中原ミズキがスパダリ男装美女にレズ堕ちする話   作:あんみつ炙りカルビ

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若干スランプ気味でした。ごめんなさい


そばにいるだけで、なんか幸せだったな

「綺麗な景色だね!! たきな〜!!」

 

「はいはい。綺麗ですよ、千束」

 

「オラ、ガキンチョども。もうじき着くわよ。荷物下ろす準備しとけよ〜」

 

 若々しい青葉が赤く燃ゆる紅葉に変わる頃、山中を走るレクサスが1台。中は全員女性。目的は紅葉狩り兼キャンプというレジャーである。

 事の発端はミズキによる秋キャンプに行くという話に、

 

『やだやだやだ! 私もどっか行きたい〜!! 先生! 私も夏にどこにも行けなかったから、どっか行きたい〜!』

 

 というか、千束の駄々こねにミズキがほとほと呆れて、聞くだけ無駄だと予防線を張って椿に連絡した結果、二つ返事でOKが出たのだ。

 だからといって、千束を一人にしたら色々と邪魔をしかねないこと、仕事以外に楽しみを見出していないたきなも連れられて、キャンプに来たのだ。

 

「千束さんとたきなさんは食材持ってね。ミズキは受付を。残りは僕が持つから」

 

 両肩両腕に荷物を抱えて、サイトに入る椿を追う千束とたきな。

 重心がぶれる事なく、軽々と荷物を運ぶ背中を見て、たきなが、

 

「………実は、椿さんは元リコリスなんじゃないですか?」

 

「は? 何言ってんの、たきな。椿さんはマジシャンでしょーが。第一私達海外に行くにはパスポート取らないといけないのに戸籍ないじゃん」

 

「ですが、18歳で卒業したリコリスは基本的に海外の情報組織やリコリスの海外支部に出荷されると聞いてます。千束クラスだと逆に日本に残されそうですが」

 

「えぇ!? やだやだ! 私もアメリカ行きたい〜! 自由の国でハンバーガー食べて、ウォール街行きたい〜!」

 

 荷物を置いて、せっせとキャンプを設置し出す椿を見つつ、自分達のテントを少し離れた箇所に立てる。あまりに近くて、2人のいちゃついてる声がしたら、あまりにも居た堪れないので。

 

「話を戻しますが、椿さんが元リコリス。爆発の専門家ならば、マジシャンで活躍する傍らでそういったお仕事もしてるんじゃないですか?」

 

「あぁ………なくは、ないのかなぁ。でもまあ、別に気にする必要はないでしょ。別に銃なんて持ってきて………おい」

 

「………………熊が出たら、怖いので」

 

「………ぜってえ、抜くなよ?」

 

 千束のドスが効いた低音にたきなは赤べこのように頷く。テントも無事設立した頃に、ミズキは漸く帰って来たが、爽やかな景色とは裏腹に不服そうな顔だ。

 

「あ、椿さんに抱きついた。頭もぐりぐりしてる。傍目から見て恥ずかしくないのかね」

 

「千束も偶に私にやってるので違和感ありませんが」

 

「アラサー女子がいちゃつくのと女子高生がいちゃつくのでは天地ほどの差があるのだよ、たきな」

 

「聞こえてっからな、ガキンチョども!! 私はまだ27だ!!」

 

「僕もまだ25だからね? アラサーではないからね?」

 

 むすっとしたままの彼女は写真を撮る椿の背中に抱きつきながら、がなり声。年齢とあれば流石の椿も不服を表すかのように否定する………が、17.6のちさたきからすれば一回り年上なのは違いないので

 

「アラサーじゃん。おばさんじゃん」

 

「「アラサーじゃないって言ってるでしょ!!」」

 

 情もない発言に椿ミズキの言葉は重なるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で釣りをしよう。せっかく川に近いキャンプ場なんだ。景色も綺麗だし、いい思い出になると思うよ」

 

「あの、ミズキさんは………」

 

 たきなが指を差した先、そこには既にビールを開けて飲みながら、胡瓜を無心で叩き割るミズキの姿。

 あまりにも鬼気迫る顔に、千束も触れることなく、釣り竿を手に取る。

 

