光速の走り屋オオサキショウコ   作:まとら魔術

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ヒマワリ編
ACT.24 葛西ヒマワリ


第5巻 葛西ヒマワリ、ミッドシップの加速

 

 ――4月29日の日曜日。

 

 夜のカラオケショップの店内から歌声が響く。

 

 オレはクレイジーケンバンドのタイガー&ドラゴンを熱唱していた。 他にも2人のDUSTWAYのメンバーがいる。

 

 歌い終えるとオレは親指と人差し指を広げ、それを顎の下に当てて……。

 

「イィーネ!」

 

 と声を放つ。

 

「イィーネ! ヒマワリ、上手かったよ!」

 

 DUSTWAYのメンバーがオレと同じポーズを取って称賛する。

 

「褒めてくれると、ありがたイィーネ!」

 

 これにオレもポーズで返す。 どうだ、クレイジーケンバンドファンのオレの歌は上手いだろ?

 

「さて、次は私の番だね」

 

 曲が終わると交代しながらオレたち3人は歌い続ける。 出るまで店内に歌声が響くのだった。

 

 カラオケを歌い終えると店を出て、それぞれの車に乗り込む。

 

 オレのほうは蛍光色に塗られたグリーンのSW20に乗り込んだ。 1人のメンバーは赤いNA8C型ロードスターに、もう1人のメンバーは白いBNR32に乗り込む。

 

 シートに座り、ハンドルを力強く握ったオレはこう叫ぶ。

 

「赤城へ行くぜ!」

 

 眠るクルマをキーで起こした。 右足でアクセルを踏み、3台はカラオケ店を後にする。

 

 しばらく走ると目的地の赤城山へ着いた。

 

 夜の闇に包まれたここは多くの走り屋がおり、チューンドカーの音と派手なライトで山を支配している。 オレたち3台の車は赤城山の資料館前の駐車場へ着く。

 

「着いたぜー!」

 

 3人はそれぞれの車から降りた 周辺のチューンドカーを眺めた瞬間、アドレナリン爆発中だったもの、ある危険な2人の青年に出会ってしまった……。

 

 それは不良だった。 片方はモヒカンで、もう片方は長髪だった。 2人も走り屋で、前者は黄色のE46型BMW M3、後者は青のW230型C55 AMGが愛車だった。

 

 彼らはオレに対して嫌らしく接してくる。

 

「おい! お前はDUSTWAYの葛西ヒマワリだろ?」

 

「フラ◎ゴンやキ◎リのような車に乗っているのはお前か」

 

 そんな言葉を言われるとオレは反発した。

 

「オレの車のことをケ◎ロやヨッ◎ーみてーだとお? 糞(シット)!!」

 

「ヨッ◎ーやケロ◎? 言ってねーよ」

 

 クルマをこんな風に馬鹿にされて腹立つ!! 絶対に許さねー! クルマを馬鹿にされて頭の血が上ったオレはこんなことを宣言した。

 

「なら勝負だ! オレのSW20の加速力でお前らの車をちぎってやるぜ!」

 

 勝負なら誰にも負けねーぜ。 オレのクルマならな。

 

「お前の車の馬力は何馬力だ?」

 

「350馬力だよ」

 

 ちなみに、大崎翔子が乗る180SXと同じ馬力だ。  しかし、オレのクルマの馬力を聞いた不良は笑いだした。

 

「350馬力――低いぜ!  これでちぎれると思うのか?」

 

「ちぎれるもんなら、ちぎりなよ! 非力な車で!」

 

 自分たちより馬力が下だと聞いて、楽勝な表情をする不良コンビ。 けど、オレは表情を変えなかった。

 

「ちぎれるよ! オレのSW20はどんなクルマだってちぎれるんだぜ!」

 

 なぜならSW20の駆動方式はMR、ミッドシップエンジン·リアドライブだ。 車のパーツで一番重いエンジンを後方中央に配置して後輪を駆動する駆動方式であり、加速性能とトラクション、旋回性能が他より優れている。 ただし挙動は安定せず、ピーキーで初心者に扱いづらいためとても上級者向けだ。

 

「なんだって!? それって本当か? おまえの車がミッドシップでも、パワーのあるほうが速いと言うことを教えてやるぜ!」

 

「本当に勝てるぜッ! どんなにパワーのあるクルマでも直線で倒してきたんだからな! おまえたちを倒してやるぜ!」

 

「いいだろう。俺たちは出発するからな、抜けるもんなら抜いてこいよ!」

 

 それを言い残した2人の不良はそれぞれの車に乗り込む。 エンジンを起動させ、音と共に去っていく。

 

「上等だ! 今すぐ追い抜いてやるからな!」

 

 オレもドアを開けてSW20のコクピットに乗り込み、眠るエンジンを目覚めさせた。 アクセルを彼らのクルマを追いかけるために駐車場を後にする。

 

「やれやれ、ヒマワリ――バトルを挑んじゃったよ」

 

