雷鳴を奏でる装者《リメイク》   作:不知火 秋

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はい、というわけで1話目なので初投稿です


彼女の始まり

 

 

 

 

 

 幼い頃、私は両親に世間一般で言う虐待を受けていた。毎日のように暴力を振るわれ全身が痣や打撲まみれ、食事も平日は給食があるのでまだいいが、それ以外となるとそうはいかなかった。生ゴミ行きになるであろう食材の端材が出れば運のいい方で、普段は平日も1食たりとも私には食事は与えられず、私の体は痩せ細っていた。

 だが、教師は気づかなかった。それもそのはず、小学1年ではまだ周りも痩せている子がいたのでそれと同格だと思われていたのだろう。

 

 正直、自分というのは何の生きる価値の無い人間なんだろうと思っていた。 

 

 

 

 ある冬の休日、両親は当然のように私を放置して外出する際に鍵をかけ忘れていた。

 

 それを見て私は『これは運命だ。今日逃げ出さないと近いうちに死ぬ』そう思い。どうせ死ぬならと、両親への今までの行いに対する精一杯の嫌がらせをするために家を飛び出した。

 

 

 

 飛び出したは良いが私の格好は長袖に半ズボンであり、靴下や靴などは履いておらず裸足だった。 

 

 何故、靴下や靴はないのに長袖はあるのか。それは両親は私に年中無理矢理長い服を暑くても着させて、傷が周りに見せないようにしていたからである。もちろん、小学校に通ってる間も長袖を着させられていた。

 

 少しでも捲ろうとすれば親に体を殴られた。そんなこともあり私は腕を捲った事で傷が周りにバレることでさらに殴られるんじゃないかと思い、怖くてずっと長袖を着続けた。

 

 そんな理由で着てる長袖のおかげで傷がなかなか見えないはいえ、服の下は傷だらけでボロボロ。そんな私をもし、何かしらのアクシデントで他の人に見られたら余程不味いのか、学校の日以外の休日は家からほとんど出してくれなかった。

 

 靴下や靴は持ってはいる。だが、それらは親が私を虐待していることを隠すためにわざわざ自分の部屋に隠し登校する時だけ取り出し私に与えるのものだった。だから隠し場所は知らないし、探すだけ時間の無駄でもあった。

 なので私は裸足のまま飛び出していた。冬の寒さもあり足に傷ができる度に激痛が走った。だけど私は『帰りたくない』その一心で痛みに耐えながら走り続けた。宛もなく、ただただ走り続けた。

 

 

 しかし、走る以外にも足の痛みに耐えるのにも体力使っていたので、まともな食事も取れていなかった私の体力は正直なところ尽きかけていた。

 

 

 

 

 

 

 きっと両親の外出は多分買い物に出たのだろう。買い物であればいつも遅くなるはずだし、時間には余裕がある。荒くなった息を整えるためにもちょうどすぐ側にあった公園で休憩することにした。

 

 

 

 その公園には1人でブランコを漕いでいる白っぽい銀色の髪の少女がいた。

 

 

 

 これが私の運命の出会いだった

 

 

 ────────

 

 ──────

 

 ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その女の子を見た時、私は身長的に私より年下なのかな?と思った。だがそれよりも

 

 

 

 

 綺麗な髪色だなぁ」

 

 

 

 私がそう思っているとその少女はこちらを振り向く。

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 あ、不味い、声に出てた!?それよりも、見つかっちゃった...どうしよう。

 

 そう思った時には手遅れで、その少女はもう私の目の前にまで来ていた。

 

 

 

 

 

「どうかしたの?あ、貴女も一緒に遊びたかったの?それなら一緒に遊ぼう!」

 

 

 

 少女は笑顔でそういうと私の腕をギュッと掴む。私は服の下の傷を掴まれた痛みについ、顔を歪めてしまった。それを見た少女は驚き手を離す。

 

「え、だ、大丈夫?」

 

 

 

「だ、大丈夫だよ....」

 

 

 

 私は掴まれた腕を抑えながら答えると

 

 

 

「ううん、ダメ。やっぱりちょっと腕見せて」

 

「えっ!?ちょっ!」

 

 その少女は私の返事が信じられないのか、無理矢理私の腕を捲って驚く。

 

 

 

 

 

 

「どうしたの....この腕の傷....」

 

 

 

「....家で転んだだけ」

 

 

 

「絶対に嘘!こんなの転んだだけじゃなるはずない!」

 

 

 

「大丈夫だから...」

 

 

 

「それによく見ると足も裸足で傷だらけ。何があったの!?」

 

 

 

「大丈夫だから、ほっといて!」

 

 

 

「ほっとけない!」

 

 

 

 少女は涙目になりながら私の手をとる。

 

 本当に心から心配してくれてるのかは分からない。だけど、ほっといて欲しいのにほっといてくれない。それがとても腹ただしかった。

 

 

 

 

 

「うるさい!どうせ私より年下なんだから黙って!」

 

「私はこう見えても9歳だよ!」

 

 え?9歳?私より2歳も年上?嘘でしょ?

