中原ミズキがスパダリ男装美女にレズ堕ちする話   作:あんみつ炙りカルビ

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男装美女を描きたいので書いた。スネークの気晴らし。
高身長男装美女のリコリス出てきて欲しかった………!


中原ミズキがスパダリ男装美女にレズ堕ちした件

「やあ、お待たせ。中原ミズキさんだよね? 今日は一緒に楽しもうか」

 

「あ、は、はい!! 椿さんですよね! よろしくお願いします!」

 

 噴水が似合う街中の広場、月明かりが湧き上がる水に反射して、キラキラした光を広げる待ち合わせスポット。

 現に待ち合わせの人達が行き交う中で、彼女は初対面の待人と出会う。

 

(キタァァぁァァァァァァァァァ!! 私の春! 千束にたきな、くるみまで馬鹿にしよって、見たことか! これが、私の終着点!)

 

 藍色の滑らかな髪を右側に編み込み、ショートカット、真珠のようなきめ細やかな肌との色合いのバランスが月明かりに映える端正な顔立ち、180近い高身長に彼女──中原ミズキは心中で歓声を上げた。

 

「初対面なのに、夜に誘ってごめんね? 本当はもっと昼間に会いたかったんだけど」

 

「いえいえ、全然! それより外なのも何ですから、何処か行きますか! あっ、お酒とか、どうです? この辺り結構詳しくて──」

 

 申し訳なさそうに伏せたまつ毛も映画俳優のように様になっていて、うっすら覗く華奢な鎖骨と光るネックレス………下手したら給料1ヶ月分のブランド物に目が眩む。

 

 そんな相手に気を遣わせないように、ミズキは自分のおすすめの店を上げようとして、全てがデートで行くような場所ではない居酒屋ばかりなのに、閉口。

 

 すると、相手はまるで自然に物を取るかのようにミズキの手を取って、悪戯っぽい笑みを浮かべて

 

「まだお酒には早いかな。どうだろう、ミズキさんが良ければ。夜でもコーヒーが飲めるカフェがあるんだ。人は少なくて、ソファはふかふかだよ?」

 

「え、あ、じゃ、じゃあそれで………」

 

 あまりの顔立ちの端正さにまるで魅了されたかのように、するりと手を握られて、そのまま引かれた先に連れて行かれたのは、純朴な空気を纏う喫茶店。

 

 中に入れば、老店主がいるだけで本当にお客さんは少なくて。

 けれどよく清掃がされた調度品と、年季が入ったカウンターや壁の色はミズキが働く喫茶店とはまたちがう安心を覚えさせた。

 

「お手をどうぞ、ミズキさん」

 

「あ、ありがとう………」

 

 手を引かれて、まるで童話の姫様のように椅子を引かれて、座ってしまった彼女の対面に彼が座る。ここまでの扱いからしてだいぶ女性に手慣れてはいるが、感じる空気から下品さを感じない。

 

 どこまでも綺麗で透き通った儚さと、杏仁豆腐のような甘い匂いにミズキは酔ったように目が眩む。

 

「出会ってくれて、ありがとう。今日は帰るまでずっと笑顔にしてあげるから」

 

 頬に熱が上がって行くのを感じる。彼の言葉全てが、スポンジに吸い込まれる水のように入っていく。

 まるで酔った拍子に見る夢のようなその時間に身を委ね、彼女は溺れていき──気づけば、翌朝を自室で迎えていた。

 

 

 

 

 

 

「というわけよ………いや、マジで私の旦那様見つけたわ」

 

「寝言は寝てから言えよ、酔っぱらい」

 

「千束の言う通りです。恐らくミズキさんから情報を抜く為に近づいたハニトラ要員の可能性があります」

 

「たきなの口からハニトラって言葉が出るとは思わなかったなぁ………」

 

 リコリコ喫茶店。中原ミズキが働く知る人ぞ知る名店………表向きは。裏側は日本の平和神話、それを維持するためだけに結成された秘密組織。

 

 主に女子高生に扮した暗殺者による事前除去『リコリス』と呼ばれる暗殺支部である。そのカウンターにて酒を飲みながら、ひたすらに1ヶ月分惚気ているのが、裏方担当………中原ミズキである。

 

