シンオウに出動!ポケサンカンパニー!!   作:生牡蠣

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目標!薄っすら見えて!

「はぁ…」

 

僕は今、コトブキシティの街はずれにいた。

何をしているかというと、何もせず座り込んでいた。

ポケモンセンターでモウカザルを回復してもらった後、急用ができたと言って半ば無理やりヒカリちゃんと別れた。

ヒカリちゃんは僕の様子がおかしいからかずっと心配そうな表情で気を遣ってくれていて、いつもの僕なら心の中でデレデレしていたところだがそんな気分に離れなかった。

僕はモウカザルの入ったボールを右手首を使い、ワイングラスを回すようにしながら思い出していた。

 

思い出されるのは、先ほどの光景

こちらを見据える大男。一瞬で距離を詰めてくるカイリキー。モウカザルに刺さる拳。倒れるモウカザル。そして、それを見ていることしかできない僕。

 

「はぁ」ともう一度ため息を吐きながらボールをポケットにしまおうとすると、視界の端に黒い影が映った。もう一度そちらを見ると、ゴルゴ所長のヤミラミが近づいてくるのが見えた。

 

「ヤミィ…?」

 

ヤミラミは僕の近くまで来ると「大丈夫か?」と気遣うように鳴いた。

 

「…僕は大丈夫だよ、ありがとう」

 

僕は心配させまいと、なるべく気にしていないように取り繕って答える。

若干、表情がぎこちないかもしれないがうまくごまかせたと思う。

 

「…ヤミ!!」

 

そんなことはことはお見通しだ!と言うよう鳴くと、いきなりヤミラミが僕に飛びかかってきた

 

「ちょ、ちょっと、何するんだよヤミラ…ミィ!…や、やめw…あひょwwそこは…あははははwwwッマジでやめ……wwwwwww」

「ヤミヤミ!」

 

飛びかかってきたヤミラミは、カイリキーにそうしたように、僕のことをくすぐってきた

あっ、そこは、マジで…ら、らめぇ!!

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…!」

 

それから5分ほどくすぐられ続け、息をあげらげながら尻もちをつくように地面に座り込む。

このヤミヤミ、絶妙に弱いところを攻めてきやがる…あのカイリキーが手も足も出ないのも納得できる。

 

「ヤ~~ミィ~~?」

 

ヤミラミが上機嫌気味に僕の肩に手を回してくる。

まるで酔っぱらったおっさんが「なんか悩み事なん?おっちゃんに話してみぃ~」とウザがらみしているような、そんな印象を受ける。こいつなりに僕を元気づけてくれているのだろうか…?

 

「い、いや、本当に大丈夫だか…うん、やっぱり聞いてくれないか?」

 

僕はそんなヤミラミの好意に甘え、話を聞いてもらうことにした。

決して手をワキワキとさせ、もう一度くすぐろうとしているヤミラミにビビったからではない。

それからは、ヤミラミにさっきあったことを話した。

連勝続きで調子に乗ってしまっていたこと、大男に手も足も出ずに負けてしまったことを。

 

「ヤミィ…」

 

「心配してくれてありがとう。でも、実は負けたこと自体はそんなに気にしてないんだ。野生のポケモンや一般トレーナーに負けることもあったからね。その度に次はこうしようとか、どこまで強くなればあいつに勝てるかを考えるのも嫌いじゃないし」

 

「でも」と言葉をいったん区切り、考えまいとしていたこと口に出す。

 

「あいつとのバトル…いや、勝負にすらなってなかったか。あいつに負けた時、思っちゃったんだよね、『あぁ、無理だ』って。次はこうしたらとか、もっと強くなればとか考えられなくて、あいつには勝てないって思っちゃったんだよね。そう考えたら、これからもあいつみたいなのと戦うのかとか、あの時動けなかった僕にトレーナーが務まるのかとか、もう色々怖くなっちゃって……」

 

話していると、あの時の感覚が再び身体に蘇ってくる。無力感。恐怖感――――絶望感

人に話してすっきりしたからか、さっきよりそういった感覚は薄くなっていた。人ではなくポケモン相手だが。

 

「ヤミラァ…」

 

ヤミヤミは同情なのか、慰める感じのなきごえを上げる…湿っぽくなっちゃったな。

場の空気に耐えられなくなりそうだったのでこの場から離れようとすると

 

「おーい!ヤミラミー!!」

 

という声が響いた。声の方に振り向くと、ゴルゴ所長が走ってくるのが見えた。

…僕この人と会うとき、いつもこんな感じだよな。

 