 

 

「えっ?9歳?私よりも2歳も年上なの?その身長で?」

 

「人が気にしてることを.....」

 

 

 

 身長のことを言うと少女はしょんぼりとした。なんというか、『かわいい』と思ってしまった。

 

 かわいいと思えるくらいには少し気が抜けたのか、荒れていた私の心は少し落ち着いていた。

 

 落ち着いて思い出した。そうだ、公園には休憩目的で来たんだ。体力は少しは回復したし早く移動して両親が帰ってくる前にもっと家から距離を取らないと...。

 

 

 

「....とりあえず私はもう行くね」

 

 

 

「ねぇ...本当に大丈夫なの?」

 

 

 

「うん。そろそろ行かなきゃ」

 

 

 

「....私も一緒に行く。貴女が心配だから」

 

 多分、この少女はこれ以上は譲らない。私は彼女の目を見てそう直感した。

 

 

「....勝手にして」

 

 

 

「...貴女、名前は?」

 

 

 

「はぁ......律歌(りつか)....上倉(かみくら) 律歌(りつか)。あなたは?」

 

 

 

「私は雪音クリス。よろしくね」

 

 

 

 

 

 これが私とクリスの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私たちは2人で公園から離れる。移動中にクリスと話しているうちに私たちはいつの間にかお互いを呼び捨てで呼ぶくらい仲良くなっていた。

 私には友達なんていなかったけど、友達っていてくれるとこんなに嬉しいんだね。

 

 クリスの家はこの先をずっと進んだところにあるらしく、あの公園にいたのは偶にはあそこまで行って遊びたかったかららしい。

 

 それにクリスの家族のことも聞いた。両親は有名な音楽家で父親の名は雪音雅律、母親の名はソネット・M・ユキネというらしい。その両親と共に明日には飛行機でバルベルデという国に行ってえぬじーおー(?)という活動をするらしく、クリスもそこに着いて行くとのこと。

 クリスの両親の夢は『歌で世界を平和にすること』らしい。あぁ、それが叶えば何て素晴らしい世界なんだろう。私も歌は好きだ。両親がテレビで音楽番組を見ている時に部屋から漏れ出る歌。その歌は私にとって唯一の癒しだったからだ。

 クリスの両親には世界を歌で平和にしてほしいものだ。

 私も、できるならばそんな世界を作る手助けがしたいなぁ。と純粋にそう思った。でも、こんな死に損ないが一緒に行くだけお荷物だ。

 

 その後も話し続けながら私たちは移動していく。

 

 

 

 

 

 だが、しばらくすると聞き慣れた声が聞こえ、2人組の人物が見えた。見えた瞬間、私はクリスを引っ張ってすぐに近くの路地に身を隠した。

 

 あれは私の両親だ。早い、もう帰ってきて私を探しに来たのか。

 

 

 

 

 

「クリス、急いでここを離れよう。あの二人に見つかるのはまずい」

 

 

 

「え?あの二人は?」

 

 

 

「両親」

 

 

 

 あの二人が両親だと伝えるとクリスは何かに気づいたようにハッとする。

 

 

 

 

 

「.....まさかその怪我って.....」

 

 

 

「多分クリスの予想通りだよ。ほら急ごう」

 

 

 

 

 

 クリスは頷き、私と一緒に移動を開始する。が、路地から出ようとした瞬間に両親の「見つけた!」という声が響いた。クソッ、足が早い。

 

 

 

 

 

 私たちは路地から抜け出るとすぐに曲がり、幅が広くなったのでクリスは私と並走する。

 

 だがその瞬間、警報がなる。その警報をこの日本。いや、世界で知らない人はいない、だってその警報は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この音って....」

 

 

 

「うん、間違いない」

 

 

 

 

 

 ノイズが現れたのを知らせる警報だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 警報がなると、すぐにヤツら(ノイズ)は進行方向とは反対側に姿を現して悲鳴を上げながら逃げている人々を片っ端から炭に変えていく中、私達はノイズから距離をとるために全力で走る。

