憑依転生ランスロット(偽)   作:影後

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今回もマシュ視点です


山の翁と別のランスロットの話

砂漠を歩くこと半刻、私達は山の翁さんと難民達が過ごすキャンプに到達しました。

 

「ちょうどですか…ベディヴィエールが居るのが驚きですが、良い戦略です」

 

そこでは黒服のお方とモードレッド卿が会話をしていました。

親しげ…とは違います。なんというか、敵の敵は味方という雰囲気です。

 

「……どうしても、造られた生命には心は開きませんか?アサシン教団は」

 

「違う、裏切りによってなされた覇道。ソレが気に食わないのだ」

 

「まったく……裏切りと謀殺は遥か昔から人間が行ってきた事。

それに私がアーサー王を殺した事と、今のこれは関係ないではないですか」

 

「む………」

 

「貴方方の所にいる難民、我々はそれを受け入れられる。そして、サーヴァントも居ればね?さて、ここではオアシスは貴重ではないですか?」

 

モードレッド卿は交渉をしているようです。

アルトリアさんはそんなモードレッド卿に顔をパチクリとさせていて、お父さんは笑顔で微笑んでいます。

 

「だが、貴方方か此方へ来たのは何故ですかな?食料かとも思いますが?」

 

「痛い所を………えぇ、はっきり言いましょう。ハサン殿、我々は食料が足りない。貴方方は水が足りない。そこでです、我々の拠点とこの村を繋ぐ道を造らせてはもらえませんか?」

 

「ほぉ、願ったり叶ったり、しかし何故?」

 

「……私は王でしてね。この特異点を修復する義務がある。アーサー王が居るのなら、殺すのは私だ。私でなければならない。誰にも渡したくない、貴方方は強い。同盟を組みたい。そして………民がむざむざと殺される。死んで逝くのを………許せないんですよ。王からの命に疑問もなく、それを遂行するだけの円卓共も………少なくとも、私の知るアーサー王はあそこの立つ私と瓜二つの女は民を護っていた。騎士であり、王だった。それを……奴等は……獅子王は汚した!ソレが赦せないんですよ」

 

始めて聞いたモードレッド卿の心の内。

アルトリアさんは暗い顔をし、ベディヴィエール卿は何処か頷いて、お父さんはじっとアルトリアさんを見つめます。

 

「……本心からの言葉、始めてですな。騎士王モードレッド殿」

 

「騎士王は柄で無くてね、ぜひとも覇王モードレッドと及びください。ハサン殿」

 

「私は呪腕のハサンと申します。よろしくお願いします、覇王様」

 

山の翁と同盟が成り、此方に所属しているサーヴァントとの対談が行われました。

 

「……三蔵法師に俵藤太、アーラシュ・カマンガー。恐ろしいな」

 

「我らからすればその姿をあえて取っているのが殺したくなるぞ」

 

「百貌の…首を出せ」

 

「……くっ」

 

お父さんは威圧を与えるためか、よくわからないサーヴァントの姿に変身しています。まるで、死を体現したかのようなその風貌。恐怖すら感じる事ができません。

 

「この姿は初代ハサン、つまりは山の翁の姿なんだ。昔会った事があって…出会った瞬間に7回も殺された」

 

「何故生きている?!」

 

呪腕のハサンさんが驚きの声を上げましたが、お父さんは

 

「いや、だって俺外なる神の使徒だし。この世界で死を贈られても不死鳥の尾で蘇るし。第一、俺の魂は女神様に管理されてるから、俺の体が死んでも再構築されるし」

 

「待って!?ランスロット、聞き捨てならない言葉が」

 

「うん、気にするな」

 

「あのお父さん、外なる神の使徒とは」

 

「あぁ、多次元の神様さ。俺、その人の使徒?いや、御子?だからさ!死んでも霊器は成長する」

 

お父さんの秘密というか、また謎が増えましたが同盟は何とかなりました。

そこで仲を深める為に狩りをすることになったのですが……

お父さんが細長く赤黒い剣を何処からともなく取り出すと世界が歪みました。

 

「斬鉄剣」

 

「………へ?」

 

「斬鉄剣を受けた者は等しく『死』あるのみ」

 

「待て貴様!そもそも空間を斬るなどと」

 

アーチャーさんがそう言うと威厳のこもった声でお父さんが話し始めました。

 

「……アーチャー、生憎だが私の引き出しはまだまだ有るのだ。お前達と聖杯戦争で争ったときは精4割。私の本気を見せる理由は無い」

 

「…それって私達もまだまだ未熟という事ですか?」

 

「未熟だろう、マシュ。お前には何れ俺の剣術を覚えてもらう。アロンダイトはガレスにやったから何か別の剣を上げよう。それが父からの初めてのプレゼントとは何とも、いただけない話だが、ここにはお母様、お前の御祖母様も居るのだ。アロンダイトよりも素晴らしい剣をお前に……いや、う~~む」

