「ガラガラガラ………ペッ!…うぅ…まだ墨の味がぁ…」
口内のオクタンの墨を洗い流したヤマモト隊員。
しかし、まだ墨の味が口の中に残っているらしく、その顔は少し曇ったままである。
さっきのギンガ団は既に逃げ去っており、この場には僕とヤマモト隊員だけしかいない。
ギンガ団を逃がしたのは少し残念だが、ここに住むポケモン達も脅威が去って安心するだろし、良しとするか…
「ヌメ~♡」すりすり…
「うおっ!?君は…?」
僕は、背中に何か“ヌメッ”とした感触を感じ、後ろを見る。
そこには、先程助けた丸くてヌメヌメしているポケモンが僕の背中に“すりすり”と体を擦りつけていた。
この子は…さっき僕が助けた子か。まだ逃げてなかったんだ…
「君、もう危ない人はいないから安心していいよ。ほら、仲間のところへおいき」
「ヌメ~」ふるふる…
ヌメヌメのポケモンは“イヤイヤ”というように体を横に振る。
一体どうしたんだろうか?
「もしかして、その子コウキ君と一緒に行きたいんじゃない?」
いつの間にか復活していたヤマモト隊員が言う。
ヌメヌメのポケモンも、それが正しいというように「ヌメ~!」と声を上げる。
「えっ…僕が言うのもなんだけど…僕これから色々な場所を旅する予定だから、ここから離れちゃうよ?それでも一緒に来てくれるの?」
僕の問いかけに「ヌメ!」っと元気よく鳴き声を上げるヌメヌメポケモン。
僕はポケモンを捕まえる才能がないので、こうしてポケモンから歩み寄ってくれるのはありがたい。
「…よし!じゃあ僕と一緒に来てくれ!…えっと……」
………目の前のポケモンの名前がわからず、ポケモン図鑑をかざす。
目の前のポケモンをスキャンした図鑑には“情報なし。不明”と書かれていた。
「えっ、情報なし?……新種のポケモンですかね?」
僕はポケモンに詳しそうなヤマモト隊員に聞く。
本当に新種のポケモンなら、少しわくわくするなぁ。
ヤマモト隊員は、あごに手を当てながら“う~ん…”と考え始める。
「………多分、ヌメラってポケモン…だと思う」
「ヌメラ…ですか?……多分というのは?」
「うん、ヌメラってポケモンは本来カロス地方やパルデア地方に生息するポケモンで、シンオウ地方では発見されていないはずなんだ……それに、ヌメラは本来もっと小さいポケモンのはずなんだ。でも、この子はコウキ君の身長とほとんど同じだ……突然変異か、それとも別種のポケモンなのか……」
ヤマモト隊員はそのまま“ぶつぶつ”と考え込んでしまう。
その間も、ヌメヌメのポケモン……ヌメラ(?)は僕に身体をすり寄せてくる。
………正直、身体がベタベタになって気持ち悪いなぁ…
地下での出来事からしばらくして、僕とヤマモト隊員は地下から抜け出し、ハクタイシティに戻ってきていた。
結局、ヌメラは僕にベッタリで離れそうにないので、僕がゲットすることになり、これで手持ちポケモンは2匹になった。
しかし、シンオウ地方でヌメラが発見されたのは異例とのことで後でナナカマド博士に連絡を入れるようヤマモト隊員から言われた。
確かに、この異常な大きさは、なにか大きな病気を抱えている可能性もあるので一度博士に相談したほうがいいか…
今は、地上に戻って来たヤマモト隊員に「そういえば、ハクタイシティには大昔のポケモンの像があるんだったな…一緒に見に行かない?」と誘われたので、一緒にハクタイシティの北東に向かっているところだ。
「よっ…ほっ…コウキく~ん!もう少しだよ~!」
「はぁ…はぁ…待ってくださいよぉ…」
僕は地下から戻って来たばかりで少し疲れていた為、息を切らせながら階段を登る。
対してヤマモト隊員は、軽いステップでヒョイヒョイと階段を登っており、あまり疲れが見えない。
ヤマモト隊員曰く、「ボクシングで鍛えてるからね~」との事だ。僕もボクシングやろうかな~?でも、体力つけるだけならボクシングじゃなくてもいいかな…
「はぁ~~登り切ったぁ……おぉ!」
階段を登り切った僕の視界に、ピカピカと光っている像が入って来た。
ずっしりとした体格
顔のパーツはシャープでかっこいい
胸の部分には、五角形の角ばった宝石のようなものが埋め込まれている
両肩にも、丸い宝石のようなものが見受けられる
これが、大昔のポケモン……
目の前にあるのは、ただの像であるが、その圧倒的な存在感に僕は言葉を失ってしまう。
きっと、すごいポケモンだったのだろうな…一度生で見てみたいものだ……
「すごいですね……」
僕はヤマモト隊員に話しかける。
ヤマモト隊員は、像の台座に埋め込まれているプレートを見て顔をしかめている。どうしたのだろうか?
