ザババと聖女
「恋人についてデスか?」
そう言いながら、切歌と調は、目の前でそんな事を相談した人物に対して、首を傾げた。
その日は、体育祭の準備という事もあり、先記は普段よりも帰りが遅くなっていた。
しばらくすれば、合流すると聞いていた二人は、先記が来るまでの間に他の学校の体育祭の練習を見学する為に校庭に来ていた。
そんな彼女達に話しかけた人物は、グレモリー眷属の1人であるアーシア・アルジェントだった。
今は、練習の合間の休憩時間という事もあるので、見学した2人の元へと来ていた。
「はい、少し前に、その私が助けた悪魔であるディオドラさんからプロポーズを受けたのです」
「プロポーズ! それって、嬉しい事じゃないんですか?」
アーシアの話を聞いた切歌は、小説の中にしかないようなラブロマンスだと思い、大きなリアクションを取る。
だが、そんな切歌の反応とは裏腹に、アーシアの顔は未だに暗いままだった。
「はい、その確かに好意を持たれるのは嬉しいのですが」
「……アルジェントさんは、他に好きな人がいるの?」
「それはっ、はい」
調は静かにアーシアに問いかけると共に、静かに頷く。
「えっと、それって、誰なんですか?」
「切ちゃん。
それは明らかに兵藤さんだよ」
「えっえぇ!
あのおっぱいドラゴンにデスか!」
「うぅ、事実なので、反論できません」
そう言いながら、アーシアはそのまま顔を俯きながら、言う。
「その、一誠さんは私にとって初めての友達でした。
この土地で、親もいない私にとって初めての友達であり、こうした夢にまで見た学生としての生活を送らせてくれた人なんです」
そう、アーシアは、一誠に助けられた事を思い出すように、微笑む。
「それ、なんだか分かる」
「私達も先記に助けられたからデス」
「先記さんに?」
その言葉に、アーシアは疑問に思うように首を傾げる。
「えぇ、私達は過去に凄い大喧嘩をしてしまった」
「互いに思って、互いに止める為に。
そんな時に、切ちゃんは死にそうになった」
「その時に、命懸けで先記は助けてくれました」
「思えば、あの時から私達は先記の事が本当の意味で好きになったと思う」
そう、明るく自慢げに言う切歌と、物静かに確かに確信するように頷く調。
正反対な彼女達だが、そこには確かな友情がある事は疑いようがなかった。
しかし、そんな彼女達の思いに対して、アーシアは大きく頷く。
「そうですね、私も、一誠さんの事が好きです。
だから、ディオドラさんからプロポーズは断ろうと思います」
「それだったら、私達も応援しますよ! ねっ、調!」
「うん、頑張れ」
2人は笑顔を浮かべると、アーシアへと言う。
アーシアもまた、2人の気持ちに応えるように笑顔を見せた。
「それじゃ、私、そろそろ練習に戻りますね」
「頑張って!」
そう言いながら、切歌は手を大きく、調は小さく手を振りながら見送る。
それからしばらくし、アーシアが去った後、2人はお互いに顔を合わせる。
「アーシアも、私達と同じデスね」
「両親がいない。
そして、好きな人に救われた」
そう言いながら、2人は手を繋ぎ合う。
互いの温もりを感じ取りながら、切歌は言った。
「調」
「うん、せめて、この件は私達でなんとか見届けよう」
「先記に頼んだら、なんとかしてくれるかな?」
「うん」
そう互いに確認を取り合いながら、頷く。