天羽さんがシンフォギア装者となり2年が経ち、私達は今日もノイズと戦っていた。
「律歌!あたしを飛ばせ!」
「了解!」
ハンマーを振り回す勢いで天羽さんを射出し、大型ノイズを殲滅したところで、司令部からノイズの殲滅が終了したことが伝えられた。
本来ならば、戦いが終わったのでそのまま帰投する流れになるのだが今回は違う。
今日のノイズ戦で、実は自衛隊の皆さんがノイズに囲まれており、事前に助けることのできた隊員さんからは建物の崩落に巻き込まれて瓦礫の下敷きになってる部隊があるとの事。そういうわけで、今回は人命救助を行うこととなったのだ。
ちなみに私は2人とはちょっと離れたところにある山になっている瓦礫の下にいるであろう人達の救助にあたることになった。私のアームドギアなら瓦礫を壊しやすいからね。
「よいしょっと...」
瓦礫の山の下敷きになってるであろう人に被害が出ないように計算してハンマーで瓦礫を壊し、シンフォギアを纏った私一人のパワーで持ち上げられるほど軽くなった瓦礫を持ち上げる。その下はいい感じに人が1人ギリ入れる空間になっており、そこには助かった事に気づき安堵の表情をした隊員さんが横たわっていた。生きてくれてて良かった。
「隊員さん大丈夫ですか?」
私は隊員さんに肩を貸しつつ問いかける。
「大丈夫、怪我も軽傷だよ。ありがとう」
「他にこの付近の瓦礫の下敷きになってる人は?」
「いいや、この付近にいたのは僕だけだよ。僕の周りにいたメンバーは全員ノイズにやられてしまってね...。みんな『お前は若いんだ、だから老兵の俺たちの分まで生き残ってくれ』そう言って僕を庇って...」
間に合わなかったんだ。私達の到着が遅れたから....。
「到着が遅れてしまってごめんなさい...。私達の到着がもっと早ければ...」
「いいや、大丈夫だよ。君達は最前を尽くし最速でこっちに来てくれたんだろう?これが最善の結果、僕はそう思う。
それと、助けてくれてありがとう。正直言うとね、瓦礫に埋まった時にもうダメだって思ってた。だけど、瓦礫の下に埋まっても外から歌が聞こえていたんだ。その歌が僕の心の奥底に響いた...だから僕は諦めなかった...本当にありがとう」
「...どうも....ありがとうございます...」
正直ちょっと気恥しい...だけど私の歌が誰かの心に響いて、それが生きることに繋がってくれて本当に良かった。それがとても嬉しいと感じた。
夢に少し近づいてる。そんな気がする。
自衛隊救助の翌日。私達はトレーニングで走り込みをしていた。
「なぁ、翼と律歌」
「奏、どうしたの?」
「誰かに歌を聴いてもらうって、存外気持ちのいいもんだな」
「うん。そうだね.....。でもどうして突然?」
「別に。ただ、一緒にこれからも歌を歌っていきたいって思ってね」
天羽さんの言うことに、私は共感ができた。確かに、これからも一緒に歌っていけたら、大変なことがあってもきっとやっていけるんだと思う。
それにしても、一緒に歌を歌う....か。あ、いいこと思いついた。
「ねぇ、天羽さん。翼さんと一緒にユニットを組んでみたら?」
「ユニット?ユニットっていうとアイドル的な?」
「そうそう。2人でアイドルデビューしてみたら?」
ま、どうせ私はアイドルには向いてないからね。なるなら2人だ。きっと2人で組む方が上手くいくはずだ。
「いいわね....。律歌も一緒にやらない?」
「私はいいよ。歳も2人より離れてるしバランスが悪いし、2人でやる方が自然だと思う」
「そういうもんか?」
「そういうもんだよ」
「そっか.....。んじゃ、組むか!翼!」
「うんっ!」
「あ、そうだ律歌。もうそろそろ天羽さんだなんて、硬っ苦しく呼ばずに奏って呼んでくれてもいいんだぜ?」
え?ちょっとそれは....気恥しいというかなんというか....。
「家族のいねぇ境遇同士、私ら姉妹みてぇなもんだろ?」
「わかった....。これからは奏姉さんって呼ばせてもらうね」
私が姉さんと呼ぶと、奏さんは一瞬固まると頬を緩ませていた。めちゃくちゃレアすぎる光景だ...。
「姉さん.....うん。いいな。すごくイイ....」
「か、奏?」
「これからも姉さん呼びで頼むわ!」
「うん、わかった」
こりゃ、多分姉さん呼び以外で呼んだら沈みそうだ...。
それから2人は本格的に『ツヴァイウィング』というユニットを結成、2人のマネージャーは緒川さんがやることになった。
ほんの興味でスケジュール帳を閲覧させてもらったが、あの人何で完璧にスケジュール管理できてるのだろうか。ゆっくり休めるオフの日も作ってるし。この人、二課のエージェントよりこっちのが合っているのでは?
