∞エタニティー・ダンガンロンパ∞ 〜開幕と閉幕の絶望〜   作:美空のみく

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「全ての絶望の始まり」(日常編・プロローグ)

蝉時雨の真夏日。水平線上に日が落ちて行き、空が茜色に姿を変えた頃。学校から遥かな往路を辿り、帰宅した女子中学生が一人居た。

 

彼女の名前は留渡 イチル(とめどめ いちる)。〇〇県〇〇市の眩燿原中学のバレー部所属、得意教科は国語。至って普通で

 

「⋯あ、鍵無い。家の中か⋯」

 

少し不幸な中学三年生。

 

「お風呂入りたいのに」彼女は天に苦言を呈した。

 

しかし、このような運命を彼女に授けた神は笑っておられるのだろう。例えば自転車を盗まれたあの時も、夜に電球が切れて家中真っ暗になったあの時だってそうに違いない。

 

きっと、どうしようも出来ず立ち止まる彼女が愉快で仕方ないのだ。

 

部活帰り。彼女の下着は体育館に篭っていた真夏の熱もあって、汗で滴っている。それにより下着は肌にピッタリと密着するので、肌から来る不快は耐えない。

 

体だって、足先から手先まで隅々疲労している。特に親指が、柔らかいボールと硬いボールの二択で硬い方を選んできた友達が怨めしい。

 

お風呂に浸れば疲労感も、痛みも、この肌の感覚も浄化されるのだろうが。

 

目の前にはだかる扉は、決して道を開けようとはしない。無機な冷たさが彼女を穏やかならぬ視線で見下ろしている。

 

次の瞬間、イチルの目の前には厳格な兵士が居た。「例えこの家の住人であろうとここは通さぬ!」厳格な兵士はそう叫ぶと、体を蒸散させて消えていった。

 

馬鹿らしい、とイチルは笑い声を漏らす。こんな事を妄想した自分も、そんな兵士も。

 

「ああ、お母さん帰ってくるまで待つしかないなあ、」

 

水筒の中身もある事だし、熱中症にはそうならないだろう。水筒の中身を確かめた後。再び扉へ向き合う。

 

「⋯お風呂に入りたかったんだけど、アレ使いたいし⋯今すぐには無理か。」

 

小さい頃、イチルはお風呂が好きであった。

それは母親が毎度買ってきて、「浴槽に入れていいよ」と言ってくれるアレ、そう。男児女児向けのものであれば、溶けるとカプセルが出現したり、それとも裸のまま玩具が水面上に漂ったりするバスボールである。

 

バスボールを握って、水中でぶん回し色を広げてみたり、その様を見て喜んだり、中身のカプセルなどを楽しみにしたりした。けれど、一番喜んだし楽しんだし、好きだったのは溶けだす頃に鼻につんざく香りなのである。

 

イチルは匂いフェチだった。特に薔薇等の花系統を大変気に入った。しかし、いつの日か、バスボールで無色から有色になった水を鼻にまで持って来て、香りを嗅いでるところを所を母に目撃され、「飲むならもう買ってやりません!」と、馬鹿らしい勘違いでバスボールは買って貰えなくなった。

 

その日イチルは一晩泣いた。

 

しかし、その日から9年ほど時が過ぎ、なんと友達が「これ匂いがいいんだよー、」と向日葵の香りがするらしいバスボールをくれたのだが、それは目の前に構えた扉のその奥、お風呂場にある。

 

「ちょっとオシャレな所で買った」と言う代物は、最近よく見る発光色の物でなく、落ち着いた黄色をしていた。

 

流石は三年間付き合った友である。彼女があのような黄色を好むのを知っていて買ったのだろう。更に、向日葵はイチルの好きな花でもある。

 

なので、とても楽しみ。だったのだ。

その扉を開けて、お風呂にバスボールを投げ込むのが

 

なんなら、イチルはそのバスボールを使用した湯船に浸かるべく部活を早退してきたのに、何故、何故この鉄の壁は動かないのだろう。

 

「⋯はあ、」

 

イチルは悄然とした感情と、怒りを抱いた。片手にあるチラシが、加えられた力に皺を刻む。

 

更に、チラシにある「母子家庭応援金のご案内!」の文字に、彼女は眉間も刻んだ。

 

彼女は母子家庭である、母の流産を境に父は失踪、それからずっと、母と少し寂しい二人暮し、母は娘と己の生活の維持の為あちらこちらへ走り回って働いていて、豆腐屋のバイトでもあるし、パートでもあるし、とある和菓子屋の店員であるしと様々。

 

