「そしたら博士が俺に赤は似合わないって言うんだよ~ひどくない~?」
「は、ははは、そうですね~」
ヤマモト隊員から自己紹介をされた後、ポケサンカンパニーでゴルゴ所長たちと知り合ったことを話すと、それを皮切りに話が弾みお互いに打ち解けることができた。
途中までは普通の会話だったのだが、いつの間にかポケサンカンパニーの同僚や仕事に対する不満の話に変わり、ヤマモト隊員の愚痴を聞く流れになってしまった。
「大体、調査部でまともに仕事してるのルカリオ部長以外で俺だけじゃん!ババは最近ポフィンハウスに入り浸ってるし、アキヤマは基本的にサボるしで、まじめに調査してるの俺だけじゃん!」
話を聞いてわかったが、この人も苦労しているらしい。
「所長も所長だよ!伝説のポケモンについてもそうだけど、シンオウ地方に大昔生息していたポケモンの調査ってなんだよ~!ナナカマド博士からの依頼だからって安請け合いし過ぎなんだよ!この前だって――――」
「そ、そういえばここ地下なのに明るいですね!?ポケモンたちも活き活きしてますし本当に地下とは思えない!!」
これ以上愚痴を聞くのも辛かったので無理やり話題を変えようと大声で話しかける。
「ん?あぁ、ここは、最近地下に現れた空洞の1つだね」
「空洞?それに最近現れたって…」
「元々、ここ地下大洞窟はシンオウ地方の地面の下にある発掘家の理想郷だったんだ。でも、理由はわからないけど最近大洞窟そのものの形が変わってしまって、おまけにここみたいな空洞がいくつも現れたんだ。空洞内がなぜ明るいのか、ここのポケモンたちはどうやって生活しているのかとか、まだ謎の多い空間なんだ。研究者の間では、ディグダの巣穴説や地底国説、アローラではウルトラホールの先の世界説なんかがあるね」
ヤマモト隊員がこの空洞について説明してくれた。
うーん、世界には謎が多いっていうけど、ここまでよくわかっていないと逆に未知への恐怖がふわふわっとしたものになる気がする。
それにしても、探検家のおじさんが怒っていた理由がわかった気がする。
地下の地形が変わってしまって以前のような探索もできない、おまけに野生のポケモンも出現するとくれば、ポケモンバトルの心得も必要になり、以前より求められることが多くなる。以前からできたことが突然できなくなる。
これ程イラつくこともあまりないだろう。
「うーん、突然現れた人知を超えるものだったから伝説のポケモン関係だと思ったんだけど、周りの様子を見る限りこれは的外れだったかな…?そういえば、コウキ君はなんでここに?」
「あ、僕はですね――――
ここに来た経緯を説明しようとすると、奥の方からポケモンたちの悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。
「!? い、今のって…!?」
「…どうやら、この先で何かが起こったみたいだね。叫び声が複数聞こえたし、何かの異変が大勢のポケモンを害したのか?」
突然のことで動揺する僕とは裏腹に冷静に状況を分析するヤマモト隊員。
その顔は、先ほどまで仕事の愚痴を言っていたしょぼくれた顔ではなく、試合に挑むスポーツ選手のような鋭い顔をしていた。
「…この辺のポケモンはカラナクシやコダックみたいな、動きが鈍めのポケモンが多い。もし危険なことが起きていて、逃げ遅れたポケモンがいたら大変だ。俺が様子を見てくるから、コウキ君は空洞から脱出してほしい。ここも危ないかもしれないから」
ヤマモト隊員が鳴き声のした方向を見つめながら、僕に逃げるように言ってきた。
「…いえ、僕にも行かせてください!」
「…ここから先は何があるかわからないんだ。俺でも対処できるかわからない。そんな危険な場所に子どもの君を連れていくことはできないよ」
「いざとなったら、あなぬけのひもを使って脱出します!それに、この先で多くのポケモンたちが危ない目に合ってるならそれを放っておくことはしたくないんです!!」
“人間とポケモン。同じ世界に住んでいるなら仲良くしたほうが楽しい”
ゴルゴ所長が言っていた言葉だ。
うまく言えないが、僕はこの言葉は世の真理だと思う。
同じ世界に生まれたのなら、お互いに仲良くしたほうが絶対に良い方向に進みと思う。
そして、仲良くするということは、お互いに助け合い、共に前に進み続けることでもあると思うのだ。
「…わかったよ。ただし、危なくなったらすぐに脱出してほしい。俺もなるべく君を守るよう立ち回るけど、守り切れるかわからないから……」
「はい!でも、自分の身は自分で守りますからお構いなく!!」
その言葉を最後に、僕たちは奥へ奥へと走っていく。
「…ほんと、若いトレーナーって期待したくなるよなぁ」
ヤマモト隊員のつぶやきは、コウキには聞こえなかった。
奥の方に進んでいくにつれ、叫び声も近くなり、傷つきながらも逃げているポケモンとすれ違うことも多くなってきた。
どうやら、異変が近くなってきたらしい。
「コウキ君、モンスターボールをいつでも出せるように準備しておいて。何が来ても対処できるように」
「はい!」
僕たちはボールを片手に持ち、準備する。
その直後、何か人型の影とその隣にのっぺりとした影が歩いてくるのが見えた。
「フフ…いいよぉ、ヨーちゃん。その調子でどんどん行こうか…」
「ヨ~…」
見えてきた影の正体は、太った体に満面の笑みを浮かべながらのっそりと歩いてくる男と、その隣を歩くずんぐりむっくりとした灰色の体に、身体から少し離れて浮いている2本の手、赤い一つ目が特徴的なポケモン―――サマヨールであった。
サマヨールは手から黒いエネルギー弾、“シャドーボール”を無差別に放ちながら進んでいる。
男の髪型は普通だが、服装をよく見ると例のあいつら、おかっぱ集団と同じような格好をしていた・・・!