ちなみに本人に伝えたら適当にお茶を濁されました。なんなら私もアイドルになりかけました。危ない危ない。
ユニットを組んでから約1年。ツヴァイウィングの知名度はグングン伸び、今では日本有数のトップアーティストにまで成長した。
今日はそんな2人のライブの日だ。
だけど、私の気分は沈んでいた。その理由は今日の新聞にある。
そこには雪音夫妻の娘が見つかり日本へ帰国したものの、用意された宿舎から姿を消したということが書かれていた。
どこに行ってしまったのだろうか....。
沈んでいると、頬を誰かにぷにっとされた。視線を動かすと、そこには奏姉さんがいた。
「なに沈んだ顔してるんだ?あんまり思い詰めるとぺしゃんこになっちまうぞ?」
「うん...そうだね。奏姉さんの方こそ大丈夫?緊張してない?」
「ははは。実はあたしも少し緊張してるよ。でも、今日は全力で楽しんでくるさ。それじゃぁ、行ってくる」
「行ってらっしゃい、奏姉さん」
実は今日は完全聖遺物であるネフシュタンの鎧の起動実験も兼ねている。そんなことは気にせずに全力に楽しんで欲しい。もちろん司令からは私も全力で楽しんでほしいと言われている。
だが私は、非常事態に備えて何時でも出れる準備と、LiNKERの準備をしていた。実は余計な混ざり物がないように奏姉さんはしばらくLiNKERを断っており、このLiNKERの持ち出しは私の新しい家族を守る為の独断だ。もちろん、バレたら司令達から怒られるのは間違いないか。それでも私は私の独断で非常事態への警戒をしよう。
2人の曲、《逆光のフリューゲル》が終わり、次の曲へ移行するその時。
それは起こった。
ドームの中央で爆発が起きたのだ。そして、バックヤードからステージを見ると爆心地からノイズが出現していた。
「クソッ、嫌なことはよく当たる!」
私は全力で走ってステージへ向かい、奏姉さんにLiNKERを投げ渡す。
「律歌!?コレって....」
「いいから早く打つ!先行ってるから!」
私はギアを纏うと、全力移動でノイズの群れに突撃し拳で蹴散らしていく。
私が向かうまでに既にノイズに殺された人の成れの果てがそこらかしこにありこの世の地獄のような光景だった。みんな、助けられなくてごめんなさい...。
でも、今は今生き残ってる人達を助けないと!
「でやぁ!はぁ!」
こちらのノイズは片付いた。そう思っていると別方向で、事態は動いた。
奏姉さんが誰かを庇いながら戦っていた。
まずい。急いで加勢にいかないと。
私が到着する直前、慣れない戦い方をした奏姉さんの装備はボロボロであり大型ノイズの攻撃で一部が砕け、その欠片が庇っていた女の子の胸に直撃した。
「おい!死ぬな!目を開けてくれ!生きるのを諦めるな!」
「.....あっ.....」
良かった。まだ生きてる....でもガングニールが刺さったままだ。早くこの場にいるノイズを殲滅しないとこの少女の命やまだ逃げ遅れてる人達が危ない。
最速で最短でコイツらを殲滅する方法は1つしか思い浮かべられない....。奏姉さんも同じことを考えたのか、目で『一緒にやるか』と言っていた。
「やろっか。奏姉さん」
「おうよ。頼むぜ律歌」
奏姉さん1人だけならともかく私と2人で絶唱をすれば、もしかしたら何とか生き残りつつ殲滅出来るかもしれない。でも、下手したら最悪死ぬかもしれない。クリスとも2度会えなくなるかもしれない。でもそれ以上に誰かがこれ以上死ぬ事が耐えられない。
やるしかない。たとえ歌った事で死ぬことになるとしても。
私と奏姉さんは槌と槍を天に掲げる。
Gatrandis babel ziggurat edenal
私と奏姉さんの周囲を絶唱のエネルギーで出来た薄い膜のようなものが包む。
Emustolronzen fine el baral zizzl
Gatrandis babel ziggurat edenal
歌って気づいた。私の体が酷く重い、視界も赤い、肺にも激痛が、体の中身がぐちゃぐちゃに掻き回されてるみたいだ。あぁ、そうか。私の絶唱特性はそういうことなのか。
Emustolronzen fine el zizzl.....
絶唱を歌いきると私達を中心にしてエネルギー波が周囲に広がり、エネルギー波が飲み込まれたノイズを殲滅していく。会場全てをエネルギー波が飲み込んだあとは、ライブ会場にノイズ1匹たりとも存在せず、全ての殲滅が完了した。
その後、私は吐血し倒れ、意識を失った。
※※※※※
私が次に目を覚ますと、目に映るのは知らない天井だった。
周囲を見渡そうとするが視界の全てが何かしらの容器しか見えない所を察するに、私はカプセルのようなものに入っているみたいだ。
カプセルのガラス越しから医者がこちらを覗き込んできた。私の目が開いているのを見ると、目をギョッとさせ大慌てでどこかへ行ってしまった。というかここから出していただきたい。そこそこスペースはあるがなんか落ち着かない。
体感30分後、カプセルの外から誰かが走ってくる音が聞こえた。病院内で走っちゃダメでしょ...。
誰が来たのだろう。そう思っていると、ガラス越しから今にも泣きそうな奏姉さんと翼さんがこちらを覗いていた。
「よかった.....目ェ覚めたんだな....」
「おかえりなさい、律歌。体は平気?」
言われてみると、体を動かそうとするとなんか凄まじく違和感がある。動くっちゃ動くが、動かす度に痛いし、言うなれば体が錆び付いたような感覚だ。
「上手く動かない....体が錆びた感覚がする....」
「体が錆びた!?」
「天羽さん、落ち着いてください。それは長く眠っていた後遺症でリハビリすれば治ります。むしろ生きて、体を動かせることが奇跡です」
医者は長く眠っていたと言っているか、どういうこと?
