「さて……と、俺はもう行こうかな……」
ポケモン像を一緒に見た後、ヤマモト隊員が呟いた。
空には太陽が沈みかかった夕焼け模様。周りの景色もオレンジ色に染まっている。
…どうやら、僕たちは結構長い時間地下に籠っていたようだ…………
「行くって……また地下に潜るんですか?」
「うん、さっきのヌメラの件もあるし、もう少し調べてみようかなって。それに、成果なしで会社に戻っても、怒られそうだし……」
ヤマモト隊員は遠い目で空を仰ぐ。
……僕はまだ子供だから分からないけど……社畜ってこういうことを言うのかな…?
「コウキ君はどうする?一緒に地下に来るかい?」
「うーん……僕はやめておきます。ジム戦もしたいですし…………」
ヤマモト隊員の提案を僕は断った。
ジム戦があるのも理由の一つだが、地下に潜ったらまた廃人のようにたまを採掘する日々に戻り、採掘家になってしまいそうだと思ったからだ。
流石にお母さんに『ポケモントレーナーになると言った息子を信じて送り出した結果、採掘家になっていたンゴ……』なんて、僕がまだ読んではいけない薄い本みたいな経験をさせてはいけないのだ。
「ジム戦かぁ……ハクタイジムのナタネさんは、くさタイプを得意とするジムリーダー。君のモウカザルやヌメラにとって有利なタイプ相性だ。でも、くさタイプは“ねむりごな”を始めとした状態異常や“やどりぎのたね”みたいな搦め手を使ってくるから気を付けてね。あと、ナタネさんは“くさむすび”という技を好んでよく使う傾向があるから、文字通り足元を掬われないように注意が必要だよ。それから……」
ヤマモト隊員が早口気味に喋る。
…興奮気味に喋ってるけど、バトルが好きなのかな……?
「この話、いつ終わるんだろう?」と考えていると、「でも」とヤマモト隊員が落ち着いた様子に戻る。
「でも、さっきの地下での戦いを見るに、ハクタイジムも問題なく突破できるよ。それは一緒に戦った俺が保証する」
ヤマモト隊員が、僕をまっすぐ見つめて確信したように言った。
……………そう面と向かって言われると、恥ずかしいなぁ……嬉しいけど……
僕は恥ずかしさを紛らわせるように頭を搔いた。
「…そうだ!ジム戦勝利の前祝に……………」
そう言うとヤマモト隊員は、自分のリュックからタイヤとハンドルが付いた鉄製の物を出した。
これは………折り畳み自転車?
「この自転車を君にあげるよ!俺には必要ないからね」
ヤマモト隊員が折り畳み自転車を僕に渡してくる。
「えぇ!?そんな高価なものいただけませんよ!?」
僕は流石にこれは貰えないと断ろうとした。
いくら必要ない物と言われても、自転車は一部地方では「1000000えん」もする高級品なのだ。今日あったばかりの人からそんなもの貰うわけにはいかない!
「いや~いいんだよ…………ぶっちゃけ、博士に押し付けられた失敗作だし……」
…………なんだろう、益々貰いたくなくなった……
「えぇ……貰えないというか、いらないんですけど…………」
「だ、大丈夫だよ!博士曰く、普通の自転車らしいから!!」
ヤマモト隊員は大丈夫と言っているが、声が震えている。
「普通のって………でも失敗作なんですよね?」
「う~ん…なんでも、ガラル地方って場所で乗られている電動自転車をモチーフに作ったらしいんだ。成功したら、水陸両用ですごいスピードで走れるらしいんだ」
おぉ、聞いてる限りではすごそう。
「でも、肝心の電動自転車の動力源がなんなのか調査するのを忘れたみたいで、結局普通の自転車になっちゃったんだって。ポケモンの力を借りているらしいってことはわかったんだけどね…」
えぇ…それ1番重要なやつじゃん……博士ぇ……
…でも、ポケモンが動力源かぁ……電動というくらいだから、でんきタイプのポケモンなのかな?
………ガラル地方の自転車だから、ガラル特有のポケモンなのかな?……そうだとしたら、マジで宝の持ち腐れ感がハンパないなぁ……
「どうかな?正直俺も扱いに困ってたところだから、貰ってくれたらありがたいんだけど…」
ヤマモト隊員が懇願するような視線を向けてくる。
う~ん、そういうことなら貰ってもいいかな……?
