超昂大戦SS さらばエスカレイヤー! 胸の鼓動は不協和音?! 〜レジェンド戦士よ、また逢う日まで〜   作:環 藍河

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※検索から直接お越しの方へ。時系列は原作第1部完結直後です。ネタバレ懸念の方はご注意を。


第2章 見ないでください…! 最強戦士の心の秘密

「今回の実験失敗…技術的な要因はナシ!」

司令室でさやかが解析レポートを解説する。

「つまり…エスカレイヤーもルビーも、DDD自体に故障や異常動作は無い、ってこと?」

「いぇーす。もっと言えば、伝達経路や入出力の接続バス、チャージの貯蔵部分まで、実験中も終了後もオールグリーンだったの。」

 

「…エスカレイヤーが、ルビーのエナジーを全部取り尽くした…?」

「それはノー。残量は十分だった。」

トキサダの仮説は、即座に否定される。

「…じゃあ、失敗の原因は…?」

資料から目を離し、ユーノが問う。

 

「おそらく…メンタル。何らかの精神的要因で、エナジー伝達が遮断されちゃった。」

「精神的…何らかのトラウマとか?」

「う〜ん…ルビーの心の内面だから、はっきり断言はできないけど、それだったら直後にルビーは錯乱や恐怖心、怯えの表情が出ると思う。」

いわゆるPTSD…心的外傷後ストレス障害のような、過去の傷の疼き。

「でも、今回はそれは見受けられないんだよね…。」

 

「それじゃあ、原因は…?」

「現段階ではわからない。潜在意識の領域は、変にいじると洗脳になっちゃうから、あまり深掘りしたくないなあ…。」

倒せない強敵が現れたわけでもなければ、この失敗でエンジェリック・エスカレイヤーを運用できなくなるわけでもない。成功を急ぐ実験ではないのが救いだが…。

「…でも、できるならアカリちゃんが、自分自身で答えを見つけてほしいな。いざ勝負のときに、何か心が遮られて力を出せなくなったら大変だし。」

 

……

「はあ…。」

アカリは自室のベッドで、天井を仰ぐ。

実験の最後に押し寄せた感情を整理しようとしながらも、出るのはため息と、ためらいばかり。

「…あんな気持ちに、なるなんて…。」

 

なぜ、エナジー供給を止めてしまったのか。

アカリの中では、答えはもう解っていた。

 

 

オルタナテオトルとの最終決戦で、ルビーはADDDを究極形態…インテグラル・フォームへと進化させ、勝利を掴み取る。

それは、アカリが持つすべての感情をエネルギー化してしまう、途方もない進化形。

「嬉しかったことも、悲しかったことも、嫌だったことも、全部、全部…! 

私の全てを力に換えて…、貴方を倒します!」

 

…それゆえに、アカリは他の誰よりも、自分の感情を深く覗いてしまった。

 

みんなを笑顔にする、優しさ、温かさ。

美しいものに憧れ、人のぬくもりを尊び、弱いものを慈しむ心。

友や家族、出会う全ての人々を大切に思う、親愛の気持ち。

 

そして…そんな綺麗な部分と鏡合わせの、心の陰の闇。

 

救えなかった人も、今の力でさえ救えない人も、沢山いる…。そんな非力な自分への呵責と嫌悪。

エリーがトキサダを篭絡しようと迫ったときの、声を荒らげ、独占欲を露わにした自分…またいつか、何をきっかけに湧き上がるかわからない、自分の中に息吹く、怒りや嘆きや嫉妬の芽。

 

そして、好きな人に寄りかかりたい、甘え。

今やエスカ・ルビーは、ダイビート最強の戦士、人類の救世主とみんなから呼ばれる至高の存在。

それはアカリ自身が望み、求め、叶えた夢なのに…。

今は、思ってしまう。

その誇りを…重荷を降ろし、一人の平凡な、弱い自分に戻れたら。

 

長官に、抱きしめられたい。もっともっと、長官が応援してくれる手応えと、温もりが欲しい。

初めて会った日のように、エスカレイヤーに護られたい。あの瞬間、高鳴った胸の鼓動に、何度でも身体を預けたい。

…そんな、強さゆえに失ったものへの渇望。

 

食欲、怠惰、性、名誉…煩悩とも言うべき欲望も引っくるめて、アカリは自分の心の弱くてカッコ悪くて情けない部分も、澄んだ部分以上に覗かざるを得なかった。

 

……

最終決戦の場では気にする余裕も無かったが、全てが終わり、自分を振り返るゆとりができたとき。

(わ…私の中に…、こんな感情が…?

…や…やだっ…、違う…!

こ、こんなに私、ワガママで…イジワルで…甘えん坊なの…?

…あっ、あああ〜〜〜!!!)

アカリは羞恥の念に囚われ、身悶えた。

 

「は…恥ずかしい…よお…!」

実験でエスカレイヤーにエナジーを分けたとき、呼び覚まされたのは、あのとき垣間見えた自分の内面だった。

 

もちろん、ADDDで変換済みのエナジーには、元となる感情は残っていないし、それが供給相手に伝わることもない。仮にそうなら既に、マッハやハジメ、ななかの心が沙由香に流れ込んでいるはずだが、そんなことは無い。

 

だが、アカリの中で気持ちの整理が…自分の負の感情への向き合い方ができていないまま、その成果であるエナジーを与えてしまうこと。

とりわけ、自分が超昂戦士を目指すきっかけとなった憧れの戦士、理想の先輩にエナジーを与えることに、アカリは潜在意識レベルで恐怖を感じ、拒絶反応を示してしまった。

 

「…どうしよう…」

怖い。

自分の嫌なところ、知られたくない心。

もしもそこに、自分でも未だ知らない、野獣のような欲望や闇が潜んでいたら。

それを最初に知られるのが、沙由香だったら…!

 

こんな情けない気持ちが障壁になって、沙由香の力になれないことの方が、もっと恥ずべきこと。…頭では、それはわかっている。

それでも…その第一歩を踏み出せない。

 

この夜、羞恥心と向き合えないまま、アカリは眠りに落ちた。

 

……

そして翌朝。

わだかまりを残し、さらに寝不足のままアカリが知らされた、沙由香の帰郷。

 

「…私…心を開かなかった…。

あんなに憧れて…、あなたみたいになりたいって、何度も言った人に…!」

無意識とはいえ、憧れの人に心を隠し、かけがえない人を拒んでしまった自分。

 

(だから…だから沙由香さん、悲しんで帰っちゃったのかな…)

心を許した後輩から、最後の最後で受けた拒絶。

そのショックが、いかに辛いものか…。

 

その言行不一致と裏切りを悔やみ、戻らない時を嘆くアカリ。

「う…っ…、…~~~っっ!!!」

贖罪は、もう沙由香に届かない。

その偽善に、自分の心の弱さに。

アカリはうなだれ、嗚咽する。

(沙由香さん…ごめんなさい…、ごめんなさい…!!)

時すでに遅く、アカリはもう届かない謝罪を心で繰り返すしかなかった。

 

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