幼少期より、晩の未明に起きてキッチンへ出ると、屍になりフローリングに伏した母親を見るので、その苦労は娘のイチルに「つかれた」の言葉が無くても伝わっていた、

 

過去には過労で倒れ、そのまま入院した程、彼女の母親は仕事で忙しい。年端行かない娘の彼女が手伝えるのは料理や洗濯の家事だとか、ポストの中身を家の中に持ち込む事ぐらいだろう。

 

しかし、彼女は不運故、事故で油を頻繁に被ったり包丁の矛先が自分に向かったりするのが頻繁にあるので、疲れきった母にも料理なんてしてやれない。寧ろ料理しようとしたら母はそれを阻止するだろう。彼女の不運を1番知っている人物なのだから。

 

そして、洗濯も同様で。

 

柔軟剤やらを入れた後、運悪くすっころんで壁に激突し、その衝撃で手にあった選別も済ませていない洗濯物を洗濯機の中へ放ってしまい。

 

壁から跳ね返った時に誤って選択ボタンを押してしまう事もあるので、色物と無地の服を一緒に洗濯してしまったりするので出来ない。

 

(これは余談だが、誤って投げ入れたのを取り出そうとすると高確率でその洗濯機は星になる。)

 

そんな風に、不運が常なので、出来ることは限られる。ちゃんとこなせるのはポストの中身を家の中へ届けるこの仕事しかあらず、悔し混じりだが、自分に出来る唯のことだからこそ、彼女は忘れる事も無くやっている。立派な事だ。

 

「はあ⋯夜になるまで母さん待つか、友達の家にお邪魔するか、迷うなあ、」

 

ふと、手元の郵便物達に視線が下る。そういやあ、母さんといつも文通しているあの人の手紙。あるかなあ、

 

彼女が思い起こしているのは母と文通していると言う謎の人物゛傲一゛その仕事を担う彼女は知っていた。その人物から来る手紙を、

 

手紙が届く日時に統一は無く、それは水曜日だったり火曜日だったりする。新しい父親になる人かと母親に聞くと、元より細い目が一層細められ「聞くな」と瞳で訴えられて以来、情報を引き出そうと活動していないので、彼?もしくは彼女について名前の他に何も知らない。

 

「あ、⋯何これ?」

 

自分の名前と住所が横に並んだ手紙。噂の傲一でないのは察せた。しかし、万年筆と三日月が交差するこのマークには、何処かで見覚えがある。

 

表を返して、彼女の視線が紙の上を這う。

 

そうして、希望ヶ峰学園からの招待状、その一文を、彼女は読み切った。

 

ひぐらしの鳴いた夏。1人の中学生は、夕暮れを知らせる鐘を上塗りする声量で叫んだらしい。

 

 

 

 

 

 

ー留渡 イチル様ー

 

超高校級のーー不運として、

 

入学ーーーーー

 

ご検討ーーー

 

がいしますーーー

 

希望ヶ峰学園学園長、霧切仁

 

 

 

 

 

「⋯」

 

爛々とあるのは世界的にも有名な学校、希望ヶ峰学園。

 

才能ある高校生を集めた、才能の為の才能による学校。

 

私に才能なんて無いって思ってた。平凡で凡庸な人間は、頂点に憧れるしかないとばかり思ってた。けれど、いつも邪魔をしてくるこれは才能であり、唯一の物だったらしい。

 

忌み怨んで来たそれが、自分をここへ招いたと考えると複雑だが、けれど、

 

 

長年掛けて築かれた日常と自己認識は日を境にあっけなく崩れる。

 

゛知ってる?日常って言うのは不安定で、簡単に破壊されてしまう物なの。だから人生は楽しい!゛

 

ーーー私は一歩踏み出した。

 

途端、黒でも白でもない、虚無が視界を走った

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、」

 

燦然と放つ太陽、広大に広がる青色。

 

そして、四人の人間達が横一列に顔を並べている。

 

目が覚めると、私は晴天下の中眠っていて、知らない人々に寝顔を拝まれていた。初対面でありながら、訝しげに見られつつの起床だった。

 

目が痛い。目の前にはピンク、紫等、色の激しい髪色と瞳が並んでいる。

 

よくもまあカラコンも髪を染めるのも許可してくれたな。多様性の旗を振り下ろす現代の日本でも、そんな学校は珍しい。余程寛大な心を持つ校長や教師がいるのだろう。

 

「おお、起きた。」第一声を切り出したのは深い茶色の髪をした小柄な男の子

 

「おはよう。」次に言うのは

空色の髪の少女。

 

「あっ!目が覚めたよっ!つみえちゃん!」

「え、ああうん、そうね。」

 