 

 私はノイズがどこまで近づいてるかを見るためにチラッと後ろを見た。その瞬間、両親が路地から出てきて悲鳴をあげる間もなくノイズとぶつかり、炭になった。それを見ると私は視線を戻し前を向き走り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがしばらく走ると私は転んでしまった。転んだ私に気づいてクリスも足を止める。

 私はここで死ぬのかなぁ....でも。ここで死ぬとして、私はクリスが、初めて出来た大切な友達がこんな死にかけ(私なんか)と一緒に死ぬことは許容なんてできるはずがなかった。

 

 

 

 

 

「律歌!?大丈夫!?」

 

「クリス、私を置いて逃げて」

 

「そんなのできない!」

 

 

 

 クリスに私を置いて行くように言うが、聞かない。

 仕方ない。私は転んだせいでガッツリ血が出てる足に喝を入れ立ち上がる。

 

 

「大怪我してるじゃない!一緒に逃げようよ!私が肩を貸すから一緒に逃げよう!」

 

 

 ごめんね、クリス。私も出来れば一緒に逃げたいよ。

 でもね。それはダメなんだ。こんな死にかけで体力も無く、オマケに怪我という足枷も付いてる足手まといがいたら貴女まで死んじゃう。

 そんなの冗談じゃない。私を連れて一緒に逃げたせいでクリスが死ぬ。そんなのゴメンなんだ。

 クリスは私を友達とは思ってないかもしれない。だけど、私からすれば命に替えてでも救いたい大切な友達。死んで欲しくない大切な友達だ。

 だから私はここで一世一代の、後になって絶対に友人を傷つけることになるであろう最低最悪の嘘をつく。

 私の顔、笑え。大切な友達を助けるために笑うんだ。

 

 

 

「大丈夫だよ、クリス。私もすぐに追いつくから。絶対に追いつくから。ちょっと合流するのが遅れるかもしれないけど絶対にクリスにところに行くよ。クリス、私を信じて欲しい」

 

 できるのなら、できるのであればこの言葉を振り切って私の手を取って欲しい。私と一緒に逃げて欲しい。

 そんな甘ったれた気持ちを殺して、精一杯の強がりをしてクリスに語りかける。

 

 

「....わかった。絶対の絶対だよ。絶対に追いついて....お願いだから....」

 

 クリスはそう言うと私に背を向け走り出す。

 あぁ、よかった。これでクリスは助かるはずだ。

 こんな死に損ないでも助けられる命があってよかった。

 

 

「さて、後は私1人か」

 

 私も血の出てるボロボロの足でノイズとの鬼ごっこ(時間稼ぎ)でもするとしようか。幸い、見た感じノイズの狙いは逃げたクリスじゃなくて私だ。すっ転んで地面に伏せてた間に、ちょっとだけだけど体力も回復した。

 

 

 

 

 

「ほら、来なよノイズ。鬼ごっこの始まりだよ」

 

 

 

 この命、クリスが生き残るための時間稼ぎに使えるなら悔いはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの時にその場にいたノイズを全て引き連れ捕まったら即死の鬼ごっこが始まり、クリスが逃げた方向とは全く別の方向に逃げてから数十分が経とうとしている頃。私は走り続けて正直体力が底を尽きかけていた。転んだ時の傷はもちろん、裸足で走っているので足裏も足も痛いわで正直めちゃくちゃ辛い。

 

 それに走る速度も落ちてきた。だけど、まだだ。まだ時間は稼げるはず。そう思い角を曲がるとそこは行き止まりになっていた。

 行き止まりの壁に背をつけ、座り込む。もう、私には指1本動かす体力すらもなかった。

 

 

 視界も霞んできた。あぁ、ここが終点なのか。振り向けばノロノロとノイズが迫っていた。

 

 クリスは無事に逃げれたかな?家族と会えたかな?もし会えたならいいな。

 

 

 そう思い、私は目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、しばらくして私は目を覚ました。

 あれ?ここが天国?そう思ったが、目の前に広がるのは私が最後に見た行き止まりの路地。つまりここは天国では無い。まだ私は生きていた。そして、目の前にいたはずのノイズだが、ヤツらがいた場所にこんもりと炭の山ができており、時間の経過で勝手に死んだのだとわかった。

 

 私は、生き残ったみたいだ。

 

 

 

 

