ダンジョンで英雄を目指すのは間違っているのだろうか 作:おやしお
ギルド本部事務室
「雨が降って来た」
夜の九時を過ぎた頃ギルド職員の多くが祭りの準備に追われ残業を行っている所でベルを担当するエイナも残っていて窓の外を見て呟いていた。
「エイナ~助けて~」
同僚で同期のミィシャが書類整理に音を上げていた。
小柄でピンクの髪をしたヒューマンの彼女はエイナの友人でもあり色々と仕事のフォローをしたりしてエイナにとっては手の掛かる妹のようでもあった。
「エイナはもう祭りの書類は終わったんだ」
書類仕事に飽きたのかエイナの書きかけの書類を覗き込んでその様な事を言ってきた。
「班長から担当の新しい情報が欲しいと言われて纏めているんだけどね」
「エイナの担当って
頭上に手の平で兎の耳の様な格好をして聞いてくる。そして書類を持ち上げて。
「ソロで半月でもう5階層って凄いじゃない」
「昨日も5階層で死に掛かったのに今日も又忠告を無視して潜っているのよ」
「でも昨日のはロキ・ファミリアが討ち漏らしたミノタウロスが登って行った事故でしょう」
「それでも、5階層からは構造も出現するモンスターも変わって来て危険なのに無謀すぎるよ」
「随分と過保護だね~、一応オラリオに来る前にも訓練はしていたんでしょ」
「あくまでも一般人の訓練だから、それに過保護とかそんな事無いわよ、危険なのは間違いないから。それと冒険者の情報は秘密だからね」
ミィシャの言葉に反論するが説得力は無くて強引に話を終わらせたのだ。
翌朝ヘスティアファミリアのホーム
「今からバイトに行くけど、昨夜の喧嘩の分のステイタスを更新するよ」
朝の素振りを終えてダンジョンに向かう前にヘスティアが声を掛けて来たのだ。
そして。
LV.1
力 H144→G228
耐久 I98 →H192
器用 H168→G243
敏捷 G258→F334
魔力 I0
魔法【】
スキル【】(【
・早熟する
・
・
ステイタスの上昇値がトータル329!?ダンジョンに潜った昨夜の更新よりも上昇値が大きいというよりも記録更新も良いところだろう。
ヘスティアは【
「ベル君、昨日喧嘩したと言っていたけれど誰としたのか教えてくれないかな~」
腹の底からゴゴゴという擬音が聞こえる位の暗い声で問い質し漸く口を開いたら。
「ロキファミリアの第一級冒険者の
思わず大声を上げそれでボコボコにされたら、そして憧憬のアイズの目の前で遣り合っていたのなら、これだけの上昇もあり得ると納得したが。
「君は~、ロキファミリアと抗争をしたいのか?というか噂に聞く
溜息を吐きながら「今後無茶をしないでね」と言いながらステイタスを紙に書かずに口頭で終わらせたのだ。
そしてその上昇値に改めて無謀な挑戦をしたと理解して顔を引きつらせるベル。
だがそれでもこれなら6階層も挑戦できると奮い立ったのだ。
そうやって謎のやる気に満ちたベルを見送って食事と食器洗いを済ませてバイト先のジャが丸くんの屋台へと向かうヘスティアであった。
そこでは昨夜も一緒に飲んだ
店主から屋台の売り上げでヘスティアに負けていると叱咤されて頭を下げる姿に神の威厳は無い。
ヘスティアと違って眷属も複数いて
昼前には「やはりマスコットキャラの有無の違いか?」と売り上げに悩んでいるタケミカヅチを他所にヘスティアの所に新たな客が現れていた。
「小豆クリーム抹茶味と新作を一つづつ」
「アイズはチャレンジャーだねえ、わたしはバター味を二つ」
昨夜の飲み会から回復したアイズを誘って街に繰り出したティオネが小腹が空いたと屋台に向かった先がアイズのお気に入りの屋台であった。
『げっ、ヴァレン何某』
先日のスキル発現以来意識している少女を見たがそれでも客だと無理に笑顔で接客をして揚げ始めるヘスティア。
