよい。それに自分以外の者が使ってどう言う状態か滅多に見れないから感謝する。それにしてもそんなに名前が嫌か」
ニカッと笑った後に眉を下げてそんな事を聞いてきたのだった。
「一度同僚の銘を確認したり相談するだけで売り上げは変わると思いますよ」
お世辞も言えずに、そう返事を返してベルは落ち込んでいるヴェルフの工房を遅くに後にしたのだ。
その頃は工房の周囲の職場も仕事を終了して家に帰ったり酒場に向かう職人や既に出来上がっている職人があちこちにストリートいたのだった。
ピピピ!
日の出と共に小鳥の囀りで目を覚ましたベルは今日もダンジョンに向かう。
「よし! 今日も5時ピッタリ。昨日は夜遅くなったが体調も大丈夫」
時計で時間を見てから、身体を揉み解して異常が無い事を丹念に確認しそう呟く。
「昨日はヴェルフさんに悪い事を言ったかな? 鍛え直した刀は購入時よりも切味も強度も高くなってキラーアント相手にも問題が無さそうな程手を入れてくれたのに名前だけで駄目出しをしちゃって」
ダンジョンに入る前での朝の素振り後軽く刀身を叩いて澄んだ音色を響かせる「いちご丸」を見ながら呟くベル。
「兎に角今日からは新しい階層だ気を引き締めないと」
実は昨日で一番嬉しかったのは今の愛刀の修理でもヘファイストスによる新調でもなく椿の後10
これでアイズさんの横に並んでも外見上は見劣りしない。後はレベル上げだけだ、目指せ都市最強LV.7。
目標は高い方が良い。その為にも第一歩として今日は7階層。
頑張れベル・クラネル、最初の強敵は今日報告する迷宮アドバイザーのエイナ・チュールの叱責だ。
1~4階層迄のモンスターはほぼ躱して戦闘をせずに5階層にまで到達し新たなモンスター【フロッグ・シューター】が集団で通路を塞いでいたのでこれらを一閃。
「凄い!」
単に鍛え直しただけでなく柔らかく切れにくく、打撃にも強いフロッグ・シューターの外皮を今まで以上に容易く切り裂く切味に改めてヴェルフの制作時から数年の間の鍛冶の腕前の上昇を感じさせる物だった。
これならミノタウロスであってもと、もしもを考えてしまうベル。
6階層初出の「新米殺し」である【ウォーシャドウ】。素早い動きと長い腕に伸びている爪による攻撃力の高さと間合いの違いでゴブリンなどに慣れた者が命を落とすが耐久力がゴブリン、コボルト並みの為に既にベルの敵では無かった。
「ㇱッ!」
鋭く息を放つと共に一撃で首を刎ね、返す刃で宙に舞う前の頭部を唐竹で真っ二つにするベル。
「凄い。今迄だったら首を刎ねても唐竹は無理だった。ヴェルフさんにちゃんとお礼を言っておかないと」
何よりもガタが来る前の新品の頃よりも気が闘気の乗りが違っていた。結果刀身が強化され強度も切味も更に向上してのウォーシャドウとの戦闘結果である。
内心で「いちご丸」から「切り裂きの剣(仮)」に勝手に改名するベル。
そして初挑戦の7階層。
そこで初出の「新米殺し」第二弾【キラーアント】と7階層到達早々に出会ったベル。
巨大な蟻に似た赤い姿。
縊れた腰を起点に持ち上がった上半身はベルに匹敵する高さ。
アリと違い細い双腕に四本の鋭い爪による強力な攻撃力。四本の足で移動も早い。
堅い外皮に手古摺る間に鍵爪で致命傷を負い命を落とす冒険者が多いと。
5階層までのモンスターと勝手が違う故に上層に慣れた冒険者が手間取る間に焦ってミスを誘発するのだ。
そして、傷を負い危険と判断するとヒューマンには感知できないフェロモンを発して仲間を呼び寄せると。
速攻で斃さないと更なる【キラーアント】に集られて逃げる事も出来なくなる危険性故に「新米殺し」。
