ハイスクールG✕S   作:ボルメテウスさん

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静寂な歌

目の前にある光景。

 

 それは、俺の人生の中でも最も忘れられない光景だった。

 

 俺の父さんと母さんとの最後の思い出。

 いちご狩りのツアーバスに乗り、何が起きたのか分からない間に、2人と別れた。

 その後、何か夢のような何かが起きた気がしたが、俺はその事を知らない。

 

 当時の名字の常磐から、現在の先記に変わったのは、今は海外で働いている保証人になってくれている人からの提案で、受け入れた。

 

 幼少期、俺はどうすれば良いのか分からなかった。

 

 しかし、そんな時、夢を通して出会ったのは響達だった。

 

 彼女達との交流の中で、俺は両親を失って空虚だった心を埋められた気がした。

 

 だからこそ、俺は

 

にはならない。

 ただ、彼女達と繋がりたい」

 

 その言葉と共に、目の前にいる存在に俺は告げた。

 

『それがお前の選択だな、過去の私よ』

 

 そう、今はもう聞く事はないだろう言葉と共に、俺は目が覚める。

 

 同時に周りに広がる光景は、どこまでも続くだろう暗闇だった。

 

「イグナイトの影響かっ、ちっ」

 

 嫌な事を思い出しながらも、俺はすぐに2人の気配を探る。

 

 ゆっくりと気配を感じながら、見つけた気配に向けて、俺は手を伸ばす。

 

「繋げたっ!」

 

 そうして、俺は握り絞めた先には、確かな人の手。

 

 そこには悪夢に苦しんでいた、2人だった。

 

 やがて、俺の手を通して、ゆっくりと目を開く。

 

「うぅ、ここはどこなんデスか?」

 

「たぶんだけど、イグナイトの闇の中」

 

「それって、つまり。

 

 今は暴走しているという事? 

 

 けど、なんでこうして意識があるの?」

 

 それには、かつて体験した事があるからこその調の言葉だ。

 

「さぁな。

 

 なんだって、これはダインスレイフを媒介にしている訳じゃないからな」

 

 実際に、オーフィスの蛇が影響している事しか分からない。

 

 そうして、悩んでいると共に、こちらを見つめる気配に気がついた。

 

 俺はその目線の先を見る。

 

「なっなんと!」

 

「あれって」

 

「世界蛇? 

 

 いや、違う」

 

 それは、かつて俺達が戦った事のある世界蛇。

 

 それによく似ているようだけど、どこか違う何かだった。

 

「まさか、オーフィス?」

 

「……その通り。

 

 我、オーフィス」

 

 そう、オーフィスはその見た目とは裏腹に可愛らしい声で言う。

 

「我、問いたい」

 

「なんだ?」

 

「汝は、静かな世界を望まないのか?」

 

 その質問に俺は首を傾げる。

 

 その問いは一体何をしたいのか、疑問に思う。

 

「静かな世界ねぇ。

 

 あんま興味ないな」

 

「それは、なぜ?」

 

「歌がないから」

 

「歌?」

 

 それにオーフィスは疑問を言う。

 

「私達を繋げている大切な物デス」

 

「それに、聞いているだけで、力が湧き上がってくる」

 

「静かな世界では、そんな音楽が聴けない。

 

 だからこそ、俺は静かな世界は望まない」

 

「音楽、それは、そんなに良い物なのか?」

 

「知らないんデスか?」

 

「うむ」

 

 そう、オーフィスはそう、寂しそうに呟く。

 

 すると、それと共に聞こえてきたのは。

 

「これって、奏さんと翼さんの」

 

「あぁ、でもなんでこの歌が」

 

 聞こえてきたのは、逆光のフリューゲルだった。

 

 その曲を聴いていくと、自然と、俺の身体に力が蘇る。

 

「静かではない。

 

 けど、落ち着く」

 

「オーフィスも分かるデスか?」

 

「……うん」

 

 それと共に、その巨大な蛇が、音楽から流れるリズムと共に身体を動かす。

 

 その度に、周りを取り込んでいた闇は。

 

 俺の身体に吸い込まれていく。

 

 同時に、俺の手には。

 

「ダインスレイフ」

 

 それは、かつてイグナイトに使われた欠片のみしかなかったはずのダインスレイフ。

 

 それが、なぜここに。

 

「ここに集っていた闇。

 

 我がお前のイメージで再現した。

 

 それを使えば、イグナイト? を使えるはず」

 

「なんで、それを俺に?」

 

「先史文明の巫女と名乗る人物が言った。

 

 我の力、お前に使えば、面白い事があると。

 

 その言葉の通り、やってみた」

 

「それって、まさか、了子さんかよ」

 

 あの人の本音に関しては、未だに分からない事が多い。

 

 それでも、今回の件に関しては、助かったとしか言えない。

 

「それじゃ、いっちょやるか。

 

 切歌、調!」

 

「久し振りにあれデスね!」

 

「先記とは、初めてかもね」

 

「あぁ、それじゃ行くぜ」

 

 その言葉と共に、俺はそのまま手に持ったダインスレイフを構える。

 

「「「イグナイトモジュール! 抜剣(デス)!!」」」

 