なんだか、不良品を押し付けられた感があるなぁ…
「なら、有難く使わせていただきます」
「そうか!いや~これ以外と重かったから助かるよぉ~」
ヤマモト隊員が僕に折り畳み自転車を押し付ける。
……これ、僕のジム戦勝利の前祝なんだよね?在庫処分じゃないよね?
「…ちなみに、コウキ君はこれからジム戦に行くのかい?」
「えっ、いえ、今日はもう遅いですし、ポケセンで一泊してからにしようかなって……」
「うん、その方がいいよ!それと、ヌメラはさっき捕まえたばかりでしょ?お互い早く仲良くなるために、しばらくはモンスターボールから出して一緒に過ごした方がいいかもね!」
「その方が、バトルになった時に息を合わせやすいからね!」とヤマモト隊員は続ける。
……確かに、僕はヌメラのことをよく知らないし、ジム戦の前にヌメラのことをよく知っていた方がいいかも………
「……そうですね。しばらく一緒に居ようと思います」
「うんうん、トレーナーは自分のポケモンのことをわかってないと務まらないからね……………おっと!もうこんな時間か!そろそろポケモンセンターに行った方がいい。この時間帯は宿泊目的のトレーナーであふれるからね!」
ヤマモト隊員がポケッチを見ながら慌てた様子で言う。
…うおっ!?本当だ!せっかく町にいるんだし、野宿は避けたい!!
「僕、ちょっと急ぎます!!今日はありがとうございましたぁ!!」
「うん!またどこかで!!君の成長を楽しみにしてるよ!!」
僕はヤマモト隊員に早口で別れの挨拶をして、ポケセンへと急いだ。
ヤマモト隊員は、そんな僕の姿が見えなくなるまで手を振ってくれていた。
「…………さて、もう行ったかな?」
ヤマモト隊員は、コウキの姿が見えなくなったのを確認し、歩みを進めた。
しかし、先程の彼の発言通りに地下に行くわけではなく、とある建物に向かっていた。
「所長もひどいよなぁ~伝説のポケモンとシンオウの昔のポケモンについての調査でもういっぱいいっぱいなのに、挙句の果てに『ギンガマンについての調査』も任務に加えてくるなんて……そういうの国際警察の仕事だろうに………もうこんなブラック会社、転職してシルフカンパニーにでも雇ってもらおうかな~」
「あと、ギンガ団だったんだけど……」とぼやき続けるヤマモト隊員。その姿は、残業で疲れている某パルデアのサラリーマンの様であった。
その後も日ごろのストレスを呟きつつ歩みを進めていると、目的の建物の前に着いたようだ。
その建物は、高層ビルの様だか、普通のビルと違って外装にとげとげした悪趣味な装飾が付いており、怖そうな印象を受ける。
そのビルの前には、いあいぎりで切れそうな木が生い茂っており、その行く手を阻んでいた。
そこは、ギンガハクタイビルと呼ばれている建物であった。
「情報部からの連絡だと、ここがギンガ団のアジトのビルだってことだけど………名前とかどうにかならなかったのかなぁ………」
そう言いながら歩き続けるヤマモト隊員。
いつの間にか、行く手を阻んでいた木は、切られていた。
その木は、いあいぎりで切られたというより、エスパー技で無理やりねじ切られたようであった。
「流石に子どもにこんな危ない橋を渡らせるわけにはいかないよなぁ……ここからは大人の出番ってね……」
「特別手当とかでないかなぁ……出ないよなぁ………」とつぶやきながらビルに入るヤマモト隊員。
その背中は、先程までの疲れ切った物ではなく、歴戦の戦士を思わせる頼もしいものであった
・ガラルの自転車
水陸両用のハイテク自転車。
原動力はポケモンとの事だが……いったい何ロトムなんだ………?
・信じて送り出した○○
よいこのみんなも悪い子のみんなも検索してはいけない(戒め)
・ギンガハクタイビル
モロバレ(ル)のアジト
マジで隠す気0で笑う
・パルデアのサラリーマン
彼にはGWが必要だ……
ゲーム本編との違い
・シロナと出会うイベントがなくなった
・ギンガハクタイビルへのカチコミがなくなった(自転車入手イベントのカット)
ヤマモト隊員編が予定より長くなってしまった…
その為ヤマモト隊員VSギンガ団戦はカットしようか考え中
ここまでご拝読ありがとうございました