光速の走り屋オオサキショウコ   作:まとら魔術

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ACT.20 葛西モミジ

 4月20日の午後17時、Maebashiにある群馬のりもの大学の自動車部部室。

 

 自動車部の部室にはプラズマ3人娘と、クマさんに呼ばれてやってきたおれ。

 そして自動車部員と思われる茶髪ツインテールに釣り目の女の子、深緑のセミロングに垂れ目の女の子がいる。

 

 金髪ツインテールの少女はキツそうな雰囲気、深緑セミロングは大人しい雰囲気を見せている。

 

「オオサキさんってDUSTWAYの葛西サクラやWHITE.U.F.Oのトップ2を倒したすごい走り屋なのね?」

 

「そうだべ。末永のお姉さん」

 

「へェーお姉ちゃん、オオサキちゃんってすごいね」

 

 金髪ツインテールと深緑セミロングの苗字は末永と言い、2人は姉妹にあたる。

 

 クマさんが突然言い出す……。

 

「突然だけど、サギさん……」

 

 何言うかな……。

 

「この自動車部の顧問に任命します!」

 

「へえ!? じょ、冗談じゃあないよ! おれはまだ16だし、しかも高校に行っていないよお!」

 

 幼い年齢の人が顧問を務められるの!?

 

「何言っているべ! 顧問を務めるのはとても運転の上手いサギさんしかいねーべ!」

 

「おれだけしかいないと言うなら……顧問になるよ」

 

 無理矢理勧められながら、こうしておれは自動車部の顧問になった。

 

「ここでクイズです、いないのはだ~れだ?」

 

 選択肢は以下の通り

 大崎翔子

 末永(姉)

 野田さん

 小鳥遊くに

 

「いないのは野田さんでしょ?」

 

 何、ふざけたクイズ?

 他の人たちも同じ選択肢を選んだ。

 クマさん答えを言う。

 

 簡単でしょ?

 1人知らない人が混じっているし……。

 

「いないのは野田さん!」

 

 全員正解だったものの、野田さんという部分に末永(姉)は突っ込む!

 

「野田さんって誰なのよ!? もしかして熊久保の知り合い!?」

 

「知り合いじゃあねー、適当に考えたんだべ」

 

 野田さんという知らない人が入ったクイズが終わると、雰囲気が変わって昨夜の話を始める。

 

「昨日、DUSTWAYとEarthWindFireが戦ったんでしょ?」

 

「おれ、見たよ」

 

 おれは疑問に思ったことについて伝える。

 

「アルテッツァが戦った相手の敗因に実は疑問があるんだ」

 

「なんですか?」

 

「ブレーキフェイントのことだけど、あれは騙されてブレーキしたものではなく、相手に無理やりさせられたんだ」

 

「あれ無理やりさせられたんだべ?」

 

「おれの勘だけど――、そうかもしれないね。他にもマークXの熱ダレはアルテッツァが仕込んある罠で熱ダレを起こしたんだ」

 

「え? 相手が熱ダレを仕込んだんだべ!?」

 

「勘だけど、そうかもしれないよ」

 

 おれが考える2つの推測は後に当たるものの……後に苦しむことになる――。

 

 その場にいる人たちに対して、誘ってみた。

 

「実は今夜、和食さいとうに行かない?」

 

「くにちゃんも行くよ!」

 

「うちも行くで!」

 

「末永のお姉さんは行くの?」

 

「い、行くわよ!」

 

 答えるとき、末永のお姉さんは顔を発光させるかの如く赤くしながら答えた。

 

「私も行くよ!」

 

 末永の妹さんも行くと言う。

 

「よし、7時か8時には全員集合だべ!」

 

 実はこれ、末永姉妹を智姉さんに紹介するためのものなんだ。

 

 

 夜7時。Speed葛西のガレージ。

 モミジはアルテッツァに乗って出発しようとしていた。

 

「さて、今日も行くか」

 

 双子の姉であるヒマワリが来る。

 

「モミジ、どこへ行くんだ?」

 

「今日も赤城に行くよ」

 

 と言い残し、アルテッツァを進ませていく。

 

 同時刻、赤城ふもとにある和食さいとう。

 

 プラズマ3人娘と末永姉妹がやってきた。

 制服姿のおれと智姉さんもいる。

 

「サキさん! 来たべ!」

 

「こんばんは、クマさん。よく来たね」

 

「こんばんは、あの2人は誰だ? 熊久保の友人か?」

 

