雨原と戸沢とのバトルは前者の勝利に終わった。
バトル後、彼女はオオサキにバトルを挑む。
それを受け入れ、最速との戦いが始まろうとする!
水曜日、午前6時の赤城山。
今日は智姉さんと練習だ。
実は雨原との戦いに向けて、一昨日も昨日も、練習した。
彼女との戦いが終わるまで、全て練習の日々だ。
バトルは終盤の5連ヘアピンに入る。
「今日は勝てるかもしれない!」
おれは先攻していた。
智姉さんの抜く気配は今まで感じられない。
しかし、3つ目の右ヘアピンにてバトルが変化する!
「さて、仕掛けるか!」
R35は鉄のような銀色のオーラを纏う!
「小山田疾風流<スティール・ブレード>」
鉄の刃を振り回すようなドリフトで攻める!
コーナーの出口でおれを追い抜いた。
「わッ!」
おれは剣で斬られたような精神ダメージを受ける。
マシンは一瞬ふらつく。
その後は智姉さんが前を走ったまま、残りのヘアピンを抜けてゴールした。
その後はクルマから降りて会話をする。
「今回の私は本気の雨原の腕に合わせた」
「今のが雨原芽来夜の走り!?」
「そうだ。本気の彼女は後攻を取り、中盤か終盤になるまで追い抜かないらしい。それを意識した走りをした。彼女がそれまで抜かないのは相手にプレッシャーを与えるためだ」
雨原はそんな走りをするのか……。
その後、練習走行を終えて家に帰った。
昼11時には、R35に乗って智姉さんとデートへ向かう。
赤城神社へ着くと、クルマから降りた。
本殿へ向かうと彼女と会話を始める。
「今まで勝ってきましたから、今回は負けてしまうのかって考えると不安だと感じます。なぜなら、相手は最強の走り屋ですから」
「何言っているんだ? せっかく申し込んだバトルを受け入れたのにな……」
「だってそう不安が現れてきますから……けど逃げるわけには行きません、せっかくのバトルを申し込まれましたから」
「さすがだ。けど、負けたら私の特訓が無駄になる。そしてお前の敗北は私の敗北でもある。負ける以上にやっては行けない事がある」
「負ける以上にやっては行けないこと?」
「それは事故だ。クルマに事故はつき物だから、それは絶対にしないで欲しい」
もしそれをやったら負けた以上に智姉さんを悲しませてしまう……。
翌日、木曜日。バトルまであと2日。
午前11時の和食さいとう。
仕事前にも関わらず、全従業員が集まっている。
智姉さんがあるDVDを持っていた。
「皆に見せたい物がある。プレーヤーに入れてからのお楽しみだ」
「エッチな物じゃあないのか?」
「そういう物に期待するな、六荒」
おれたち女性陣はそのやり取りを聞くと苦笑いをする。
DVDをプレーヤーに入れると、映像が始まった。
クルマが峠でドリフトする映像が流れた。
その中に見覚えがある人物が映る。
「智姉さん、雨原芽来夜が写っています」
「今より幼い感じがします」
「萩野、これは赤城山に現れたばかりの当時17歳の雨原だ」
「智、彼女は当時高校生か?」
「彼女は高校に行ったことはないらしい」
「そうなのか!?」
「高校行っていないのはおれと同じですね……」
「以外ですね……高校行ってはるうちから見ると衝撃的ですわ」
赤城最速になる前の雨原が写っていた。
次は彼女の愛車のFD3Sが映る。
バトルを重ね、どんどん勝利していった。
DUSTWAYのメンバーと共に写っている映像が流れる。
サクラのJZA80ら共にドリフトもしていた。
「この映像はDUSTWAYを結成した後の映像だ。それは赤城最速になってから作ったチームだ」
今度はサーキットの映像が写る。
雨原のFD3Sは1番を走っていた。
他のクルマを寄せ付けず、サーキットを駆け抜ける。
「峠だけでなく、サーキットでも速いですね……智姉さん」
「彼女は赤城最速になってからここで1度も負けたことがない上に、サーキットの草レースでも数々の表彰台に上がっている」
「峠以外でも速いとは非の打ち所ありませんね……オオサキさん」
「彼女は、俺がいた場所でも名前を響かせたからな」
「六荒も知っているの!?」
「ワンメイクレース業界でも知られているぜ、彼女の参加したレースを見に行ったことあるからな」
そんなに知名度があるのか。
DVDの視聴を終了すると、智姉さんはこんな話を始める。
「六荒にも知られている雨原だが、彼女は秘密の多い走り屋だ。群馬以外で生まれたこと先ほど言ったおり中卒であること以外の生い立ちは不明だ。関係者以外は彼女の過去を知らない……」
彼女はどこで生まれ、どこで育ったのだろうか……?
秘密だと知ると、おれは興味が湧いてくる。
午後5時頃、Maebashiにあるとあるスポーツジム。
あたしはここに来ていた。
ランニングマシンの上を駆け抜ける。
あたしはここの会員だ。
クルマのバトルには体力が欠かせないからな。
あたしの身体はマッチョと言える筋肉質な体型になっており、腹筋も見事に割れている。
今日もバトルのために身体を鍛える。
和食のさいとうの仕事を終えた午後9時。
オオサキ以外の従業員が帰っていく。
「さようならー!」
六荒だけを呼び止める。
「六荒、ちょっといいか?」
「なんだ?」
「ちょっと私についてきてくれ」
「智姉さん、ダメですよ! あいつと付き合っちゃ」
やはりオオサキに止められた。
「ごめん、そういう意味ではないんだ」
あいつは妻帯者だから、あの意味で付き合ったらアウトなんだよな。
「六荒、オオサキのワンエイティを見て欲しいんだ。今度のバトルに向けてセッティングしておいた。私の運転で確かめさせてくれ」
「いいぜ。確かめてやろうか」
六荒は了承してくれた。
共にクルマに乗り込み、赤城の道路を登っていく。
まずは5連ヘアピン。
全てドリフトで登っていく。
「速い! 智のドライビングが速すぎて、掴めない!」
「どうだ? 今より良くなったかもしれないだろ」
ワンエイティのすごさより、私のすごさに驚いてしまったようだ。
「こんなドライビング、ワンメイクレーサーだった俺にはできない……」
この後も私のワンエイティは赤城の山を駆け抜けた。