ハイスクールG✕S   作:ボルメテウスさん

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暴走

 その姿を見た瞬間、一言で言えば、チェンソーの怪物だった。

 

 あらゆる箇所から何時の間にか出てきたオーフィスの蛇が、先記の身体に吸い込むと共に変わった。

 

「なっ何が起きたんだっ」

 

 それに戸惑いを隠せなかったのは、俺達を含めて、全員だった。

 

『相棒、さっさと逃げろ!』

 

「っ」

 

 聞こえたドライグの言葉が一斉にその場にいた全員に聞こえ、すぐにその場から逃げ出した。

 

 同時に先程まで俺がいた神殿は瞬く間に切り裂かれた。

 

 まるで紙のように、瞬く間にそれらを全て切り裂かれ、崩れる。

 

 同時に神殿の中から飛び出た先記はまるで獣を思わせる叫び声をあげる。

 

「一体何が起きているんだ」

 

 先程まで、全てが終わったように思えた。

 

 なのに、何が起きているのか。

 

『おそらくはあの小僧にオーフィスの力が入った事が原因だろう。

 

 さっきの奴も含めて、オーフィスの力を悪意を持って、使用した。

 

 その悪意を持ったまま、オーフィスの力を無理矢理取り込ませた事によって、奴は暴走しているだろう』

 

「オーフィスの蛇?」

 

『試合中、ディオドラが急激なパワーアップをしただろう。

 

 それは、奴がオーフィスの力の一部を取り込んだ事で強くなっただろう。

 

 そして、それを一匹所か、何十という蛇を無理矢理入れられたんだ。

 

 暴走しても、無理はない』

 

「ぐっ」

 

 まさか、ここで、そのような事が起きるとは。

 

 そんな事を考えていると、ふと先記は空を見る。

 

 そこには、未だにテロを行っているだろう禍の団の奴らがいた。

 

 それを見ると共に、背中がモゾモゾと動き出した。

 

「何だっあれは」

 

 何が起きているのか、分からない中で、背中から現れたのは数え切れない程の腕だった。

 

 腕には、鎌または丸鋸が握られていた。

 

 同時に一斉に空を飛ぶ奴らに向けて、腕が襲い掛かる。悲鳴が上がる中、数秒も経たずして、地上にいた連中の全てが切り裂かれる。

 

 空を舞っていた者は、何とか避けようと必死になる。

 

 だが、腕はそれを逃さないかのように、向かっていく。

 

 そのまま掴みかかると同時に、その身体を引き裂きながら地上へ落とした。

 

 地面に落ちた者達はそのまま身体を、まるで獲物を狙う獣のように追いかける。

 

 そんな中で、先記はゆっくりと歩き出す。

 

「かっ怪物っ!?」

 

 その言葉と共に、俺達が連れて逃げていたディオドラが叫ぶ。

 

「お前らのせいだろうがっ!」

 

 その事に俺は思わず、怒りを抑えられなかった。

 

 ドライグの言葉通りならば、こいつらの悪意が、先記を変えた。

 

 だが、その時、こちらに真っ直ぐと先記の腕が襲い掛かる。

 

「っ!」

 

 一瞬の速さ。

 

 それに俺達は動けなかった。

 

 そして、腕は

 

「がっがあぁぁぁ」

 

 ディオドラの身体を切り裂いた。

 

 血の雨が周りを濡らしていく。

 

 その事にぞっと死の恐怖を感じる。

 

「これは一体、どういう事なんだ」

 

 その言葉を発したのは、ゼノヴィアだった。

 

 見れば、先記から伸びる腕のほとんどは俺達を避けていた。

 

「これは一体」

 

「どうやら、想像以上だな」

 

「ヴァーリっ!」

 

 そこには、この場では予想外の来客であるヴァーリだった。

 

「どういう事なんだ」

 

「なに。

 

 今の理性なき状態での暴走。

 

 これは、どうやら悪意に対してのみ攻撃するようだ」

 

「悪意だって?」

 

「どうやら、そのようだぜ」

 

 そう言いながら、アザゼル先生やオーディン様も来ていた。

 

「どういう事なんだ?」

 

「状況は俺にも分からない。

 

 けど、俺を囲んだ全ての敵を狙っていた。

 

 それで、この状況で、俺達が無事なのは、先記に対して、少なくとも敵意や悪意がない奴はあいつも狙わないという事だ」

 

「それってつまり」

 

 ヴァ―リの言葉を理解した瞬間、ゾッとした。

 

 確かに俺達は、先記に関しては悪意がない。

 

 だけど、このままこいつを放っておけば

 

「未曾有の大災害になるな。

 

 そうなれば」

 

「何かっ手はないのかよ! 

