中原ミズキがスパダリ男装美女にレズ堕ちする話   作:あんみつ炙りカルビ

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わぁ………はぁ………(スネークよりもお気に入りが増えてるの見て)
一回目を離すと、知らぬ間にブクマ増えてるの怖い。もっとお願い


もう、彼女のことが忘れられない

『レディースアンドジェントルメン!! 今宵は我が舞台へようこそ! 心ゆくまでこの夢の世界──存分に味わっていきたまえ』

 

「………ミズキの言ってる椿ってこの人だろ?」

 

「えーと、なになに〜『ソーサラー・カメリア』?」

 

 とあるリコリコ喫茶店の休憩時間。風呂に入っていたクルミを引っ張り出した千束が依頼したのは、ミズキの恋人である椿の身辺捜査だった。放っておけばいいのに、と愚痴るクルミを甘味を取引で調べ上げたのが、上記の映像。

 

 そこにはマスカレイドマスクを身につけた純白を基調とし、藍色と紫という落ち着いた色を纏わせた礼服に身を包んだ彼女が、外国………それもかなりの大きな舞台で挨拶している。

 

「ソーサラー・カメリアって確かマジシャンですよね? 爆破マジックで全世界を沸かせた世界に名を馳せるマジシャン。エリカが興奮して話してました」

 

「たきなの言う通りだな。年収700万」

 

「700万? 大金持ちではなくない? 見栄張ってるの?」

 

「………単位はドルだ。日本円だと、ざっと7億」

 

「7億!? 有名パンケーキが死ぬほど食べられるじゃん!」

 

「それだけあればリコリスの装備も上げられそうですね」

 

「たきな〜リコリスから一旦、離れな〜」

 

 DAに後髪を引かれつつある、たきなを戻そうと千束が揺さぶる中でくるみは黙々とスクロールをしていき、ある場所を拡大、読み上げた。

 

「『ソーサラー・カメリア。1年の休業発表。マジシャンとしての見聞を広める為に、初心に帰ろうと日本へ』って書いてあるな。良かったな、千束。ミズキの春は後、半年くらいらしいぞ」

 

「………何というか、やっぱりミズキって間が悪いというか」

 

「まあ、経験になるのならいいのではないでしょうか。それより千束、休憩時間終わりですよ。戻ってお仕事です」

 

「うええ………まだ休みたいのに〜」

 

 我儘言う千束をたきなが引っ張っていくのを見送って、クルミは自分の端末で更に検索をかけていく。暫くして、彼女は集めた情報を整理するかのように、呟いた。

 

「………なんで、『ソーサラー・カメリア』になる以前の経歴が出てこないんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

「──んっ」

 

 耳に痛いスズメの囀り、目に痛い朝の光を受けて椿は剥き出しの胸を放り出してベッドから起きれば、朝の冷えた空気に漸く思考が追い付く。

 

「まだ夜明けか………」

 

 彼女やミズキに早起きは三文の得という概念はない。少なくとも二度寝に勝るほどの価値などない。それは例えば。

 

「うーん」

 

(寝てるのに眉間に皺が寄ってるね………)

 

 一日中、肩を並べてソファでゲームをしていれば、気がついたら眠っているような。うつらうつらと腕の中でその温もりを感じながら二度寝する幸せには替えられない。だが例外も希にある。

 

 今も自分が抜け出したベッドで涎を垂らしている彼女の寝顔を眺める事。寝起きの悪い彼女にはレアな光景。 傷だらけの腹部を隠すようにシーツを巻き付け、渇いた喉を潤す為に飲み物を取りに行く。

 

 台所にあるボクからプレゼントされた珈琲豆をミルで挽き、お湯を注いで朝焼けの珈琲を持っていく。

 慣れ親しんだ香りと味、10代の頃から何も変わらない味だけど自分の味覚だけは歳を重ねた分、味わいを覚えていて。

 

「おはよう、ミズキ。よく眠れた?」

 

「………う、ん」

 

 寝ぼけた彼女の額にキスをして、布団から体を起こした彼女にコーヒーを差し出すが、彼女は一口二口飲むとまた夢の中へ旅立ってしまう。

 仕方ないとはにかんで、椿は散らかった下着を洗濯機に入れて………ミズキの下着を見て、少しの間、思考を止める。

 

(これは………手洗いかな?)

