ダンジョンで英雄を目指すのは間違っているのだろうか 作:おやしお
【ロキ・ファミリア】ホーム黄昏の館。その一室に昨日遠征から帰ったアイズが夢を見ていた。
幼い頃のアイズが無垢な笑顔を向け同じく金髪の女性に本の続きをせがむ。
眠り姫の物語はやがて終わる。
そして『あなたも素敵な
場面が切り替わり地下迷宮。
襲われる少女に怪物に銀の光が走った。
そして現れたのは若い青年だった。
本日の最後のミノタウロスを仕留めた時の再現の様なシーンだった。
そして抱き付く少女にぎこちなく髪を撫ぜる青年。
少女の視線に合わせる様に跪くと語りかけた。
『私にはお前の母親が居るから、いつかお前だけの英雄に巡り合えるといいな』
その言葉を最後に光景が遠ざかっていくと、突如白い髪に印象的な
朝日に目が覚めるアイズは、懐かしい夢を見たが何故か異物が混じっていた様な気がしたがそれでも安らぎを覚えていて口元が微笑んでいた。
「アイズー? もう朝食だよー」
ティオナが扉の向こうから呼んできている。
いつもなら、朝の素振りを行っているのに寝過ごしていた様だ。
朝食後はアイズたちファミリア総出で遠征の後処理だ。
ダンジョンから持ち帰った魔石やドロップアイテム、下層、深層の壁面から採れるレアメタルや素材などの売却。
消耗した武具やアイテムの補充。
そして個人の損傷したり失った武具の整備や補充と言った次の探索迄に必要な事が山積みである。
バベル迄は荷物も多く全員で向かい、そこで団長のフィンの合図で目的地に沿って各自別れて行った。
光ある所闇がある。彼ら遠征の成果を持って明るい表情で歩む様子を忌々し気に物陰から睨む複数の視線。
‐喜んでいるのは今だけだ、もうじき慌てふためくだろう‐
‐期待はしていなかったが深層で死者が全く出なかった様だな-
普段の嫉妬と呼ぶのには悍ましい悪意の視線今後それがどうなるのか?
アイズはアマゾネスの双子の姉ティオネ・ヒュルテをリーダーに妹のティオナとエルフの魔導士レフィーヤと共に商業街に向かっていくのだ。
昨日アイズが助けた少年は既にバベルからダンジョンに入っており彼らロキファミリアと接触は無かったのだ。
商業系ファミリアで治療と製薬のファミリア光玉と薬草のエンブレムの【ディアンケヒト・ファミリア】に彼女らは入るのだった。
ダンジョンから入手する素材。モンスターから取れる魔石やドロップアイテム。ダンジョンに生えている植物や鉱石などの自然素材様々な物が有るが、魔石製品として魔力灯や発火装置、冷房装置などの様々な動力となる魔石はギルドの管理下で引き取られるが、それ以外の物は商業系ファミリアや大手商人と個人的取引も可能である。
尤もベルのような新人が取引で冒険しようとしたら大抵は鴨にされて大損をするので最低価格が保障されているギルドで換金すべきである。
そしてアイズたちだが今回は【ディアンケヒト・ファミリア】に
白い建物に入ると同じく白を基調としたファミリアの制服を着たヒューマンの女性が出迎えたのだ。
ヘスティアほどではないが150
その容姿から幼く見えてティオネなどから妹扱いをされているが、彼女はそれでも19歳でありファミリアの団長でもあったのだ。
レベルこそ2と低いがその治療魔法と神秘の発展アビリティによる治療薬などの開発能力は他の追随を許さず神々からも人気の女性であった。
ここはベルが懇意にしている、ヘスティア曰く零細同盟の【ミアハ・ファミリア】のポーションよりも遥かに高額であった。
彼女たちがやってきたのはただ挨拶に来たのではなく
更に51階層でのクエストの時についでに棚ボタで入手した素材も売り込もうとティオネが想い人であるフィン団長に良く見せようと吹っ掛けていたのだ。