桜色をした髪の少女が、横に居た紫の瞳に、下から紫のグラデーションをかけた黒髪をした大人っぽい人に言う。

 

桜色の少女が微笑むと、微かな緊張が漂っていたその場が、アネモネか、それとも桜の花が開くように華やいだ。その雰囲気から天真爛漫な人なのだろうと私は悟る。

 

ツインテールに結ばれた桜髪には神経が通っているのだろうか、下へと素直に垂れていたツインテールは、今だと芯に立たされているかのように、天へと毛先を向けている。

 

恐らく、感情の起伏により変化するのだろう。んなアニメキャラみたいな事あるか?と思われるかもしれない。しかし事実である。

 

妄想癖な私の事だからまた幻覚だろうと頭を地面に強打させたり、深く目をつぶって開けたりしてみたが、その光景は変わらなかった。

 

「⋯あの、貴方大丈夫?」

「ああ⋯大丈夫です。頭(頭)も頭(思考回路)も無事です。あの、貴方達、一体⋯?」

 

黒髪の人は言う、「越俎 辜巴(えっその つみえ)よ、宜しく。」

 

後ろへと流された黒く長い三つ編みが、突然吹いた風でゆらり、と一瞬曲線を書く。

 

セーラー服のスカーフと、膝まであるスカートも、それに乗じて揺れた。

 

普段学生の通う通学路で見るようなセーラー服とは少し違う物を着用している彼女。

 

まず、首まで持ち上がっているセーラーカラーは肩まで下げられ、そのまま服がずり落ちて胸が露出しないようにと肩紐が彼女の服を維持している。

 

しかし、それでは寒くなってしまうからなのだろうか、セーラー(仮)の下にTシャツを着てその寒さを防いでいるらしい。

 

ならば何故そんな服装を選んで着ているのか、と疑問が湧いたので聞いてみようとも思ってみたが、「オシャレは我慢」と友人の言葉を思い出して黙った

 

因みに、不格好になってしまうからなのか、胸当ては消えていた。

 

自己紹介の流れを切らず、続けて桃色髪の人と空色の人が言う「矢口能!(やぐちのう)」「夢智 希望雨(むち あした)」

 

神飾りのサクランボがピョコンと、天に向かって少し立ち上がった。

なんでだよ。なんで髪もリボンも蠢くんだよ、おかしいだろ。

しかし、彼女の後ろに居る夢智さんは気にも止めない様子なので、可笑しいのは私なのかもしれないと思い知らされる。

 

周りが自己紹介を進めゆく中、口を結び、腕を組む小柄な体が目立った。深い桃色は風にそよがれて、疎らに広がる。

 

「あの、貴方は?」

「⋯自己紹介もしなかったのは確かに僕らが悪かった、けど、名乗るなら君が先じゃない?」

 

神経質なその眼差しに睨まれて、私はドキリと肩が跳ねた。

 

「⋯留渡 イチルです。」

「はい、よく出来ました。僕は日宇郷愁(ひう きょうしゅう)。君とも此奴らともこれから宜しくするつもりはないけど、名前は覚えとくといいよ。ほら、立って、」

「ああ、ありがとうございます⋯」

 

きっと、素直になれず、愚直にしか物を言えない。そんな人なのだろう。伸ばされた手はほんのり暖かくて、優しかった。

 

足元を不安定に思いながらやっと立つ、そうして、くるくると周りを注視すると、私は四人が並ぶ背後へ振り返る。

 

「あの、何処でしょうか、ここ」

 

知る限り、来た事の無い場所だった。

 

緑の草原が果てなく広がり、その上に木々が立派にあった。草原を円形になるよう囲み、風に葉をざわめかせている。

 

横に建てられた看板には「夢幻公園」とあるが、それが正しい名前なのか、分からない。

 

スマホを持っていた筈だからと、ポケットへ手を入れ探るも、何の感覚もない。

 

数秒置いて探る。何も無い。

 

スマホもガラゲーも無い。ティッシュもハンカチも無い。掴んだのは虚無だけ。

 

頬を叩く、確かに頬には感覚が宿っていた。

 

最初は夢心地だった。寝起きだからだったのか、それとも、リアルが微塵も感じられない話に夢の中だと思ったのか分からない。

 

急に恐ろしくなってきた。自分の前にあるそれが、非現実的と突き放していた物が、急に現実味を見せ付けて来て、

 

「それが⋯分からないの。あそこに夢幻公園とあるから、多分そうなのでしょうけど、確かめる術もなくて」

 

ああ、この人達も同じなのだ。安堵する、

人間の心理は人間が難しく言っているだけで単純で簡単である。知らぬ場所に放り込まれた同じ境遇の人間に、「私も一緒だ」と言われるだけで、こんなにも心が落ち着けるのだから