散々エイナにダンジョン攻略情報を叩き込まれ決して冒険しない様にと、だから7階層は危険だと言われたがベルは自分のステイタスが5~7階層の適正値(但しパーティー推奨)に達していて自分が学んだキシュラナ流剛剣
そうでなければ【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインさんに決して追い付けないと斬りかかるのだった。
斬! 5階層初挑戦の時のミノタウロス戦の様に踏み込み抜き胴を放つと前回と違い今度はその細い胴のつなぎ目を切り裂くベル。
斬られた事に気が付かず後ろに抜けたベルを探そうと振り返る時に胴が離れ遅れて落下したキラーアント。
それでもまだ切味が良すぎて生命力が残っているのを確認したベルは状況を理解していない隙に首を切り落とした。
その間一秒にも満たない時間であった。
「良しっ!」
7階層でも行けると手応えを感じ、エイナさんから教わった正規ルートを進む事にしたベル。
その後もキラーアントと何度か遭遇し危なげなく倒していくと今度は4階層より高くなった天井に【パープル・モス】が飛んでいた。
攻撃力が小さく耐久も弱いが上空に居るから、中後衛の
それに遅効性で弱くて気が付くのが遅れるけど毒鱗粉にも気を付けてね。
逆にランクアップした時には発展アビリティで耐異常を発現しやすくなる相手よ。
エイナの教育を思い出しながら「でも、僕には攻撃手段がある」と刀に気を込める。
「
鋭い剣筋と共に大気を切り裂き
バックパックが一杯となり一度戻る事を決意するベル。無理は厳禁と戒めるのだった。
20階層、ベルの上層と違う中層と呼ばれる階層にアイズが居た。
一閃、二閃、三閃。
襲ってくる蜻蛉型モンスター【ガン・リベルラ】を次々と斃し灰と化す。
片手剣程度の大きさでも複数が灰となると視界が悪くなりその陰から大型級の熊に似た【バグベアー】が待ち構えたが、そのまま手にしたレイピアで振り下ろされる腕を切り落とし間髪入れずに胸の中央部に突き刺すアイズ。
【ガン・リベルラ】同様に【バグベアー】も灰となる。これは魔石を取り出し時と同じ様に砕かれてもモンスターは灰となるのだ。
既にバックパックが一杯のアイズには魔石を持ち帰る余裕が無い為に態と砕きドロップアイテムだけを持ち帰る様にしていた。
ここ数日遠征帰りの後ティオナとの付き合いやベルとのベートの喧嘩を見た後の格闘技などの技について考えさせらていた為に【戦姫】と渾名されるくらいダンジョンに潜っていた彼女にしては長かった空白期間を取り戻す様に一人挑んでいた。
『使いにくい』
アイズは代剣のレイピアにそう思っていた。
愛剣のデスぺレートはサーベルタイプに対し刺突中心のレイピアは使い方も射程も重さも違う。
だが彼女の風魔法、エアリエルは防御に攻撃にそして武器に纏わせる
それは今回の遠征で下層に現れた新種。極彩色のモンスターとも言われる芋虫型とその上位種の女王タイプの腐食液を充満したモンスターを強引に切り捨てた彼女への武器を労われというゴブニュの無言の警告と受け取っていたからこそベルのサムライの技に興味を持っていたりもしていたのだ、そしてそれが今回のダンジョン挑戦の空白となって表れていたが結局は潜って試すしかないと脳筋思考となってしまった。
アイズにとってはソロで潜るのも慣れたものでこの20階層もバックパックが一杯で戻る途中であったのだ。
ダンジョンと言えばWiz。Wizの+1ソードと言えば「切り裂きの剣」ベルが命名しても当然ですね。
大森さんはダイ大やアバンストラッシュが好きなのに何故か斬撃を飛ばす技やスキルが無い。
キシュラナ流剛剣
単純な真空波にしては威力が有り過ぎるから気を上乗せしている事にしました。