ダンジョンで英雄を目指すのは間違っているのだろうか   作:おやしお

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04 キャッチには気を付けよう

 アイズ・ヴァレンシュタインと出会った次の日。

 ベルは何時もの様に朝の5時に目覚め中庭で素振りと左武頼(さぶらい)として剣術以外に白兵戦としての突き蹴りなどの型を繰り返して身体を動かして温めてからヘスティアへの朝食の準備を行って、その時に作ったサンドイッチを摘まんでバベルに向かったのだ。

 

「お腹が空いたな」

 

 バベルまで朝の素振りと同じく身体を温める為にも軽く走っていたのだが、昨日神様にも言ったが無理をしてギルドに頭金だけで借金をして買った刀もベルの力とミノタウロスの攻撃に耐えきれず近いうちに買い替える必要があるから節約をしなければと食事を減らしたのが不味かった様だ。

 

 ゾクッ!

 

 ベルの背筋に嫌な感触が走った。

 殺気とか敵意ではないがまるで値踏みをする様な人を観る目では無い無遠慮な視線。それでいて視線の方向が探れない。

 通りの中央で思わず周囲を見渡すベルだが怪しい存在は居ない。

 朝のまだ目覚め前の商店街。開店準備に忙しい従業員にベルと同じ様にバベルのダンジョンに向かう少数の冒険者が居るだけだ。

 それでもまだ視線を感じるのだ。

 

「あの~」

 

 そんな警戒をしていると突然背後から声を掛けられ思わず振り返るとヒューマンの少女がいた。

 薄鈍色の髪をお団子に後頭部でまとめてポニーテールの様に一本垂らしている、髪と同色の瞳は純真で、身のこなしも素人で神の恩恵(ファルナ)を授かった身体能力でも無い一般人であった。

 

「え、え~と何か御用でも?」

 

 警戒したところに突然の声で身構えて振り返ったのを誤魔化す為に出来るだけ自然に声を出していた。

 

「はい、これ落としましたよ」

 

 彼女が差し出したのは魔石(欠片)だった。

 いや、昨日換金で全てバックバックから出したはずだし間違いでは無いだろうか?

 そんな疑問を浮かべるも一般人が魔石を持っている訳が無いし上層部のゴブリン、コボルト程度の大きさなら自分が落としたのだろうと無理矢理納得して受け取り会話を交わしていると、グゥと腹の虫が鳴ってしまい顔を赤らめるベルであった。

 

「もしかして朝食を食べていなかったんです?」

 

「一応は食べたんですけど」

 

「冒険者ですから食欲が有りますね、少し待ってください」

 

 そのまま、身を翻して目の前のお店に駆け込む少女を見送るベル。

 

「はい、これ」

 

 バスケットをベルに渡す少女。

 

「まだ店が始まっていないから賄いでもないですけど」

 

「それはあなたの朝食では?」

 

 そのようなものを受け取れないと遠慮するベルに「このままでは良心が咎めます」口説き落とす少女が更に説得としてそれならば今晩この店に来てくれたら給金アップになりますからと渡すと同時に来店を約束させられて、苦笑いと共に承諾してしまったのだ。

 

「そう言えば僕はベル・クラネルと言います。あなたは?」

 

「シル・フローヴァです。ベルさん」

 

 にっこりと無害な笑顔と共に答えるシル。気が付くとあの不快な視線も無くなっていた。

 

 

 

「ギャッ」

 

 ダンジョンに徘徊するニードルラビットを一撃で切り倒すベル。

 喉を切り裂き刀の負担も減らすと同時に確実に止めを刺し刃渡り20C(セルチ)程度の短刀で魔石を取り出すのだ。

 取り出されたモンスターは灰となって死体も残さず消えていく。

 背中の刀の斜めに担いだ隙間の腰の部分に固定しているバックパックに魔石を入れている。

 通路は今迄慣れていた4階層までの所から比べ細く壁面も薄青色から淡い緑になっている。

 今斃したニードルラビットも今迄のゴブリンより個体として強い上に集団で襲い掛かる事もあるのだ、決して油断できる相手ではない。。

 4階層から昨日挫折した5階層を再挑戦していたのだ。

 5階層から新しく出るモンスター「フロッグ・シューター」蛙タイプで長い舌や跳躍力からの体当たりを攻撃手段としてその接近速度からも今迄と比較して間合いが広がっているのだ。

 蛙だからと柔らかい外皮と油断するとその柔軟な外皮で刃が通らず逆襲される恐れもある強敵だ。

 更に長い舌からの攻撃を躱し損ねて打撃を受けたり、体当たりを掠ったりと今までの様に余裕で躱す事も難しかったのだ。

 だからこそあの時のアイズさんの様な神速の切り込みの練習相手に丁度良いとベルは積極的に狩っていく。

 モンスターの中で異常発達した部位が魔石を取った後にも残る事がある。「ドロップアイテム」でこれも換金対象でありゴブリンなどなら指の爪先程度の魔石の欠片よりもまだ高く換金できるのだ。

 フロッグ・シューターの舌や外皮、ニードルラビットの角などが今日は出て来た。

 

「今日はこれ位か」

 

 何度か地上と往復をして魔石などを換金していたがエイナさんも言っていたように「冒険者は冒険をしない」「ダンジョンでは無理をしない」を守って疲労がたまる前に帰還する事にしたのだ。

 尤も5階層を挑戦していたと聞いたら目を吊り上げて怒っていたであろう事は無視して置く。

 実際5~7階層での必要能力値はGからFで剛剣()術を学び敏捷がGに近いと言っても全てがH以下のベルには適正値とは言えないのだ。

 

 

「神様、これ書き間違いなん……じゃ」

 

 ホームに戻りステイタスの更新を行っているとみるみる機嫌が悪くなっていくヘスティアに恐る恐る聞いてみる。

 

「ボクがそんな簡単な文字を間違えるとも?」

 

「でもこの数値の伸びはちょっと」

 

 LV.1

 力  I99 →H144

 耐久 I48 →I98

 器用 H112→H168

 敏捷 H190→G258

 魔力 I0

 

 魔法【】

 スキル【】

 

「確かに今日はフロッグ・シューターの攻撃を受けましたけれど耐久の熟練度が倍になっていますし、他もこの半月の半分位の伸びですけど」

 

 ベルが言う様にトータルの上昇値が199という昨日の65も大きいのにそれから3倍近い数値はどれだけの大きさか判るだろう。

 

「知るもんか。そんな事よりボクはバイト仲間と打ち上げがあるから、君も一人寂しく豪勢な食事をしたら良いよ」

 

 4階層迄の今迄は2,000ヴァリス程度の換金額だったが今日は外食と長く頑張ったのと5階層初挑戦もあって5,800ヴァリスと過去最高額を出していたのだ。

 今後もこれ位を頑張れば刀は無理でも小太刀くらいは買えるかもしれない。そんな事も言った時は喜んでくれたのにと。

 

 そのままコートを羽織り外に出たヘスティアは憧憬一途(リアリス・フリーゼ)】の効果をまざまざと見せられてベルのアイズへの想いを見せ付けられた気がして飛び出したのだ。

 打ち上げでは同じ零細貧乏神仲間の武神「タケミカヅチ」普段はタケと呼んでいるファミリア運営の先輩に眷属(こども)の成長の傾向などを聞くと言う目的もあったのだがヴァレン何某への嫉妬の方が大きかった。

 面倒な処女神である。




 色々と8年の剣術修行でステイタスも原作より向上しています。
 そして安物の刀にも寿命の危機が。
 ギルドの装備はどうしても初心者パックですからね。
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