ダンジョンで英雄を目指すのは間違っているのだろうか   作:おやしお

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15 ミアハ・ファミリア

 何回目かの往復で帰ろうかと思ったベルはダンジョンの出口にあるカーゴが揺れていてそこからモンスターの気配を感じ取り、疑問に思った所で周囲の冒険者の会話を拾い怪物祭(モンスターフィリア)という初めて聞く単語を疑問に思った所でアドバイザーのエイナさんを見かけ聞こうとしたが真剣な顔で書類を持っていて仕事中だったので今日は止めようと思ったのだ。

 7階層迄挑戦したのを知られて怒られるのも嫌と思ったわけではないよ。誰にも聞かれていないのにベルはそんな事を呟いてバベルを出るのであった。

 

「ありがとうございました」

 

 礼を言ってベルはギルド本部で換金した後外に出ると既に夕暮れになっていた。

 

「おお、ベルではないか!」

 

「あっ、神様こんにちは」

 

 北西のメインストリートを歩いていると男神に声を掛けられたのだった。

 

「ミアハ様は買い物ですか?」

 

 手に買い物袋を掲げた様子を見てそう問いかけるベル。

 

「主神自ら夕餉の買い出しだ。互いに零細ファミリアは辛いな」

 

 その様な事を言っても神様特有の人を越えた美貌と気品が卑しさを感じさせずむしろ気高く感じるのだ。

 実際はベルのヘスティア・ファミリア同様に眷属一人という弱小ファミリアでポーションを中心の治療系の商業ファミリアを運営していて資金不足の発足当初からヘスティアとの付き合いからベルも良くお世話になっていた。

 

「そうだ、ベルにはこれを渡して置こう。出来立ての新作ポーションだ」

 

 そう言って陽気に笑いながら二本の試験官入りのポーションを手渡す。

 

「えっ! 悪いですよ」

 

「何日頃お世話になっている近所の誼さ。これからも贔屓を頼むよ」

 

「ありがとうございます」

 

 そして太腿にあるレッグホルスターの空きにセットした時ベルは気が付かなかったがミアハのキラリと目が光り一瞬厳しい顔つきになっていたのだ。

 

「これからベル君はどうする?」

 

「7階層でドロップアイテムを獲得したので幾つかをミアハ様の所で買い取ってもらいたいと思って寄ろうとしていたのですけど迷惑ですか?」

 

「まさかそんな事は無いぞ。一緒に行こう」

 

 何故かミアハの方が積極的にベルを誘ってくるのだ。

 そうしてミアハ・ファミリアのホーム「青の薬舗」に着いたのだった。

 

「神様。それにベル…」

 

 唯一の眷属犬人(シアンスロープ)の女性であるナァーザが相変わらず眠そうな表情で対応してきた。

 

「ナァーザさん、毒消しを有り難う。7階層で早速使わせてもらいました。

 それでお礼と言っては何ですけどドロップアイテムを買って貰えないかと」

 

 そう言って差し出すのはパープル・モスとレアモンスターであるブルー・パピリオの翅をそれぞれ2枚見せたのだ。

 

「これはっ!」

 

 何時もは半眼のナァーザも目を見開いて驚いていた。ベルの横にいるミアハも同じ様に驚いている。

 オラリオの冒険者の半数近くが下級(LV.1)冒険者の為に上層のモンスターは狩りの対象として多く狙われる為にドロップアイテムもそれだけ多いが、ブルー・パピリオは数が少なくドロップアイテムも出現し辛いからそれなりに高価な物であった。

 ベル自身他に1枚があってそれをギルドで換金したからどれだけ高価が把握していたが、普段から世話になり今日の様に無償で新作を貰っているので恩返しを兼ねて売ろうとしたのだ。

 

「現金は手持ちが少ないからポーションで良いかな?」

 

「ええ、それで充分です」

 

 ナァーザの問いに快諾し10本ものポーションを取り出されたのを見て、普段は1本500ヴァレスのポーションだから計5,000ヴァレスとギルドでの換金で1枚1800ヴァレスだったからパープル・モスの分を含めても充分以上に高値買取になってむしろベルが恐縮しようとした時にミアハが待ったをかけた。

