どこかで聞いたことのある声に振り向くと、白い服を着たチョビ髭のおじさん、ゴルゴ所長が走ってくるのが見えた。ゴルゴ所長はそのまま僕を追い越すと、カイリキーに引っ付いていたヤミラミを引きはがした。
「ヤミラミ~!おまえは本当にしょうがない奴だな~!!」
「ヤァミ~♪」
ゴルゴ所長はそのままいつものようにヤミラミを愛で始める。ヤミラミはヤミラミで嬉しそうな声をあげている。先ほどまでの殺伐とした場の雰囲気が一変し、「えっ、何これ・・・」というような空気が場を支配する。
「・・・・おい、あんた・・」
「おぉ!?君、わしのヤミラミがすまんかった!!いや~!いたずら好きで本当に困ったやつなんだよ~!!」
大男が声をかけると同時に、ゴルゴ所長が大きな声で大男にペコペコと謝り始めた。この人、元々声が大きい方だけど今日は一段とうるさいような気がする。ヤミラミも「ヤミィ!!ヤミィ!!」とゴルゴ所長の足元で声をあげているようだし、なんでこんなに騒がしいんだろう?
「何横から水差してんすかおっさん!せっかく兄貴がそこのガキをボコボコにするところだったのに邪魔しやがって!」
「この代償は高く付くでありますよ!どうします兄貴?処す?処す?」
おかっぱ2人が調子に乗って大男を囃し立てる。まずい、ゴルゴ所長がやられてしまう!
「・・・いや、悪気もないようだし別にいい。お前ら、もう帰るぞ」
「あ、兄貴ぃ!?」と声をあげる2人をよそに、大男はヤミラミにくすぐられすぎて四つん這いになりながら息をぜぇぜぇと切らせているカイリキーをボールに戻す
大男が2人を連れて去ろうとしたとき、僕の方を見て
「坊ちゃん、お前さんはここらじゃ強い部類に入るトレーナーだろうが、坊ちゃんより強い奴は山ほどいるんだ。あんまり調子に乗ってると取り返しのつかないことになりかねんぞ。やんちゃは程々にしときな」
そう言うと、もう振り返らずに去っていった。
「さてと君、大丈夫・・・おぉ!コウキ君だったのか!怪我はなかったかい!?」
「は、はい、大丈夫、です」
大男が去った後、ゴルゴ所長が話しかけてきた。僕は傷ついたモウカザルをボールに戻しながら大丈夫と返した。ヤミラミが足元で「大丈夫か?」というような心配そうな鳴き声を上げているが反応できるほどの心の余裕が今の僕にはなかった
「・・・・・やはり、ゴルゴ君であったか・・・」
「ん?・・・おぉ!?ナナカマド博士ではないですか!?いや~お久しぶりですな!!」
ナナカマド博士に気づいたゴルゴ所長は驚いたように声をあげる
「おじい・・・博士、お知合いですか?」
「あぁ、ヒカリ、彼はゴルゴ君。ポケサンカンパニーという会社の所長をしている人物だ。彼とは昔色々あってな、それ以来何かと世話になっているんだ」
「いやいや!我々の方が世話になりっぱなしで申し訳ないくらいですよ!!君はヒカリ君というんだね?わしはポケサンカンパニーという会社の所長をしているゴルゴという者だ!よろしくな!!」
「は、はい、ヒカリです。はじめまして・・・」
手を差し伸べたゴルゴ所長とヒカリちゃんが握手を交わす。ゴルゴ所長のテンションにヒカリちゃんは若干引き気味なのは気のせいではないだろう。
だか、今の僕はそんなことにつっこむ余裕すらなかった。
「・・・・コウキ君、君のポケモンも疲れているだろうからポケモンセンターに行くといい。ヒカリ、一緒に行ってあげなさい」
「あっ、そうだった!コウキ君、行こう?」
「う、うん」
僕はヒカリちゃんと一緒にポケモンセンターに向かう。いつもの僕なら内心すっごく喜ぶんだろうけど、今はそんな気分ではなく、ただポケモンセンターへ向けて歩くだけだった。
その後ろ姿をヤミラミが心配そうに見つめていた
「博士、いったい何があったんですか?」
ヒカリとコウキ君がポケモンセンターに向かったのを見送ると、ゴルゴ君が話しかけてくる。
「あぁ、コトブキシティに用事があってそこに向かっていたんだが、いきなりさっきのおかっぱ2人が現れて、研究資料をよこせと言ってきたんだ。奴ら、ギンガ団と名乗っていたが、一体何者なのだろうか?」
「う~む、最近シンオウ地方でおかっぱ集団がいきなり襲ってきたり、人のポケモンを奪おうとしてくるという変な噂が聞かれますが、十中八九あいつらでしょうな。しかし、博士を狙ってくるとは・・・何か心当たりはありませんか?」