 智姉さんは末永姉妹を見る。

 末永姉妹とは初対面のようだ。

 

「あぁ、この2人はおらの部活に入っている人たちです」

 

「初めまして斎藤智さん、末永直美です。こっちは」

 

「妹の末永真美です。よろしくお願いします」

 

 姉妹は智姉さんに自己紹介する。

 

「私は和食さいとう店長の斎藤智だ。よろしく」

 

「実は智さん、伝説の走り屋らしいよ」

 

「本当に伝説の走り屋だよ! そしておれの師匠!」

 

「え? 智さんって伝説の走り屋なの?」

 

「言われてしまったな――やれやれだな……」

 

 智は呆れる。

 10分後、おれを含む6人は晩御飯を注文する。

 

「御馳走様でした」

 

 完食した。

 

「そんじゃあ、おらたちは晩御飯を食べ終えたら、サギさんや末永姉妹と一緒に赤城山を走りに行ぐ予定です」

 

「そうか、気を付けてきな」

 

 晩御飯を食べ終えたおれとクマさんは和食さいとうを出る。

 おれ以外は晩御飯のお金を払った。

 

 同じ頃、赤城ではオレンジ色のアルテッツァがスーパーチャージャーの音を奏でながら攻めていた。

 

 夜の8時

 

 6台は夜の暗闇に包まれた赤城山ダウンヒルスタート地点の駐車場へ着く。

 駐車場にはクマさんのC33、タカさんのHCR32、さらにはオレンジ色の三菱 ランサーエボリューション9と深緑色のマツダRX-8があった。

 エボ9が末永(姉)の愛車で、RX-8が末永(妹)の愛車だ。

 

「サキさん、このエボは元々わだすの愛車でした」

 

「そうなの?」

 

「今は私の愛車よ」

 

「このエボ9は熊久保さんが乗っていたけど、今はお姉ちゃんが乗っているんだ。熊久保さんが乗っていた頃はバリバリに改造されていたけどね」

 

「あの頃のクマはんは4WD改FRのドライバーのイメージが強かったで」

 

 今もFRのままであり、エンジンも縦置きだ。

 ちなみにクマさんの初めての愛車はGDB中期型インプレッサWRXSTiだ。

 そのクルマはエボ9同様に他人の手へ渡され、彼女がC33に乗り換えた理由は「旧車でバトルしたい、そのクルマの実力を現代の人に知らしめたい」だ。

 

 懐かしの愛車に対して、クマさんは考える。

 

「さて、今夜は末永のお姉さんの車両でドリフトすっべ!」

 

「末永の姉ちゃん、いいでしょう? 他人がどう運転するか見たいでしょ? 助手席に乗ってよ、お・ね・が・い」

 

 人の体を触りながら、そう依頼した。

 

「いいわよ。あと、体触るのはやめてよね。セクハラよ!」

 

 許可されたけど、あの行為はやりすぎじゃ……。

 

「じゃあ熊久保さんがお姉ちゃんのクルマで走るなら、私たちは着いて行こうかな。オオサキさんとくにちゃん、川畑さんも乗ってね!」

 

 タカさんは助手席、おれと川さんは後部座席に座る。

 

「よし、出発すっべ!」

 

「私も出発しよう!」

 

 RX-8がコースに出たのは、10秒後のことだった。

 

「後ろから何か車の音が聞こえてくるよ?」

 

「コンプレッサーみたいな音が聞こえてくるね、マミさん」

 

 ちなみにタカさんは末永の妹さんのことを「マミさん」と呼んでいる。

 

「道を譲った方がいいよ。相手の方が速いから」

 

 後ろのクルマの姿が大きくなっていく。

 それをリアウインドウからおれは見る。

 

「オレンジのアルテッツァ――あの車は葛西モミジ! サクラの妹やで!」

 

「葛西モミジと言えば、こないだEarthWindFireを倒した走り屋だよね。強力な走り屋相手には譲るしかないね!」

 

 後ろのアルテッツァが葛西モミジのクルマだと知った末永(妹)はRX-8にバザードを出して道を譲る。

 

 前へ出たアルテッツァはスーパーチャージャーの音を奏でながら走っていく。

 

「お姉ちゃんの車を運転する熊久保さん――後ろに私を追い越したアルテッツァを来ることを知っているんだろうか?」

 

 アルテッツァに道を譲ると、姉の車を運転するクマさんのことで心配していた。

 

 RX-8より向こうにいるクマさんは最初の難関、左ヘアピンをブレーキングドリフト、続いて幅の広い右コーナーをサイドブレーキを使ったドリフトで抜けると直線に入っていく。

 

 その時、後ろから末永の妹さんが乗るRX-8が聞いたコンプレッサー音がクマさんの運転するエボ9にも聞こえてくる。

 

「熊久保、何か聞こえてくるわ!」

 

「あれは――モミジのアルテッツァだべ!」

 

 バックミラーからクマさんは後ろのクルマを見る!

