光速の走り屋オオサキショウコ   作:まとら魔術

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ACT.10 柳田マリア

 

 午後1時。和食さいとうは開店する。

 プラズマ3人娘はまだおり、お金を払って昼食を食べたようだ。

 

 2時には新しい客がやってきて、BNR34型GT-Rのリアウイングを付けた白いZ33型フェアレディZに乗ってきたようだ。

 

 車には凶器に刺されそうなほどヤバい雰囲気が香っていた。

 プラズマ3人娘より恐ろしいかも。

 

「客のZ33は違和感のある音だったな。ターボサウンドだった。もしかして」

 

 客の車を見て、智姉さんは考える

 

 もしかして……かなりのチューニングされたZ33ではないのかな?

 

 あと、智姉さんはあのZ33を知っているような言い方だった。

 

 客は和食さいとうの中に入ってきた。

 

「いらっしゃい……って、お前は榛名最速チーム・WHITE.U.F.OのNo.2で榛名ヒルクライム最速の柳田マリアじゃあないか!?」

 

「そうじゃんよ、あたしはWHITE.U.F.Oの柳田だ」

 

 ターボを搭載したZ33乗りの客はやっぱ走り屋だったようだ。

 

「サクラを倒したワンエイティ乗りはいるか、あたしはあいつと用があるじゃん」

 

「ここにいるよ。おれが葛西サクラを倒したワンエイティ乗り、大崎翔子だよ」

 

(こいつ幼そうだけど、速いのか……)

 

 幼そうなおれの姿を見て、柳田はそんな疑問が浮かぶ。

 

「お前に対する用だけど、あたしはお前とバトルがしたいじゃん。ただし、サクラ戦と違ってダウンヒルではなくヒルクライムでバトルしたいじゃんよ! 時間に関しては今度の土曜日、来月4日の夜11時に予定しているじゃん。どう、バトルするじゃんか?」

 

 バトルを申し込む。

 またヒルクライムかぁ……。

 

 今度は公式戦だけど。

 

「どうするのか、オオサキ」

 

 おれの答えは?

 

「バトル――申し込む!」

 

 何も考えずバトルすると言ってしまった。

 

「それじゃあ決まりじゃん! 今度の土曜日の夜11時に赤城山麓にこいよ! ここで昼ごはんを食べて帰るとするじゃん!」

 

 10分後、柳田はここを去った。

 

 智姉さんたちと柳田戦のことの話を始める。

 

「バトルを挑んでしまったか。やれやれだな。しかも相手は榛名ヒルクライム最速の走り屋だ」

 

「けど、サギさんは上りではおらを抜ぎました」

 

「そして、くにちゃんの能力で速くなったHCR32も倒したよ!」

 

「クマはん、くに、うちをヒルクライムで倒したオオサキはんなら勝てるかもしれへんで!」

 

「柳田はそんなに勝たせてくれない相手だ。あのZ33はヒルクライムでとても速く、しかも“とある走り”のおかげでコーナーも速いらしい。サクラ並みにでごわい相手になるかもしれない、勝つための駆け引きを考えたほうがいいかもしれない。お前たちのC33よりパワーあるらしいぞ」

 

 相手は手強く感じる。

 

 榛名最速ヒルクライマーの柳田マリア。

 ハイパワーマシンを操るよそから来たとても速い走り屋におれはどうやって勝つのか……。

 

 午後11時の赤城道路。

 

 この駐車場にはオレとJZA80だけでなく……柳田とZ33があった。

 

 オレは柳田と会話していた。

 

「よぉ、サクラ! こないだバトルに負けて落ち込んでいるじゃんか!?」

 

「別に落ち込んでいない……」

 

「赤城でもDUSTWAYでも雨原に次ぐ実力を持つお前が負けるとびっくりしたじゃん! あと、お前に勝ったワンエイティ乗りという大崎翔子にあたしはバトルを申し込んだじゃん」

 

「オオサキにバトル……?」

 

「そう、本当に申し込んだじゃんよ! ヒルクライムで勝負するつもりだ!」

 

