光速の走り屋オオサキショウコ   作:まとら魔術

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ACT.32 広がっていく差

前回までのあらすじ

 

 智とウメ、伝説の走り屋同士のバトルがついに始まった。

 R35のタイヤにダメージを与えるためにわざと下手に走るものの、それを露見されてしまう。

 最初の作戦がバレたウメは、予定より早く次の作戦を実行するのだった。

 

精神覚醒走女のオオサキ 第32話「広がっていく差」

 

 スタート地点のギャラリーたちに現在の状況が伝えられた。

 

「ウメさんのペースが速くなったな」

 

「最初はわざと下手に走っていたらしいけど、予定より早く次の作戦を使ったね」

 

 これから起きる展開について、雨原と名衣は話し合う。

 

「次の作戦だけど、斎藤智はどう戦うんだ?」

 

「さぁね、ウメさんの作戦は斎藤智の作戦に対抗しているからね。どれぐらい離すかが勝負だよね」

 

「ただし斎藤智が本気を出すのは、後半からなんだよな。彼女はそこから距離を縮めてくる。終盤でも抜かれないように離さないと負けるからな」

 

「そうかもしれないね。 果たしてどれぐらい離すのかな」

 

 一方で今の状況を聞いたプラズマ3人娘。

 熊久保は現在の状況について苛立ちを隠せなかった。

 

「なんだべ! 智さん、離されているんじゃねーか! チキショーめ!」

 

「落ち着けや、クマはん。まだ力を温存しとるからな」

 

「そうだよ、まだ本気出していないから離されて大丈夫だよ」

 

 苛立つ熊久保を2人は落ち着かせる。

 

 智に逆転してほしいあまり、彼女の覚醒技の能力について気になった。

 

「智さんの能力ってどんなモンだべ?」

 

「サキちゃんと同じ能力?」

 

「いや……それより強力かもしれんな」

 

「サギさんの持づ能力より強力……!?」

 

「そうかもしれんで……ウメの覚醒技はサクラと同じ覚醒技やけど彼女のほうが強力な能力を持っとるし、智はんとサキはんの覚醒技は同じやけど前者のほうが強力な能力が持っとるかもしれんで。覚醒技のオーラの強さが強力やったからな」

 

 覚醒技の力は持ち主の精神力で決まり、その精神力が成長すると成長する。

 智は現役時代に数々の修羅場を抜けてきたから、川畑はそう考えている。

 3連続ヘアピンを抜け、U字ヘアピンに入ると、ウメとの距離が出来ていた。

 

 遥か向こうにいるJZA70は技を発動させていき、私との距離をどんどん離していく。

 

「まだ縮めるわけには行かない」

 

 けどまだ本気を出すわけにも、技を使うわけには行かないからな。

 それらを出したら、後で苦しくなる。 

 

 右からのS字ヘアピンに入り、そこを1km/hづつ減速しながら攻める技<サンズ·オブ·タイム>を使って抜けていく。

 斎藤智との距離をいくら離せるかが勝負だ。

 

「全力で行くわ」

 

 左ヘアピンを‹コンパクト·メテオ›によるドリフトで抜け、全開区間の第1高速セクションへ突入する。

 かなりのパワーを持つJZA70のアクセルペダルを床まで踏み、この直線区間を駆け抜けていく。

 

「さぁ見えなくなるわ」

 直線の終わりには左からのS字ヘアピン、ハンマーヘッドが待っている。

 前半にあたる左の突き当たりヘアピンを‹ウィル・シー・ヘブン›のフェイントモーションで抜け、後半の右U字ヘアピンを<コンパクト·メテオ3>による立ち上がり重視のドリフトで抜けていく。

 第2高速セクションに入り、再び現れた全開区間を突っ走る。

 

 ジグザグゾーンに入ると、私の次女と三女がギャラリーしていた。

 次女ことヒマワリの方は寝ていたけど。

 

「ヒマワリ、起きろよ。 母さんが来るよ」

 

「あ……寝ていたぜ」

 

 ヒマワリが目を開けると、1台の光が見えてくる。

 私が乗るJZA70は娘たちの所へやってきた。

 

「おお、来た来た。ライトが見えてきたぜ」

 

「母さんのJZA70だよ」

 

 2人の娘がいる所を風のように通り過ぎ、ジグザグゾーンへ入っていく。

 

「イィーネ、母ちゃんの走り! イィーネ! 日本……いや、東洋一だぜ!」

 

「こう見えて、斎藤智を引き離すために精一杯なんだよ」

 

「母ちゃん、どんどん引き離してくれよ。あと、斎藤智は?」 

 

 ウメとの差はさっきより大きくなっていた。

 彼女より遅れている私は第1高速セクションを終えると、この後来る左と右を複合させたS字ヘアピンを連続ドリフトで駆け抜け、第2高速セクションへ突入する。

 

 R35が持つトラクション性能とパワーを全力で使って走っていく。

 

「伝説の走り屋こと斎藤智、結構遅れているぞ」

 

 R35が離されている姿を見て、ギャラリーたちは唖然している。

 中には、「このバトルはウメの圧勝で終わる」「今は力を温存しているだけ」と考える者もいた。

 

 ウメの三女、モミジは後者のことを考えていた。

 

「斎藤智のR35がもうすぐ来るよ。今まで手加減してきたけど、いよいよ本気を出す頃だね」

 

「さっきまで本気じゃあなかったのかよ」

 

「知らなかったの?」

 

「忘れていたぜ」

 

「東大出ててもバカはバカ……」

 

 手加減してきた理由はプレッシャーを防ぐことと力を温存するためだ。

 ここから一気に引き出す時がやって来る。

 

 ジグザグゾーンに入る時、あれを使うか。

 

「<ハヤテ打ち2>!」

 

 透明のオーラを纏い、直線のようなラインをたどってガードレールと友達となりながら、超高速グリップ走行で攻めていく。

 

「なんだ、怖ええ!」

 

「目覚めたぞ、伝説の走り屋」

 

 さっきの走りを見たギャラリーたちは、背中を落としている。

 

 ここから伝説の走り屋と言われた私、斎藤智の本領発揮だ。

 

「大博打の始まりだ!」

 

 ジグザグゾーンを抜け後にある、ナイフの形をした右ヘアピン。

 ここは‹スティール·ブレイド›を使い、銀色のオーラを纏ったゼロカウンタードリフトでガードレールから離れずに攻めていく。

 

「差を縮められる覚悟は出来ているか? 葛西ウメェ!」

 

 ヘアピンの後の短い直線を抜けると、右からのS字コーナーに入る。

 ここをガードレールと接触したように見せながらほぼ直線のラインを描く。

 

 そしてU字ヘアピンを抜けると、ウメのJZA70の姿が見えてきた。

 

「ついに来たわね、斎藤智!」

 

 彼女は、VR38のエンジン音を聞くことで私が来ると分かった。

 

 ここから先行するウメのケツとの壮絶なチェイスが始まる。

 

 近づいたものの、前に出るのは先の話であり、狙うのは……ある場所でだ。

 オオサキ、プラズマ3人娘……飯富院さん、ちゃんと見守ってくれ。 

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