 俺達の言葉と共に、周りにある闇はそのまま吸い込まれていく。

 

 しかし、俺はそのまま闇を切り払うように、ダインスレイフを振るう。

 

 同時に俺の身体は徐々に新たな姿に変わる。

 

 これまでの虫を思わせる黒一色の素のボディの上に新たな黒のアーマーが装着される。

 

 それと同時にアーマーから僅かに開くと共に、そこから緑色とピンク色の光が溢れ出る。

 

「ふぅ、なんとか暴走克服したデス!」

 

「歌が聞こえて、本当に良かった」

 

「いやぁ、ガチでやばかった」

 

 そう言いながら、俺は身体を慣らすように、動く。

 

 どうやら、無事に意識を取り戻す事ができたようだ。

 

「あの子達が、もしかして暁切歌と月読調なのか?」

 

「えっ、もしかして」

 

「あぁ、私達にも見えている。

 

 どういう事なんだ?」

 

 それと共に、これまでは切歌と調の姿が見えなかったはずの

 

「まさか、悪意を完全に支配下に置いて、力を完全に我が物にしたか」

 

「さて、どうなるか」

 

 そう言いながら、俺は目の前には先程の悪魔であるシャルバがいた。

 

「だが、暴走していない状態で、力が十分ではない貴様らを倒すには十分!」

 

 その言葉と共にシャルバはその手から魔方陣から光を真っ直ぐと放ってきた。

 

 だが、その光は調が自身のギアを一輪バイクのように変え、突っ込む事で、切り裂く。

 

「なっ!」

 

 同時に俺と切歌は左右から調の手を握り締めながら、一輪バイクと共に、シャルバに突っ込む。

 

「おらぁ!」「とぅ!」

 

 俺は拳で、切歌は鎌で。

 

 左右から同時にシャルバに攻撃を仕掛ける。

 

 すぐに、翼を広げて、そのまま空へと逃げる。

 

 それによって、俺は地面を大きく切り裂き、切歌の鎌は近くにあった地面を大きく切り裂く。

 

「なっ、この力っ! 

 

 先程の暴走していた時と同様に!」

 

 そうシャルバが油断している間に、ヘッドギアの左右のホルダーから小型の丸鋸を連続で放つ。

 

 空を飛ぶシャルバは避けきれず、何発かを喰らう。

 

 そして、地面に着地して膝をつく。

 

「なっ!」

 

 そうして、着地したシャルバに向けて、切歌の肩から伸びたアンカーが、拘束する。

 

「それじゃ、決めるデスよ、先記!」

 

 同時に切歌はその手に持った鎌を地面に刺し、そのまま回転する。

 

 それと共に拘束されたシャルバも回転する。

 

「ぐっ、なっこれはっ」

 

 同時に俺の身体から伸びた二つの刃が右足に宿ると同時に、至近距離からの高蹴りをシャルバに叩き込む。

 

「がああぁぁ!!」

 

 それが決め手となり、シャルバは倒れ伏す。

 

「ふぅ、なんとかなったか」

 

 同時に俺は、そのまま変身を解除する。

 

「イグナイトは、終わると疲労感がとんでもない」

 

「おい、先記。

 

 本当に大丈夫なのか?」

 

 そう言いながら、兵藤が心配そうに来た。

 

「いやぁ、正直に言うとやばかった。

 

 なんか、オーフィスがこちらに話しかけたけど、なんか話してみたら、気が合って、そのまま力を貸してくれたんだ」

 

「オーフィスが、力を貸しただと?」

 

 そう言うと、アザゼルは驚いた表情でこちらを見る。

 

「へぇ、相変わらず面白いね」

 

 そう言いながら、話しかけたのは、ヴァーリだった。

 

「お前も、なんでここに?」

 

「何、奇妙な気配を感じたから来ただけだ。

 

 それにしても、本当に力を貸したのか、オーフィス」

 

 そう言いながら、ヴァーリが話しかけた相手。

 

 それは、ゴスロリ衣装を身に纏った少女。

 

『オーフィス? 

 

 まさか、そこいる子供がデスか!?』

 

「切歌、さっきぶり」

 

「ほぅ、まさか幽霊状態の彼女の姿を見れるか」

 

「えっ、もぅ幽霊状態になっているの!」

 

『気づくの遅い』

 

 そう言いながら調もまた、驚きを隠せない様子だった。

 

「それにしても、歌って、他にどんなのがある?」

 

「歌? 

 

 えっ、どういう事なんだ?」

 

 その言葉と共に兵藤達が驚いた様子だ。

 

「えっ、静寂な世界が嫌な理由として、歌だって答えただけだから」

 

「歌って、マジでか」

 

 その返答に皆が驚く中、オーフィスはこう言った。

 

「先記達の記憶で、様々な歌があって、興味深かった」

 

「へぇ、それはもしかしたら」

 

 何やらアザゼルが何か考えているようだけど。

 

「とりあえず、イグナイトは無事に会得したか。

 

 けど」

 

 まさか、あの時の記憶を思い出すとはな。

 

『どうしたデスか?』

 

『何か、嫌な事でも?』

 

「ううん、何でもないよ」

 

 でも、今はそんな事は関係ないよね。

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