 

 ミズキの紫の勝負下着………向こう側が透けて見えるネグリジェを洗濯籠に入れて、キッチンへ。時計を見れば、ミズキが喫茶店に出勤するまで時間はない。

 

 なるべく、早めに食べられて、腹持ちのいいものを冷蔵庫を漁ってみるが、出てくるのは胡瓜や生ハム、賞味期限切れかけの卵に鮭フレーク。見事に酒のつまみになるものばかりで笑ってしまう。

 

 とはいえ、ありきたりのもので朝食を作るのも出来る男の流儀だ。自分は女だが、それはそれ。カフェインが効いてくるのは30分後、その頃にはきっと起きてくると思って。

 

「さてと………始めるかな」

 

 お湯を沸かして、卵を入れて70度を維持して、次の工程へ。一口サイズに切った胡瓜に生ハムを巻き付けて、爪楊枝を刺して、冷凍庫から米を取り出し、レンジでチン。

 

 米が解凍された頃に、卵を取り出して殻を割れば、見事なタイミングで温泉卵が完成。ペットボトルのお茶を用意して、解凍した米を茶碗に盛り付ければ、バタバタと廊下を走る音がして。

 

「おはよう!! 遅刻!?」

 

「朝ご飯食べていきなよ? 食べたら送っていくからさ」

 

 乱れた髪を手櫛で整えつつ、裸に引っ掛けただけの上着のままキッチンに飛び込んできたミズキを窘めるようにいえば、彼女は時間と食事に葛藤し………大人しく席に着いた。

 

「時間がかからないものにしたよ。ご飯は鮭フレークでお茶漬けにするといい」

 

「冷蔵庫には何もなかったはずなのに………マジシャン?」

 

「そうとも。今はミズキ専属のエンターテイナーさ。さあ、お箸をどうぞ。子猫(キティ)ちゃん?」

 

 キティと呼ばれたミズキは照れ隠しをするように、生ハムと胡瓜の巻物をせっせと口に運んでは、簡単ながらその美味しさに目を輝かせる。

 

「胡瓜の浅漬けも塩味みたいなものだからね。塩っけある生ハムと合うんだ。簡単だし、酒のつまみにも向いてるよ?」

 

「本当に助かる………!! もう、美味しすぎて体重増える〜!!」

 

 温泉卵をするすると食べて、鮭茶漬けを5分でかきこんで自室に戻って彼女は今日着ていく服をクローゼットから漁りつつ、姿見に自分の姿を写して、

 

「ちょっと待てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「おや、どうしたかな。ミズキ? 今日のお弁当はクラブハウスサンドだよ?」

 

「わーい、大好きー! じゃねえわ! あれだけき、き、キスマークつけるなって! 言ったわよね! 仕事だからって!」

 

「背中にしかつけてないよ? それにミズキも嬉しそうだったし………だめ?」

 

 しゅんとした悪戯が見つかったような子犬のような目に、ミズキの心中が荒れ狂う。もうこのまま押し倒して、イチャイチャしたいのだが、仕事という生きていくのに必要な物が邪魔をする。

 

「う、ぐぅ………だ、だめじゃないけどお〜やっぱり、人の目が、ね?」

 

「わかった………今度から気をつける」

 

 かろうじて、湧き上がる欲望を理性の蓋が押しとどめて、今すぐにでも抱きしめて首筋に顔を埋めたいのを我慢。何とか着替えを済ませて、車に向かう。

 

 ミズキの住む近くに止めたアウディの助手席に乗り込んで、フロントミラーを使って急いで化粧。流れるのはラジオで、昨日の地下鉄が脱線したという事故の話を耳にする。

 

「おっかないわね〜椿も気をつけなさいよ? アンタ、意外と抜けてるんだから」

 

「ははは、肝に銘じとくよ。危ない場所には近づかない。それで痛い目を見たことがあるからね」

 

 他愛ない話、なんて事ない穏やかな日々、それを理解するたびに頬がだらし無く緩んでいくのを両手でむにむにと握りつつ、何とか保とうとするが、

 

「どうかした? ミズキ?」

 

 彼女に呼ばれる度に、胸から暖かさが伝わって背筋を心地よい痺れが走る。好きな人に名前を呼ばれる、それがどれだけ幸せな事なのか、画面越しの恋愛に冷え切った言葉をぶつけていた自分が馬鹿らしい。

 

 恋愛が、こんなに日々を楽しくするなんて知らなかった。

 男性だったらもっとよかったけれど、女性じゃなかったらこんな来世の運まで注ぎ込んだ完璧なパートナーとは出逢えてなかっただろう。

 

(神様、運命ってあるのね………)

 

 千束が見たら、指をこめかみに当ててくるくる回し、弾いた素振りをするくらいにはミズキは浮かれていた。

 

「着いたよ、ミズキ。今日も頑張ってね」

 

「ありがと。今日、椿はどうするの?」

 

「街をぶらついてるよ。終わったら、連絡して。迎えにいくから」

 

 見事なまでの尽くしっぷりに、ミズキは空を仰ぐ。私のパートナーが最高に素敵、今日も頑張れるとばかりには。

 ただ、それは彼女だけであって、

 

「──ミズキ」

 

