光速の走り屋オオサキショウコ   作:まとら魔術

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柳田編
ACT.8 プラズマ3人娘


 

 朝6時。

 今日は赤城へ行く日だが、その前姉さんに智は和食さいとうに届いた荷物を確認する。

 かわいい黄色い龍のマークが特徴的なドラゴン急便の荷物だ。

 

 和食さいとうはスーパーで材料を買うことが一般的だけど、まれにそれから材料を買う場合もある。

 

「今回はいっぱい送られてきたなァ……」

 

 荷物はタワーみたいに積み上げられている。

 崩すように荷物を下へおろしていく。

 荷物の入った白い段ボールから料理の具を取り出す。

 

「いっぱい送られてきたとおり、材料が多いな……」

 

「前回は葛西サクラがバトルを挑んできた頃にドラゴン急便が荷物を届けてきましたね」

 

「さて荷物のことは後にして、速く赤城へ行こう」

 

「荷物のことを考えたら、遅れそうになりますからね」

 

 店の外へ出て車に乗り、赤城へ向かった。

 

 そんなおれたちだけど……今からバトルが始まることは知らない……。

 

 ヒルクライムのスタート地点駐車場。

 

 ここに3人の少女とその3台の車、オレンジのC33型ローレル、イエローのHCR32型スカイラインセダン、ブルーのA31型セフィーロだ。

 

「まだ来ねーな……葛西サクラとのバトルに勝利したワンエイティ乗りと斎藤智、朝赤城に来ると思ったのに」

 

 顔が焦り、顔を爪でかきながらオレンジ色の少女が言う。

 

「今回は予定より遅いかもしれないね」

 

 えんじ色ポニーテールが言う。

 

 青色ツーサイドアップが峠の入り口を見て、確認する。

 

 車の激しいサウンドが聞こえてきたようだ。

 

「来たで!」

 

 智姉さんのR35の音とおれのワンエイティの音だ。

 

 この2台のクルマが3人のいるふもとの駐車場を通り過ぎていく。

 智姉さんとおれの差は結構離れている。

 

「ぜぇ、行くべ!

 日産のFRセダン、なめんなよ!」

 

 3人はそれぞれのクルマに乗り込み、出発をする。

 

 出発した3台は、練習開始前のおれのワンエイティと智姉さんのR35の間を割り込むように入っていく。

 

「3台とも割り込みやがって……」

 

 せっかく練習に来たおれにとっては迷惑な気分だ。

 

「鬱陶しい奴らだ。あいつらを離してやろう!」

 

 先頭の智姉さんは赤城ヒルクライム最初のコーナー、5連続ヘアピンの2つ目、右ヘアピンに入る。

 

 割り込んできた後ろの3台に対して、離してやりたいという気持ちでいきなり技を使う!

 

 智が使ったのは<コンパクト・メテオ>でも、<ハヤテ打ち>でもない技だった。

 

「小山田疾風流…… <ズーム・アタック>!」

 

 小山田疾風流の入門用の技、<ズーム・アタック>を使い、時速170km/hのスピードでガードレールギリギリのドリフトを披露しながらコーナーを攻め、後ろから追いかけてくる3台の車を一瞬で離していく。

 

「速えーべ! さすが伝説の走り屋だァ~!」

 

<ズーム・アタック>で離した後は、差し掛かる5連続ヘアピンのコーナーを素早く抜けていき、後ろの車たちの眼から消えていった。

 

「智姉さん、邪魔なこいつらを離したね! おれも本気で抜きにかかろうか」

 

 智姉さんが3台を離すことを見て、そんな気持ちになる。

 5連続ヘアピンの4つ目、右ヘアピンに入る。

 

「<コンパクト・メテオ>! イケイケイケイケイケイケイケイケェーッ!」

 

 その技を使って、おれは目の前にいるA31を追い抜きにかかろうとした。

 

 しかし!

 

「抜けない! 左足が勝手にブレーキを踏んで、右足がアクセルを抜いた!」

 

 どうしてこんな事が起きたんだ!

 

 やっぱり……!

 

「抜こうとしても簡単には抜かさへんで。うちの覚醒技、Kイリュージョン流の能力や!」

 

 これがセフィーロ乗りの覚醒技の能力か!

 

「くそ、抜けなかった! やっぱ戦うしかないのかな?」

 

 おれの言っている通りの選択肢しかない。

 

 3台の1vs3のバトルが始まった。

 

(オーラが見える……普通の走り屋じゃあないね、覚醒技超人だよ!)

 

 あのA31にオーラが見えた。

 やっぱ覚醒技超人だと分かった!

 

 オーラの色は茶色と白の両方、つまり、属性は岩と光だ!

 

「後ろのワンエイティはオーラが見える……覚醒技超人だけやなく、走り屋としてのヤツが! DUSTWAYの葛西サクラを倒した走り屋だと分かるわ!」

 

 負けられないよ!