 

「越俎さん、あの、分からないって?」

「ええ、私達16人、いきなりここへ飛ばされて⋯」

「私達゛16人゛?」

 

そして、私はそれを見た。

 

彼女の示した人差し指の先に、総勢12人がやいのやいのと喧騒を起こしたり、そんな彼らにビクビクと肩を震わしている光景を

 

視線に気が付いた一人が振り返る。

 

「これで全員かな?!」

 

眩く笑った赤髪の少年、彼がヒーロー物の主人公であったなら、世界の闇なんて打ち消し滅ぼしてくれるのだろう。その一途な天真爛漫さには、明るい人に遠慮がある私でも惹かれる。

 

「⋯」

 

その少年は無口で佇むのみでありながら、横の彼より何十倍も目立っている彼。鼻の堀は深く、瞳孔は蒼、何より、筋骨隆々な体格が恐らくそうさせているのだろう。

 

目物差しで190はある身長。その青年一人が中心に居るだけで低く見える。隣に居る赤髪の少年も見ただけで170はあるだろうに、低く見える。

 

特に、日宇さんなんて高身長への妬ましさからなのか、ふるふると顔を紅潮させて震えている。更に、ハーフ(多分)の少年が彼を見つけて、見下げた事で彼の怒りは限界を超越して全身震え始めた。

 

「ぇぇ⋯起きちゃたの⋯?まだ何もしたくなかったよお、いやだあ、これからきっと内蔵をほじくり出されて目を爆殺されて、ヒィィィ!」

 

紫髪の女の子。ショートで前髪を短くしたヘアスタイルは全体的に涼しそうだ。震えに振るえ、あまりの震えに彼女の体は何重もの残像に見えた。奥歯が耐えなくカチカチ鳴っている。

 

「⋯」

 

太った体の巨大な男の子。服のボタンは何とかそこに留まろうと頑張っているようだが、多分もうそこまで持たないだろう。

 

しかし、お腹が空いたと嘆く腹を子をあやす様に撫でてやる彼の姿には、母親に近い何かがあった。

 

「これで全員なんですね?」

 

うち巻きボブの金髪の子。水色の瞳は凛としており、落ち着いている。

隣の紫髪の女の子の泣き言を聞きつつ、宥めながら話すので、その落ち着きようが更に顕著に目立っている

 

「あぁ。間違いないんじゃないか?」

 

キリッとした目つきの少年、厳格なその視線はうち巻きボブの子の視線と打ち合い相殺しあっている。

 

「いやあ、絶望的に何処なんだろうねえ!ここ!」

 

愉快そうに笑っている黒髪の少年。今起こっていることがまるで優越で、愉快であると言いたげに高らかに言う。

 

「うーん。何喋ろうとしてたっけ、僕」

 

オレンジの髪の少年が眠たげに欠伸を伸ばす。

 

「うーん。まだ調べたい事があったんだけれどねえ。」

 

困ったように笑った、ハスキーボイスの少年。

 

「いやあれ以上調べるつもりだったの?辞めてよ。わし過労死しちゃう。」

 

白色の髪をした少年は本気で困っているように見える。そんな少年に「冗談だよ」とハスキーボイスの少年は笑って見せた。

 

「起きてもらって困るなら無理矢理寝かそっか?」

 

黒と白で半々の髪色をしたその子は悠々と笑っている。

 

「うん!!!!!寝かして!!!!」

 

大声で叫んだ女の子。彼女の黄色の瞳は自分の声量に驚いて揺れる

 

「ヒェ、ヒェ、あ、あの、全員起きたら何かが起こると思っ⋯てて。皆起きるまで待って、たんです。」

 

破裂どうこうの女の子が寄ってくる。彼女の体は未だ奥歯がカチカチと打ち合い、肩を震わせている。

 

どうやら私が最後だったらしい。人が苦手らしいのに態々教えてくれて、優しい人なのだろう。

 

「そうなんだ、ありがとう。」胸の前で合わせていた両手、その左手を取ると、私はそれを固く握った。

 

「ヒェェェ!!!?私に構わないで下さいお願いします殺さないでぇぇぇ!!!」

 

うわああ!!と叫んで彼女は太陽へと全力疾走で駆けていった。

「あ⋯待って!」と呼び止めても彼女にはもう届かない。

砂埃を波のように掻き立てて、彼女は行ってしまった、彼女自体がまるで荒波だ。

 

足の素早い彼女だから、その姿はすぐに空に飲み込まれて、小さな点へと変わった。

 