「何、どうした──」

 

 開かれた窓越しに名前を呼ばれて、近づいたミズキの唇に淡い熱としっとりした感触が残され、思わず動きを止めたミズキに椿は寂しそうに笑って。

 

「………充電、だったけど。満タンにはならなかったみたいだ」

 

 まるで魚が空気を求めるように口をぱくぱくさせるミズキに対して、彼女は目を伏せて、

 

「早く………帰ってきてね。僕の子猫」

 

 窓を閉じて、車を走らせた彼の耳は僅かに赤く染まっていて。

 それ以上にミズキの耳から頬は茹蛸のように真っ赤になっていて。

 

「おはよう〜ミズキ………どしたの? 熱でも出た?」

 

 すれ違うようにして、走って来た千束はマネキンのように突っ立ったままのミズキに声を掛ければ、ミズキはふらついたまま喫茶店の扉を押して、

 

「千束………私は子猫だったわ」

 

「そっか………行こっか、病院」

 

 千束は慈悲を浮かべた笑みで理解を諦めた。

 

 

 

 

 

 

「私は結婚していたわ」

 

「たきな〜119〜脳味噌を取り出してほしいって言っておいて」

 

「自分で連絡してください、千束」

 

 昼休み、手製のクラブハウスサンドを食べながら休憩を取るミズキのとち狂った発言に店長は無言でブラックコーヒーを入れ、くるみはそそくさと逃げ出した。

 

「だって、毎日じゃないけど………帰ったらあったかいご飯とお風呂が沸いてて、愚痴も嫌な顔をせずに聞いてくれて! 晩酌に合うお洒落なおつまみにシメまで! しかも、毎日夜がもう………すごくて」

 

「ミズキ、千束とたきなの教育に悪い」

 

 惚気出したら止まらないとばかりにミズキが夢中で語る間に千束は甘味がゼロのコーヒーをおかわりし、たきなはピーマンを丸齧りしている。

 

「浮気されたらいいのに」

 

「やめてあげましょう、千束。せっかく訪れた最期のチャンスなんですから」

 

「はーはっはっは! 痛くも痒くもないわ、がきんちょども! 彼女は私のこと好きすぎるから! 裏切られるとかないし〜大人の関係を知らないから、がきんちょは全く」

 

「結婚詐欺に会えばいいのに」

 

「やめましょう、千束。夢に浸るのも大人の特権ですから」

 

「アンタらにも幸せのお裾分けしてあげるわよ〜あっ、でも私以上のパートナーは見つからないかもね〜」

 

「………………撃つか」

 

「もう、好きにしたらいいと思います」

 

 ジャキンとリロードした千束をもう止める素振りもないたきなはキッチンに皿を下げにいけば、冷蔵庫から牛乳を取り出すくるみの姿を捉えた。

 

「くるみ、本当にミズキはハニトラに会ってないんですか? あまりにもその、何というか………」

 

「都合が良すぎる、だろ? ボクもそこは不安に思ったから彼女の身辺を洗わせてもらった。ボクの安全にも関わるからな」

 

 牛乳をミカのブラックコーヒーに半分注ぎ、砂糖を多めに入れてかき混ぜる。まるで自分の頭を整理するかのようなその行為の後、彼女は一口味を確かめて、

 

「結果はグレー。渡米からマジシャンになるまでの記録はあった。でも、()()()()()()1()8()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 はっと、息を呑んだたきなの後ろでミズキのスマホが震えた。

 調子に乗った彼女が彼女からのラブコールだと高笑いしながら確認すれば、そのままカウンターに突っ伏した。

 

 ミズキの手から溢れたスマホを千束が覗き込む。

 書かれていたのは短い内容。

 

『旧友に会うことになった。今日は迎えに行けない、ごめんね』

 

 

 

 

 

 

「お待たせ、久しぶりね。ツバキ」

 

「今、僕も来たところさ。カエデ」

 

 太陽の光が燦々と注がれるテラスにて、椿は白のテーブル越しに彼女と久しぶりの対面を果たす。

 かつての友であり、パートナーであり、背中を預けあった幼馴染み。

 

「今は秘書として働いてるんだっけ?」

 

「ええ、司令のね。帰って来てるならもう少し早く連絡しなさいよ」

 

「ちょっと野暮用があってね。君を巻き込めなかった」

 

 ──共に世界に笑顔あれ、と修羅の道に身を落とした暗殺者。

 

「貴方──リコリスをやめてから変わったわね」

 

「──君は全く変わらないね。あの日、袂を違えたままだ」

 

 在りし日の陽炎を追うように彼女達は再会を果たした。

 

 

 




そんなシリアスにはならない。
私はただ、だめなお姉さんとスパダリ男装美女の恋愛が見たいだけなんだ………!
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