 

 第3高速セクションの長い直線と緩いジグザグを両立したゾーンへ入る。

 

 まずはA31型セフィーロと対決だ。

 

 パワーでは約390馬力のA31が勝っているが、トルクと車重は47kg・mと1230㎏であるおれのワンエイティの方が上だ。

 後者が前者を煽る。

 

 しかし、いきなり罠を仕掛けるのだった。

 

「これでも食らえや! Kイリュージョン流……<地獄直ドリ>!」

 

 車が分身していると思わせるような直線ドリフトを10回を超えるほどたくさん連発する。

 

 技を食らったおれは――。

 

(うぅ! ふらついている! こ、混乱しているの⁉)

 

 精神ダメージを与えただけでなく、状態異常にするなんてえげつない……。

 

 この技を食らった相手は混乱状態に陥るんだ!

 

 混乱状態はしばらくの間、ドライバーは意志とクルマを自由に動かせることができなくなり、ハンドルが聞かなくなったり、コーナーなのにアクセルを離さない、勝手にブレーキを踏むということが起きてしまう。

 

 混乱状態になったおれとワンエイティは直線をジグザグとフラフラしている。

 

(言うこと聞いてよ! おれのワンエイティ!)

 

 ワンエイティとおれの意志は言うことを聞かない。

 

 第3高速セクションが終わると、ヒルクライムでのサクラ・ゾーン最初の右ヘアピンに入る。

 

(うわ! ワンエイティ、ガードレールにぶつからないでよ!)

 

 混乱状態のまま入ると、ワンエイティはブレーキを踏まずアウト側に入ってガードレールにお友達になりながら走った。

 

 10秒経過するとおれの混乱状態は回復した。

 

「混乱して離された分、あとで追い上げるよ!」

 

 おれは意志と車を自由に動かせるようになる。

 

 緩やかな右コーナーを走っていき、トルクと軽さのあるワンエイティはA31にどんどん近づいて行く。

 

 左ヘアピンに入ると後ろへつく。

 

 しかし!

 

「抜かせとうても抜かせへんで! Kイリュージョン流……<スパイダー・フォーム・マーズ>ッ!」

 

 A31乗りの技でブロックされたおれは減速する!

 

 同時に、コーナー立ち上がると……!

 

「加速が遅くなっている――」

 

 車重の軽さとトルクの高さで加速では有利だったワンエイティだけど、技を食らった影響でA31と同じ程度かまたはそれ以下に低下した。

 

「加速下がったで。うちのA31の加速でも離せそうやな!」

 

「くそ! やっぱ追いつけない! 相手は普通の走り屋じゃあないね!」

 

「これが雨原芽来夜に次ぐ走りを持つ葛西サクラを倒した走りか? うちでも勝てる相手やで! <スパイダー・フォーム・マーズ>で加速が下がったけんうちに追いつけんな!」

 

 右ヘアピンの後は長い直線が来るが、加速力が低下したワンエイティはA31の走りに追いつけなくなっている。

 

「川ちゃん、なかなかやるだァ~! あのワンエイティと良く勝負しているべ!」

 

「よくやっているね。 学生ドリフト選手権では熊久保さんとくにちゃんより下だったけど、強力なKイリュージョン流のブロック技ですごい苦しめているよ」

 

 前にいるC33とHCR32の少女も、おれとA31のバトルを後ろから観戦していた

 

 しかし、この後HCR32はバトルのカギとなる言葉を放ってしまう!

 

「ただし、〝川畑さんは方向音痴でコースを覚えるのが苦手”という欠点は心配するけど、このままうまく行けば赤城で速い走り屋を倒したワンエイティに勝てるかもね!」

 

 A31乗りの欠点だ。

 それは次のコーナーで発動する!

 

 2台は直線を終えてコーナーに入る。

 2連続ヘアピンの1つ目だ。

 

「やっぱこのコースは慣れんな。前を走るたびにどんなコーナーが来るんか分からへん」

 

「なんか前のクルマは恐怖心見える。時速100km/hを下回る遅いスピードで攻めているよ」

 

 おれはあのA31がコースに慣れていないことに気付く。

 コーナーへの恐怖心が現れているらしい。

 

 抜けるチャンスだと決めたおれは攻めに入り、

 

「小山田疾風流<ズーム・アタック>! イケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 

 智姉さんがあの3台を離した時に使った技を使い、追い抜きに出た!

 時速80km/hでコーナーを攻めるA31を時速185km/hで攻めるワンエイティが追い抜く!

 

「なんや! <スパイダー・フォーム・マーズ>で加速を低下させたというのに!」

 

 ビビりながら走るA31の弱点を突くことができたから、おれは前に出ることができた。

 

「くそ、抜かれたで! コース覚えられんうちが悪かった! 料理するわ!(※)」

 

(※A31乗りが言う「料理するわ!」の意味は「畜生!」。実際に料理しない)

 

「よォし! 前に出たよ!」

 

 こうして3人組の1人目を倒した。

 

「本当にオーラが輝いているべ……覚醒技としても、走り屋としても輝いているべ……葛西サクラに勝った走り屋だと分かるだ」

 

 先頭にいるC33の少女はおれの走りに驚いているようだ。

 

 しかし、相手は残り2人いる!