「だってさあ! やることなす事150点なんだぞ! 支払いは全部彼持ちで、車もレクサスとかアウディとかの高級車! おすすめしたお店にハズレはないし、エスコート完璧! ドラマの主人公かよ………」

 

「なんで、そんな人がミズキを好きになったんだろうね………」

 

「ダメな女がタイプだったんじゃないですか?」

 

「黙れ、ガキンチョども! せいぜい私がハワイで挙式を上げるのを楽しみに待ってるがいい! 今日こそは、体の関係まで行って、既成事実作ってゴールインじゃい!」

 

「ミズキ、飲み過ぎだ。そろそろ酒を抜いておけ。酒臭い女と幻滅されたくないだろう」

 

「というか、仕事しろよミズキ。なんでボクの負担が増えてんだ」

 

「諦めなよ、くるみ。どうせ近い内に振られるからさ」

 

 スッと、酒をくるみに渡してカウンターから店長であるミカのコーヒーを飲み始めるミズキは働く意志が見えないほどに浮かれているので、千束も肩をすくめて給仕に戻る。

 

 まあ、偶には浮かれるくらいはいいかと長い付き合いから許しているのだから。

 

 

 

 

 

 

 甘い匂いが鼻を過るが、くどくはない。普段の呼吸より少し長めに、水がブクブクと音を立てるくらいの強さで吸うようにと椿が教えてくれるので、ミズキは吸う。

 

「けほ………凄いわね、これ」

 

「シーシャは慣れないと、ちょっときついかもね。でもお酒を飲みながら、ゆっくりとこれを吸うのが結構好きなんだ」

 

 成人になってから、偉い人から煙草勧められることが増えたが、その度に裏方の仕事で強く断ってきた。匂いがつくのは暗殺者にとって厳禁、だから彼のシーシャの誘いにちょっと興味が湧いたのだ。

 

 だからって、情報担当とはいえリコリコ喫茶店一員の端くれ。煙草など買うなんてもってのほかだ。ミズキもコンビニではお酒しか買わない。とはいえ気になるのでお気に入りの店で初体験と洒落込む。

 

「ミズキさん、無理はしないでね? 普通の煙草に比べればマシだけど、体に害がない訳じゃないんだ」

 

「は、はい! 確かに喉がイガイガしてきたかも。私はもういいかな。すみません、シンデレラください」

 

 既に酒は抜けているが、普段の酔いどれを隠す為にノンアルコールカクテルを傾け、椿がシーシャを吸う姿に目を向ければ甘い香りが届く。それは彼がつけている香料からではない。

 

「そのシーシャ甘い匂いがするわよね」

 

「ああ、煙草の匂いを漂わせるよりも幾分かいいだろう? 本来は煙草自体ご法度なんだけどね。仕事柄」

 

 椿は目を閉じ、これ以上美味いものは無いかのようにゆっくりと丁寧に煙を吸い込んでいく。あまりにも美味そうに吸う椿を、他に見るもののないミズキはまじまじと見ていて。

 

 ゆっくりと吸い込み吐き出された紫煙と共に、ふわりとしたバニラの香りが2人の間を縫うようにして広がっていった。

 ──煙草を吸う姿が綺麗だと思った。

 

 すぱすぱとせわしなく吸う者や、ぼそぼそと背筋を丸めて吸う者を見る度に、私は煙草を吸う姿を好ましいとは思えなかった。

 

 吐き出す煙の匂いが染み付く以上に、その姿が見っともなく、『汚い』とさえ思っていた。だが、椿は静かに、ゆっくりと紫煙を吐き出す。

 

 時間にせっつかれているわけでもなく、煙草に飢えて飢えて仕方がないというわけでもない。

 何となく、吸いたくなったから吸っている。さり気無く。

 

「好きだなぁ………」

 

 彼の姿に思わず洩れた言葉、それに気づいて慌てて口を塞ぐが、意地悪そうに笑った彼を見て聞こえていた事を察する。

 

「いや、あまりにも椿さんの姿がかっこよくて、つい──」

 

「ミズキ」

 

 取り繕うような言葉を遮るように、私の顔にシーシャの煙を浴びせられる。その意味を知ってか、知らずか、少なくとも私は知っていて。

 