 一応、眠っている間に体力が回復したようだ。幸いこの路地はよく見ると通学路の近くであり、自宅に通じる通学路の一つである大通りに向かうことにした。

 だが、そこに広がっていたのは地獄だった。

 

 人型になった炭が辺り一面をおおっていた。

 

 私は、両親が炭になる瞬間を見た。つまりこの炭はノイズの手によって殺された元人間。

 それを理解した瞬間、私は吐いた。中身なんて入ってないけどひたすらに吐いた。

 

 

 

 吐き気がようやく収まり、なんとか立ち上がり、クリスとの約束を破り帰路に着く。

 原型を保っているのが私だけというのは不思議で、逃げるルートが良かったのか、もしくはよほど私の運が良かったのだろうか。今となっては分からない。もしかしたら運命というやつに自分だけが逃がされたのかもしれない。

 

 帰路に着いている間、私の耳には『どうしてお前みたいな死に損ないが生き残った』、『私はまだ死にたくなんてなかった』、『私じゃなくてお前が死ねばよかったんだ』そんな怨嗟の声が聞こえていた。耳を塞いでも手を貫通して耳に響いていた。

 

 ごめんなさい、ごめんなさい。私が生き残ってしまって。ごめんなさい。

 そう謝りつつ私は耳に響く怨嗟の声を受け入れていた。

 

 

 そして私は、思った。

 怨嗟の声を受け止め、私は前を向いて生きていかなきゃダメなのだと。

 生き延びたのあれば、生きなくては。この場で死んでしまった人たちの生き残りたいという願いを元々死ぬつもりだった私だけが叶えてしまった分まで生きようと。

 

 

 

 

 

 

 私の自宅周辺にもノイズが出たのか、辺り1面とは言わないが、炭が大量にあった。

 それを横目に私は鍵の閉められていなかった我が家へと戻った。

 

 生き残ったわけだし、まずは腹ごしらえをしよう。これからどうするかは食事をとってからでも遅くはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの地獄の翌日、外を歩いたが近所の生存者は存在していなかった。ちょっと離れたところにあるスーパーまで行ったが誰もいなかった。あったのは人型の炭だけだった。

 これからどうしようかと考えてまず思いついたのは食料の確保だった。幸い誰もいないので、傷みやすいであろう生の食材から私は買い物カートに入れ家まで運び、冷蔵庫にしまっていった。スペースが足りない分はその都度、隣の家の窓ガラスを破壊し侵入し冷蔵庫を使わせてもらった。あと、運の良い事にライフラインが生きていたので電気やトイレも全然使えた。良かった。

 その日の夜。テレビをつけると、ニュース番組で雪音夫妻が娘を連れてバルベルデへと向かったというニュースが流れていた。

 

 あぁ、良かった。無事に会えたんだね。本当に良かった。

 

 

 

 

 

 あの日から数週間、朝昼晩とスーパーにあったレシピ本を見ながら拙くも料理を作って食べるのを繰り返し、テレビで情報を収集するという日々を送っていた。

 傷だらけで肉付きのあまり良くなかった体はまともな食事を取れるようになってから少しは傷も回復し肉付きもマシになったと思う。

 

 

 そんな日々を送っていたある日。雪音夫妻がバルベルデにて戦線に巻き込まれ死亡したというニュースを私は目にした。

 今すぐにでも吐きそうになっていたが、無理やり抑え続きを見た。ニュース曰く、死亡が確認されたというのは夫妻だけであり、娘であるクリスが死んだという情報は無かった。それを知った瞬間、吐き気は不思議と収まった。

 良かった。クリスだけでも生きてる可能性があってよかった....。

 

 だが、クリスの両親は死んでしまった。『歌で世界を平和にする』という正義の味方のような夢を叶えきれずに死んでしまった。

 その願いを私はできるだけ叶えようと思う。どれだけ時間がかかるか分からないけど。私が夫妻の夢を引き継いで代わりに叶えるんだ。正義の味方のような夢を私が現実にするんだ。

 

 

 

 

 

 それを誓った翌日。私がいつものように家を出て食料調達をしに向かうと、そこには自衛隊のような人達がいた。彼らは私を発見すると声を上げ、人を集めてやって来る。

 

 彼らは政府の救助隊で、彼ら曰く、生存者を探しても探しても見つからずここが最後のブロックだったらしい。そこで私を見つけ、喜んでいたという。

 

 

 

