駒王学園で行われている学園祭に対して、俺は本来だったら楽しむべきだと考えていた。
それは、こちらで実体化できるようになった響が、学園祭でのデートを楽しみにしていたからである。
その為、最大限に時間を使う為に、俺は学園祭にあるライブの出演者になる事を選んだ。
オーディションに関しては、歌のプロフェッショナルと言うべき響達を含めた装者達がコーチをしてくれたので、問題なく受かる事ができた。
そんな学園祭が開催されている中で、普段から誰も来ない屋上にて、俺はアザゼル先生からとある資料を受け取っていた。
「加古川飛流。
年齢としては、ソウゴ、お前と同世代ぐらいだな
過去に交通事故で両親を亡くしており、現在は親戚に引き取られ生活している」
「交通事故。
という事はやっぱり」
「ソウゴ、覚えがあるの?」
そう、ツクヨミが聞いてきた。
「俺も父さんと母さんは事故で亡くなったんだ。
その時に一緒に生還したって聞いたけど」
「どうやら、その加古川飛流で間違いないようだな。
けど、なんでそいつがお前に?」
「分からない。
けど、どちらにしても直接聞かないとね」
あの時、俺に対して憎しみを込めた目は間違いなく、俺を恨んでいた。
しかし、それがなぜ恨む事に繋がるのか。
俺にはそれが分からなかった。
「まぁ、こういうのは俺は結構知っているからな」
そう言いながら、響を見つめる。
「えっと、どうしたの、ソウゴ?」
「いや、その、ごめん。
手、握ってくれないかな」
こちらに対して、きょとんとした表情をして、首を傾げる響に対して、俺はそのまま手を伸ばす。
「うん、それぐらいだったら」
そう言いながら、響は笑顔で答え、そのまま握る。
「なんだか、あの時とは逆だね」
「逆かもな。
けど、あの時、俺は握る事はできなかった」
そうしながら、思い出すのは、響が、あのツヴァイウィングのライブによって迫害を受けていた時。
あの時、俺も透明で一緒にいたが、彼女に対してできたのは、彼女の弱音を聞く事しかできなかった。
一緒に手を繋ぐ事も、守る事もできなかった。
透明で、一緒にいる事しかできない俺は、それに対して、無力に感じていた。
だから、大きな悪意に包み込まれながらも、1人でいた響と。
たった1人の悪意に対して、響と一緒にいる俺とでは、違う。
「そんな事ないよ。
ソウゴが、あの時、ずっと一緒にいたから、私は乗り越える事ができたんだよ」
「そう、かな」
「だからこそ、私は優しさを失わず、誰かに手を伸ばす力があった」
それと共に響は俺を見る。
「ソウゴ。
もしも、加古川君が、どんな理不尽な理由でも、手を伸ばすのを止めないで」
強く、俺の手を握り締める響。
「あぁ、分かっている」
幾度も戦い、乗り越えてきた。
だからこそ、俺は響の言葉に応える。
「まったく、幸せだな」
それと共に、まるでそれを見る為なのか、声が聞こえる。
見れば、確かに加古川がそこにいた。
「お前が噂の加古川飛流か。
それにしても、まさか虚蝉機関からの刺客なのか?」
「虚蝉機関?
あぁ、あいつらか。
確かに奴らは関与していた。
だが、奴らにとっても、俺の存在は予想外のようだったぜ」
「なに?」
今回の事件において、重要な立ち位置だと思っていた虚蝉機関。
それが、予想外とは、どういう事なんだ?
「奴らは俺を攫った。
俺も当時は驚いたが、そのまま攫われ、無理矢理力を使われた」
「過去に、ウツセミの実験と同じか」
「あぁ、その時、聞こえたんだ。
俺に囁く声が。
先記ソウゴが、常磐ソウゴがいたから俺の両親は死んだと。
お前が存在のせいで、俺はこの運命しかなかったんだ」
「俺のせい?
というよりも、声?」
その事に俺は疑問に思い、問いかける。
「あぁ、そして、その声が俺に問いかけてきた。
復讐をする力は欲しいかと!
願ってもなかった!
そして、俺はこれを手にする事ができた!!」
同時に手に持っていたのは、時計だった。
その表面はあの時に戦った気味の悪くも、どこか見覚えのある顔だった。
同時に、そこから溢れ出る気配に、俺も響も同時に感じ取った。
「この悪意。
まさか」
「うん、間違いない。
ウロボロスが関わっていたという事か」
「ウロボロス?
聞いた事のない名前だな」
「名前からしたら、世界蛇だが、オーフィスじゃないのか?」
「違うよ。
あいつらは数多の並行世界を消滅させており、高まったフォニックゲインごと世界蛇に食わせることで世界を滅ぼしてきた。
既に世界蛇は倒したけど、残党は残っていた」
「そうだ。
そして、これには、俺の恨みと世界蛇の闇が合わさっている!!」
『ジオウ』
同時に、俺の目の前で、加古川はその姿を、変える。
その名前を、俺は知っている。
「アナザージオウ」
「お前を、ここで殺す為に、俺はこの力で倒す!」
それと同時に闇が地面から生える。
それよりも前に、ツクヨミとアザゼル先生が動いていた。
周りに被害が及ばないように、一瞬でレーティングゲームで行われるような結界へ。
その場所は切り立った崖が遠くからもインパクトがある。
それと共に、俺達を囲むように、アナザーライダーが囲んでいる。
「悪いがソウゴ。
俺とツクヨミはこれの維持で、増援はできない。
急いで、他の奴らを呼ぶが」
「問題ない。
こいつら程度、俺とこいつだけで十分だ」
「ゲイツ、強気だね。
だけど、そうだね」
加古川の言う事が本当だったら、俺が決着をつけなければならない。
それでもゲイツが、力を貸してくれるならば、心強い。
「行くよ、響、ゲイツ!」