「待ってくれ2人とも。セミラミス、戦いの前に聞きたいことがある」
「ああ、アレか」
「む?アレ?」
闘いを始めようとする2人を東堂は静止する。
「問おう、セミラミス。どんな男が
「なっっっ!揃いも揃ってなんということを聞くのだ!私はマスターのことをなんとも思っておらぬ」
セミラミスは激昂する数日前にアキレウスに天草との関係を煽られてからというもの彼女の様子はおかしい。明らかに自分を偽れなくなっている。
「なんだ、なんだぁ、天下の毒婦様が生娘のような反応しやがって。もしかして天草の事が好きなのかよ!ぎゃははは、あんな奴のどこがいいんだか」
「あの、天草か趣味が悪いな。遠慮せずに殴れるな。敵として丁度いい」
「貴様ぁ殺してやるぞぉ!」
セミラミスは激昂する。それがプライドを踏みにじられたことか天草を否定されたことかは本人ですら分からない。こうして戦いは始まった。
2対1。構図はモードレッド&ジャックvsセミラミスだ。マスターである獅子劫はもとより東堂は数日前の連戦で碌に戦えない状況だ。
通常なら前者のモードレッドの方が有利に見えるだろう。しかし戦場はセミラミスの宝具の中。つまり彼女の領域のようなもの。数の有利を覆して余りあるほどのバフがかけられている。
「おい!黒のアサシン霧だ!」
持ち前の直感でイヤな気配を感じ取ったモードレッドがジャックに指示を下す。
それに応える形で彼女は『
「む?これは。ジャック・ザ・リッパーの宝具か」
セミラミスは危機を感じ取り魔術を使用し後ろに後退し霧の範囲外から離脱。彼女は天草からジャックが女、夜、霧の時に必殺の宝具をもっていることを知らされているのだ。そしてそれが東堂の
「肝を冷やしたぞ。そして我の毒が効かぬな。…ククク、そのアサシンの毒霧のせいか。なるほど毒をもって毒を制すというやつか」
「あ?なにかっこつけてんだ。さっきの発言でどう取り繕おうがもうお前は生娘なんだよ
「貴様ぁ!」
セミラミスは開戦直後、毒霧を彼らに向けて放っていた。それはジャックの霧がクッションになる形で彼らに届くことはなかった。ジャックの霧も毒が含まれているが彼女の場合は効果が出る相手を指定することができる。つまり味方に無害な毒霧なのだ。
「ならばこれはどうだ!?」
相違ってセミラミスは霧に向けて魔弾を放った。Aランクの対魔力すら貫通する規格外の魔弾だ。しかしこれも「パンッ、パンッ、パンッ」という音がした。そして魔弾は躱される。これは東堂の仕業だ。彼は事前にポケットにしまい込んである呪力を籠めた石を辺りにまき散らしていたのだ。
「ふむ、避けるものだな跳虫よ。」
セミラミスは余裕を崩さない。ティアマトは大蛇の上半身を召喚し彼らに差し向ける。
東堂はそれに驚いた表情をする。
「あれは!まさかティアマトの使い魔、バシュムか」
「ご名答、神代の毒を受けてみるか現代の人間よ」
バシュムの登場によって場は一層の混迷を深める。完全に状況は東堂達の不利だ。
だがセミラミスは容赦はしない。次は大地を毒に染め上げた。
「ははは、跳虫も踏ん張るべき大地がなければどうしようもあるまい。次はどうする羽虫にでもなるか?」
大地は徐々に毒で浸食される。毒が足から入ればアウトなのは目に見えている。
ただでさえ押されているのにアキレウスの戦車のように飛行することのできない彼らにとってこれはトドメにも等しい手であった。
「おい、チョンマゲゴリラ!場所を変えるぞ」
「いや、呪術師の成長曲線は必ずしも緩やかではない」
「何言ってんだお前、ヤケになったか!」
「ヤケになったのだろうな」
モードレッドの叱責にセミラミスは呆れた口調でそれに応える。
