問おう、どんな女が好みだ   作:でかすぎ史郎

2 / 12
2話

「ったく、薙ぎ払うぞマスター!」

 

 敵を剣で切り裂く。

 剣を投げ敵を串刺しにする。

 敵を剣ごと蹴り上げる。

 

 叛逆の騎士モードレッドにとっては剣の技は数ある選択肢の1つにしか過ぎない。

 彼女は型破りなやり方で黒陣営のゴーレムを打倒していった。

 

 一方のマスターも死霊魔術師として型破りだった。

 

 普通の死霊魔術師は死者を忠実な怪物に加工し使役する。

 だが彼の場合は死体を銃弾や爆弾に加工しホムンクルスを屠る。

 

 この型破りなコンビは威力偵察を兼ねてトゥリファスに侵入した。もちろんユグドミレニアは迎撃するためにゴーレムとホムンクルスを向かわせた。結果は前述のとおり相手にすらならなかった。

 

「セイバーに相応しい強さ、幸運を除いてかなり高い水準でまとまっています。極めつけは宝具の効果と思われるステータス隠蔽。マスターの方は人相と魔術系統、協会に忍び込ませた血族からの情報からして獅子劫界離、フリーランスの魔術使いと思われます」

 

「なるほど、マスターはともかくとして問題は赤のセイバーだな。セイバーよ、先日赤のランサーと戦ったそうだが…どう見る?」

 

 ダーニックの解説を聞き黒のランサー、ヴラド三世が戦闘のプロである黒のセイバーに問いかける。

 召喚の儀から数日が経ち既に赤のランサーと黒のセイバーによる聖杯大戦の()()は始まっていた。

 だが黒のセイバー、ジークフリートは喋るなと命令されているため代わりに戦闘の素人であるマスターのゴルドが答えた。

 

「赤のランサーには到底及ばない、もちろん我がセイバーにもな」

 

「…そうか、とはいえ宝具が全て判明していない。警戒するに越したことはないな」

 

「ならば俺が行こうMrランサー」

 

「…貴様か、東堂葵」

 

「俺の術式なら露見しても何も問題はない、逆に露見すれば敵側が常に気を張る必要すらある。奇襲で情報を引き出すには最適だろう」

 

「待て!東堂、相手は最優のサーヴァントだ。ここは慎重な対応をするべきだ」

 

「心配には及ばないダーニックの爺さん。かのアンサリバンも言っただろう、出る前に負けることを考えるバカがいるかと」

 

「なんだそれは?絶対に言ってないだろうそんなことは。存在しない記憶を捏造するのはやめろ」

 

 もちろんダーニックの言う通りアンサリバンは言ってない。猪木の名言だ。

 そんな関係のないことはともかく稀代の謀略家である彼は慎重な行動を心掛けている。それは何十年もかけて聖杯大戦を用意したことからも明らかであろう。そして彼は東堂を自分の手で直々にスカウトしたので東堂の異常性をこの中で一番理解している。だからこそ止めたのだ。

 だがそれを止める1人のサーヴァントがいた。

 

「よいダーニック、行かせてやれ」

 

領王(ロード)、しかし、」

 

「東堂めはサーヴァントに匹敵するとは聞いた。なんでも日本の京都という都市での聖杯戦争で勝利したと。とはいえ余達は奴の強さを知らない。正直なところ人間がサーヴァントと戦えるということ自体が疑わしい。これでは本格的に連携を取る時に不都合が生じるだろう。いい機会だ、今こそ強さを示すといい」

 

「感謝するMrランサー、さあ行こうかブラザー」

 

「解体しようおかあさん!」

 

 こうして東堂達はモードレッド達を迎撃することになった。

 そして迎撃される予定のモードレッド達はというと

 

「しかしだなマスター」

 

「どうしたセイバー?」

 

「敵が多すぎるぜ、まるで何かを待ってるかのように」

 

「ああ、まったくだ。こりゃ早いうちに撤退だな」

 

 彼女らは追加の敵と戦っていた。

 ダーニックは東堂が来るまでの時間稼ぎとしてホムンクルスとゴーレムを追加で向かわせていた。もちろん彼女らは違和感に気づいている。

 モードレッドが辺りを警戒していると突如としてメスが彼女に向けて放たれた。

 

「ちっ!」

 

 当然、これにあたる彼女ではない。アサシンによるメスの投擲は魔力放出によって撃ち落された。

 だがそれだけではない。

 

 パンッという破裂音がトゥリファスの街並みを通過する。

 次の瞬間、メスが東堂に入れ替わっていた。

 

「は!?」

 

 突然のことにモードレッドは反応できない。東堂がその隙を見逃すはずもなく彼女の腹を全力で殴る。彼女はそのまま吹き飛び壁に激突した。

 

「セイバー!」

 

「くそ…ドジ踏んだ」

 

 直感スキルにより受け身を取り致命傷は回避した。だがこのままでは獅子劫が危ない。

 なぜならジャックが獅子劫を狙おうとしているからだ。

 

「舐めんじゃねぇよ!」

 

「いたっ!」

 

 燦然と輝く王剣(クラレント)をジャックに投げることによりそれは失敗に終わった。

 だが状況は依然として東堂側が優勢だ。

 

「赤のセイバーとそのマスターだな」

 

「お前は…東堂葵か」

 

「そうだ」

 

「知ってるのかマスター!?」

 

「過去にサーヴァントを単独で倒した呪術師だ。気をつけろ強いぞ」

 

