「い、いったい何が!?」
「コウキ君!慌てないで集中するんだ!!」
突然、白い煙に包まれた太った男とサマヨール。僕は一瞬動揺しそうになったが、ヤマモト隊員の言葉で集中力を保つ。何が起こっても対処できるように警戒を続ける僕達。
段々、煙が晴れてくる。緊張からか頬に一筋の汗が流れる。煙が完全に晴れるとそこには――――何もなかった。
「・・・えっ」
思わず間の抜けた声を出してしまう。そう、煙が晴れた場所には、何もなかったのだ。
気味の悪い笑みを浮かべる太った男も、サマヨールもいなくなっていたのだ。
「い、いったいどこに――――
どこかに消えた太った男達を探すため辺りを見渡そうとしたとき、何かが放たれる音が聞こえ、
「・・・ディン!?」
「ペロディン!?」
ヤマモト隊員のフーディンをシャドーボールが襲った。
太った男もサマヨールの姿はないのに一体どこから…!?
「ブフフ…こっちだよぉ~」
すると、太った男の声が聞こえてきた。
声は、僕たちの後ろから発せられたように聞こえたため、僕とヤマモト隊員が後ろを振り向くと
「な、なんで!?」
そこには、太った男が立っていた。
…なんで!?いつの間に後ろを取られたの!?
…まさか、煙に紛れて移動したのか!?見た目のわりにすばやく移動したというのか!
ヤマモト隊員も、声は出さなかったが目を見開いて驚いているように見える。
「ブフフ…遅いなぁ君たち…さぁ、もう一回行くよぅ!!」
そう叫ぶと、男はまた地面に何かを叩きつけると再び煙におおわれた。
今度は見逃すまいと、目を凝らしてよく観察する。しかし、やはり煙が晴れた時には太った男の姿はなかった。もう一度探そうとすると
「プフッ!こんどはこっちだよぉ!!」
「モウッ!?」
今度は右からシャドーボールが放たれ、モウカザルを襲った。
「モウカザル!?大丈夫!?」
「モッ…ウ!!」
モウカザルに駈け寄り、状態を確認する。
…よし、思ったより傷は深くないようだ。
「ペロディン!シャドーボール!!」
今度は姿が見えなくなる前にダメージを与えようと、ヤマモト隊員がフーディンに攻撃の指示を出す。
しかし、シャドーボールが当たる前に太った男とサマヨールは煙に包まれ見えなくなってしまい、目標を見失ったシャドーボールが空洞の壁に当たる。
くそ、今度はどこから…!?
「コウキ君、落ち着いて聞いて」
冷静さを欠きかけた時、ヤマモト隊員が僕らに耳打ちする。
「さっき、ペロディンにひかりのかべを張ってもらったから相手の攻撃はそんなに効かなくなったはずだよ。君のモウカザルの傷が浅かったのがその証拠さ」
“ひかりのかべ”不思議な壁を作り、特殊技のダメージを半減させる変化技だ。
周りをよく見ると、確かに壁のようなものが僕たちを覆っているようである。
…なるほど、さっきモウカザルのダメージが思った程ではなかったのはそのためか。
「この壁が僕たちを守っている間に、相手の動きをよく観察するんだ。それまでは危ないからここから出ないほうがいい」
ヤマモト隊員に言われた通り、僕たちは動きの観察に徹する。
太った男は煙を使った移動を続けこちらに攻撃を続けているが、ひかりのかべのおかげで、モウカザルもフーディンもそんなにダメージを受けていない様子である。
「ブフ…な~んかおかしいなぁ~?…シャドーボール、乱れ打ちしてみよっか~!」
太った男は、モウカザル達にダメージが入っていないことを不審に思ってか、シャドーボールの軌道が1体1体を狙い撃ちしたものから、散弾銃のような乱れ打ちのようなものに変わる。
しかし、それは好都合だ。
技が散弾したことにより、1つ1つの威力が半減され、さらに光の壁に阻まれてモウカザル達に当たる前に消滅している。
これなら、動きの観察に集中できる。そうして、周りの様子をうかがっていると
「……ッ!?」
乱れ打ちされたシャドーボールの軌道線上に、1匹のポケモンがいるのが見えた。
その見た目からあまり俊敏に移動できそうではないので、おそらくさっきのポケモンたちの逃げ遅れなのだろう。
逃げ遅れのポケモンの周りは、乱れ打ちされたシャドーボールが当たったように地面がえぐれており、それによっておびえてしまって動けなくなっている様子であった。
「…ん~?なんだあいつはぁ~?ヨーちゃん、蹴散らしちゃえ!!」
太った男は、逃げ遅れたポケモンに気づき、サマヨールに攻撃の指示を出す。
まずい、このままじゃあのポケモンが危ない!!