 

「川畑さんが負けた……。 いい勝負してたけどね、次はくにちゃんの番だよ! チビ全開!」

 

 次に戦う相手は黄色いHCR32だ。

 

「こいつにもオーラが見える! A31みたいただの走り屋じゃあないね」

 

 黒と萌葱色のオーラが光る。

 闇と風属性の覚醒技を持っていると分かる。 

 

 右ヘアピンの後から、HCR32とのバトルは始まる。

 

「学生ドリフト選手権で準優勝したくにちゃんを追い越せるかな!?」

 

 2連続ヘアピンの2つ目、左ヘアピンまでの直線を2台は駆けて行く。

 

「速い! HCR32ってこんなに速かったっけ!?」

 

 前のHCR32はワンエイティより速い速度で直線を駆ける!

 追いつくことはできないのか!

 

「HCR32が速いのはくにちゃんの覚醒技・ナインウォーカー流の能力だから!」

 

 智姉さんから聞いたことのある話をしよう。

 

 通常、HCR32に搭載されているRB20DETは低速トルクが細く、坂道ではターボ付きの軽自動車やごく普通のファミリーセダンに負けてしまうほどだ。

 そのエンジンをRB25DETに載せ替える人もたくさんいる。

 

 しかし、能力はこのクルマの弱点を打ち消し、1.5倍に向上したトルクでHCR32はワンエイティより速い加速で直線を駆ける!

 

「あれはチューニングじゃあない。能力だよ」

 

 あの怪しい速さは勘で見抜いた。

 

 2台は右ヘアピンに突入する。

 

「<コンパクト・メテオ>!」

 

 ここでいきなりHCR32を追い抜こうとした!

 けど……!

 

「ナインウォーカー流<ソニック・ブーム>!」

 

 前のHCR32も技を使う!

 時速180km/hのスピードでドリフトをしていく!

 

 HCR32は入るときも脱出時もそのスピードだった。

 

「速いね」

 

 ドリフト勝負は互角で、HCR32の前に出られなかったようだ……。

 こいつもA31と変わらないほど速い!

 いや、それ以上かも!

 

 互角の勝負をした左コーナーを抜けると直線に入り、覚醒技で得た強大なトルクを持つHCR32に大きく離される。

 

 緩やかな左コーナーへ入る。

 

「ナインウォーカー流<瞬間移動ドリフト>!」

 

 緩やかなコーナーにドリフトで入るとHCR32が見えなくなった!

 それが見えるようになったのはここが終わる時だった。

 

「なんだあれ!」

 

 あれには驚いた。

 

 まるでテレポートのようなドリフトみたいだった。

 改めて考えると、覚醒技って超能力みたいだね。

 

 緩やかなコーナーの後は急な右U字ヘアピンに入る。

 HCR32は技を使わずドリフトを抜ける。

 

 おれも緩やかなコーナーに入り、それの次はHCR32に遅れて急な右U字ヘアピンに入る。

 <コンパクト・メテオ>で抜けたものの、使っても追いつけない!

 

 しかも次は直線だ。

 高トルクのHCR32に負けてしまう!

 

「どうしよう……」

 

 おれは頭を重くする。

 しかし、作戦を思いつく!

 

「そうだ! 使おう!」

 

 考えた。

 直線で作戦を実行をしようと考えたのだった!

 

 おれは<フライ・ミー・ソー・ハイ>、時速200km/h以上の高速ドリフトを直線にも拘らず車を左側に向きながら放った!

 

 その状態のまま、直線を駆け抜けていく!

 

「イケイケイケイケイケェー!」

 

 ついにはHCR32のケツに追いつく!

 

「どうやったの! どうしてくにちゃんのHCR32にどうやってついてこれたの!」

 

 いつの間にか後ろにいるワンエイティをサイドミラーから見てHCR32乗りは驚いた。

 相手がどうやってケツの後ろに現れたのか分からないようだ。

 

 並み以上のスピードで使用した直線ドリフトで追いついた後は、ナイフの形をした左ヘアピンに入っていく。

 

 おれは内側に入り、追い抜きにかかる!

 

「<ハヤテ打ち>!

 イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 

 160km/hで内側に突っ込む技が炸裂した!

 

 おれの<ハヤテ打ち>にHCR32は先攻を許してまい、敗北した。

 

「やっぱ速いよ……学生ドリフト選手権チャンピオンの熊久保さんに勝てそうかも――」

 

「川ちゃんとくにが負けた……。 次はおらの出番だべ、学生ドリフト選手権で優勝したおらの腕を見せてやっべ! 日産のFRセダン、なめんなよ!」

 

 最後の1台、オレンジのC33型ローレルが立ちふさがる。

 

「3人ともオーラのある走り屋で普通の走り屋じゃあないよ。しかも3人の中ではオーラが強いよ。走り屋のオーラも強いね」

 

 恐ろしいオーラだ――。

 C33の覚醒技が強力なものだと、後のおれは知らなかった。

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