体感丸1日寝たような感覚なのだが。
カプセルから出た後に聞いた話なのだが、私はあのライブから半年の間昏睡状態だったらしい。
そりゃ体もガッチガチになるよね。
というか、ギアペンダントもつけっぱなしだったみたいだ。でもなんだろう。ギアがほんのりあったかい?私の体温では無いのはハッキリと分かる。
ギアの温かさは一旦スルーしつつ、当日中のリハビリで歩行訓練を行うこととなったが。歩けるには歩けるが良くて数歩だけで筋肉が悲鳴をあげてしまい、上手く歩けずに終わってしまった。
リハビリが終わった後、私は病室のベッドで寝転び考え事をしていた。この調子だと復帰も遅くなってしまうが、それでも地道にやっていくしかない。
考え事をするよりも、今はあのライブの事件の後に何があったかを調べよう。幸い、奏姉さんが私の端末を置いてってくれている。ありがとう奏姉さん。
端末で調べると、そこには地獄が広がっていた。
軽く漁るだけでライブの生存者を叩く記事や自殺記事、SNSも炎上も大炎上をしているのがすぐにわかった。
二課のデータベースに入ると、ライブでの生存が原因で全てを失い一家無理心中、生存者の自殺、生存者への殺人等の情報があった。
漁れば漁るほど、あの日のように私の頭には怨嗟の声が響いていた。
『何で助けてくれなかった』、『お前が遅いから死んだ』、『人殺し』他にも数え切れないくらいの怨嗟の声が頭の中に響いてくる。
「.....そうだ、弱い私のせいだ。もっと、強くならなきゃ。絶唱を使っても死なずに、無様にもボロボロになってまた生き残ったんだ。
これ以上もう誰も死なないように、全ての人を助けるんだ...死なないように助けなきゃ....。
絶対になるんだ。歌以外でも誰かを助ける正義の味方にならなきゃ....」
その時、私の胸にあるミョルニルからは熱が発せられていたが。私は気づくことは無かった。
いつの間にか寝ていたのだろうか。目を覚ますと既に外は明るくなっており。いい天気なので体を伸ばす。しっかり伸ばせて気持ちがいい。
うん?『しっかり体を伸ばせた』?
もしかしてと思い、肩をぐるぐる回すが全く痛くない。
ベッドから降りようとするが点滴の管や心電図の管が邪魔だ。ウザったい。よし、引っこ抜こう。アラートが鳴るが知った事では無い。
けたたましいアラートを無視しベッドから降りて地に足をつける。うん。痛くない。何ならライブ前と同じくらいに戻ったような感覚だ。
まるで全身の錆が取れたみたいだ。
アラートを聞き駆けつけた医者も、私を見た瞬間。有り得ないものを見たような、度肝を抜かれたような顔をしていた。
「えっと....上倉さん....。少しベッドで寝ていてもらえますか?」
「え?」
「貴女の担当医を呼んで検査をしますから、大人しくしててくださいね?」
「あ、はい...」
その後担当医立ち会いの元、精密に精密を重ねた検査をしていくが全く問題が無く。むしろライブ前よりも健康体になっているとの事。
一体、私の体に何があったのだろう?もしかして漫画とかでやってるような超回復的なやつだろうか?もしそれなら凄いね、人体。
ちなみに、アラートがなったら二課へも連絡がいくようになっていたらしく、検査後に顔面蒼白の奏姉さんと翼さん、焦っている顔の司令が駆けつけてきた。
無事なのと、健康体になったことを確認して安心してくれた。だが、繋がれていた管を引っこ抜いて多大なる心配をかけたことで、こっぴどく怒られたのは言うまでもない。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
奏さんに甲縛式O.S.黒雛を纏ってもらいたいなって思ったり。多分カッコイイ。
中の人ネタというのは否定しない。
それならマリアさんは白鵠?カラーリング的にはアリか...。見た目(武器)的には翼さんが合いそうではあるが。
あとXDでは知らぬ間に奏さんがギャラルホルンで並行世界に行ったみたいですが。律歌も行かせてぇなぁ....。
並行世界(と書いてハチャメチャな世界と読む)に行かせてぇなぁ。
それはさておき、律歌の絶唱特性や復帰の速さ。一体何なんでしょうね?明かされる時までお待ちください。