 それから私はそのまま都心へ連れられ、生存者ということで一応検査を受けたが、結果は健康そのもの。異常などは見られなかった。

 だが、その後救助隊の方と共に施設から出ると黒服の方々が待ち構えていた。

 そして私は救助隊の方達から黒服の方達に受け渡され、何故か、本当に何故かゴツい手錠をかけられ私は黒い車に乗せられどこかへ連れていかれた。救助隊の人たちも何も疑問に思ってないし、多分大丈夫なんだろうけどなんというか手錠されてるだけで居心地は良くない。

 

 窓から車外を見ていると、通る先々にある標識に何度もリディアン音楽院という文字が見えた。

 リディアン音楽院といえば、小学校でクラスの人が話していたような....。確か名前の通り音楽に関する学校だったっけ?

 でも、なんで政府関係の人達が私をリディアン音楽院に?あそこはただの学校じゃないの?

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくすると車は止まり、黒服のお兄さんに優しく降ろされると目の前にあったのはやっぱりリディアン音楽院だった。校内へ入ると、複雑なルートで中を進んでいき、とある場所に到着すると壁が開き、中はエレベーターとなっていた。

 

 私は黒服さんと一緒にそれに乗せられ、エレベーターは降っていく。そして、辿り着いたのは周囲が黒服の人達に囲まれた少し広めのスペースで、その部屋の中央にはパイプ椅子があった。

 

 そのパイプ椅子に座るととある男性がこちらへ来る。その男性は周りの黒服さんと違い、赤いスーツを着たガタイのいいおじさんだった。その後ろには私より少し年上に見える女の子がいた。

 

 

 

 

「この少女が報告書にあった?」

 

「はい、上倉律歌。3週間ほど前に発生した大規模なノイズ災害。その唯一の生存者です」

 

 黒服のお兄さんはおじさんにそう伝えるが真実は違う。

 

 

「黒服のお兄さん。その情報、違うよ。生き残ったのは私だけじゃない」

 

「何!?本当か!?律歌くん、それは誰か教えてくれるかい」

 

「えぇ、と言っても彼女はあの日の翌日にバルベルデへ行きましたよ」

 

「バルベルデ....まさか」

 

「そのまさかです。その子の名前は雪音クリス。私の友人ですよ。あの子が私をどう思っているかは知りませんけどね。確かに彼女の両親は死にました。だけど、クリスは生きてるって信じてます」

 

「そうか....。話は変わるが、辛いかもしれないがノイズに襲われた時のことを教えてくれないか?俺たちが君の家族や友人達の仇をとってやる」

 

「いいですよそんなこと(・・・・・)しなくて。私の親は仇をとる価値もありませんし、そもそもクリス以外の友人なんていませんから。それとこちらからも聞きたいことがあります」

 

 そう、私はこの人と話していて、気になったことがあった。

 

 

「なんだ?」

 

「仇をとると言いましたけど。それってつまりノイズに対抗する、もしくは倒せる手があるって事ですよね?」

 

「む....」

 

 おっと、この反応は図星のようだ。というか、さてはこの人嘘つくのが下手だな?

 

 

「今の反応は正解って思っていいですよね?」

 

 私の言葉に観念したのか、おじさんは口を開く。

 

 

「俺の負けだ。そうだ。確かにノイズと戦えるようになる手段はある。だが、それは誰でもできるようになる訳では無い。適合しない場合は最悪死んでしまうこともある。それでも君はこの地獄に踏み込むか?」

 

 おじさんは圧をかけて私に尋ねる。

 それの回答なんて、手段があると聞いてからとうに決まっている。

 

 

 

「やります。その先が地獄だとしてもやります。私にノイズを倒す力をください」

 

 

「わかった。とりあえず、ソレを扱えるかどうかは明日検査しよう。今日はこの施設で寝泊まりするといい」

 

 

「ありがとうございます。そういえば貴方のことはなんと呼べば?」

 

「あぁ、自己紹介が遅れたな。俺は風鳴弦十郎だ。好きに呼んでくれて構わん」

 

「わかりました。とりあえず、風鳴さんって呼ばせてもらいますね」

 

 

 

 こうして私は、特異災害対策機動部二課にお世話になるのだった。

 




上倉律歌のプロフィール(1部抜粋)
趣味:人助け、料理
好きなもの:家庭料理
嫌いなもの:人の死。特に自分が関わって目の前で死なれるのが1番嫌い


上手く書けたかは分からないですけど頑張っていきたいと思います。
次回の更新は、最悪来月までには出したいなぁと思っております。お楽しみに

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