「……コウキ君、それは本当かい?」
ぼくの作戦を聞いたヤマモト隊員は、半信半疑といった様子で顎に手をあてて、考えている。
「はい、さっき倒れ込んだ時、確かに感じたんです。なので、可能性は高いと思います」
「…確かに、それならあの男の高速移動にも説明がつくな……よし、君の作戦に俺も乗った」
ヤマモト隊員は、覚悟を決めた様子で僕に目を合わせた。
「ブフ…何か企んでいる様だけど無駄無駄~ヨーちゃん、シャドーボール!!」
「ヨー…!」
ヤマモト隊員との作戦会議が終わった直後、太った男がまた攻撃を仕掛けてきた。
ヤマモト隊員は、冷静にフーディンにシャドーボールの指示を出し、また攻撃を相殺する。
「ブフ…ならもう一回移動しますかねぇ~」
太った男はそう言って、またもや煙球を使い、姿をくらます。
そして、煙が晴れるとまた男の姿はなく
「プフ…こっちだよぉ~さぁ、シャドーボー…」
また僕たちの後ろに移動した。
……今だ!!
「モウカザルッ!!」
「モウッ!」
男がサマヨールにもう一度シャドーボールの指示を飛ばす前に、僕はモウカザルに指示を出し―――先ほど男が消えた場所にあった大きな岩の後ろに飛びかからせた。
「あぁ!それは反則だよ~!!」
サマヨールへの支持を中断させるほど慌てふためく男。
相棒のサマヨールも「ヨヨ…!」っと少し動揺している様子だ。
モウカザルが飛びかかった岩の後ろから「うぎゃ!?」という悲鳴が聞こえたかと思うと―――岩の後ろから、ボロボロになった太った男とサマヨールが這い出てきた。
そう、男は2人いたのだ!
「あぁ!?タクヤ兄ちゃん!?」
「今だよペロディン!」
「ディン!」
慌てる男の隙をついて、ヤマモト隊員がフーディンに“サイコキネシス”の指示を出し、サマヨールごとボロボロになっている方の男に向かって投げ飛ばした。
「う、うわぁーー!タクヤ兄ちゃんどいてー!」
「うーん…うわっ!カズヤ!こっちに来るn…へぶぅ!?」
2人の男はぶつかり合い、2人が重なり合うように倒れ込む。
2匹のサマヨールも、お互いにぶつかった衝撃で目を回しており、ひんし状態の様だ。
「やっぱり、あの男は2人組だったんだ……」
「あぁ…よく気が付いてくれた。お手柄だよコウキ君」
そう、先程倒れ込んだ時、煙の中で走る足音が2つダブって聞こえたのだ。
ダブっているということは、もう一人走っているはずだが、ヤマモト隊員は走っている様子はなかったため、「もしかしたらもう一人誰かいるのでは?」と考え着いたのだ。
まさか2人の同じ顔をした人間が、交互に出てきていただけだったとは…双子だろうか?
すると、2人で重なって倒れていた男、その上に乗っかっている方の男が上体を起こし
「幽体離脱~」
とドヤ顔を決めながら起き上がって来た。
……いや、なにが???
ヤマモト隊員も“ポカーン”としており、互いの間で微妙な空気が流れる。
「……タクヤ兄ちゃん、今の若い子そのネタわからないよ…」
「……くそ~20年くらい前なら大爆笑だったのに…!!」
太った男……タクヤと呼ばれた方が悔しがりながらサマヨールをボールに戻す。
……なんだろう。笑ってあげた方が良かったのだろうか…
「……さぁ、もうポケモンもいないんだ!観念しろギンガ団!!」
微妙な空気感を変えるためか、ヤマモト隊員が少し強めの口調で叫ぶ。
「プフ!まだまだぁ!僕らのポケモンは戦えるよぉ!いくぞカズヤ!!」
「うん!イッシュ旅行で捕まえたあの子たちの出番だね!!」
そういって2人は、新しいポケモンを出す。
茶色くて平べったい体で、尾びれをピチピチと地面に当てている。
見たことのないポケモンだが…見た感じ水タイプか?
「あれは、マッギョだね。じめん・でんきタイプでモウカザルとの相性は最悪だから気を付けて!」
ヤマモト隊員が教えてくれた。
…えっ、あいつあの見た目で水じゃないの!?
「「マッギョ!マッド!ショット!!」」
太った2人は、マッギョに指示を出す。
マッギョは、口から泥の塊を勢いよく、こちらに吐き出してきた。
「モウカザル!ひのこ!!」
「ペロディン!シャドーボール!!」
僕とヤマモト隊員もそれぞれのポケモンに指示を出す。
互いのポケモンたちが繰り出す技がぶつかり合うが、マッギョのマッドショットはあっさりと撃ち落され、僕たちの攻撃がそのまま2人組を襲った。
……あれ?サマヨールと違って、あっさりやられたな…?