 

フランクに話しているようで、恐ろしい事を口ずさむお父さん。

現代に神造兵器の類をプレゼントとして渡すのはやめてください!ドクターの胃が……いえ、別に良いかもしれません。

 

「マシュ、そうだなぁ……何が欲しい?」

 

「あの、私の家族は」

 

「マシュ、お母さんは諦めろ。あと、お祖父様も出会わない方が良い」

 

「えぇ、貴男がマーリンの義理息子だと言われた時は心臓が止まりかけました。そうですか、貴男の娘であるマシュはマーリンの孫娘に」

 

「フォウ!フォウフォウ!!マーリン死すべしフォーウ!!!!」

 

小さな獣、フォウさんも何処か怒っている様に見えます。

でも、わかりました。お父さんは私を未熟、半人前から1人前にするつもりだと。

 

「マシュ、この特異点が終わったら……カルデアに必ず行こう。父として、お前を必ずや一人前の騎士にして見せる」

 

「はい、お父さん!」

 

アルトリアさん、先輩、ダ・ヴィンチさん、アーチャーさんも私とお父さんを優しげに見ています。

 

「……父娘ですか、羨ましいですよ。本当に」

 

「…あの、モードレッド」

 

「さぁ、行きましょうか。狩りはまだ続いています」

 

アルトリアさんも、モードレッド卿も、なんというか余所余所しいです。でも、今ならわかります。モードレッド卿は、アルトリアさんを嫌っていない。自分の気持ちを打ち明けたことで、どう接して良いかわからないんです。アルトリアさんはどうにか寄り添おうとしていますが、モードレッド卿が離れるたびに踏み出した一歩を戻しています。

 

「これは、我が王ながら……行く末を見守るしかないですね」

 

「……はい、でも、きっと悪い事にはならないと思います」

 

その日の夜はお父さんの手品と言いうか、召喚術という魔法で呼び出した召喚獣達との邂逅が行われました。

 

「可愛い!」

 

「キュゥ」

 

「それはカーバンクル。幻獣と同じ名前だが、能力はすごいぞ。倒れても何度でも回復してくれる、だからゾンビアタックが出来るようになるんだ」

 

「……凄いね、カーバンクルが居たら死なないじゃん」

 

「まさに魔法だね、魔術でそれは出来ない」

 

「それじゃあ、フェニックス!」

 

お父さんが叫ぶと、その肉体が不死鳥。フェニックスへと姿を変えました。

 

「…そう言う事か。アレの説明は私がする、あのフェニックスの火を浴びるとホムンクルスすら人間となる」

 

「なんだって!って、マシュ!」

 

ダ・ヴィンチちゃんが叫ぶと私の周りを暖かな火が包みました。

体がだんだんと燃えていきますが、不思議と恐怖はありません。

 

「ん……お父さん、ありがとうございます」

 

「何よりだ」

 

お父さんはフェニックスから人間に戻り、話を続けます。

 

「今のは召喚獣を自身の肉体に降ろす場合だ。その時は魔力(MP)の消費は少ない。だが、自分で戦わなくてはならない。

彼等に肉体を与えての召喚は魔力の消費は多いが、まぁ、戦力が単純に増える」

 

「はい!砂漠の時のは召喚獣ですか!」

 

「ダ・ヴィンチ、あれは違う。あれは別世界の神を呼び寄せただけだ。召喚獣なんて目じゃない、神が顕現するんだ。意味わかるか?」

 

「うん、わかりたくないね!」

 

ダ・ヴィンチちゃんが空を仰ぎ、周りの方も知りたくない様子。

 

「そうだ、お前達別の俺と出会ったことあるのか?」

 

「はい、第一特異点で操られたお父さんと戦いました」

 

「え……まじ?」

 

「はい、ジャンヌ・ダルクさんをアーサー王と見間違える程に狂化され、何度も強敵として現れました。でも、」

 

「……そうか、予想ついたぞ。その時の俺はその盾をまともにみた瞬間変わったんだな?」

 

「はい、私達を救う為敵対サーヴァントへの殿を務めて……その」

 

「良いさ、暴走レベルなら俺の記憶に残らないのも頷ける。でも、そうか…俺がマシュ達を傷つけたのか」

 

お父さんは自分の手に何処から出したのかナイフを突き立てました。私は即座に押さえましたが、素の腕力が違いすぎて止められません。

 

「……つっ…これは戒めだ。私は……私は二度も自分の子に刃を向けたのだ。そんなのは…そんなのは父親ではない!すまない……すまない…」

 

血は止まっていました。力強く私を抱きしめ、ただ謝るだけ。

心の中のギャラハッド卿も同じように思っています。

 

「私達が求めているのは謝罪じゃありません(ない)!