「おい!やめるんだ!!」
「ん~~? 誰だ~?」
ヤマモト隊員が叫び、太った男も僕たちに気づいたらしく歩みを止め、サマヨールも攻撃を止める。
「何があったのか知らないけど、ここで暴れるのはやめるんだ!!」
「うるさいなぁ…僕達ギンガ団に歯向かわないほうがいいよぉ。じゃないと痛い目にあってもらうよぉ~」
ギンガ団…?それがあのおかっぱ達の総称なのだろうか・・?
「ギンガ団?…あぁ、お前が所長の言ってた危ない集団か。放っておくわけにもいかないし、ジュンサーさんに引き渡してやる!」
「プフ…それはできないよぉ。せっかくここのポケモンたちを根こそぎ捕まえて、ギンガ団の戦力アップ。そして僕らは特別ボーナスをもらう算段なんだから…よし、痛い目決定~! 行くよ~ヨーちゃ~ん!」
「ヨー…!」
ヨーちゃんと呼ばれたサマヨールが1歩前に出る。
気の抜けるとぼけた鳴き声だが、先ほどよりも眼を鋭くさせ、こちらをにらみつけている。
「そう簡単にやらせないぞ!モウカザル!GO!!」
「頼んだよ、ペロディン」
僕はモウカザルを、ヤマモト隊員は立派な髭を生やしスプーンを両手に持つ、フーディンを繰り出した。
「コウキ君、モウカザルは接近戦と遠距離戦、どっちが得意?」
「どちらもいけますが、しいて言うなら接近戦です。ただ…サマヨールにはかくとう技効きませんから実質持ち札は“かえんぐるま”だけです。」
「充分だよ。俺が隙を作るから懐に飛び込んじゃって」
小声で話す僕達。緊張感が僕たちの間に走る。
一瞬即発の空気。先に沈黙を破ったのは――――
「モウカザル!かえんぐるまで突っ込め!!」
僕とモウカザルであった!
炎を纏いながら突進するモウカザル。それを狙ってサマヨールがシャドーボールを打ってきた。モウカザルがシャドーボールに激突する―――と思われたその瞬間
「ペロディン、相殺して」
ヤマモト隊員のフーディンがサマヨールと同じ技、“シャドーボール”を放つ。モウカザルに当たる前に2つのシャドーボールがぶつかり合い、土煙が舞う。土煙で周りが見えなくなる。
何とか状況を掴もうと目を凝らすサマヨール。その目の前に、突然炎の塊――――モウカザルが躍り出る。
「ヨッ!?」
サマヨールは突然の出来事に防御が間に合わず、正面から攻撃を受け、その勢いで後ろに押される。
サマヨールもタダではやられまいとモウカザルに手を伸ばしてくるが、しっぽを使い、巧みに手を振り払う。
「よし!いいぞ、モウカザル!」
モウカザルを僕の近くに戻し、相手との距離をとる。
「フフ…やるじゃないかぁ~驚いちゃったよ~」
太った男は、自分のポケモンがダメージを受けたのに余裕そうな笑みを浮かべている。
「…コウキ君、あの男何か企んでるっぽいよ。警戒して」
「はい…!」
油断せずに、男とサマヨールの動きに目を見張る僕達。すると突然、男が右手を振り上げ
「でも~本番はここからだよぉ!!」
男が右手を振り下ろし、地面に何かを叩きつける。
すると突然、太った男とサマヨールを白い煙が覆った。
・ペロディン(フーディン)
山本隊員がポケスマ四天王時代に使用したポケモン。
使用する技はシャドーボール等。
・ポケサンメンバーの強さについて
ストーリー上、チャンピオンより強くなられたらバランス崩壊するので全員少しだけ弱体化+伝説のポケモン未所持設定。
てかガチでやったら山本さん1人でいいんじゃないかな状態になる…
・地下の空洞
BDSPより追加された新要素。なぜ地下でポケモンたちが生活できるのか、なぜあんなに明るいのかは不明。シロガネ山
時代が違ったらシロガネ山のレッドさんのごとく死亡説が流れると思われる。
正月休みで時間が取れたのと高評価されたのが嬉しすぎたので更新。
最近、他の作品にも手を出したい欲が出てきましたがこっちが厳かになりそうで迷てます。複数の作品を更新続けている作者様すごいと思います。
ここまでご拝読ありがとうございました