若手悪魔が集まる会合。
その会合において、特別なゲストとして参加する事になった先記は、現在絶賛不満な様子を見せていた。
それは人間でありながら、聖書に載る堕天使コカビエルを倒した実力者だからこその威圧感なのか。
周りにいた若手悪魔達は様々な反応を見せていた。
ある者は、先記を警戒し。
ある者は、そのプレッシャーに恐怖して。
様々な反応を見せる中で、若手悪魔の中でサイラオーグは彼を連れてきただろうリアスに問いかける。
「彼は一体、なぜ、あんなにプレッシャーを放っているんだ、リアス?」
「おそらくだけど、彼の恋人達が食事を食べられないからじゃないかな?」
「あぁ」
そう言われて、納得するようにサイラオーグはそのまま先記の隣にいる少女達に目を向ける。
先記の両隣には、幽霊を思わせる程度の気配だが、確かに二人の少女がいる。
「デース」
緑のドレスを身に纏い、金髪に黒いバッテンの髪留めが特徴的な少女。
そして
「ジーッ」
黒いツインテールに桃色のドレスを身に纏っている小柄な少女。
そんな少女二人に挟まれながらも、先記は怒りを隠せない様子だった。
「うぅ、こんな豪華なパーティに参加できるのに、幽霊のような状態だから、食べれないなんてあんまりデス!」
「ドレスも着て、嬉しかったけど、残念」
「切歌、調。
本当にごめんな」
そう、先記は両隣にいる二人に謝りながらも、苛ついていた。
「なるほど、彼が噂の」
「えぇ、どう、印象的には」
「正直に言って、少し戦ってみたいな」
そう、サイラオーグは笑みを浮かべながら言う。
「それにしても、あそこまで苛つくとはな」
「彼にとって、あの子達はそれだけ大切なのよ。
まぁ、私自身もあの立場だったら、同じく思うけどね」
そう、リアスは先記の態度に納得しながら頷く。
そうして会場には悪魔の方々が三段になっている席にそれぞれ座っている。
一番上にサーゼクス・ルシファー、セラフォルー・レヴィアタンなど現魔王を順に上から偉い順になってるのかな。
だが、その中で魔王達よりも下の悪魔達が先記を睨んでくる。
そうしている中で、先記は用意された席に座る。
それと共に、サーゼクスの話から始まり、難しい話を行っていく。
それと共に若手悪魔が、それぞれの目標や夢ついて質問されている。
サイラオーグは『魔王になる』。
リアスは『レーティングゲームで優勝する』。
シトリー会長は、『冥界に、誰でも通えるレーティングゲームの学校を建てる』事。
そう言うと、お偉いさん方は突然大声で笑いだした。
会長の眷属の人達が、と言うか匙がピリピリしだしているのを感じる。
席に座る悪魔達は口々に語り出した。
「下級悪魔や転生悪魔は主に仕えて才能を見出されるのが常。その様な物をつくっては伝統と誇りある旧家の顔を潰すことになる」
「幾ら変革の時代と言っても、変えて良いものと悪いものがある」
「たかが下級悪魔に教育など」
「シトリー家の次期当主は夢見る乙女か、現実が見えていないとみえる」
そう、次々と批判の声が飛び交ってくる。
だがそんな中で。
「あいつらっ好き勝手言ってっ!」
「私も」
その言葉に、切歌は憤怒の表情を見せていた。
それは調も同様の様子だった。
この場にいる悪魔のほとんどが二人の姿を見えない事もあって、どんなに声を出しても、神器を持つ者にしか彼女達は認識できない。
そして、その言葉に対して、ほとんどが同意しており、同時に悔しい思いをした。
それと共に
「けどさ、天使も堕天使とも協定を結んだのに、全然変わらないのも変だよな」
先記は静かに怒っていた。
「なんだと、それはどういう事だ人間」
それには先程まで散々言っていた批判の声を出していた悪魔達が目を向ける。
「別に。
ただ、転生悪魔の中でも俺達の世代から、いきなり強い奴が現れ始めたらってだけですよ」
「それが、お前達と同じ力を持った者達だというのか?」
先記はその問い掛けに対して
「さぁね。
俺は所詮人間だからな。
あんたらがこれからも、それを続けてどうなるのか知らないけどな」
そう先記は冷たい目で見つめる。
それは、少年から放たれるとは思えない程に冷たく、まるで虫けらを見るような視線であった。
するとそんな言葉を受けて、一人が立ち上がり
「ふん! たかが人間の分際で何を生意気な事を言っているんだ! 人間風情が我々の邪魔をする気か!?」
そう叫ぶ。
それに対して先記は冷たい瞳のまま言葉を返す。
「別に。
俺はただ、そう思っただけですよ」
「ならば、その力を証明してみろ」
「なんで、そうなるのかなぁ。
シトリー様の目標を聞いて、笑ったあなた方への意見なのに」
そう冷淡な笑みを浮かべていると共に。
「先記君。
そこまでで良いよ。
これ以上は君にとってもまずいから」
そうサーゼクスが止める。
彼と目を合わせる。
そこからは、こいつらにこれ以上は言っても無駄だと。
「……そうですね。
別に俺は敵対する気はないんでね」
そう、そのまま席に座る。
「ならば、その力を見せてみたらどうだ」
「あぁ?」
その言葉に疑問に思う前に、先記の姿が消える。
