「全人類の救済?そんなバカげたことを」
「バカげたこと?それを成すのが聖杯でしょう…具体的に言うと第三魔法を全人類にかけます」
第三魔法、それは魂の物質化、具体的に言うと完全な不老不死の実現である。大聖杯を開発した一族は第三魔法を再現しようと大聖杯を作り出した。ゆえに天草の願いも十分に現実的な願いだ。
「それは今の人類に早すぎます」
「いえもう遅いのですよ。私はもう誰も失わない平和な世界にしたい。しかし貴方、もっと言えばあなたを派遣した抑止力はそれを許さないでしょう」
「ええ、許しはできません。貴方のやり方は先ほどの吸血鬼と同様に世界を破滅させるかもしれないのですよ!」
ジャンヌは激昂した。この世界のルールとして選択肢が少ない世界は剪定され消滅する定めにある。全人類を不老不死にすると変化が起きずらくなり選択肢が少ない世界になってしまう。つまり世界が亡ぶかもしれないのだ。だからこそ彼女は激昂する。だが天草はどこ吹く風だ。
「そうですか。さて、話は変わりますがユグドミレニア側の皆さんには降伏を薦めたい」
「降伏、だと?そこまで大勢は決していないはずだが?」
東堂がつまらなそうに応答する。
「ええそうですね。ユグドミレニア側はランサーとバーサーカー。セイバーを失い残り5騎と東堂。こちら側はバーサーカーとアーチャーを失って6騎と私、天草。頭数では此方が上でしょう」
「なっ、姐さんが負けたのか!誰にやられた!」
「ええ、そこの東堂葵と黒のアサシン、ジャック・ザ・リッパーに殺されました」
「…そうか」
アキレウスはそう吐き捨てて、東堂を忌々しそうに睨んだ。
だが東堂は気にせず天草に語り掛ける。
「分かってるじゃないか天草、この戦力差ならまだ勝機はある」
「それは違うな」
アヴィケブロンが東堂の言葉を否定する。
「なにが違うんだMr.キャスター」
「戦力の質だ。アキレウスはケイローンが相手するとしてそこの赤のランサーに勝てる英霊がいない…これがジークフリートでもいれば状況がかわっていたのだろうがね」
「まさか裏切る気ですか、キャスター」
ケイローンはキャスターを責める。しかしキャスター、アヴィケブロンは気にしない。
「ああそうだ。あいにく私の願いは聖杯がなくても達成できる。利害は一致している」
「そうですか。歓迎しますよ」
「だが1つ条件がある」
「なんですか?僕の元マスター、ロシェには手を出さないでくれ」
「わかりました」
「…まさかあなたは」
「アーチャー、僕には僕の夢がある。そのためには倫理も踏むにじるさ」
こうして黒のキャスター、アヴィケブロンは裏切った。
そして、この問答でケイローンはアヴィケブロンがロシェをゴーレムの炉心にしようとしたことを察した。
「他はどうです?」
「私は遠慮しておく。外道に落ちた覚えはない」
ケイローンは否定した。
「では東堂葵とジャック・ザ・リッパーはどうです?あなた方の夢次第では出来る限り強調しますよ」
「私はおかあさんがいいなら…おかあさん?」
東堂は震えていた。そして泣いていた。
「えっと、いや、どうしたのですか?」
「違-----------う!!!!!」
東堂は叫んだ。音がこだまする。
「退屈だよ。退屈だよ。天草四郎。聖杯戦争は血沸き肉躍る魂の独壇場。それを降伏で終わらせるだと。実に退屈だ。貴様のようなやつは好みの女を聞くまでもない」
「…?…そうですか。では敵ということですね」
「そうだ」
東堂はキレていた。それも物凄く。彼は楽しみにしていたのだ。聖杯大戦を。
だからこそ許せなかった。聖杯戦争をこんな寒いやり方で終わらせようとすることに。
「ではアサシン、ライダー、ランサー。残ったユグドミレニアのサーヴァントとルーラーを始末してください」
傍らで気配を遮断してたアサシンが出現した。
そして彼ら3騎は東堂達におそいかかった。彼らは既に天草の目的に同意している。
「なっ、あれは黒のアサシン、セミラミス」
「なるほど、呪力の残穢からして奴がこの庭園の主か」
「さあ東堂、アサシン、ルーラー、逃げますよ」
「逃げられると思うたか?」
セミラミスが東堂を両腕を鎖で巻き付けた。これでは不義遊戯は使えない。
