その日、俺と翼はバイクデートを行っていた。
翼自身も、普段は歌手として活動しており、世間にその顔を知られている。
だが、俺の世界では誰も知らない一般人であるという事もあってか、誰の目を気にする事なく俺は翼との時間を過ごしていた。
「んっ、あれは?」
二人乗りしたバイクが向かう先にある信号で止まった時だった。
俺達が見つめた先にいた人影。
それは兵藤と姫島先輩の二人だった。
それだけではなく、何やら見覚えのある人物の姿が見えた。
「……オーディンさん?」
「むっ、まさか赤龍帝の小僧だけではなく、まさかギャラルホルンの小僧もいたか。
もしかして、そこにいる子とこっちにか?」
「んっ?」
ふと、オーディンさんが指を差した所にはホテルがあった。
「いや、翼さんは実体化できないから、そういうのはできないから」
『偶然としか言えないからな』
「なるほどのぅ」
そう言いながら、オーディンさんは笑みを浮かべた。
「えっ、翼?」
その言葉と共に、オーディンさんの後ろにはスーツを身に纏った女性が反応していた。
銀色の髪にロングストレートの女性だが。
「あっあの、先程の話を聞くと、もしかしてギャラルホルンの所有者という事は、もしかして一緒にいるのは、風鳴翼さんでしょうか?!」
何やら、驚いている様子が見える女性だったが。
「おぉ、そういえば、ロスヴァイセは風鳴翼の大ファンじゃったな」
「えっ、ファンって、こっちでは歌手活動をしていないはずじゃ?」
「儂が持っていた曲に関して、北欧で配信していたからな。
その事もあってか、ロスヴァイセを始めとしたヴァルキリー達は熱狂的なツヴァイウィングのファンになったんじゃな」
『それは嬉しい限りだな。
その、すまないが』
「あぁ、分かった」
その言葉と共に、俺はそのまま翼に身体の所有権を渡す。
同時に翼は、そのままロスヴァイセさんに向けた。
「まさか、異世界でファンと出会えるとは思わなかった」
「はい! 私達にとって憧れの存在です!!」
うわぁ、凄く嬉しそうな表情をしている。
そう思いながら見ていると、翼を握手をしながら、ロスヴァイセさんは激しく興奮をしていた。
けどまぁ、確かにこの世界での人気を考えると納得ができるかな。
そんな事を考えていると、ロスヴァイセさんの後ろで苦笑いしている男がいた。
「くくっ、まさかあの真面目なロスヴァイセがここまでとはのぅ」
そう言いながら、オーディンさんは面白おかしそうに笑っていた。
「ほほっ、まぁ良い。
どうせ、お主達にも頼もうとした事があるからのぅ」
「頼みたい事ですか?」
そう翼さんは首を傾げる。
「護衛を頼みたい」
そう言った、オーディンさんからの頼みに驚きを隠せなかった。
その中で、翼さんは、その後ろにある姫島さんとこれまで見た事のない男性。
その雰囲気に、翼さんはどこか悲しそうな顔をしていた。