「はぁ…はぁ…ヤミラミ!頼むから一人で先に行かんでくれ…!」

 

「ヤミィ!」と言ってゴルゴ所長に飛びつくヤミラミ。本当にのコンビは仲がいいなと思う

 

「まったく…それはそうとコウキ君!!さっきは大丈夫だったか!?」

 

「えっ!?は、はい、大丈夫、です」

 

突然話を振られて少し戸惑いながら答える。

咄嗟だったので、声色や表情を取り繕うことができず空元気感が隠せていないと自分でも感じる。

 

「……そうか!!大丈夫だったらいいんだ!!じゃあ帰ろうかヤミラミ!」

 

そう言ってヤミラミと連れて帰ろうとするゴルゴ所長。

あれ?意外とあっさりしているな…

勝手なイメージだけど、この人熱血ドラマとかに出てくるような性格みたいだから「そんなわけないだろう!?なにがあったんだ!?」的なことを言ってくると思ったのに…

そんな視線を向けているのを知ってか知らずかゴルゴ所長が話始める

 

「さすがのわしも、落ち込んでいる子から無理に話を聞こうとは思わんよ。話したいと思ったときに話せばいいし話したくないならそれでいい。なにより、大丈夫だという君の言葉を信じようじゃないか」

 

…意外と空気読んで行動できるんだなこの人

 

「それに、実は少し安心してるんだよ。大分ひどい目にあったみたいだからね、心を痛めてもう故郷に帰ってしまっているとも思った。でも、君はまだコトブキシティに残っていた。それは多分、君の心がまだ折れていない、旅を続ける気があったからここにいるんだろう」

 

ゴルゴ所長の話が続く……あまり付き合いの長くない僕のことをここまで気にかけてくれるなんて、少し照れくさい。

 

「なら、わしは君が再出発できると信じるよ。でも、もし再スタートのきっかけが欲しいなら、自分のポケモンに聞くと言い。きっと答えが見つかるさ」

 

そういうと「じゃあ、またな!」と元来た道を進んでいく。ヤミラミもゴルゴ所長に抱かれながら「ヤミヤーミ!」と見えなくなるまで手を振ってくれていた。

ゴルゴ所長たちが見えなくなると、僕はさっき言われた「自分のポケモンに聞く」という意味を考えた。

…まさか、ポケモンの言葉がわかるわけがないし、どういう意味なんだろう?…考えてもわからない、とりあえずやってみるかと思い、モウカザルをボールから出してみる。

 

「モウカ!」

 

「モウカザル…」

 

モウカザルと対峙する僕。先ほどの戦いでボロボロにしてしまった罪悪感からか無意識に目をそらしていると

 

「…モウッ!!」

 

「うわっ!!」

 

モウカザルが飛びかかってきて僕の顔をつかみ、無理やり目線を合わせてきた。

モウカザルの目を見る。その目からは、色々な感情が見えてきた。

 

闘士。気鋭。――――希望

 

・・・あぁ、こいつも、折れてないんだ。

 

「・・・・まだいけるよね、モウカザル?」

 

「モウッ!!!」

 

その言葉だけでよかった。

こいつが諦めてないんなら、トレーナーの僕が諦めるわけにはいかないよね。

 

『トレーナーとしての目標ってあるかな?』

 

前にしょこたん部長に聞かれたことをふと思い出した。

まだトレーナーとしての目標は見つけられていない。

でも――――

 

「とりあえず、あいつに勝とう」

 

 

やりたいことが見つかった

 

 

 

 

 

 

ん?どうしたんだ、ヤミラミ?…あぁ、彼のことなら心配いらんよ。彼は多分もう立ち直っているからな。

必要なのはまた走り出すためのきっかけさ。そのきっかけを作る役目はわしらじゃなく、彼のポケモンの方がいいだろう…それよりもさっきのギンガ団とかいう奴らがどうも気になるなぁ…うーむ、その辺の調査もロバートと情報部に頼んでおくか…。

 




・オリキャラギンガ団員について
 全内入れ忘れた説明。主人公君の自信を叩き折りたかったのとゴルゴ所長のやったことの解説要員で登場。これから先の出番は気分次第。

多分今年最後の投稿。皆さんは2022年はどんな年でしたか?
私は色々悪いことが続いてあまりいい年ではありませんでした。
しかし、小説投稿を初めて、お気に入りしてくれる人や感想を書いてくれる人がいるのが嬉しく、まだ捨てたものでもないと思えました。

来年も投稿を細々と続けていく予定なので御贔屓にしていただけると幸いです。

ここまでご拝読ありがとうございました

それではよいお年を
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