「コウキ君!!」
ヤマモト隊員の制止を振り切り、逃げ遅れたポケモンに向かって駆ける。
サマヨールからシャドーボールが発射される。
頼む、間に合ってくれ!!
僕はポケモンの
ところまでたどり着くと、そのポケモンを抱きかかえて走ろうとした。しかし、ポケモンが予想以上に大きかったため抱えることができず、抱きしめてそのまま横に飛び、地面に寝転んだ。
ポケモンが元居たところにシャドーボールが当たり、空洞の壁がえぐれる。
もし、あの攻撃がこのポケモンに当たっていたらと思うとゾッとする。
「ペロディン!!シャドーボー
「おっと~!逃げろ~!」
ヤマモト隊員が太った男に攻撃しようと指示を出す前に、男はまた地面に何かを投げつけ、煙を発してどこかへ消えてしまった。
……?今なんか違和感が…?
「ヌメ…?」
「…あぁ、君、早く安全な場所へ避難して……」
助けたポケモンに逃げるように言う。
ポケモンは言われた通りに逃げ…ない?
なんだろう、逃げずにこちらをジィ~っと見つめ、熱い視線を送っている。
一体どうしたんだろう?
「コウキ君!!いくら何でも無謀すぎる!!なんであんな無茶なことをしたんだ!?」
ヤマモト隊員達が僕の方へ駆けよってくる。
ヤマモト隊員は先ほどまでの冷静さはなく焦ったような、怒ったような口調である。
「い、いや、このポケモンが傷つくと思ったら、居てもたってもいられなくて…」
ヤマモト隊員のあまりの勢いに思わず、しどろもどろになってしまう。
僕の言葉を聞いたヤマモト隊員は、目を閉じ何度か深呼吸をするとまた落ち着いた様子になる。
「…ポケモンが心配なのはわかるけど、あの状況では君の身も危なかったんだ。俺を頼るということも、モウカザルに指示を出すこともできるんだから、もっと周りを頼って欲しい。それに、君が傷つくと悲しむ子もいるみたいだしね」
ヤマモト隊員がそういうと、モウカザルが抱き着いてきた。
モウカザルの顔は涙と鼻水でグチャグチャになっており、心配そうな声をあげている
そうか、こいつも心配してくれたんだな…
「…モウカザル、心配かけてごめんな…今度はお前を頼るから…」
僕は心配をかけたことをモウカザルに謝る。
モウカザルは顔を拭き、キリッとしたいつもの顔に戻る。
…ただ、僕の服で拭くのはやめて欲しかったなぁ…服がもうべたべたのベトベターだ。
「…それにしても、あの男はいったいどうやって高速移動してるんだ?見た感じ俊敏に動ける見た目でもないのに…」
ヤマモト隊員が、割と失礼なこと言いながら太った男について話す。
確かに、このままでは太った男に攻撃できず、ひかりのかべが切れるのも時間の問題だ。
でも、さっき地面に倒れこんだ時、なんか違和感があったんだよなぁ…もしかして……?
「ヤマモト隊員、ちょっと試したい作戦があるんですけど」
・今回ネタ解説はないよ。
戦闘描写がうまく伝わっているか正直不安です。
主人公君が助けたポケモン…一体何ラなんだ…待て次回!(多分次回出番ないです)
ここまでご拝読ありがとうございました