 後ろのクルマはエボ9と同じ色のセダン――モミジのアルテッツァだった!

 

「どうする? 譲るの? 相手は速いから譲った方がいいかもしれないわ――」

 

「あいづにおらのドリフト技術を見せてやっぺ! 譲らねーべ!」

 

「バカ! 相手は強いわよ!」

 

「なにがたってんだ(福島弁で「なに言ってんだ」)! おらの覚醒技の能力を抜げるたびにハンドリングが良ぐなるんだべ!」

 

 クマさんは末永の姉さんの忠告を無視した。

 そんなの無茶だよ!

 

「覚醒技? そんなの知らないわ! なんなのよ!」

 

「まぁ見たほうがいいっべ」

 

 末永の姉さんはクマさんとアルテッツァのオーラが見えず、覚醒技超人ではないようだ。

 

 直線が終わり、3連続ヘアピンに突入する。

 アルテッツァから逃げてやろうと軽くブレーキを踏み、ドリフトで突っ込んでいった。

 一方、後ろのアルテッツァも右ヘアピンに入る。

 

 クマさんの運転するエボ9より鋭く突っ込むドリフトで荷重移動させながらヘアピンに入っていく。

 

「相手速えーべ! おらの覚醒技の突っ込みより速い!」

 

「だから言ったでしょ! 相手は強いって!」

 

 クマさんの腕ではアルテッツァの突っ込み性能には敵わなかった。

 

 3連が終わると直線を挟み、左U字へ突入する。

 

 エボ9は抜ければ抜けるほど、旋回性能が上がっていく!

 ただしそれでも後ろのアルテッツァのコーナリングが速かった。

 

「勝てねーべ!」

 

 S字ヘアピン、右ヘアピンに入る。

 エボ9の突っ込み性能は上がっていくものの、アルテッツァの突っ込みにはどうあがいても勝てず、テール・トゥー・ノーズの差に縮まっていく。

 

 そして次の左U字ヘアピン、

 

「なかなかの突っ込みを見せるね、前のエボ9。けどボクには勝てないね、ドリフトできても馬鹿は馬鹿。次のヘアピンで追い抜いてやる!」

 

 ここで宣言する!

 

「<コンパクト・メテオ2>! バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカァ、バカはバカッ!」

 

 <コンパクト・メテオ>より突っ込みを重視した<コンパクト・メテオ2>で攻めるモミジは切り刻むようなスライドをしながらエボ9を追い抜く!

 

「ぐそぉ! 抜かれちまっただ!」

 

「もうやめたほうがいいわ! 葛西モミジのアルテッツァには勝てないのよ!」

 

「いや、このクルマはランエボだべ! ランエボとかたれば立ち上がり勝負だあ~! 立ち上がり勝負で勝負すっぺ!」

 

 抜かれた後は第1高速セクション。

 直線でアルテッツァに追いつこうとしたものの……。

 

「無理よ! このエボ9はノーマルの280馬力だわ! 相手は310馬力、立ち上がりでは3姉妹最弱だと聞いたけど、離されて負けているわ! このエボでは直線で戦えるわけないでしょッ!? FRにされて、しかもノーマルなのよ! 4WDなら立ち上がりで勝てるかもしれないけど――」

 

 立ち上がりでも敗北する。

 さらには新たな罠を受ける!

 

「く! ブレーキだべ! 危ねー!」

 

「噂で聞いたけど、堀内のV36を倒した技だわ!」

 

 前のアルテッツァは直線にも関わらずブレーキを踏んできた。

 フェイントだ。

 

「くそ! ずうたい(福島弁で「身体」)が勝手に――動ぐべ!」

 

 足が勝手にアクセルを離し、ブレーキを踏んで一瞬だけ止まる!