 

 救う手立てはっ」

 

「正直に言えば、難しいな。

 

 さっきのドライグの話からでも、分かっているが、奴らの悪意は相当根深い。

 

 それらを一身に受ければ、あの状態も無理はない」

 

「それじゃっ方法はないのかよっ」

 

 このまま、先記を見捨てるしかないのかよっ。

 

「まぁ、奇跡があれば、あれしかないのぅ」

 

「あれ? 

 

 何か手立てはあるのか?」

 

 すると、オーディン様は何を思ったのか、魔方陣を取り出す。

 

 そこから出てきたのは

 

「CD?」

 

「昔、知り合いから貰ってな。

 

 偶然持って来たらしいからなぁ」

 

「それで、どうにかなるのか?」

 

「さぁな。

 

 だが、可能性はあるじゃろうな」

 

「可能性って、CDで本当にどうにかなるのかっ」

 

「……爺さん、もしかして、それは」

 

「くくっ察したようじゃな」

 

 アザゼル先生は何か分かったのか、笑みを浮かべる。

 

「だったら、少し試してみるか。

 

 確かここに」

 

 そう言い、取り出したのはCDラジカセだった。

 

 そのCDラジカセに、オーディン様が出したCDを入れる。

 

「一体、これに」

 

 そう疑問に思った次の瞬間。

 

『「聞こえますか……?」激情奏でるムジーク』

 

 それと共に聞こえたのは、聞いた事のない人の歌声だ。

 

 その歌声に思わず聞いてしまう。

 

 だが、次に聞こえたのは

 

『 天に』

 

「これってっ」

 

 次に聞こえたのは、確か先記と一緒に居た翼さんの声。

 

『『 解き放て』』

 

『 「聴こえますか……?」イノチ始まる脈動』

 

 そうして、歌が続いていく。

 

 なぜ、ここで翼さんの声が聞こえたのか、疑問に思う。

 

 だって、あの人は、こちらでは幽霊のような状態で、平行世界の住人のはず。

 

「ほほっ、やはりこの歌は何度聞いても良い。

 

 そして、効果はどうやらあったようじゃな」

 

「えっ」

 

 同時に見つめると、先程まで暴れていた先記の動きは止まっていた。

 

 まるで、歌を聴くように。

 

「本当に効果がっ! 

 

 どうして」

 

「歌には力がある。

 

 ただ、それだけじゃよ」

 

 そうして、俺達は安堵する。

 

 だが

 

「今こそ、奴を殺すチャンス!」

 

「なっ!」

 

 これまで、姿を見せなかったシャルバが動かなくなった先記に向かった。

 

「先記っ!」

 

 それに気づき、すぐに向かおうとした。

 

 だが、既に間に合わない。

 

 終わりか。

 

 そう思った次の瞬間。

 

 先記の身体から黒い光の剣が出てくる。

 

「『『イグナイトモジュールっ抜剣ッ(デス)!!』』」

 

 同時に先記の身体を貫く。

 

『Dainsleif. 』

 

 その言葉と共に先記の身体が一瞬で巨大な影のような禍々しいオーラに包み込まれる。

 

 だが、それも一瞬だった。

 

 迫っていたシャルバはそのまま殴り飛ばされる。

 

「なっ」

 

 同時に見えたのは、3つの人影だった。

 

 外観も、黒を基調とした刺々しく禍々しいフォルムとなっている。

 

 

 

 それでも、その外観は、先程の化け物に比べれば、人型である事は間違いない。

 

「ふぅ、なんとか暴走克服したデス!」

 

「歌が聞こえて、本当に良かった」

 

「いやぁ、ガチでやばかった」

 

 そう言いながら、これまで通りの切歌ちゃんと調ちゃん、そして先記の声が聞こえる。

 

「あの子達が、もしかして暁切歌と月読調なのか?」

 

「えっ、もしかして」

 

「あぁ、私達にも見えている。

 

 どういう事なんだ?」

 

 これまで、幽霊で姿が見えなかったはずなのに。

 

「まさか、悪意を完全に支配下に置いて、力を完全に我が物にしたか」

 

「さて、どうなるか」

 

 そう言いながら、その戦いを、俺達は見ていく。

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