セミラミスの爪が東堂に深く突き刺さる。
「気配遮断、ふふ。戦闘で使うことはないと思っていたが。存外使えるではないか」
「おかあさん!」
東堂は血を吐いて倒れ込む。ジャックは悲痛な叫びをあげる。セミラミスの爪に毒が入っていたことは明らかだろう。
セミラミスは気配遮断を使い潜伏し毒を直接東堂に喰らわせたのだ
普段の彼ならこんな奇襲ごとき、簡単に回避していただろう。しかし彼は数日前の連戦で十全に体を動かせてない。
「どうだ?我が宝具、『
ケイローンはヒュドラの毒で死んだ逸話がある。つまり普通のサーヴァントよりもヒュドラの毒が効くのだ。だからこそ彼女はヒュドラ毒を作製した。もっともどんな人間やサーヴァントでもヒュドラ毒を喰らえば致命傷になりえるのだが。
だがヒュドラの毒を持っているのは彼女だけではなかった。
「おらよ!」
「貴様は、叛逆の騎士のマスター!?」
獅子劫だ。セミラミスは彼のことを全くマークしてなかった。なぜならサーヴァントと比べて圧倒的に弱く東堂のような異能を持っていないからである。しかしそんな彼がセミラミスを驚愕させている。
彼は聖杯大戦へ出向くにあたりヒュドラの毒を前報酬として貰っていたのだ。彼は数多の毒を操るサーヴァント、セミラミスの存在を知り報酬のヒュドラ毒を毒を中和する血清へと変えていたのだ。そして今、それを東堂に打ち込んだ。
東堂は毒から復活した。
「見事だ、セミラミス。全くの偶然のおかげで俺らは勝ったよ」
「生意気をぉ!血清で乗り切ったくらいで調子に乗るな。バシュムに庭園、貴様らは何1つとして我の戦力を削りとってないわ!」
「領域展開」
東堂が拍手をした。「パンッ」という音が部屋中に響く。
かつて別の世界線に、ドクターハートレスというロードクラスの魔術師がいた。彼は魔眼蒐集列車とアインナッシュの仔という上級死徒に連なる2つの神秘が交わる状況下でサーヴァントの召喚という無理難題を成し遂げた。
東堂も似たような状況だ。『
そしてなにより!呪術師の成長曲線は必ずしも緩やかではない!
「『
つまり東堂は存在しない記憶を存在する記憶にできるようになったのだ。
「ここは学園?ええい、バシュム。やってやれ」
セミラミスが東堂を殺そうとバシュムを差し向けた。
しかしそうはならなかった。セミラミスの腕とバシュムの牙が入れ替わっていたのだ。
東堂の仕業だ。必中必殺の領域を持つ東堂は容赦せずバシュムの目と鱗を鼻と尻尾を、バシュムが動かなくなるまでバシュムの部位を入れ替え続けた。
「グッ、う! なに!?」
東堂の領域展開、『
ただしそれは通常の術式使用とは異なり体の部位も入れ替え可能となっている。理論上は呪霊直哉の領域展開、『
セミラミスは驚愕する。さきほどまで完全に状況は有利なのをひっくりかえされ死んだと確信していた男が覚醒して猛威を振るっているからだ。しかもここは東堂の領域。自分の空中庭園ではないので自由に毒や幻想種の召喚ができないのだ。彼女の脳内は焦りで一杯になる。だがそれでもなお彼女は抵抗を続けるそれは女帝としての誇りだろう。
「ぐっ、おのれ!だが問題はない。これは結界!ならば我も結界を張り直し中和すればよい話!」
セミラミスは結界を張って必中効果を中和しようとする。しかしそれを見逃すほど叛逆の騎士は甘くない。
「おい、俺を忘れて貰っちゃ困るぜ」
「貴様ぁ!モードレッド!」
「『
赤い雷がセミラミスを包み込む。雷が通った後には何も残らなかった。
彼らはセミラミスとの戦いに勝利したのだ。
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