「これは一体、どういう事ですか?」
「余興だよ。
彼が噂の力がどれほどなのか、確かめる為のね」
そうしている内に映し出されたのは、先記と、彼に相対するような集団がいた。
「彼らは?」
「我々の眷属だよ。
一応は上級悪魔の実力を持っているがね」
「それにしても、数が」
先記を囲むように、100人はいるだろう数に思わず睨む。
「なに、コカビエルを倒す程の実力だからね。
まぁ、うっかりと死んでしまった時には、仕方ないが」
そう、悪げもなく言う。
「丁度良いか。
鬱憤晴らしにやるか、二人共」
「うん」
「勿論!」
同時に先記は立ち上がると共に、それを合図に上級悪魔達が一斉に魔力弾を放ってくる。
対して
『Various shul shagana tron』
鳴り響く歌声と共に、一瞬で先記の姿が消える。
同時に現れた先記の姿はかなり変わっていた。
腰まで届くだろうヘットギア。
薄い桃色の装甲。
脚部を覆う程のローラー。
そうして変化した先記は一瞬で悪魔達に向かって走っていた。
すぐに気づいた彼らは再び魔力弾を放っていった。
だが、ヘッドギアが開くと共に、無数の円形の武器が飛び出す。
「なっこれはっ」
「丸鋸っがぁ!」
その正体は丸鋸だった。
ヘッドギアから無尽蔵とも言える丸鋸。
それが悪魔達に襲いかかっていく。
無造作ながらも圧倒的な速度の攻撃によって一気に半分以上を切り裂く。
しかもそれだけではない。
次々と現れる丸鋸が、まるで意思があるかのように動き回り、他の悪魔へと襲い掛かっていた。
「ぐっ、ならば、接近すれば良い!」
同時に、次々と丸鋸を掻い潜りながら、その手には各々様々な武器を手に先記に襲い掛かる。
「切ちゃん」
「ガッテン!」
『Zeios igalima raizen tron』
同時に、近づいてきた悪魔達に向けて、先記は再び姿を変えながら、近づく。
緑色のとんがり帽子。
肩には無数の鎖が繋がった肩アーマー。
そして何よりも特徴的なのは、巨大な大鎌だった。
接近してきた悪魔達に向けて、鎌で一閃。
切り裂いた。
更に続けて、そのまま連続で振るわれていく。
あっという間に半数近くを倒したところで、ようやく反応できた一人が手にした剣を振り下ろす。
それに対して振り下ろされた刃に合わせるように、鎌を振るった。
剣と鎌がぶつかり合うと同時に甲高い音が鳴り響き、互いに弾きあう。
その結果を確認してから、振り下ろした筈の男は大きく後方へと行く。
「悪魔には悪魔っ子デス!」
『Change! Halloween』
だが、それよりも早く、先記の姿が変わる。
フードを深く被ったような姿に、まるで悪魔を思わせる角。
そんな姿に変わった先記は次の瞬間、大量の蝙蝠と共に消える。
「なっ!」
そう、呆気に盗られている間に、その影は瞬く間に男の後ろに回っていた。
「『デース!』」
同時に先記と切歌の声が合わさり、その手にある鎌で近づいてきた悪魔を全て倒す。
更に次の瞬間にはその姿は既に別の場所へと移っている。
もはや残像すらも置き去りにして動く先記に、悪魔達は翻弄されていた。
「奴はどこに!」
『Change! NINJA!』
「後ろだけど」
同時に振り返ると、再びピンク色の装甲を先記は身に纏っていた。
それに気づき、後ろを振り向くが、その手に持った巨大な手裏剣で切り裂いた。
「なっ!」
「よっと」
その姿はまさに忍者だった。
所々が、先程まで丸鋸を使っていた姿の面影はあったが、殆ど別物と言っていい程の変貌を遂げている。
その手に持つ巨大な手裏剣は勿論の事、次々と小さな手裏剣、苦無を投げ飛ばして、次々に悪魔達を倒していった。
そして動きを止める事なく、先記は再び姿を消す。
ただし今度は高速移動ではなく、単純に姿を消していただけだったのだが、それを見た者達からすれば消えたように見えただろう。
実際、先記の動きについてこれる者などこの場にいる訳もなく、あっという間に姿を消した先記に対して恐怖していた。
「こいつはっ一体なんなんだ!!」
「ザババコンビの恋人だよ」
そう、最後に残った悪魔に向けて、姿を見せずに、そのままとどめを刺す。
それが全ての悪魔を倒した瞬間でもあった。
やがて、元の会場へと戻ると共に、既に変身は解除されていた。
「ばっ馬鹿な。
幾ら何でもこんなの」
そう言いながら、自身の眷属達がやられた事に動揺する様子を見せていた。
「まぁ、そういう事で。
もしかしたら、こんな俺のような奴が現れる可能性があるから、才能潰さない方が良いよ」そう、言いながら座る。
「イェーイ見たかデス!」
「ザババは無敵」
そう、切歌はVサインを、調はぐっと拳を出していた。
「なんというか、先記がここまでとんでもないとはね」
「これもギャラルホルンの、あれ、アザゼル?」
そうしていると、アザゼルは先程の戦闘を含めて考えていた。
「ヴァーリから聞いたガングニールという単語。
それにザババだと?」
「どうかしたの?」
「いや、少しな」
そう言いながらも、アザゼルは思考の海へと入っていく。