問おう、どんな女が好みだ   作:でかすぎ史郎

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1話

 聖杯戦争

 

 

 

 それは万能の願望器たる『聖杯』を求める7組のマスターと英霊による『戦争』。

 しかし、それは原典での話。外典では7組対7組の『大戦』という空前絶後の殺し合いとなった。

 

 戦争の舞台となるユグドミレニアの本拠ミレニア城塞。そこにはちょんまげ姿の男がいた。

 男の名前はアオイ・トウドウ・ユグドミレニア。黒陣営のマスターである。

 彼の目の前には彼らが召喚した英霊達が鎮座していた。

 

「黒のアサシン。ジャック・ザ・リッパー。よろしく、おかあさん」

 

 東堂が召喚した英霊は手の甲に赤い紋様を持つ男、東堂葵に向けて挨拶をした。

 すると男は笑顔を浮かべて彼女達に問いを投げかけた。

 

「問おう、どんな女が好みだ?」

 

 辺りに静寂が迸る。

 

 一方にはサーヴァントを召喚したマスターにして呪術師、東堂葵。

 

 対するは黒のアサシンのサーヴァントにして伝説の殺人鬼、切り裂きジャック。

 

 通常であれば問いかけるのはマスター側ではなく英霊側であること、なぜか切り裂きジャックの見た目が幼い少女であること、なぜか東堂は現代人であるのに髪型がちょんまげであることなど疑問は尽きない。

 

 しかし彼らの異様な雰囲気の前にはそのようなことは些事同然であった。

 

「女?好み?わたしたちが好きなのは理想のおかあさんだよ。血まみれでも平気で拷問ができて、5か国語くらいペラペラで、IQがすっごく高くって、生きたいなぁって願う人!」

 

「理想のおかあさん?IQが高い?」

 

 東堂は悩んだ。突如として降りかかった不測の事態。

 

 IQ53万をほこる東堂の脳内がはじきだした結論は

 

 (ケツ)身長(タッパ)がデカい女。

 

 なぜなら東堂葵は高いIQと190㎝以上の高い身長、それに加えて筋骨隆々の装甲を支えれる巨大な尻を持つ。もちろんこれらの要素は彼の不断の努力もあるだろうが遺伝的要因も関与しているに違いない。

 

 つまり遺伝的に東堂の母親は尻と身長がデカい女である可能性が高い!

 

 そしてジャックはおかあさん(母親)と答えた。

 

 これは東堂的には尻と身長がデカい女の子と答えたのと同義なのである。例えジャックが六導玲霞(164㎝の女性)という高身長ではない女性のことを示唆していたとしても。

 

 瞬間、東堂の脳内に溢れた()()()()()記憶。

 

 場所は穂群原学園の屋上。そこには制服を着た東堂とジャックがマンガを見ながら友として話し合いをしていた。

 

「俺、高田ちゃんに告る」

 

「やめときなよおかあさん。おかあさんを慰めたくないよ。子供がおかあさんを慰めるなんて逆転してるよ」

 

「なんで振られる前提なんだよジャック」

 

「かの英雄ディルムッドの槍ゲイ・ボウは因果を逆転させ投げた槍が必中必殺になる。俺も同じように成功するかもしれないだろ」

 

「それはクーフーリンのゲイ・ボルグだよ、おかあさん」

 

「大丈夫だジャック。当たって砕けろだ」

 

 そう言って東堂はジャックの静止を無視して意気揚々と歩みを始めた。そして高跳び台の前で高田ちゃんに告白しに行った。

 

「ごめんなさい。私、好きな人がいるの」

 

 もちろん無理だった。高田ちゃんはその場を立ち去った。

 そして高跳び台の前には東堂が不貞腐れる大型犬のように丸まっている。そこにジャックが駆け付けた。

 

「好きな人ってもしかして…」

 

「だったら振らないよおかあさん」

 

 そうしてジャックは東堂の頭にナイフを投げつけた。

 

「いつまで落ち込んでるのおかあさん。ハンバーグ奢ってあげる」

 

 彼らは街中の喧騒へと消えていった。東堂の0.2秒の領域展開は収束していき場所はミレニア城塞に戻る。

 

「地元じゃ負け知らずか」

 

「なぁにおかあさん?地元?ロンドンのこと?」

 

「どうやら俺たちは親友のようだな」

 

 自然と東堂の瞳から自然と涙が零れ落ちていく。

 そして涙が城塞の冷たい床にポタリと衝突する。

 

 この世界線の彼がここまで感動を露わにしたのは高田ちゃんとの握手会以来である。

 

「親友じゃなくてわたしたちのおかあさんだよ?」

 

 ジャックは冷静に訂正を求める。しかし彼女達の言っていることも間違っている。なぜなら東堂は男、つまりおかあさんではないからだ。

 

 水子の霊の集合体であるジャック達は愛を求めている。ゆえに親友ではなく家族を求める。だが堕胎された水子の霊である彼女達は母以外の家族の概念を知らない。

 だからこそ未来を取り戻す物語(   Fate/Grand Order     )の時と同様に男マスター相手ですら『おかあさん』と呼ぶのだ。

 

「そうか親友じゃなく家族か。つまりはブラザーというわけか。よろしくなブラザー」

 

 東堂は彼女のアイスブルーの瞳を捉えて手を差し出した。そしてそれにジャックが手を重ね合わせて握手をした。

 マスターとサーヴァントの歪んでいるが美しい友情。この光景『だけ』を切り取ればそう見えるだろう。

 

「いったいどういうことなのだ!?」

 

 隣にいるセイバーのマスター、ゴルドは呆れながらそう言い放った。

 冒頭でミレニア城塞と述べたようにここはユグドミレニアの本拠だ。今は先に召喚されたランサーを除く6騎のサーヴァントが一斉に召喚された。つまり同陣営のマスター達もここにいる。

 この異様な会話は部屋中の人間にダイレクトに伝わっている。

 

 アサシンと同じタイミングで召喚された理性が蒸発した英雄ですら言葉が出ずにいる。正確にはローランのことを思い出して引いているといった方が正しいが。

 

「…まあよい、来たか」

 

「ええ、彼らが公の麾下となるサーヴァント達です」

 

「それであれは大丈夫なのか?」

 

 先んじて召喚された黒のランサーは東堂と黒のアサシンを指さしダーニックに向けて問いかけた。

 

「アサシンのマスター、アオイ・トウドウは協調性や性格面はともかく戦闘力や忠誠という面では問題ありません。必ずや公の助けとなりましょう」

 

 そう言って不敵に微笑むダーニックは一歩前へと出た。

 

「この時を以て黒と赤のサーヴァントによる聖杯大戦が開戦する。我らユグドミレニアこそが、この世界の神秘と奇跡を手に入れるのだ」

 

 こうしてサーヴァントをブラザーと誤認するマスターとマスターを母親と誤認する2人の聖杯大戦が始まった。




※この世界線での設定
・東堂
 高田ちゃんと東堂は存在しているが他の呪術キャラはいないと思われる。魔術師の家系ではなく一般人出身。たぶん高田ちゃんの握手チケット10枚で買収されて黒陣営になった。
・ジャック
 apo時空の設定と大体同じだが男マスター相手でもおかあさんと呼んでいたりfgoの設定もあったりかなり都合が良い。本来のマスターである六導玲霞はこの世界線では幸せに暮らしているかもしれない。
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