 

「今使った技はジーニアス橙(オレンジ)流<ザ・罠(トラップ)>だよ。この技を喰らったらボクを追いかけることができないぜ」

 

 先頭のアルテッツァにはエボ9の眼から消えていった。

 

「だから、譲った方が良かったのよ!勝ち目なかったじゃあないの!」

 

「がんにんない、相手にわだすのドリフトの実力を見せたかったべ――」

 

「ったく、熊久保ったら!」

 

 ちゃっと言う事を聞けば良かったのになあ……。

 

 停止したエボ9の前に末永(妹)の運転するRX-8が到着する。

 

「どうしたの熊久保さん?

 お姉ちゃんの車を故障させたの?」

 

 さっきまでの出来事クマさんは末永の妹さんに話した。

 

「へ!? あの私のRX-8を追い抜いたアルテッツァに勝負挑んだの?」

 

「熊久保は勝てないのに挑んだのよ! ドリフト甲子園昨年度チャンピオンという称号を持っているから調子乗って!」

 

 モミジに勝負を挑んだことを末永のお姉さんは許せなかった。

 

「まぁまぁ、戸沢との戦いもそうだったよ」

 

「あの頃は相手はFFだとなめとって、うちらは止めようとしたんやけどな――」

 

「戸沢と言えば榛名ダウンヒル最速。FFとはいえ、相手は強敵だから勝負はやめろと言ったけど、結局勝負挑んで負けてしまったよ――。FFの速さを知らなかったからね」

 

「熊久保はFR至上主義だからFFをすぐバカにするという特徴を持っていたのよ。ただしFR至上主義だけどWRCやかつて乗っていたことの影響でランエボやWRXが好きだけどね――FFを馬鹿にするのはそのせいよ。ただし戸沢に負けたのか、FFに対する考え方を軟化させたそうよ」

 

「さぁ帰りましょう。私は熊久保を乗せるわ」

 

 エボ9に末永のお姉さんとクマさん、RX-8には末永の妹さんとおれ、タカさんと川さんが乗り、帰路へついた。

 

 4月21日の午後17時00分。

 葛西家では朝食を終えていた。

 

「母さん、ボクは行ってくるね」

 

「どこへ?」

 

「ボクの卒業した大学、群馬のりもの大学だよ。そこに行ってくるからね」

 

「そう、気を付けて行ってよね」

 

 外へ出るとアルテッツァに乗り込んでエンジンを起動させ、Speed葛西から離れていった。

 

 群馬のりもの大学の自動車部。

 ここにはおれとプラズマ3人娘、末永姉妹がいた。

 

「今日の朝、くにちゃんの車のことをスカイラインという名前を言ってくれる子供がいて嬉しかったよ!」

 

 喜んでいるタカさんとは対照的な表情をする人もいる。

 

「クソ熊久保! 昨日のことは許せないんだから!」

 

 末永の姉さんがイラついているときに、何か聞こえてくる。

 

「ん? 外から昨日聞いた音が聞こえてくるべ」

 

「スーパーチャージャーの音だわ」

 

「葛西モミジのアルテッツァが大学に来ているかもしれないよ!」

 

 エンジンの音は3S-GEだったからモミジと分かった

 

「実はこの大学、葛西モミジの母校なのよ」

 

「母校!? 葛西モミジって川畑さんと小鳥遊さんより2つ年下だよ!」

 

「葛西モミジは17だけど、飛び級で小学校から高校へ入学したのよ。

 大学を卒業したのは当時16歳だった1年前よ」

 

 そんな事実を末永の姉さんから教えられる。

 

 自動車部部室にモミジがやってきた。

 

「昨日、エボ9に乗っていたのは誰?」

 

「おらと末永のお姉さんです、葛西先輩」

 

「君、ドリフトは上手かったけど、バトルの腕はまだまだだよ。ボクは葛西モミジ、この大学の卒業生だよ」

 

「わだすは熊久保宣那です。けど、ドリフト甲子園の優勝者ですよ」

 

「小鳥遊くにと言います」

 

「川畑マサミですわ」

 

「末永直美です」

 

「末永真美です」

 

「大崎翔子だよ」

 

 モミジは自動車部に来た本当の目的を言う。

 

「ここからボクのここへ来た目的を言おうか。大崎翔子、君がこの大学へ来るようになったのは噂で聞いているよ。ボクはは君とバトルがしたい、姉は君に敗北した。しかしサクラ姉ちゃんの仇を取る! だからバトルをさせてほしい」

 

 その目的とは挑戦状だった!