「お会計を」

 

 彼は私の頭を撫でて、お会計へ足を進ませる。残された私は帰って来るまで、顔から熱がひかなかった。

 熱に浮かされるまま、時計を見る。もう終電なんて過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

「適当に入ったけど、綺麗でよかったね」

 

「ほ、本当に適当? 結構遊び慣れてるんじゃないの?」

 

「遊び慣れてるのは本当………でも、この辺りは初めてかな。ミズキと一緒だよ」

 

 案内されたホテルの一室にて、腰に手を添えられて部屋の中心にあるベッドに腰掛ければ、朝露のような透明さを携えた鳶色の瞳がミズキを覗き込んでいて。

 

 腰から登った手が頬に添えられる、男性とは思えない華奢な指先に自らの指を添えて、ミズキは震えながら目を閉じる。

 その眩さに目が眩まないように、これから起きる事に卒倒しないように。

 

「いい子だね、ミズキ」

 

 熱を持った柔らかさがミズキの唇に伝わる。仕事ばかりで恋愛なんてまるでしてこなかった彼女に対して、まるで劇薬のような熱。

 それをわかっているのか、下唇を啄むような浅い口付けで、ミズキの緊張を解くように吐息を交わして行く。

 

「もっと委ねるように、力を抜いて………大丈夫、怖くないよ」

 

 交わす言葉に記憶が遠くなる、口元で揺らいだ言葉が甘く耳元で囁かれ、脳髄から快楽物質が生み出されて行く。あまりの体験に少し、落ち着きたいと距離を取ろうとして、

 

 むにゅ

 

「────うん?」

 

 ミズキは椿の胸元を押した瞬間、何かに違和感を感じた。

 人間、めんつゆが入ったコーラのペットボトルを口に含んで想像と違えば噴き出すように、彼女の現実と認識で差異が発生する。

 

 ミズキは思考停止したまま、もう一度強く押す。

 椿の胸元は彼女の圧力を柔らかく受け止め、跳ね返す。まるで水風船のようなハリと柔らかさが何かに押し潰されているようで、

 

「………ねえ、つかぬ事をお伺いしたいんだけど」

 

「何かな、ミズキ?」

 

「スリーサイズはおいくつ?」

 

「上から88 59 83のFカップだけど?」

 

 遠のく意識が急速に覚醒、快楽物質が打ち止められ、意識がどんどんはっきりクリアになり、ミズキは混乱のまま、椿が来ていたシャツを引きちぎれば、

 

「ミズキ、意外と情熱的なんだね………攻め気質かな?」

 

「私は同性愛者じゃねえんだよ!!」

 

 照れた椿の下から出てきたのは男性だったら涎を垂らすこと間違いなしの美しい肢体。彫刻品のように完成された、その肉体に不覚にも心臓がときめいたが、それはそれ。これはこれ。

 

「騙されたぁぁ………この詐欺師め〜訴えてやる………訴えてやる! って何脱いでんだ! 服を着ろ!」

 

 男性だと思っていた分、ショックが大きく、ミズキはベッドの上で崩れ落ちてしまう。怨嗟の声を漏らすミズキに椿は引きちぎられたシャツを脱いで、水色の下着姿に。

 

「悲しいのかい? ミズキ? おっぱいでも揉む?」

 

「自前のがあるからいらねえよ!! つか、そうじゃねえだろ!」

 

 あまりの現実にツッコミにまわざるを得ない、ミズキを慰めるように頭を撫でる椿の手を払い除けるミズキ。

 対して椿は割と余裕ありげに微笑んで、

 

「おや、僕はてっきり同性愛者かバイかと思っていたんだけど………違ったかな?」

 

「当たり前だわ! 何が好きで女にファーストあげなきゃ行けないのよ!」

 

「そこまで言われるのは流石に心外だなぁ………ミズキの為に今まで色々してきたのに。別れたいの?」

 

「至極当然だっての! 私はね! 男が好きなの! イケメンで金持のね! でもアンタは女の癖にイケメンで、金持ちで、エスコート完璧で………何で、性別が女なのよお………!」

 

「わあ、理不尽な怒り」

 