 

「ナァーザ、私の眼は誤魔化されないよ」

 

 普段と違う厳しい声にベルはエッとした顔を向け彼女は冷汗をダラダラと流したのだった。

 

「ポーションを薄めて特有の甘味も調味料で誤魔化しているな! 零能の私でも純粋な技術ではまだまだ負けはしない。先ほどベル君のポーションを見て疑惑を感じたが改めて確認をしたが効能は半分以下、200ヴァリスもしない代物をどうして騙すようなことをして売っていたんだ」

 

 試験管から一滴手の甲に垂らして直ぐさま見破るのは流石治療系の主神と言った所か。

 それ以前に夕暮れの中の試験管のポーションを見て違和感を覚える方が凄いのか。

 

「彼は技術が有り上層の4階層迄なら重傷も避けれるだろうがこれから7階層以降を挑むのならポーションの効能が文字通り命取りになる事が判らないのか!」

 

 それに対する反論は、ミアハのその八方美人で無償配布のポーションで財政が火の車や勘違いをする女性への尻拭いに苦労をしていると不満をぶつけるのだった。

 そしてベルも初めて知ったがナァーザがダンジョンでモンスターに全身を砕かられ更に右腕を食われ右腕だけは治らなかったと。

 そこで治療の施術とアイテムの販売を行っているライバル関係でもあるディアンケヒトの所に頭を下げて義手を作って貰ったのだと。

 左右不対象のの衣服から袖をめくり右腕をベルに見せるナァーザ。

 そこに滑らかな銀の腕が有った、関節部分は宝石で内部が見える。更に手袋を外すと指先まで銀色の光沢で出来た義手が顕わになった。

 この義手の所為でファミリアが莫大な借金を背負いかつては中堅どころとしてディアンケヒト・ファミリアに匹敵する力を持っていたのに団員が皆去り、この様に零落れているのだと。

 すべてが自分の所為だと語る彼女に自分は後悔していないとミアハは言うがそれでも彼女の涙は止まらなかった。

 

「あぁ、悪いが今日はもう遅いから明日、いや明日はフィリア祭があるか。明後日にはヘスティアと一緒に来てくれるかな?こちらから謝罪に行くのが筋だが店を空ける事も出来ないからもう一度謝罪を行いたいと伝えて欲しい」

 

「分かりました。今日は神様は居ないので明日連絡してみます」

 

 そう言ってベルは「青の薬舗」を後にするのだった。

 

 たった一度の失敗で冒険者として活躍出来なくなる。例えアイテムで喪われた四肢が戻っても生きながら食われる恐怖で二度とモンスターと戦えなくなったり、その借金で眷属が主神を見限ってしまう事があると言う事を初めて知ったベルには衝撃的であった。

 

 もしも、自分があの時ミノタウロスに負けていたら彼女の様にダンジョンに挑めなくなったのか? それ以前に生き残れたのだろうか?と実戦では封印しているが剛剣()をより練り込んであのような事は二度と起きない様にしなければと決意を固めたのだった。

 

 

 一方アイズは20階層からの帰還途中にベルも見たコンテナとそれを運ぶ冒険者(象の面のエンブレム)=ガネーシャファミリアを見かけ明日は怪物祭(モンスターフィリア)があるのかと今更のように思い出して邪魔にならない様に別ルートから地上を目指したのだった。

 黄昏の館に着いた時は既に夜も遅くなっていたが、門番に礼を言って入った後は無駄に警戒をしてこそこそと私室に向かったが結局部屋の前で待ち構えていたリヴェリアに見つかりもっと身体を労われと短い説教を受けたのだった。

 

「なんだアイズたん今日もダンジョンに向かったのか。うちに心配を掛けた罰だ、明日はフィリア祭に朝から一緒にデートや」

 

 宴から戻ってから難しい顔をしていたが「アイズたんとデート」とロキの久しぶりの笑顔に愛剣の引き取りに行こうと思ったが延期を決意したのだった。




 クエスト×クエストのフラグが早く立ちました。
 ロキもヘスティアにガネーシャの所で敗れていないので酔いつぶれてはいませんでした。

 それでは良いお年を
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