 

 この挑戦に対しておれは

 

「受けるよ。仇、取れるもんなら取ってみて!」

 

 挑発的な口調で受け取った。

 これで成立だ。

 

「受け取ったか――いいだろう。日程は土曜、4月25日の夜10時、コースはお姉ちゃんの時と同じ赤城山下りだよ。その日のダウンヒルのスタート地点で首を長くして待っている」

 

 モミジは自動車部の部室を出て行く。

 アルテッツァに乗り、スーパーチャージャーのコンプレッサー音をまき散らしながら大学を去っていた。

 

「サギさん! 本当にいいっぺが!? 相手は先月倒したサグラの妹と言っても油断はでぎねーべ!」

 

「昨日の熊久保みたいに無理やり停車されてもいいの!? オオサキさん!」

 

「構わないよ。勝てると思って挑んだわけだし」

 

「サキちゃん――今度のバトルは心配だね……」

 

「戸沢や姉のサクラよりキツイかもしれへんで――」

 

「モミジは頭がいいからえげつない走りが多いと聞いているし――」

 

 挑戦状を申し込んでしまったおれをプラズマ3人娘と末永姉妹は心配する。

 

「実は葛西モミジって――ブログやっているよね……実は私観覧者でもあるわ」

 

 その内容とは――末永(姉)はタブレットを取り出してモミジのブログへアクセスする。

 

 4月2日――。Speed葛西の今日のお客様の愛車はBNR32型スカイラインGT-Rです。

 チューニングした点はマフラー、ブレーキ、サスペンション、タービン周りでした。

 このお客様は赤城へよく走りに行く走り屋で、目指すはボクの所属するDUSTWAYより速く走ることらしいです。

 速くなったら、いつかはバトルしましょう!

 

「――なるほど、実家のSpeed葛西がどんな仕事をしていたことを書いているわね」

 

 モミジのブログではこのようなSpeed葛西の日常を書いてある。

 

 他にもこんな記事もある。

 

 今日はDUSTWAYの練習走行でしました。

 ボクも参加しましたよ。

 ちなみにこのチームって言うと――赤城最速チームのメンバーは全員女性です。

 ただし当時甲子園最強と言われた某高校の昔の野球部みたいに恋愛禁止らしいです。

 他にも飲酒や喫煙が禁止され、お酒代わりにジュースやコーヒー、タバコ代わりにガムを使います。

 飲み会では全員ジュースやコーヒーです。

 こんなにキツイルールがありますが、全員楽しく活動しています。女性の走り屋ならだれでも歓迎ですよ~

 

「DUSTWAYのことも書かれているわね。

 今日のバトルを挑んだことも書かれるんじゃあないかもしれないわね」

 

「そうだね。お姉ちゃん」

 

 そんな記事を書きそうだと予感した。

 

 末永姉妹の予感は当たった。

 

 夜11時。葛西家のモミジの部屋。

 この部屋にはモミジとヒマワリがいる。モミジはパソコンをいじり、ヒマワリは近鉄22600系電車(愛称はAce)のぬいぐるみを抱いている。

 モミジはブログを書いていた。

 記事の内容はこれ。

 

 

 今日バトルを申し込みました。

 相手はボクの姉を倒した走り屋です。

 日程は今度の土曜日の夜11時です。

 相手は強いですが、絶対に勝ちます!

 

 あと今度バトルする相手の情報を言います。

 車種は日産の180SX、エンジンは350馬力のRB26DETTを積んでいます。

 ドライバーは16歳ですが、精神的に追い詰められるクルマの性能とドライバーの腕がパワーアップします。

 

 ちなみにバトルの天気はニュースでは晴れのようですが、ボクは雨だと予感します。

 

 

 内容を確認するとモミジは記事を投稿する。

 

「おい、テレビの天気予報は晴れと言っていた割にモミジは雨だと予想したけど、それが分かるのか?」

 

 ヒマワリはそれに驚いているようだ。

 

 その返事にさらに驚き、ぬいぐるみを落としてしまう。

 

「ボクにはそれが分かるのさ。

 今度のバトルはウェットタイヤで行く」

 

「さすが頭のいいモミジだ。イィーネ!」

 

 さらに

 

「大崎翔子のワンエイティ――350馬力より下になっていると思う」

 

「なんでだ?」

 

 オオサキのあるところを見抜き、その理由を語る。

 

「エンジンがヤレている(走行しすぎでコンディションが悪くなること)から。それが悪化するとパワーが下がってくる。ヤレの原因は……覚醒技の能力だ」

 

