光速の走り屋オオサキショウコ   作:まとら魔術

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ACT.34 それぞれの作戦

精神覚醒走女のオオサキ ACT.34「それぞれの作戦」

 

前回までのあらすじ

 

 ウメに接近することができたものの、数々の技で苦しめられてしまう。

 しかし能力の発動に助けられ、最終コーナーにてウメをパスする。

 伝説同士の戦いは智の勝利に終わった。

 

 5月14日の木曜日の朝6時、バトルまで2日を切った。

 

 今日も智姉さんと練習しているけど、ワンエイティはまだ戻ってこないのでZ32を操縦している。

 ただし、バトル前ということもあって智姉さんのペースがいつもより速くなっているようだ。

 

 赤城山の5連続ヘアピン。

 ここの1つ目に当たる右ヘアピンに入ると同時に後ろから爆発のようなエンジン音が聞こえてくる。

 

「<GTRサウンド>!」

 

 後ろから走る智姉さんのR35が、覚醒技の力でエンジン音を大きくしてきた。 

 耳を塞ぎたくなるような音であったため鼓膜が痛くて集中できず、手に握るハンドルをふらつかせる。

 

「どう対抗しようか……」

 

 相手が音を使うなら、これでどうだ!

 

「小山田疾風流<スケルトン·アタック>!!イケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケー!」

 

 煙で対抗し、その中へ消えて攻めていく。

 この技は追い抜きだけでなく相手の視界を悪くすることにも使える。

 

 しかし智姉さんにはびくともせず、そのまま白煙を貫通していった。

 

「私に煙で対抗しようなど、無理だ!」

 

 2つ目の左ヘアピン、智姉さんのR35に土のオーラが包まれる。

 

「私も使うぞ、小山田疾風流<スケルトン·アタック>!」

 

 智姉さんも、白煙を大きく出すドリフトを披露し、煙の中へ消えていく。

 技を使い終えると、おれのZ32のすぐ後ろに接近し、鼠を狙う猫のように睨み付ける。

 

「ヤバイな――このままじゃあ抜かれるな」

 

 おれの顔には、焦りの表情が出てしまう。

 どうすればいいんだ?

 

 R35に煽られたまま、3つ目の右ヘアピンに入る。

 

 逃げ切るにはこれしかない、という気持ちでそんな技を発動させる。

 鉄のオーラがワンエイティを包み込む。

 

「小山田疾風流<スティール·ブレイド>! イケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケー!!」

 

 鉄の刃を振り回すような高速ゼロカウンタードリフトを使って、ヘアピンを鬼気迫る勢いで攻めていく。

 距離は縮んだように見えた。

 

「無駄だな」

 

 が――4つ目の左ヘアピンでの智姉さんは超高速ドリフトを決め、さっき引き離した距離を無かったことにした。

 

 そして……5つ目のヘアピンにて、勝負を決めてくる!

 

「いよいよ――勝敗を付けるとき、大ばくちの始まりだ! 小山田疾風流<スティール・ブレイド>!」

 

 おれの使った時より凄まじい速さでゼロカウンタードリフトを決め、コーナーの脱出にて一瞬の隙も出さずにZ32の前へ出ていく!

 

 そのまま、ゴールの向こうまで姿を消していった。

 

 駐車場へ着くと、それぞれのクルマからドライバーが降りてくる。

 

 今回の練習はどうだったかのか話し合う。

 

「今回の智姉さん、いつもより速い感じがしました」

 

「だろ? 今度のバトルへ向けて、前より速くなったあいつに勝つためにビシビシ鍛えようと考えたからな」

 

 次に技の話をする。

 智姉さんが使った技の中で、おれが使いたい物があった。

 

「あの音を使う技なんですが、ワンエイティが戻ってきたら使ってみたいですね」

 

「GT-Rサウンドのことか」

 

 けど、ここで問題点がでてくる。

 

「修得できる時間はあるのか?」

 

「ないと思います……」

 

 残り2日というのに、まだワンエイティが戻ってこない。

 RB26を換装しているそのクルマなら<GT-Rサウンド>を使うことができる。

 いつ戻って来るんだよ………。

 

 帰さないなら、泥棒と呼ぶよ(冗談だけど)

 

 7時ごろには和食さいとうに戻り、朝ご飯を食べながらこんなことを話す。 これからのこの店についてだ。

 

「この店をリニューアルさせる予定だ。店の設備を良くし、さらには店員まで増やすつもりでいる。準備中の間は店を休ませるけどな」

 