「管理人さんに『家族でキャンプ? いいね〜今ならアユが釣れるよ!』って言われたらしくて………」

 

「ああ………若作りの母親に見られたと。それでしたら、椿さんは旦那さんになるんですが、いいんですか?」

 

「構わないよ。男装してるのに、男性に間違われるのをキレたりしたら器が狭いだろ? とりあえずミズキには自分のつまみを作らせてるから、おとなしい間に鮎を釣ろうか」

 

 岩間に流れる水の瀬、澄んだ沢の音、加えて木陰は、そよぐ風のなんと涼やかで、肌に触れる水気も、真夏の肌に張り付く湿気とは大違いだ。

 

 普段から都会の喧騒に巻き込まれていたリコリス2人にとっては弛緩剤のようなもので。知らず知らずのうちに肩に入っていた力が抜けて行くのを感じる。

 

「………贅沢な時間の使い方ですね」

 

「たまには息抜きも必要だからね。力を抜くことを忘れたら、いつかは〜パン!って破裂しちゃうって」

 

「千束は緩みすぎですので、もう少し張り詰めて………わっ」

 

 直ぐに竿の先が微かに曲がって、咄嗟にたきなは手首を引くけれども、重みは無い。水滴を滴らせて帰って来た釣り針からは、綺麗に餌が抜き取られていた。

 

「やられましたね〜たきなさーん」

 

「………まだ、餌はあります。絶対に千束よりは多く釣ってみせ──」

 

「おっ、また来た! いいスポットじゃん、ここ!」

 

 さっきよりも微かに軽い音に千束はほぼ反射で手首を引く。

 今度は上手くかかったようで、ぱしゃぱしゃと水面を跳ねるそれを、ゆっくり手繰り寄せる。

 

「どやぁ」

 

「ドヤ顔やめてください。たまたまです。ビギナーズラックという奴です」

 

「おっ、なら勝負する? 負けた方は3日間トイレ掃除。どうよ?」

 

「負けても罰ゲーム撤回しないでくださいね!」

 

 意気揚々と煽る千束に乗ったたきな、そのまま1時間の釣り勝負が始まる中、せっせとたたき胡瓜を作っていたミズキからビールを取り上げる椿。

 

「ミズキ、飲み過ぎ。まだ昼過ぎだよ? 後は夜になってから」

 

「何よ、昼間から酒が飲める機会を取らないで欲しいんだけど?」

 

「夕飯はアヒージョで、それに合う高級ワインもあるんだけどなぁ………」

 

「そのビールで終わりにするわ。休肝日って大事よね!」

 

 高速掌回転により、ミズキは最後のビールを飲みながら、バーベキューコンロでラムチョップを焼き始めた恋人を待つ。

 クミンとローズマリー、岩塩で味がついたその焼き立てを口に運んで、感嘆の吐息を漏らす。

 

「赤身がむちむちで、脂身も溶ける〜ビールとの相性最高すぎない!?」

 

「アメリカの友人にビールに合う肉って紹介されてね。ミズキに食べて欲しくて頑張ったんだ。お次はジャークチキンだよ。スパイシーさが売りのジャマイカ料理さ」

 

 クミンや塩、玉ねぎなどを混ぜて半日漬け込んだチキンを表面を香ばしく焼く事で出来たチキンを切り分けて、ミズキの皿に置けばがっつくように口に運んで破顔する。

 

「これはあれだわ、ラムコークが合う奴………! 椿、ラムコーク作ってくれたりは〜」

 

「約束守れない子に上げる料理はありません」

 

「ですよね〜じゃあせめてコーラちょうだい、コーラ。気分だけでもマリブ海を味わうわ」

 

「たっだいま〜! 千束帰りました〜! という訳でたきな。トイレ掃除よろしくね!」

 

「何故、勝てないんですか………釣ってる箇所は同じはずなのに………」

 

 ちさたき用に買ってきたコーラを勝手に開けながら、ジャークチキンをつまむミズキの元に正反対の2人が帰還。バケツごと4、5匹のアユを渡す千束を尻目に、ミズキは可哀想な物を見る目で

 