「おっ、居た居た~」
そんなヘスティアを無視して彼女の天敵とも言えるロキがベートとフィンを連れてやってきた。
ロキが出かける時にベートを無理矢理引っ張り出してそれを見たフィンも親指は疼かないが気になると一緒になったのだった。
「タケっちも久しぶりだな」
売り上げに悩むタケミカヅチにロキは絡んでいたのだ。
「ちょっと教えて欲しいんだけど良いかな?」
「こっちはバイトで忙しいんだが」
ロキに対して貧乏ファミリアを揶揄いに来たと不機嫌に応えるタケミカヅチ。
「そう言わんと、じゃが丸くんもまとめて買うから」
色々と説得してロキは
「極東出身の武神に聞くのが一番だからや、それで今はどれだけ活躍してんのや」
「侍か」
難しい顔をしてタケミカヅチが説明する事によると古代から
「どうしても
と言ってロキに己の襟元を掴ませれれば、軽く力を入れずに地面に押し付けた。
それを見て「胡散臭い」とベートが挑戦し同じく抵抗も出来なかったのを見て離れた所に居たアイズとティオナも寄って来ていた。
「この様にデミ・ヒューマンの骨格も筋肉の付き方もヒューマンと同じだからてこの原理や動きの初動を抑えると力が無くても取り押さえる事が出来る」
今ならガネーシャの様な治安維持向けだなと続け空気投げと言う相手の力を受け流して崩す技が有るがロキの言う合気がそれだろうとベート相手に実践して見せた。
「今でも型ではなく実際に使いこなし第一級冒険者に決める使い手が居るとは知らなかったよ」
短い攻防でもその集中力で汗だくになったタケミカヅチは言った。
「冒険者の恩恵からのスキルではなく、鍛え上げた
ベルの実力の一端をロキは理解したが説明を聞きその身で体感したファミリアの面々も近いうちに彼が有名になるだろうと、そしてベートが投げ飛ばされたのも決して不名誉ではなく賞賛すべきことだと。
「尤も冒険者としてはリザードマンの様に尻尾と言う攻撃手段兼バランサーがある相手やスケルトンみたいな筋肉の代わりに魔力で身体を動かしている相手には効果が薄いし、人型以外のモンスターには剣術の方が有効だから衰退しているのも仕方がないんだ」
そう言って自らが汗だらけで店主に怒られると焦る彼に着替えてからじゃが丸くんをお好みセットを10箱買うから安心せやとロキはフォローしたのだ。
結局お好みセット10箱の他に後から来たアイズの無言の圧力で新作セット5箱も追加で購入したのであった。
「後は、これは情報料や、自分の所で新しくランクアップした
最後に余分な金を情報量として払ってホームに戻るロキ達であった。
「つまり、あの坊主は相手の動きを理解して操作が出来ると言う事は、自らの動きも完璧に制御できるちゅう訳や。
その内に活躍する噂が聞こえて来るやろな。どうだベート自分が嫌っているLV.1で満足している雑魚ではなさそうだぞ」
ロキの言葉にジャが丸の箱を持たされたベートは鼻を鳴らしていただけであった。
ギルドも昼頃で暇になっていた頃にミィシャがエイナ元にに駆け込んできた。
「聞いた? エイナの担当の子、ロキ・ファミリアのベートと喧嘩したんだって!」
「なんですって!」
駆けて来たミィシャを注意しようとしたらそれ以上の驚愕に思わず大声を出すエイナ。
ゴホンと咳払いをして問い質すと、白髪の少年冒険者が昨夜酒場で一発殴ったらそのまま逆襲でボコボコにされたと冒険者たちが噂していたのとの事だった。
これは今日の報告に来た時に問い質して厳重注意をしなければと怒っていたのだった。
それを見たミィシャはベル君は今日ギルドから説教で帰れないと同情したのであった。
原作だと寝込んでいたベル君は元気にダンジョンに。
喧嘩をした余波で名前が不明でも無謀な兎と冒険者たちに存在を知られたようです。