「リニューアルするんですか、どんな風に変わるのかが楽しみですね!」

 

「新しい店員が入ってきたら、ちゃんとお世話しろよ。虐めるようなことはするな。お前は先輩だから」

 

「はいはい。虐めはしませんよ。ちゃんと教えますからね」

 

 夕方6時の和食さいとう。 

「リニューアル準備に伴い、休業中。準備完了次第、営業再開予定」という張り紙が貼られた店の前に、1人の女性がそれを眺めながら立っていた。

 

 その女性の髪形は青みのかかった黒髪のショートカットに、やや高めの身長をしている。

 

「しばらく入れないのですか――」

 

 女性は張り紙に書かれているある文字に目をそらす。

 

「従業員募集中。バイト・正規問いません……なるほど。なら、私もここで働いてみますか」

 

 そこに、身体の小さな女子高生も加わる。

 

 この女子高生の髪形は腰まで伸びる艶らかな黒い髪に、顔は幼さのある童顔だった。

 

「バイト募集中か……」

 

「あぁ、あなたもここで働きたいのですね」

 

「そうなんです。うち、どこかでバイトしとったんですけど……ブラック過ぎてやめたんです。ここがええバイト先だと聞いとったので、働いたいと思っとります」

 

「なるほど、なるほど。私は元々とある家でメイドとして働いておりましたけど、その家が経営していた会社が倒産に遭ったため、解雇されました」

 

「へぇ、そんなことがあったんですか」

 

 次に、女子高生の喋り方が気にになった短髪の女性がこんなことを尋ねる。 

「あと失礼な質問かもしれませんが、関西人でしょうか? 訛りが特徴的ですから」

 

「いやいやうちは関西出身やありません、関西出身なのは両親の方です。両親は京都出身でした。うちは生まれも育ちも群馬です」

 

 つまり、女子高生の訛りは親譲りってことだ。

 

「そうなんですか――けど、中々の訛りですね」

 

「いやいや、関西を知っとる親の方が訛っとります」

 

 この2人は、後にオオサキと智のお世話になるだろう。

 夜8時の赤城山。

 オレの80スープラと母さんが乗る剛性強化中のワンエイティが峠の道を下る。

 バトルの練習だ。

 

「今日はサクラと互角に走れるほど手加減するわ」 

 

 第3高速セクション前の左ヘアピン、ここに入ったオレはオーラを纏って技を発動させた。

 

「……葛西血玉流<超特急音波>」

 

 サイド·バイ·サイドで母さんのマシンと並ぶと激しい金属音が母さんの耳に襲いかかる。

 

「うわあああ……! やるわね――耳が痛くなるような音よ……」

 

 数々のセクションを通り抜けて……5連続ヘアピンの3つ目こと右ヘアピン。

 フェイントモーションを発生させると同時に……再びオーラを纏って技を発動させる……。

 

「……葛西血玉流<フェイントモーション・ダンス>」

 

 仕掛けられた罠を避けるような動きで……母さんのワンエイティの前に出ていく。

 

 そのまま残りヘアピンを通り抜け、ゴール地点近くの駐車場へ着いた……。

 

  駐車場へ着くと……バトルの作戦のことを話す……。

 

「スタートは……先攻と後攻……どっちなの?」

 

「……後攻を選ぶ……」

 

「理由は?」

 

「……あいつの成長と走りを見ながら……攻めていく」

 

「先行が得意なサクラが後攻を選ぼうとしているなんて意外ね……」

 

 後攻を取るのはそれだけの理由ではない……。

 今のオレの実力を見せてやりたいからな……。

 

「あと……このワンエイティはいつ返すんだ……?」

 

「そうね……バトルが始まる前には返しておきたいわね……」

 

 オレたち親子が会話している所に……麓から黄色いRX-8がやってくる……。

 フロントバンパーやウイングの形から後期型だ……。

 このRX-8はDUSTWAYのステッカーが装着されていた……。

 

 運転席のドアから……ドライバーが降りてくる……。

 顔は知っている……うちのチームの秋山だ……。

 

「サクラさん――大崎翔子の奴を見かけたら、あたしがあいつの実力を試してみようかと考えているよ」

 

「……やめといたほうがいい……」

 

「どうして?」

 

「……あいつはオレの妹でも勝てなかった」

 

「けど、実力を試すだけでも構わないから」

 

「……勝てないことは覚えといたほうがいい……」

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