「そりゃ、あんた。千束の動体視力があれば引っ掛かった瞬間に吊り上げるなんて造作もないでしょ。じゃんけんと一緒よ。負ける事がわかってる勝負ってこと」

 

 信じられない顔で千束を見た後に、たきなが膝をつく音に千束は腰に手を当て、高笑い。微笑ましいやり取りを見た椿は苦笑いしながら、アユの下処理を開始する。

 

 早速七輪に火を起こして、内臓を処理したアユに串を打つ。

 食塩をまんべんなくまぶし、パタパタと団扇で煽ぐと、香ばしい匂いが煙とともに立ち昇る。

 

「へえ………っ!」

 

「美味しいそうな匂いがします………!」

 

 目を輝かせる千束とたきなが早く早くとうずうずする姿に苦笑しながら、椿は焼けた鮎を取る。

 皮が少し焦げて、箸で押すとパリ、と崩れるほどになれば、ちょうどいい加減だ。

「…もう、いいんですか?」

 

 既に捕食モードと化したたきなが、焦らされた猫のような目で串を取る。椿はどうぞ、と手で促して、他の鮎の処理に取りかかった。

 他のは捌いて刺身にしてみるのもいいかもしれない。持ち帰って甘露煮でも………と考えていれば何処となく刺さる視線。

 

「………私のは?」

 

「まだ食べるのかい?」

 

「お酒がない分、食べたいのよ! せっかくのバーベキューよ。食欲の秋よ! 食べなきゃ損でしょ!」

 

「これ以上食べたら、夕飯入らなくなるだろう? 僕もミズキももう若くないんだから。脂っこい物食べたら夕飯要らなくなるくらいには胃も弱ってるだろう?」

 

「………どうして、そんな酷い事言うの?」

 

「………そうだね。なんでそんな事言ったんだろうね」

 

 両者が自分の年齢と加齢に絶望している傍らでハムスターのようにアユを頬張るたきなと千束は自撮りで写真を投稿すると言う若々しさを発揮。更に沈むアラサー2人。

 

「炭の香りが香ばしくていいですね」

 

「ワタの部分まで食べられるの、新鮮ならではだよね〜」

 

 和気藹々とする2人の空気に当てられて、椿は自分の焼けた鮎を持って彼女の口元に突き出す。

 

「何?」

 

「釣れるかなって」

 

 ふりふりと、目の前で魚を揺らせばミズキも漸く察しがついたようで。沢の石を踏みならして、隣に寄り添う。肩と肩を押し比べるようにして、

「ミズキ、あーん」

 

「あーん」

 

 したり顔で見れば彼女が本当に幸せそうに食べてる姿が見てとれた。

 味わったミズキがこちらを見てにっこり笑うと、

 

「『幸せになりたかったら釣りを覚えなさい』って格言があるけどまさにその通りね。最初はクソくらえと思っていたけど」

 

「誰から聞いたんだい、それ」

 

 と、誰からそんな事を聞いたのか確信持った表情で頷く。

 そのままミズキは自分の肩に頭を乗せてきて。

 

「さて、たきな。川遊び行こうぜ!」

 

「そうですね、お邪魔虫ですし、私たち」

 

 酔っているからか、そそくさと川遊びに向かう2人を尻目に熱を持った彼女の肌に赤みが刺して、とろんとした瞳が椿を写す。

 

「普通の家族ってさ、きっとこんな感じなのよね。アンタが父親で私が母親。百歩譲ってあいつらが娘だとしたらさ………こんな平穏な日々をずっと過ごせるはずなのよね」

 

 酔いによって口が軽いミズキに水を渡しながら、彼女の頬を撫でる風が椿のじわじわと赤くなる熱を覚まして行く。

 好きな人との結婚を考えた未来に、照れないはずがないのだから。

 

「これからのこと、それからのこと。もっと貴方と見ていきたいわ、椿」

 

「僕だって………春も夏も秋も冬も君と生きていたいんだよ。だから、もっと楽しませてあげる。君が飽きないくらいに、ね?」

 

 川のせせらぎを子守唄にミズキは眠りに落ちて行く。

 いつか見るありし日の未来を夢に見て。

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