お父さんは円卓最強なんですよね!なら、最後まで共に戦ってください!私(達)にとって、ランスロットは超えるべき壁であり、偉大な父親なんです!だから!だから……」

 

「はん、裏切り者とそのガキかよ」

 

そこにいたのは見知らぬ少女騎士でした。

私は一瞬呆けてしまいましたが、お父さんは違います。

 

「……モードレッド」

 

「けっ!騎士王かよ、まぁ、殺すだけだがな」

 

「随分とでかい口だ、クソガキ。俺から一本でも取った事あったかよ?」

 

お父さんは荒れた口調で剣たしか『賢王の剣』と呼んでいた物を装備しています。

 

「黙れ…黙れ!俺は俺は父上から力を!聖杯の力を受けたんだ!お前なんかに……お前なんかに!!!」

 

「私の部下に武器を向けるのは辞めて貰えませんかね?あぁ、騎士王と同士討ちになった貴女如き、耳も聞こえませんか」

 

「母上と裏切り者を仲間にしただけで糠喜びだな?モードレッド、その顔切り刻んでやるよ」

 

「できる物ならやってみろ、モードレッド。その頭と体、我がクラレントで裂いてやる!」

 

そう言うとモードレッド卿は敵のモードレッド卿と戦闘を始めました。

 

「この女が居るという事は村が危ない!ランスロット!これは、私の最後の命令となるかもしれん。民を守れ!」

 

「…Yes,my Lord」

 

お父さんは苦悶の表情を浮かべた後、私達を村へ向かわせようとします。

 

「何故!敵は」

 

「敵兵は一人ではない!王の命令は絶対だ!!」

 

「んじゃ、俺は聞く必要が無いな」

 

「お前……何時から居たんだよ」

 

ケイ卿が整った鎧身に纏い、騎士剣を肩に乗せながら歩いてきます。

 

「ついさっきな、モルガンのおかげで道が繋がったんだ。援軍って奴さ」

 

「ケイ卿!貴男が居なくなればあの地は」

 

「大丈夫だ、もう一人、獅子王を裏切った騎士が守ってくれてる。アロンダイトを携えてな」

 

その言葉を聞いた瞬間、お父さんは涙を流していました。

でも、すぐに私達に進むよう指示します。

 

「避難が始まっているのだろう、我々はその援護だ。ケイ、二度も殺されるなよ」

 

「…お前もな、ランスロット。死ぬんじゃねぇぞ」

 

私達はモードレッド卿とケイ卿を振り返らず、ただ走るだけでした。

 

「来たか、ランスロット卿」

 

「…ガウェイン」

 

お父さんが有り得ないほど低い声呻き、ガウェイン卿を睨み付けて居ます。

 

「ガウェイン卿!何故、何故このような」

 

「…陛下、いや…騎士王。我等が今、仕えしは獅子王アーサー・ペンドラゴン!騎士王アーサー・ペンドラゴンではない!」

 

「なっ、ガウェイン卿!なぜです!ランスロット卿や他の騎士を仲間にする為と」

 

「…ガレス、それは事実だ。少なくともここでランスロットは死か、恭順の意を示すしかなくなるのだ」

 

何を言っているのか分からないです。

ただ、ガウェイン卿はお父さんを怨嗟の篭った瞳で見ています。

 

「ランスロット、見ていろ。俺は今、このような事もできる」

 

「ガウェイン卿!やめろ!」「ガレス!!!!」

 

アルトリアさんとお父さんの悲鳴、でも、その運命は止まりませんでした。

 

「え?」

 

ガレス卿の胴体から剣が生え、でも死んでいない。

まるで、敢えて生かしているように。

 

「ガウェイン卿!貴方は」

 

「ベディヴィエール卿、だが卿にもわかるだろう。ランスロットを、裏切り者を使うにはこれぐらいはな」

 

「な……仲間を……ガウェイン卿!」

 

「我が忠誠の為なら騎士道を捨てる事に躊躇いはない。

ランスロット、これは獅子王から言葉だ。ガレスを救いたくば、人類最後のマスターを殺せ」

 

「……」

 

「出来ないか、ならば」

 

「待て、待てガウェイン」

 

お父さんは躊躇いなく自分の腰につけていた剣を自身に突き刺し、その場から動かなくなりました。

 

「ごふっ……俺の…命だ……ガレスを……」

 

「あぁ、お前と共に送ってやる」

 

「止せぇぇぇぇ!!!」

 

お父さんは叫び声を上げながら走り出しました。

自分の腹を裂いて剣を振ります。

ガウェイン卿はその気迫に後退し、その隙にガレス卿は私達が保護しました。

 

「かかったな、馬鹿者!」

 

「ロンドミニアゴ」

 

その淡々とした声と共にお父さんは下半身を残し、私達の前で肉片と化しました。

 

 

 

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