「たかが人間がサーヴァントを!?なるほど、相手に不足はないな」

 

「待て赤のセイバー」

 

「なんだぁ?時間稼ぎのつもりか?」

 

 東堂は敵に向かって「待て」と、そう言い放った。

 対するモードレッドは立て直しを図るために要請通りに待った。彼女にとっては時間を稼いでくれた方が得だ。だからこそ東堂の提案に乗った。

 

「どんな女がタイプだ?」

 

「はぁ!?」

 

「俺は女の好みで相手が退屈な奴かどうかがわかる。これが聖杯大戦の()()なんだ。初っ端から退屈な奴と戦いたくはない」

 

「あぁ?オレにとっちゃあ緒戦かどうかなんて関係ないな。勝てばいいだろ」

 

「そうだな()()か、どうかは関係ないな。すまなかったな赤のセイバー」

 

「ホントだよおかあさん。それに赤のセイバーは女だよ」

 

「分かるのかブラザー?」

 

「うん!匂いで分かるよ」

 

「そうか、それは本当に申し訳なかったな赤のセイバー。好みの件は男でもいいぞ」

 

「よぉし!ぶっ殺す!」

 

 モードレッドは地雷(女呼ばわり)に触れた東堂達に襲い掛かった。。

 だがその前にパンっと東堂が拍手をする。

 するとモードレッドと獅子業の近くにあるゴーレムの残骸が入れ替わった。今のモードレッドの一撃は獅子劫に向けて直撃しようとしている。

 だが彼女は直感スキルを持っているので間一髪のところで逸らした。

 

「危ねぇ!」

 

「てめえっ!よくもオレのマスターを!」

 

「気をつけろセイバー、奴は拍手をトリガーに神秘を纏ったもの同士を入れ替えが出来る術式を持っている。しかも呪術由来だから対魔力が意味をなさない!」

 

「了解だ!」

 

 東堂は魔術師ではなく呪術師、その名の通り呪術を使う。だからこそ魔術をはじく対魔力スキルは意味をなさない。

 だからこそ高い対魔力スキルを持つモードレッドにも入れ替えの術式、不義遊戯(ブギウギ)が通用するのだ。

 

「ギアを上げろブラザー!」

 

「うん、殺しちゃおうおかあさん」

 

 こうして本格的な戦いが始まった。

 ステータス的に2対1であることを加味しても東堂側が不利だ。だが東堂とジャックの存在しない長年の絆による連携や東堂の術式による翻弄がある。

 ジャックは小柄で東堂は大柄だ。ゆえに入れ替えの度に狙いがブレる。それがモードレッドを消耗させる。

 

 戦況は傍から見れば全くの互角と言っていいだろう。

 だがモードレッドはそうは思っていないようだ。彼女はマスターに念話をした。

 

(マズいぞマスター)

 

(わかってる、他のサーヴァントだな)

 

(それだけじゃねぇ、ゴーレム共も厄介だ。アイツら神秘を纏ってるからあのチョンマゲの入れ替え対象だ。辺りがゴーレムの残骸だらけになると入れ替え先の選択肢が増えて不利だ。一気に吹き飛ばすために宝具を使わせてくれ)

 

(ここでか、ユグドミレニアも監視がいるだろうが…そんなこと言ってる場合じゃないな。使えセイバー)

 

(おう!)

 

「『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』!!!」

 

 モードレッドは宝具を発動した。迸る赤雷が東堂達に向かい爆裂した。

 赤雷が通った後は地面が抉れゴーレムの残骸も東堂達も存在しなかった。

 

「やったか!」

 

「いや逃げられた。ここはアイツのホームグランド、緊急脱出用の魔力の籠った物を事前に配置してたんだろうな」

 

 獅子劫の言う通り市街には東堂の位置替え用の魔術礼装が散りばめられている。

 東堂は遠くで彼らの行動を監視している。

 

「…そうか、すまなかったな。セイバー、まさかユグドミレニアがあの東堂を雇っていたとは。早期に撤退するべきだった」

 

「気にすんなマスター、あれは仕方ない。おそらく位置替えで高速移動して追跡してきたんだろ。それに死ぬよりは安い」

 

 こうして赤のセイバー達はトゥリファスから撤退した。

 場所は変わり城塞前、そこには術式で緊急脱出した東堂達がいた。

 

「よし、これで赤のセイバーの真名と性別、それに赤のランサーと連携が取れてない可能性が高いことがわかったなブラザー」

 

「そうだねおかあさん、大収穫!大収穫!今の時点で連携していないのはありえないしどっちかが単独行動してるね」

 

 既に赤のランサーと黒のセイバーによる聖杯大戦の()()は始まっている。

 そして赤のセイバーは東堂の「緒戦」という発言について疑問に思わなかった。

 これは赤の陣営内で連携が取れてない何よりの証拠。

 

 赤のセイバーに女の好みを聞いたのは東堂がイカレポンチなだけではない。狂った質問を投げかけることにより緒戦という部分を注目させない働きを持っていたのだ。つまりは半分デコイだ。もう半分は本心で好みを知りたかっただけだが。

 

「しかし、赤のランサーのルーラー襲撃に加えて連携の不備か。これは赤陣営になにかあるな」

 

「おかあさん、明日はハンバーグが食べたいな」

 

「そうだなブラザー、作るとしようか」

 

「うわぁい!」

 

 こうして東堂達も城塞に帰った。




ここまでご視聴してくださりありがとうございます。
評価、感想、お気に入り登録、お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。