「えぇっと。何も起こらないけれど帰っていいのかしらね?入口は探せばありそうだし、」

 

越俎さんがそう話した時、突如中央に煙が立ち上がる。

 

「うわあ!」突如現れた煙から逃げる間も無く、大きく煙を吸ってしまった紫髪の人除く15人は、つい床に伏した。

 

 

 

煙が晴れた時、そこに居たのは黒と白で半々の姿をしたクマのぬいぐるみだった。

 

「それはダメでーす!!それは僕が許さないもんね!」

 

片目に宿る赤色が激しく光る。うぷぷぷ⋯漏らした笑い声の由来は何なのか。

 

「こんにちは!オマエら!僕はモノクマ!希望ヶ峰学園の学園長なのです!」

 

えっへん。クマは言い切ると誇らしげに胸を張る。腹にある出べそがより一層強い主張をして来て、目立つ。

 

「やっば、人形が喋ったんだけど、」

「そうだね辜巴!おかしいね?」

 

騒ぐ二人、モノクマはその言葉に陰気刺したのか、少し落ち込み気味に俯く。

 

「その人形って言葉!何千回と言われたよ!全くもう!」

「絶望的に可哀想だよ皆。少しは人形を絶望的に労わってあげなよ!」

黒髪の少年が言う、けれど結局は人形扱いしているその言葉に、人形はついに肩を落とす。

 

「あーあー。と!も!か!く!僕は人形じゃないよ!僕はモノクマ!希望ヶ峰学園の学園長なのです!そして、突然だけど今からオマエらには・超高校級・になってもらいます!」

 

超高校級になってもらうって何?言葉を滑り込ませる隙は無く、モノクマの言葉は続けられる。

 

「えーっと。まあ僕は優しいクマだから!君達にあった・超高校級・の名前をつけてあげたよ!ああー!そんな混乱しないでよ!」

 

この場の雰囲気には到底合わない。嬉しそうで、楽しそうな声。

 

脳に幸せが染み渡る。楽しい、この状況が、楽しい。思い通りに支配出来るこの環境が、そんな調子で人形は語る。

 

「ほらよっと!」

 

モノクマが少し腕を力ませ、それを空へと掲げると、雨のように紙切れが降って来た。空へ両手を突き出すと、手の上に紙は綺麗に着地した。

 

皆も無事に受け取れたようで、紙の内容に神経を集中させていた。

 

私にも何畳にして折られたそれが授けられたのだが、確認するまでも無いだろう。゛超高校級の不運゛の文字がそこにあるだけだろうから。

 

ポケットへと紙をしまい込むと、モノクマが声を上げる。

 

「じゃあこの゛ゲーム゛のルールを説明します!今から各自にポイント⋯通称、モノクマポイントを15を付与するから、一番ポイントが高かった人、一人をここから出すことを約束する!

ただし⋯何の超高校級なのか、それがバレた時、バレた相手に1ポイント渡っちゃうから気を付けてね!」

 

声がする。「ねえ!ちょっと待ってよ!」と。

 

皆が声の主を見ると、矢口さんが挙手して異議を唱えようとしていた。隣の越俎さんが必死で興奮した彼女を宥めようとするけれど、ほのかに色付いた唇は静止しない。

 

「人形が動いてることは一旦置いて置いて⋯ゲームって何?!」

「簡単だよ!コロシアイゲームさ!」

 

コロシアイ?コロシアイ、殺し合いゲーム

 

ドッキリかも知れない、目の前にあるのはただ、その為だけに用意された機械人形に違いない。

 

そうとしか思えない。それしか有り得ないのに、根拠も無く脳が「この熊の言う通り、コロシアイゲームは本当に行われる」と信号を送ってくる。

 

心を包み込むのはその言葉から来る恐怖。私では到底理解出来ない物語が今、紡がれようとしている不安。

 

そんな心情を振り返りもせず、モノクマは続ける

 

「あのね、さっき言った、モノクマポイントを取り戻す方法があるんだよー!

ポイントを相手から取り返したい場合、その相手を殺しちゃえば相手のポイントは奪える」

 

 

 

「つまりはもう、理解したよね?⋯さあ!醜いコロシアイを繰り広げて!僕を楽しませてよ!」

 

高らかに笑う。クマの悪魔が。

絶望する。この最低で血塗られた非日常の開幕に

 

゛ねえ、知ってる?でも日常って呆気なく崩れちゃうの。

だから人生は不安定で、怖い。゛

 

自分の知る、とある人物の言葉が脳裏を走った。

 

そしてそのままーー私は意識を手放した。

 

 

 

【chapter1、胡乱な小熊は親愛なる隣人の為に罰を受ける。(非日常編)】

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