「けど、ヒマワリが勝つことは分かるよ。あの2人はヒマワリから見ればかなりの雑魚だから、絶対勝つよ」

 

「私も勝つと思っているよ。ヒマワリがハイスペック相手でも直線で倒す姿を何回も見たから」

 

「ヒマワリのSW20、パワーのある車に乗る走り屋が舐めたら怖いよ?」

 

 その通りだ。 不良2人組はオレの恐ろしさをしらない――。 しかも下の馬力の車に直線で負ける姿を見られると考えていない。

 

 あとオレは覚醒技を持っているけど、不良2人は持っていなかった。 彼らは覚醒技超人の特徴であるオーラが見えない。

 

 他にもオレのSW20はSpeed葛西でチューンされた高性能車だ。 車重は1200kgと軽めで、馬力しか見ていなかったからオレのSW20を不良たちはナメていたようだ。 今、最初のストレートを走っている。 W203が前で、E46が後ろだ。

 

「あのSW20乗りの小娘をすぐちぎってやるからな! ナメんなよ!」

 

 しかし、2台の後ろにオレは接近していく。

 

「オレは後ろにいるぜ。イィーネ!」

 

 最初のストレートを終え、S字コーナーを通り抜けて左U字ヘアピンを抜ける。 ここの立ち上がりでバトルに変化が起きこす!

 

 オレはSW20に透明なオーラを包み込ませる。

 

「<コンパクト・メテオ3>! 毎日月火水木金土(エブリディ・サンデー・マンデー・チュースディ・ウェーズディ・サーズデイ・フライデー・サタデー)!」

 

 <コンパクト・メテオ3>は<コンパクト・メテオ>の立ち上がり重視版だ。 立ち上がりに優れるが、突っ込みは苦手としている。 似たような技にはこないだ赤城で騒がせたEF9の幽霊が使った技<ハヤテ打ち3>がある。

 

 隕石の衝突のような立ち上がりでE46の前に出ていく。

 

「クソ! 馬力が下の奴に負けた!」

 

 抜かれたE46乗りはアクセルを離した。 その後抜かれた際に、オレの技から発生したオーラに触れた影響でスピンしてしまった。

 

「けど、まだ1人いるぜ!」

 

 W203をオレは追う。

 

 バトルは長い直線に入った。

 

「さて、どう抜こうか?」

 

 馬力は下だけど、オレはW230を煽る。 途中曲線を挟み、それを抜けた後にある別の直線の立ち上がりでオレは追い抜きにかかった。

 

 また技を使って追い抜くけど、今度は違う物であり、緑のオーラがSW20を包み込む。

 

「狂気の龍虎流(クレイジー・ドラゴン・タイガーりゅう)<ドラゴン・キラー>!  毎日月火水木金土! ナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダナンマイダ、ナンマイダ!」

 

 緑のオーラを纏いながら、SW20は一瞬だけ目の前の風景が過ぎていく加速力をしていく。 W203は先行を許してしまった。

 

「なんだあの速度は!」

 

 オレの緑のオーラを纏ったSW20の加速を見た不良は、スタート前にSW20の馬力をナメていたとは思えない程恐怖心を感じる表情をしている。 アクセルを抜いてしまい、緑のオーラに触れた反動でグリップを失ってスピンしてしまった。

 

「速えええ……! あのSW20は何馬力だ……?」

 

 オレに抜かれたW203乗りはそんなことを疑いたくなってしまった。

 

 翌日――夕方5時の群馬のりもの大学自動車部。

 

 おれはプラズマ3人娘と末永姉妹と共に、葛西ヒマワリのことで会話していた。

 

「昨日、葛西ヒマワリがバトルを挑んできたんやろ?」

 

「そうだよ。 昨日の朝、葛西ヒマワリが和食さいとうにやってきておれにバトルを申してきたんだ。 姉妹に2連続で相手なんて……冗談じゃあないよ」

 

「ヒマワリのSW20ってミッドシップだよね。 ミッドシップって言えば、加速が良く、旋回性能が高いし、走り向きの駆動方式だよ」

 

「ただし、旋回性能が高すぎてスピンしやすいという欠点もあり、上級者向けだと言われてているべ……」

 

「けど、ヒマワリはかなりのMR乗りで、スピンしやすい車を上手く乗りこなし、まだ愛車をスピンさせたことは1度もないと聞いたわ」

 

「走り屋を始める前にBMWのバイクで練習していたらしいよ。この練習があったから上手くMRを乗りこなしているかもね」

 

「ヒマワリのSW20の馬力はオオサキさんのワンエイティと同じで、トルクはオオサキさんの車より下だけど、三姉妹で一番直線が速く、ドライバーのヒマワリは「どんなクルマが相手でも勝てる」と豪語するほどの性能だと語るわ」

 

「けど、ヒマワリは三姉妹で一番コーナーが遅いけどね――。ただしラリーカーを意識したサスペンションはかなりの安定性を持ち、ヒマワリの高いテクニックもあって、コーナーでの突っ込みは3姉妹で一番遅いとは思えないよ」