 ぽかぽかと殴り始めたミズキの両手を掴んだ椿は、彼女をベッドに押し倒す。先程とは違うとはいえ、顔立ちは男性に負けず、色っぽくて儚い美少年………視界にちらつく柔そうな胸さえなければ、

 

「別れてもいいけど、きっとミズキは僕を忘れられないよ。断言する。今までだって、そうだった。よく考えてみて、ミズキ。お金があってイケメンなパートナーがこの先、自分の人生で現れると思う?」

 

 うぐ、と言葉に詰まるミズキ。確かにそうだ。欲しいものはなんでも買ってくれて、毎日完璧なエスコートに、仕事場には訪れない配慮。その上、イケメンで高身長なパートナーができるかと言えば、可能性はゼロに近い。

 

「だからさ、1回。初回のサービスって事でどうかな。1回だけ、互いの相性見るのは。勿論、嫌なら嫌で構わない。お帰りいただいても構わないし、連絡先も消すよ」

 

「1回って、つまり………」

 

「勿論、下の初めても残してあげる。それ以外は僕が初めての相手になるけど、どうかな? 嫌?」

 

 ミズキの中でこれ以上ないくらいに思考が回転する。相手は女、女なのだが………それ以外の点が、これ以上にないくらいにミズキのタイプなのだ。だからって女相手に抱かれるのは、流石に社会の目も考えて………

 

「いや、店長が同性愛者じゃん、うち」

 

 すっと出てきたミドルな店長。かつて酒の席で男性が恋愛対象だと聞いた覚えがあって。そもそもリコリスで女同士の恋愛なんて珍しくもない。偶に無線越しに乳繰り合う声が聞こえて、管制室を虚無に追い込んだことくらいあるのだから。

 

「じゃあ、問題ないって事でいいのかな?」

 

 馬乗りになった椿の整った唇を舌が舐める。その妖艶さに無意識のうちに唾を飲み込んでいたミズキは彼女の影が自分を覆う瞬間に、期待するように目を遮るように視界を閉じて、

 

 

 

 

「──天国に連れて行ってあげる」

 

 

 

 

 

 

 

「えっ!? お相手、女性だったんですか!?」

 

「うわぁ………そういうパターンか」

 

 後日の喫茶店にて、カウンターに突っ伏したミズキから事のあらましを聞いたたきなは目を見開き、千束は呆れたようにため息をつく。

 

「リコリス同士の恋愛は珍しくなかったですからね………偶に改名して、パートナーと同じ苗字にしてる人もいましたから」

 

「そうそう。新婚空気を楽しんでたりね。まあ、そいつ二股かけてて修羅場になった奴もいたけど」

 

「リコリスってそんな百合百合の世界なのか?」

 

「外に出逢いはないし、戸籍ないから結婚も無理。ってなると意外とリコリスOG達はパートナーでできてる事あるんだよね〜フキも私も何回か告白されてたりするし」

 

 千束が遠い目をしながらかつてを思い返すので、質問したくるみがマジかよ………という目で店長を見るが店長自身も同性愛者なのもあって曖昧に頷くだけだ。

 

「話を戻しますが、ミズキさんはどうするんですか? 別れるんですか?」

 

「まあ、そうなんじゃないの? ミズキは別に同性愛者じゃないし」

 

 とはいえ、上手くいきそうだった出会いが台無しになったと考えればミズキ自身にとって笑い話ではない。千束もそれがわかっているのか、励まそうと近づいたところで、彼女の異変に気がついた。

 

「やばかった………最高すぎた………別れられるわけないじゃない………!」

 

 息が荒い。まるで思い返すかのように彼女は自分を抱きしめる。

 残された温もりを感じるように、忘れないように思い返すようにして、彼女の瞳に熱が灯る。

 

「あ、あの? ミズキ?」

 

「もう無理………私、あの人と付き合って、結婚する! ハワイで同性婚を決めるわ!」

 

「ミズキ!??」

 

「おめでとうございます。ミズキさん。私達は海外には行けないのでお気持ちだけ包みますね」

 

「たきなまで!? 止めなくていいの!? ねえ、先生!?」

 

「千束、恋愛は………自由なんだ」

 

「ちょっ、いいの。それで!? ちょ、まっ、えぇぇぇぇ!?」




時系列的には3話後
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