 挑むつもりか……。

 甘く見ないほうがいいぞ……。 

 

「バトルを挑んだか……NAだったVQ35に後付けツインターボを載せて480馬力にパワーアップさせたZ33ならお前のほうが完全有利かもしれない……しかしオレの場合は有利だと思っていない……オレは斎藤智からヒントを得たある作戦を使ってくるな……」

 

 あいつは伝説の走り屋という後ろ盾がいる。

 

「伝説の走り屋が考えたオオサキの作戦であたしとZ33が負けるじゃん?」

 

「そうかもな」

 

 柳田は言葉を返してきた……。

 

「ならサクラ、あたしとヒルクライム勝負しようぜ」

 

「興味ないな……」

 

 しかし……断ろうとした。

 

「興味ないだとォ!? サクラ、バトルで負けた影響でバトルを怖がっているじゃんか?」

 

「怖がっていない……興味ないだけさ……だがおまえの走りだけは見たい……」

 

「バトルは興味がないけど、あたしの走りは見たいんじゃんか。決まりだ! 今からヒルクライム開始じゃん!」

 

「言っておくが……オレは走る気がない……オレは着いて行くだけだ……勝負だと思わない……最初からお前の勝ちで不戦勝だ……」

 

 ヒルクライムが始まった……。

 ただし……これをオレはバトルだと思っておらず……柳田に着いて行くだけのルールを決めた……。

 

 始まってすぐコーナーに入る。

 

 柳田はテールを光らせずにドリフトで突っ込んだ……。

 

「柳田、いつもの技でコーナーに突っ込んだか……」

 

 オレの言ういつもの技とは……「フットブレーキを使わないサイドブレーキドリフト」のことだ。

 

 スピードを落とさずにドリフトできる……。

 ただし上級者向けで……使うのは危険すぎる。絶対に真似をしないようにな……。

 

 オレのほうはドリフトせずにゆっくり入っていく……。

 

「オレはついていくだけだ……」

 

 2つ目のヘアピン……次も柳田はフットブレーキを使わないサイドブレーキドリフトで突っ込む。

 

 オレはゆっくり走っているため……どんどん離されていく……。

 

「速いじゃん! あたしのサイドブレーキドリフト! サクラはどうしたじゃん! 手加減するから離れていくじゃん!」

 

「重いZ33のくせに速い突っ込みだな……能力で確認したところ……オレのJZA80より重い1400kgだ……もしオレが本気を出していた時だけの話だが……ノーマルより10倍曲がると言われたこのJZA80といい勝負できるかもしれないな……」

 

 フットブレーキを使わないサイドブレーキドリフトで良く曲がっている……。

 オオサキのワンエイティのドリフトよりも速いかもな……。

 

 3つ目、4つ目にも入る。

 どちらも柳田はサイドブレーキドリフトで入った……。

 一方のオレは「勝負したくない」という気持ちでわざと手加減して走っているため……柳田のZ33に離されていく……。

 

 柳田とZ33は5連続ヘアピンが終わると……その車はオレの眼から消えていった……。

 

 ヒルクライムが終わり、2台のクルマは頂上へ着く。

 柳田がゴールした後からオレがゴールするまで時間が掛かった……。

 

 バトルが終わると……ドライバーたちは会話をする……。

 

「すごい遅れてゴールして来たじゃんよ」

 

「オレはバトルする気がなかったんだ……」

 

「もとバトルする気があったら、勝負になるからよかったじゃん。けど、お前が勝負なかったせいであたしの自由走行になったじゃん」

 

 次にオレは柳田の走りについて訪ねてみる……。

 

「いつも通りフットブレーキを使わないサイドブレーキを使っていたな……」

 

「当たり前じゃん! これはあたしの能力だぜ。効果はサイドブレーキの制動力を50%上昇させ、ハンドリング性能を50%上昇させる代わりに、バトルの間だけフットブレーキが使えなくなるじゃん!」

 

「知っているけどな……」

 

 柳田の覚醒技の名前はノーフットブレーキング流。

 能力にはデメリットがあるものの、柳田の走り方にはそんな欠点は関係ない。

 