「の、能力でヤレてしまうのか?」

 

 この前の戸沢戦で能力を発動させた。それ以外でもとあるバトルでも能力を発動させている。

 

「大崎翔子の能力は剛性の悪い車にはヤレの進行を進めさせる。180SXの欠点と言えば剛性の悪さと言われていて、この能力とは相性が悪い。さらにはこの車にはロールバーを入れていないし、スポット増しもしていない。その悪さを克服できていないようだね――」

 

 さらにはエンジン換装を行っているため、さらに負担が大きくなっている。

 オオサキの能力のことを智は「危険」と言っていたのはこれが原因だ。

 能力対策には180SXにロールバーを付ける、スポット増しといった剛性強化を考えるしかない――。

 

 一方、同時刻の和食さいとう。

 時間は過ぎているため店は閉まっている。

 光に囲まれたリビングでパジャマの紫色の全身タイツを着たおれと白い全身タイツの智姉さんが会話していた。

 

 今度の土曜日に起こなわれるバトルのことだ。

 

「土曜日、葛西モミジと勝負することが決まりました」

 

「葛西モミジか――先月倒した葛西サクラの妹だな……葛西モミジは幼い見た目の割に飛び級したほど頭がいいらしいな。突っ込み性能は3姉妹最強だと言われている。ブレーキフェイントが得意と言われているぞ」

 

 次に智姉さんはモミジの特徴を話す。

 

「モミジのアルテッツァはスーパーチャージャーを搭載させている。スーパーチャージャーはターボと比べるとスペックは下で高回転が苦手だが――レスポンスに優れ、低速域ではターボより加速がいいんだ」

 

 ちなみにターボやスーパーチャージャーを付けていないのは自然吸気、NAと言う。

 NAはエンジンの回転数がスムーズに回りやすく、レスポンスが良く、ターボより低回転がいい。

 その代わりチューニングではパワーを上げづらいという欠点を持っている。

 

「バトル当日のタイヤのことだが――今回はドライ用スポーツタイヤで行くぞ」

 

「はい」

 

 タイヤ戦略がバトルの勝敗を分けることになる――。

 

 ――バトル当日がやってきた……。

 

 TVの天気予報は外れ、モミジの言った通りに雨になった。

 朝6時の赤城山。2台の車がバトルしていた――。

 

 先頭におれがワンエイティ、後攻に智姉さんのR35が走っている。

 この2台は赤城ダウンヒル最後のコーナー、5連続ヘアピンに突入した。

 雨の路面の中、滴を巻き散らしながら萌葱色のオーラを纏って勢いよく攻める。

 

「小山田疾風流<フライ・ミー・ソー・ハイ>!

 イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 

 この時、おれのワンエイティのタイヤは真っ直ぐのままドリフトしていた。

 通常より速く攻めていく!

 

「オオサキ、ゼロカウンタードリフト(ハンドルのカウンターを当てずにタイヤを真っ直ぐのままドリフトさせる技)を使ったか。このドリフトを使うのは久しぶりだな。こっちは<コンパクト・メテオ>で攻めよう」

 

 ぶつかり合う2つのドリフト、おれのゼロカウンタードリフトが勝利した。

 ただし智姉さんはいつものように手加減している。

 いつもと変わらない。

 

 その技術ってしばらくは使っていなかった。

 

「やるな」

 

 駐車場に着くと2人は車から降り、傘をさした。

 智姉さんはゼロカウンタードリフトについて話す。

 

「ゼロカウンタードリフト、久しぶりに使ったようだな……」

 

「智姉さんのR35から逃げようとして使ってしまいました――」

 

「ゼロカウンタードリフト――今回のバトルにはいい技かもしれないな――相手は3姉妹最速のコーナリング性能を持ち、他にも頭がいい。今まで使ってきたコーナリングが通用しなかったり、駆け引きに苦しんだら使った方がいいぞ」

 

 逆転できるかもしれない。

 

 おれに奇跡を与え技術となる――。

 

 

 時間が経ち、午後11時。

 バトルの時間だ。

 

 空は朝と違って雨が止んでいた。

 ただし空は曇り気味だ。星が1つも見えない。

 

 おれはワンエイティ、智姉さんはR35に乗り込んでいる。

 

「行こうか」

 

 RB26の直6サウンドとVR38のV6サウンドを奏でながらバトルの会場へ向かっていった。

 

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