「あの……」
「ん?……あぁ、ごめんごめん。ちょっと考え事をしててね」
「考え事…?」
「うん、このポケモンの像が、少しいびつに見えてね……」
「いびつ……ですか?」
ヤマモト隊員の一言に、僕の頭の中に「?」が浮かぶ。
「何と言うか…顔と体のパーツが不安定に見えて……まるで2匹のポケモンを無理やり合体させたみたいに見えるんだ……それに、このプレートだよ」
ヤマモト隊員は、先程まで見ていた2枚のプレートを指さす。
「このプレートには、このポケモンの説明が書かれているんだけど…本来、1匹のポケモンの説明ならプレートは1枚で十分なはずだ…でも、プレートは2枚。しかも、両方とも説明が若干違うんだよ」
「えっ本当ですか?」
僕はヤマモト隊員に促されるまま、プレートを読む。
……確かに、片方のプレートには「時間」と「ディア…」という記述が、もう片方には「空間」と「パル…」という記述があった。
確かに、2枚のプレートは若干内容が異なるようだ。
「この記述を読むと、このポケモンは「ディアパル」もしくは「パルディア」というポケモンとも取れるけど、それだとプレートを2枚に分ける必要がない。だから、この像は「ディアなんとか」と「パルなんとか」って言うポケモンが合体したポケモン像だと俺は思うんだ」
ヤマモト隊員が真剣な目で語る。
……すごいなこの人。あの会社の人間だから、少し抜けていると思っていたら、ここまで深い考察ができるとは…本当にあのゴルゴ所長の部下なのか?
「それにしても、「時間」と「空間」と司るポケモンか……まるで神話みたいだ…もしかして、これがシンオウに伝わる伝説のポケモンなのか………?」
「時間と空間を司るポケモン…そんなすごい事ができるポケモンが存在するんですか?」
「……ありえなくはない…かな?これまでも、時間を行き来するポケモンや、海や大地を増やすポケモンとか、人知を超えたポケモンも目撃されているからね。もう神様みたいなポケモンが居たって不思議ではないよ」
ヤマモト隊員はさらっと言っているが、僕は話のスケールが大きくなりすぎてほとんどついていけてない。
僕にとってポケモンは、日常の隣にいるごくありふれた存在だった。だからこそ、そんな神様みたいなポケモンの話を聞いて、少しの恐怖さえ覚えていた。
「神様みたいなポケモン…ですか……もしかしたら、この世界もポケモンが創造した……な~んて………」
「う~ん…否定できないな……その場合、すべてのルーツであると言われているミュウはどういう立ち位置になるんだろう…?」
冗談で言ったのに、思考が更に深みに入ってしまう。
「……ははっ、今考えてもしょうがないか!まぁ、神様だとしてもポケモンならわかり合えるはずさ!」
ヤマモト隊員が明るく答える。
ポケモンならわかり合える。その一言がポケサンカンパニーっぽくて少し安心するような気がした。
「まぁ、いくら神様だって、むやみやたらに人を拉致したり、タイムスリップさせて置き去りにしたりなんてひどい事しないでしょ!!」
……なんだろう、少しだけなぜか不安になった。
・ヌメラ
本来であれば、シンオウに生息しないポケモン。
コウキ君がゲットしたのは通常より大きい様だ。
その大きさは、まるで群れの親分の様な…
・大昔のポケモンの像
リメイク版とかポケスペの像みたいなデザイン。
個人的には、あれはあれでよいと思う。
・タイムスリップさせて置き去り
まさかそんなひどいことするわけないセウス!
次回あたりでヤマモト隊員編終わらせたいなぁ…
ここまでご拝読ありがとうございました