 

 末永姉妹がヒマワリについて語りあう。 ヒマワリの腕からくるSW20のミッドシップドリフトはとても鋭いだけでなく、低速コーナーではドリフト、高速コーナーではグリップと走行スタイルを使い分けている。

 

「強敵になりそうだべ。サギさん」

 

「そうかもしれないね。さらにはおれのワンエイティは能力を使いすぎた結果、ヤレて性能がダウンしたよ。そのクルマで勝負すると苦戦しそうだよ。けど、負けたくないけどね……」  下手すればサクラとモミジより苦戦するかもしれない。 しかも相手は直線が速く、100km/hまでは4秒という驚異の加速力だ。

 

 さらにおれのワンエイティはヤレている。性能が下がったクルマでバトルすることはとても痛い。

 

 その後、タカさんとカワさんはこんな話をしていた。

 

「なぁ、くに?」

 

「なに、川畑さん?」

 

 川畑が小鳥遊に対して何か尋ねる。

 

「お前のことが好きやったんや!」

 

「ファ!?」

 

 何、告白!?

 

「あれはほっといて、今から本題や。くに、今夜赤城へ行かんか?」 「行くよ! 今夜!」

 

 喜んで答えた。

 

「了解や! 今夜赤城へ行くで!」

 

 そこへ行くならあのクルマには気を付けてね

 

 夜10時、和食さいとう。 すでに閉まっている店の中で、おれと智姉さんが会話していた。

 

「ミッドシップの加速力は柳田Z33より速いかもしれないぞ。コーナーごとにグリップとドリフトを使い分け、セナ足(コーナリング中にアクセル開閉でエンジンの回転数を調整し、ターボ車には弱点であるターボラグを解消できる技)も使い、MR車をFRのように安定したドリフトさせる」

 

「なるほど、この話は末永姉妹からも聞きましたが、智姉さんが話すとさらに分かりやすいですね」

 

 智姉さんとSW20のことを話した後、次は覚醒技の話だ。

 

「次に覚醒技だが、技はダッシュして相手の精神力を吸い取る技を使ったりする。能力はとても強力と言われ、お前の持っている能力とは相性が悪いらしいな……」

 

「お、おれの能力はヒマワリの能力と相性が悪い!? ヒマワリの能力って一体どんなものでしょうか?」

 

「相手の性能向上に関係する能力だ。相手の性能向上と自分の性能低下を無効にする能力らしいな。」

 

 相性の悪い能力だった......。

 

「能力を封印されるかもしれないから、ヒマワリの能力には気をつけたほうがいいぞ」

 

 後にヒマワリの能力はおれを苦しめることになる。

 

「もう一つ気をつけることがあるな……」

 

「なんでしょうか?」

 

「車のヤレだ。それでパワーが低下した車で、加速の高い車相手に挑むと苦しいかもしれないなーー次の練習では、私のR35とお前のワンエイティを競争させてヤレてパワーがどれぐらい低下したのか確認しようか」

 

 智姉さんの言う通り、どんな風にヤレが酷いのか気になるのだ。

 

 同じ頃、夜のSpeed葛西にて。 外には私とサクラ、ヒマワリがいた。

 

 ヒマワリはSW20のコクピットの中にいて、その車はエンジンのアイドリング音を出している。

 

「かーちゃん、サクラ姉ちゃん、赤城へ行ってくるぜ」

 

 私とサクラにそう言って、アクセルを踏み込み、3S-GTEのエンジン音を奏ながらSpeed葛西を後にした。

 

 ヒマワリが赤城へ出発すると、私たちのほうはガレージへ向かう。 そこへ入るとそこにはサクラのJZA80があった。

 

 私たちはそのクルマを眺める。

 

「このJZA80だが……オレは――大崎翔子との戦い(リベンジ)に備えて……強化したい――」

 

「どんな所を強化するの……?」

 

「低速トルクの強化……さらなる軽量化だ――他にも足回りの強化だな……」

 

「分かったよ。 大崎翔子との再戦が始まるまで強化しておくわ……」

 

「サクラに言われた所をちゃんと弄るわね」

 

 このJZA80を、メカニックの明星芽衣と協力して大崎翔子のワンエイティに勝てるクルマにしてあげる。

 

 そのクルマの新たな改良が決まった途端、私は娘とは異なる決意を言う。 「サクラ、お母さんは……言いたいことがあるの。クルマとは関係ないけどね――」

 

「――何……お母さん?」

 

 サクラは私の顔を見て、とても気になった。 

 

「あんたと同じく、私もリベンジしようかなと考えているの。智とバトルを」  言いたかったのはそれだ。 私は現役時代、茨城から赤城へ遠征してきた斎藤智には一度も勝ったことがない。 今はどちらも現役を引退したけど、娘がリベンジしようとする姿を見てこっちもリベンジしたくなった。

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