「うぅ…タクヤ兄ちゃん…」
「くそ~やっぱり捕まえたてのポケモンは弱いなぁ……!」
太った2人が悔しそうにマッギョをボールに戻す。
…捕まえたばかりだったのか……それは弱いわ…
なんだか……けっこう苦戦したのに、締まらない最後だなぁ…
「……さぁ、もういいだろ…これ以上は色々地獄だから…」
ヤマモト隊員は再び2人に向かって話す。
今度は、すべりまくりの2人に気を遣っているのか少し優しいような気がする。
「うっ…わかったよぉ…これ以上すべり芸やりたくないし…」
「降参しま~す…」
太った男たちは、両手を上げ、降参の意を示している。
…よかった、色々あったけど終わったんだ……
「……よし、それじゃあ、ゆっくりとこっちに歩いて来「なぁ~んてね!やれ!ヨーちゃん!!」!?
ヤマモト隊員が気を抜いた隙を突き、太った男の1人の後ろからサマヨールが出てきた。
しまった!男の一人はまだサマヨールを引っ込めてなかった!
サマヨールは、何かをヤマモト隊員に投げつけて、それがヤマモト隊員の口の中にすっぽりと入ってしまった。
「ヤマモト隊員!」
僕はヤマモト隊員に駈け寄る。
なんだ、何を入れられたんだ!?
僕達が心配そうに見ていると――
“パン!”
という音が鳴り響き、ヤマモト隊員の口の中に入っていた何かが割れた。
すると、中から黒い液体がドロドロとあふれ出し、ヤマモト隊員の口内を真っ黒に汚していく。
これは……なんだろう、生臭い…?
「……カズヤ、アレ何投げた?」
「あぁ、アレ?ヨーちゃんがシャドーボール打てなくなった時、なげつける用に持たせてたけむり玉の失敗作。何も持たせないよりはいいかなって……」
「……めっちゃ黒いけど、何入れたの?」
「え~っと、けむり玉の中身が切れてたから、面白半分でオクタンのスミ入れた…」
太った2人が話している。
この生臭いのはオクタンのスミか……
あれは調理すると美味しいんだけど、苦手な人も多いんだよなぁ…
ヤマモト隊員はどうだろ…?
「くっっっっせええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
ダメだったっぽい!!
「ホワアァァァ…!ホワアアアァァァァァ!!!!」
真っ黒な口を開きながら発狂するヤマモト隊員。
……いや、怖い怖い!!悪霊に取りつかれたみたいになってるし!?
「ディン!?デイィィィン!?」あたふた…
「モウ!?」あたふた…
僕らのポケモンまでヤマモト隊員の変わりように動揺している。
やばい!この隙をついて逃げられる!
「に、兄ちゃん、怖いよぉ…!」
「うぅっ…これ絶対風邪ひいた時に見る悪夢と同じ類だ……!」
「ヨー」ガクブル…
あー…大丈夫そうかも?なんか怖がって震えてるし……ゴーストタイプのサマヨールもまるでおばけを見た子供のように怖がってるし…
「ホワ…!ホゥワアアアァァァァァァァァァーーー!!!!!!!」
「「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
あっ!ギンガ団の2人がビビりすぎて逃げ出した!!
このまま逃がすわけにはいかない。僕たちも追わなければ……!!
「ヤマモト隊員!追いかけましょう!!」
「くへぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!ぬぉああああああ!!!」ジタバタ
あっ、ダメだこれ。
オクタンのスミで完全に正気を失ってる。
えぇ~……ギンガ団を逃がすわけにはいかないけど、錯乱しているヤマモト隊員やポケモンたちを置いてはいけないし……
……はぁ、しょうがない。今回は見逃そう。
僕はため息をつきながらヤマモト隊員にバッグから取り出したおいしい水とタオルを渡した。
それにしても、この人よくひどい目に合うよなぁ……
・今回のギンガ団
モチーフはタッチな双子のそっくりさん。
ポケサンにも何度か出演しているが、レジギガスとコイキングを交換するなど屑エピソードが多い。
手持ちポケモンは2人とも同じで、持ちネタの「幽体離脱」からゴーストタイプを連想しサマヨールと「チョット!ちょっとちょっと!!」が「マッギョ!マッドショット!!」に聞こえたのでマッギョ。
・ヤマモト隊員のスミ芸
とある企画の時に、イカ墨のかき氷を食べさせられた時のリアクションがバズり、その後も事あるごとにイカ墨を食べさせられていた。
あの苦しみ方は、多分ガチで辛かったと思う。
久しぶりの投稿なので、思い切って色々一新してみました。
まぁ、色々ありますが、のんびりやっていけたらなぁ~って思います。
ここまでご拝読ありがとうございました