ドロップアイテムその物は棚ボタだが遠征失敗の原因である新種にラウルやティオネが溶解液を被って
彼女はそんな事を関係無しにこれでフィンに喜んでもらえるとご機嫌で商談は終わった。
お人好しのベルでは無理だ、素直にギルドに売りに行こう。アイズも単独では止めようね。
こうしてクエストの報酬である
北と北西のメインストリートに挟まれた路地裏深くにある知る人ぞ知ると言うよりも陰湿な雰囲気の【ゴブニュ・ファミリア】の
武具や装備品の整備製造の鍛冶の派閥。
規模こそ小さいが性能はベルも憧れる【ヘファイストス・ファミリア】に勝るとも劣らない質実剛健のファミリア。
基本受注生産が多くそれを好む冒険者も多いのだ。
その作風に相応しい質素な建物に三つの槌のエンブレムが刻まれている。エンブレムの横の扉を開けて二人は入っていく。
「ごめんくださーい」
「ください……」
二人の性格の違いが良く判る挨拶に作業中の団員が振り返り。
「【
「げっ、ティオナ・ヒュリテ!」
「二つ名で叫ぶの止めて欲しいんだけど」
彼らの反応に文句を言うティオナを無視して「親方ァー!
出てきた親方に要件を聞かれたティオネは可愛く笑いながら「新しい武器を作って貰いに来たけど」と言ったら。
「ウ、
中央の柄の両端に巨大な刃を備えティオナの身長に近い巨大な武器。
その重量と素材のコストからも破格の
「溶けちゃった」
テヘッと再び可愛く言ったがその言葉に親方は絶叫を上げる。
「
ようやく落ち着いてティオナに状況を聞く親方。
「それが、51階層で新種のモンスターが現れて切ったら体液が腐食液で拭う前にあっさりと溶けたの」
「何?それなら次のウルガは
鍛冶師にとって自ら鍛えた得物を簡単に破壊するモンスターの存在は例え使用者が
「切れ味が落ちるから属性は付けなくて良いわ、それに高くなり過ぎるし」
「それなら……」
ティアナたちの会話を横に聞きながらとことこと奥に歩いていくアイズ。
向かう先は奥にある部屋だ。
そこに居るのは小柄で割腹は良くても弛んでいない筋肉を持ち、白髪と口元を隠す白髭とドワーフを思わす姿の一柱の男神。
ここのファミリアの主神ゴブニュだ。
アイズの注文は必ず主神を通す事になっているのだ。
ゴブニュがアイズを気に入ったのか、共に不器用な性格で気になっているのか、それとも通常の第一級装備だとアイズの剣技に耐えられず
整備を依頼したアイズから受け取ったデスペートを見て劣化した理由を問い、「なんでも溶かす液と、それを吐くモンスターを幾度も」と答える。
その結果、ティオネのウルガだけでなく予備武器などを失い遠征中止となったのだがそこまでの説明はしていない。
そして五日後まで整備が掛かると代剣をゴブニュは押し付けた。
細身のレイピアは威力その物は上だが軽く素振りをして確認するが間合いも重さも違い、何よりも丁寧に扱わないとアイズでは破壊してしまう。
これは
その様な疑問を持ちながらもアイズは礼を言って受け取り部屋を辞する。
「アイズー、話し終わった?」
出て来たアイズに発注の終わったティオネは声をかけてホームに戻ろうと言ってきた。
その様な二人を遠目で見ていた
彼女はここで購入したクロスボウの専用の
アイズたちはこうして遠征後の資源の売却、失った消耗品などの補充などギルドの報告者を除き一先ず後始末を終えて遠征後の恒例の宴会を行う準備完了したのだ。
ベル君キャッチに引っ掛かって一生懸命稼いでいた時の裏です。
ロキ・ファミリアは二大派閥と言われるだけあって団員数一人のヘスティアと全く違いますね。