「知っているのに教えてすまないじゃん。今度のバトルではお前が倒せなかった大崎翔子という走り屋をやっつけてやるからな!」

 

 それから夜が明けて3月31日、3月はもう終わりだ。

 昨日はいろいろあった。プラズマ3人衆と勝負したり、柳田に勝負申し込まれたりと。

 今日はどんな日になるのかな?。

 

 朝6時の和食さいとう。

 おれと智姉さんは起きていた。

 

 和食さいとうは開いていないが、ここに1台のクルマがやってきた。

 

「あの音は2JZのシングルターボ、車種はJZA80。葛西サクラが来たんだ」

 

「葛西サクラが和食さいとうに⁉」

 

 智姉さんがエンジン音で見抜く。

 JZA80からサクラが降りて、和食さいとうの中に入ってくる。

 

「いらっしゃい」

 

「大崎翔子はいるか……?」

 

 おれに用があるようだ。。

 

「いるぞ。すぐここに」

 

 おれとサクラが会ったのはバトルしてから初めてだ。

 

「昨日WHITE.U.F.Oの柳田が勝負を申し込んできただろ……。

 あいつのZ33はツインターボ化で480馬力のパワーを得ている……。

 さらにはサイドブレーキだけのドリフトを使う……」

 

 サイドブレーキだけのドリフトって……昨日智姉さんの言ってた「ある走り」ってこれのことなの!?

 

「あのZ33はオレのJZA80より重いが……あの走りでコーナーをすごく速く走っている……彼女の能力はあの走りにマッチしている覚醒技だ……フットブレーキが踏めなくなるが……」

 

「私はその2つを知っているけどな……」

 

「言うのはそれだけじゃあない……相手は榛名から来た走り屋で……オレとお前は赤城の走り屋だ……。

 お前はよそに負けるわけには行かない……お前はオレに勝っている――お前が柳田に負けたらここのレベルがあそこより低いと言われてしまう……次のバトルでは彼女よりお前を応援する……」

 

 負けられない戦いになったね……!

 

「分かったよ。柳田は強敵だけど君が勝ってほしいと言うなら、次のバトルでは負けないよ!」

 

 その応援におれは答えた。

 

「ただし……オレはお前を敵だと思っている……いつかはリベンジしてやるからな……オレの2人の妹もお前を倒すつもりだ……。

 3姉妹でお前を倒す……リベンジするときには強くなっているからな……」

 

 そんな予告しながら、サクラは帰っていく。

 

 2人の妹はどんな走り屋だろうかな?

 

 その前に柳田との勝負が先だ。

 

 サクラが去った後、プラズマ3人娘が店にやってくる。

 

「おはようございます、智さんとサギさん」

 

「おはよう。クマさん」

 

「おはようプラズマ3人娘。さっき葛西サクラが来ていたが、柳田とのバトルについて話をしていた。その話をしようか」

 

 智姉さんはサクラと話した内容を全てプラズマ3人娘に伝える。

 

「サイドブレーキのみでのドリフトですか……それは速いドリフトですね! ドリフト甲子園にはそんなドライバーなんていねがったです!」

 

「480馬力って……そんなパワーで走らせとる走り屋っておらんはずや!」

 

「あのZ33、くにちゃんのHCR32より速そうかも⁉」

 

「そうだよ。480馬力相手にヒルクライムって、350馬力のおれのワンエイティでは難しいかも……」

 

 柳田の走りと車の性能を聞いて、プラズマ3人娘は驚いている。

 峠に480馬力はとても恐ろしい……。

 

「そのためにオオサキが柳田に勝てるような作戦を立てようかなと思っている」

 

「作戦ですか……」

 

「どんな作戦なの?」

 

「教えてくれや……」

 

 智姉さんが考える作戦について、3人は気になった。

 

「具体的には決めていないが、作戦といえば……グリップ力を温存しながら戦う作戦にするつもりだ」

 

 “あの走り”対策で、予定ではそういう作戦になると考え中だ。

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