「いささか不本意ですがルーラー、東堂、黒のサーヴァント、貴方達は邪魔ですこの場で退場してもらいましょう」
そういってセミラミスとアヴィケブロンのゴーレムが攻撃を開始とした時、上から赤い稲妻が走った。
「なるほど、セイバーは貴方でしたか叛逆の騎士、モードレッド」
「ブッコミいくぞ!」
モードレッドの赤い雷がアヴィケブロンのゴーレムを吹き飛ばした。
それを怪訝そうな目で見るのは東堂であった。
「お前は味方になるのか?」
「あぁ?味方じゃねぇよチョンマゲゴリラ!こいつら
「おのれ、セイバー、赤陣営の癖に裏切りよって」
セミラミスが鎖で彼女を縛ろうとする。それを直感で避けて鎖を叩き落した。
「ブラザー、霧だ」
「はーい!『
「いけません。セミラミス、下がってください。その霧は危険です」
女性であるセミラミスに取って彼女の宝具は天敵だ。彼女が落とされれば庭園は墜落し始める。そしたら計画が狂ってしまうのは自明の理だ。だから天草は彼女を下げさせる。
それを好機と見た東堂達は撤退を開始した。ちょうど霧でめくらましになっている。
「おい!モードレッド。俺らは逃げる。お前も逃げたほうがいいんじゃないか」
「ああ、そうだな」
モードレッドは冷静に判断しそれに追従する。
そうして彼らは庭園から抜け出して、先ほどまで決戦をしていた戦場を駆け抜けていた。
「現時点で黒と赤の対立構造は崩壊しました」
「そうですね。黒の頭目2名も敗退しユグドミレニアの旗印たる大聖杯も奪われました。それにルーラーと赤のセイバー、モードレッドは天草側と敵対関係にあります」
ジャンヌとケイローンが話し合いをしている。もはや状況は絶望である。
「ゆえに我ら黒陣営は彼女達との同盟を提案したい。それが我がマスターにしてユグドミレニア当主代行の意思です」
ケイローンは庭園内で起きたことを全て自らのマスターたるフィオレに。逆にフィオレはセレニケが死にジークフリートの力を持つジークとアストルフォと同盟を結んだことを伝えた。その折にフィオレはルーラーとモードレッドをどうにか
「あ?俺のことを女呼ばわりするんじゃねぇ」
「失礼した。彼女と彼との同盟を提案したい。それで構いませんねトウドウ、ジャック」
「俺は新参の人間だ。口を挟む余地はない。Miss.フィオレの選択を尊重しよう」
「おかあさんが言うならいいよ!」
現状の勢力で最強は天草側だ。頭数はもちろん質という面でもトップサーヴァントたるアキレウスとカルナがいる。だからこそ残った戦力で組むのは自然だろう。
モードレッドは霊言でマスターの確認を取る。
「私はかまいません。」
(ということだ、マスター。どうする)
(俺は構わない。お前は黒のアーチャーや東堂とと色々とあったわけだがどうだ?)
(あのチョンマゲは気に食わないが。他に勝ち筋がないしな)
(ああそうだな。ここは一時的に組むべきだろうな)
モードレッドとそのマスター獅子劫は冷静に判断をする。
「マスターからも了承がとれた。俺らは天草たちを倒すまでの間、お前らと同盟を組む」
モードレッドはユグドミレニア・ルーラー連合との
その同盟宣言にいち早く反応したのは東堂であった。
「そうか、では問おう。どんな奴が好みだ?」
東堂は配慮して
「あ!?テメェも懲りねぇな。俺は選定の剣を抜いて王となる。好みなどない」
「む?王ならばハーレムを築くのではないのか。いや仮に築かなくてもそもそも王となってからの先はなんだ」
例えば英雄王なら愉悦、征服王なら世界征服。彼らには王となった後があったのだ。だがモードレッドにはない。東堂はそれを見抜いていた。
「…うるせぇ!俺は良き王として統治をおこなう。決まってるだろう」
モードレッドは口をとがらせて反論する。
「そうか…まあいい、これからよろしくなルーラー、セイバー」
こうして同盟が成立した。
(ケイローン、緊急事態です)
(なんですかマスター?)
(遠くに巨大なゴーレムが!ミレニア城塞に近づいています!)
事態は深刻を深めていた。
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