「いや、わしらポケモンの研究をしている者の情報などを知りたがるもの好き輩は大勢いるが、基本的にそういった物は論文なんかで公開しておるし、わざわざ襲ってまで手に入れたがる情報など持っておらんはずだ。それに奴らの会話から察するに、わしらを襲ったのも突発的だと思うよ」
「そうですか・・・それにしても物騒な世の中ですなぁ・・また襲ってくるかもしれんですし、博士もしばらくボディガードでも雇ってはどうですか?」
「うむ、さすがにこればかりは孫娘には酷というものか・・慎重に考えさせてもらうよ」
まさか襲われるとは思っていなかったので、今まで遠出するときは孫娘や研究所の研究員で最低限バトルができるものにお供を頼んでいたが、今回のことを踏まえると自分や孫娘、研究員のためにもボディガードをつけることを考えた方がいいだろう。
「えぇ、それがいいでしょう!わしも隊員たちに注意するよう言わなくては!・・・そういえば博士、コトブキシティにどういった用事で?」
「あぁ、実はポケサンカンパニーに依頼したい案件があってな」
そう、今回コトブキシティにきたのは彼らに会うためだ。伝説のポケモンについて調べているときに気になる文献を発見したのだが、現在の伝説のポケモンについての研究の片手間に調べるとこもできないためポケサンカンパニーで調べてもらえないかと思い依頼しに来たのだ
「おぉ!博士のお手伝いができるのは光栄ですよ!さっそくお話を事務所で聞きたいのですが・・・」
ゴルゴ君が少し心配そうな表情を浮かべる。・・・まぁ彼のことだから・・
「・・・コウキ君が心配かね」
「!?博士、いつからサイキッカーになったんですか!?」
「君との付き合いも長いからな、なんとなくだがわかるよ」
「そうですか・・彼、元気がないように見えたのですが、わしが来る前に何があったんですか?」
わしはゴルゴ君が駆けつけるまでにあった経緯を話した
「なるほど・・・そんなことがあったのですね・・・コウキ君、負けたことのショックが大きかったんでしょうか・・・」
「うむ、わしはあの時、コウキ君を止めるべきだったんだろうが、あの短期間でヒコザルの心を開き、ともにジムバッチを手に入れたコウキ君たちならもしやとどこかで思ってしまった・・・彼が深く傷ついてしまっていたらわしのせいだ。わしはなんと声を掛けたらいいか・・・」
「・・・博士のせいではありませんよ。聞いた限りコウキ君も天狗になっていた部分もあったでしょうし、大人が子供の可能性を信じたくなることなんて自然なことじゃないですか」
「・・そういってもらえて、少し気が楽になったよ・・・」
本当に彼には元気づけられるとこが多い。彼のこういったところが人を引き寄せるのかもしれんな・・・
「それでは博士、依頼の話は後程でいいですか?少し用事が出来てしまったので」
「・・・彼のところへ行くんだな?」
「えぇ、折れそうになっている子の背中を支えて、そして押すのも年上の役目ですよ」
そう語ったゴルゴ君は、まさに人の上に立つ人間の姿だった。
「それにしてもギンガマンとは、ヒーローみたいな名前でとんでもない奴らですな!」
「ゴルゴ君、ギンガ団だ」
・・・・本当に大丈夫だろうか・・・
「兄貴~急にどうしたんすか~」
チョビ髭のおっさんが割って入った後、俺たちは204番道路を進んでいた。
「そうであります。あのままいけば流れでナナカマド博士の研究資料も手に入ったかもしれないでありますよ」
「・・・まだ諦めてなかったのかよ。だいたい、見かけたからとりあえず襲っただけだろ。研究資料を持っているかどうかもわからんのに行動起こしやがって・・」
「で、でも~」
「でもも行進もないだろ。襲うにしたって、相手は有名な博士だぞ。用心棒の1人や2人雇ってる可能性だってあるんだ。せめて俺に相談するとか、もっとやりようがあっただろ」
「(行進・・・?あっデモ行進っすか?・・・ボケてるんすかね・・?)」
「(ツッコミ待ち・・・でありますか?)」
「・・・ん?お前らどうした?」
「えっ!?いや、別に!・・てかあのおっさんが水差さなければ、研究資料はともかく、あのガキンチョは懲らしめてやれたのにもったいないっす!」
「そ、そうでありますな!!いっそあのおっさんも痛めつけてやった方がよかったのではないでありましょうか?」
「・・・お前ら、あのおっさんを舐めないほうがいい」
「えっ、なんでっすか?」
「・・・あのおっさん、わざと大声を出して人を呼ぼうとしてやがった。あそこは人通りがあまりないところだったが、おっさんと連れていたポケモンが騒いだからか大通りを歩いている何人かの視線がこっちに向かっていた。あのまま時間をかけても警察に通報されるなりパトロール中のジュンサーが騒ぎを聞きつけるなりしてこちらが不利になっていた」
今思えば、カイリキーにくすぐるを食らわせたのも、カイリキーに大声を出させるためだったのかもしれない
「えっ、そんな姑息なことしてたんすかあのおっさん!?」
「あぁ、それにペコペコしながらも、視線は自分のモンスターボールから離してなかった。いつでも自分のポケモンを出せるよう準備していたんだろう」
「ま、マジでありますか・・?で。でも兄貴ならあのおっさんにも勝てるっすよね!?」
「・・・・まぁ・・な・・」
俺は2人にはそう言ったが、気になることがあった
「(あのヤミラミただ戯れでくすぐってたんじゃねぇ。あれはポケモンの技だ)」
”くすぐる”相手をくすぐり、攻撃力と防御力を下げる技。同時に2つの能力値を下げれる優秀な技だ。
俺やカイリキーが気付かないスピードで近づいたってことは特性は”いたずらごころ”ってところだろうか。だがそれよりも
「(ヤミラミは”くすぐる”を覚えられないはずだが・・?)」
そう、ヤミラミはレベルアップはもちろんのこと、技マシンやタマゴ技でもくすぐるは覚えられないのだ。
そんな未知数のポケモンを持つあの男に、自分は勝てただろうか?
・・・まぁ、くすぐるで能力を下げられたカイリキーでいつジュンサーがきてもおかしくないというハンデを抱えてまで戦うことはない。あの場は引いた方が正解のはずだ。
それにしても、警戒するのはジムリーダーや四天王といった有名どころだけだと思ったが、あんな無名で未知数のトレーナーがまだいるとは・・
「(これは、鍛えなおした方がいいな。俺も、こいつらも)」
「?兄貴なに考えてるんすか?」
「いや、お前らのしごきをもっと厳しくしようと考えていた」
「え~~!?あれ以上しごかれるんすか!?今も十分きついっすよ~~!?」
「横暴だ!虐待だ!!あなたをパワハラで訴えるであります!!理由はもちろんお分かりですね!?」
「・・・俺ら法律に頼れる立場じゃないだろ・・・・・」
とりあえず、この2人にはもっと強くなってほしい。ポケモンもそうだが頭も
・コトブキシティのギンガ団戦について
コトブキシティでの初めてのギンガ団戦。街はずれとはいえ有名な博士を町の中で2人だけ(しかも手持ちがズバットとケムッソ)で襲おうという無謀な計画を立てるわけがないのであの2人の独断という設定にした。あれが計画的犯行ならガバガバすぎんだろ・・・
・ヤミラミのくすぐる
ポケモンスマッシュが終わるときに配布されたヤミラミは、本来覚えないくすぐるともう1つ特別な技を覚えていた。ポケモンスマッシュ知らない世代が見たら改造とか言われるんだろうか・・・?
・ジュンサーさん
アニポケから輸入。全地方にいる婦警さん。いろいろな街に配属されており、全員が同じ顔、同じ容姿で集合写真はもはやホラーの領域。設定練れば何等分かの花嫁的な作品できそう
・ギンガマン
ガンガンギギーンと五つの雄たけびを轟かせそうなスーパーな戦隊。ギンガ団とは一切関係ない。ちなみにブルーは昭英さんだぞ!
・理由はもちろんお分かりですね!?
色違いのボルケニオンはゲット出来ましたか・・・?
今回セリフ多かったので書いてて楽しかったです
楽しんでいただけたら幸いです
さて、ここで皆様に謝罪があります。前回あとがきにて、モンスターなハンターな展開はだれも望んでいないと書きましたが、どうやらパルデア地方にはアーマーガアの体から武器を作るモンスターなハンター的ポケモンがいるらしいです。どうやらポケモン界にもハンターな要素があるみたいです。
間違った情報を乗せてしまったことをこの場を借りてお詫び申し上げます。
ここまでご拝読ありがとうございました