光速の走り屋オオサキショウコ   作:まとら魔術

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ACT.1 オオサキと智

 赤城山を走行していたおれは、店の名前が書かれた看板が立つ和風な建物のレストランの駐車場にて愛車であるワンエイティを止める。

 

 ここの駐車場にはこのワンエイティ以外にも、銀色のR35型GT-Rも止まっていた。

 

 和食さいとう。

 赤城山のふもとにある和食メインの料理店だ。

 営業時間は昼1時から夜9時まで。休日は日・水・祝日となっている。

 

 今日は日曜日なのでこの店はお休みだけど、おれはそこへ入った。

 

中に入ると、車の本やポスター、自動車メーカーやパーツメーカーのステッカーがいっぱい飾ってある。

 

インテリアにはテーブルが2つほど並んでいて、カウンターにも席がある。

 メニューは看板のターボ焼きそばから走り屋弁当、赤城うどんなどがある。

 

「ただいま“智姉さん”、赤城のドライビングから帰ってきました!」

 

 和食さいとうの中には黒いセーターを着た1人の女性がいた。

 おれの挨拶に応じ、ウグイス色のかかった銀色の長髪を輝かせながら振り向くと、春の桜のように綺麗な顔を表す。

 おれ同様に黒いタイツを履いており、黒いワンピースから抜群な美脚を見せている。

 

「おかえり、オオサキ。ドライブは楽しかったか?」

 

「楽しかったです!」

 

 おれを迎えてくれたもう1人少女というより、美人な女性はこの店の店長だ。

 

 おれはこの人を“智姉さん”と呼んでいる。

 クールだけど優しい人だ。

 幼く見える顔の割に、低い声をしている。

 

 実はこの店、おれの家でもある。

 そして、日・水・祝日以外はここで働いている。

 

 “智姉さん”という女性のフルネームは斎藤智(さいとう・とも)という。

 年齢は不明だけど、20代ぐらいだ。

 

 おれと智姉さんの関係についてだが、実は性別が同じにも関わらず恋人として交際をしている。

 おれは女の子だけど、自分のことを「おれ」と言っている。

 家では親子や姉妹のような関係、走りに関しては師弟関係と様々な関係がある。

 

 智姉さんとの交際は3年前からだ。

 

「けど速く家に帰りたいあまり、前を走っていた覚醒技超人ではないドライバーが乗っているR34を<コンパクト・メテオ>で追い抜いてしまいました」

 

「R34はスピンしたのか?」

 

「スピンしました。おれは申し訳ないと考えております。せっかく走っていた相手に迷惑を掛けたなって考えております」

 

「やってしまったな。覚醒技超人ではない人間が運転するクルマが、オーラに触れるとスピンしてしまう。私も走っていたドライバーに申し訳ないと思う」

 

 今でもあの出来事は申し訳ない 

 智姉さんも気持ちに同情にする。

 

 実はあのR34はタイムアタックしていたものの、おれはこれを知らずにスピンさせてしまった。

 もしスピンしなければ、あのR34は自己最高のレコード叩き出していたのかもしれない。

 

 本当に申し訳ない物だ。

 

 ちなみにおれがR34を抜くときに使ったのは、「覚醒技 (テイク)」と呼ばれる現象であり、「Take Me Higher」(自分を高く連れて行く)という言葉から来ていて、使う者は「覚醒技超人(テイクハイヤー)」と呼ばれている。

 

 ドライバーが精神力をタキオン粒子に置き換えると発生し、物体から出るオーラに触れると普通の人なら強力なダメージを受けてしまう。覚醒技超人ではない者が喰らったら耐えられない。

 

人馬一体になることでクルマからも発生し、超加速や限界を超えたコーナリングも可能だ。

 

 話を終えると、午後12時半になる。

 

「お昼にしようか、昼飯を作るぞ」

 

「おれは2階へ上がります」

 

 さて、部屋で着ているあの服を着ようか。

 

「できたぞー!」

 

 15分後には出来上がる。

 今日は明太子スパゲッティだ。

 

 この時、戻ってきたおれの衣装を見て驚いていた。

 

「何なんだ!? モジモジくんのような全身タイツを着て!?」

 

「家では着るんですよ。落ちつくんです」

 

「とんだことになったな」

 

 さっき着ていたおれの服装は、疾風の書かれた赤いTシャツの下に赤茶色のインナー、白いホットパンツから生えたグンパツな脚を見せる黒タイツ姿だった。しかし一転して、顔と前髪を除いて爪の先まで身体の全てを覆った全身タイツに着替えていた。

 

 実は、全身タイツという衣装が大好きだ。

 指まで覆われた服の感触が気に入っている。

 部屋にいる時や外出しない時、客が来ない時はこれを着ている。

 

「じゃあ食べようか、

 いただきます!」

 

「いただきます!」

 

 手をあわせると、昼ごはんを食べ始める。

 タイツに包まれた赤い指でフォークを持ち、スパゲッティを巻いて口に入れる。

 

「美味しいです。智姉さんの料理は最高です!」

 

「良かった。オオサキにそんなことを言ってくれて嬉しいぞ」

 

 おれはとても満足した。

 料理店の店長を務めるほど彼女の料理は美味しく、おれは大好物だ。

 

「昼ごはんが終わったら歯磨きして、赤城へドライブしようか」

 

「赤城へドライブですか!

 行きます!」

 

 この誘いには満面の笑みの顔で応じた。

 

 しかし、ドライブへ行くことが決定したものの、

 

「その全身タイツは恥ずかしいぞ。

 いつもの「疾風」と書かれたTシャツと夏でも履いている黒タイツに着替えろ」

 

 客観的に見れば、人前には出てはいけない衣装だ。

 

「着替えます(この衣装は気にっているけどなあ)」

 

 いつもの衣装に着替えるため、2階へ再び上がる。

 戻ると、黒い美脚が特徴的な衣装へ着替える。

 

「着替えました」

 

「よし着替えたな」

 

 着替えを終えた後は洗面所で歯と顔を綺麗にして、午後1時には家の外へ出た。

 外にある駐車場にはおれのワンエイティだけでなく、銀色に光る1台のスーパーカーがあった。

 

 エアロパーツで武装し、ボンネットとトランクは黒く光っている。

 

 その車はR35型日産GT-Rだ。

 

 このR35は智姉さんの愛車で、おれのワンエイティより物凄い威圧感を放っていた。

 

「さぁ、行くぞ」

 

 R35に2人は乗り込み。

 智は運転席、大崎は助手席に座り、ベルトで身体を固定した。

 

「それじゃあ、行くぞッ!」

 

 キーでR35を起動させてR35の眠っているエンジン、VR38DETTを起こす。

 眠りから覚めたエンジンは恐ろしい音を奏でる。

 そのエンジンは600馬力ほどあるパワーを放っていた。

 

 しかし、この時はそのような恐ろしさを見せず、

 穏やかに走っっていく

 

 出発したR35は赤城道路の坂道を登っていく。

 時速60~70㎞/hと普通の車並みにゆっくりした速度だ。

 

 中央にあるR35のオーディオは桑島法子の「私らしく」を歌っている。

 

 智姉さんのR35の内装はレース用にカスタマイズされ、

 戦闘力向上のためにロールバーやレース用シート、レース用メーターやマニュアル用6速ミッションが取り付けられている代わりに走りに必要のないリアシート、エアコン、サイドウインドウなどを取り外している。

 

 これらの内装のカスタマイズによってノーマルより遥かに軽い1560kgを達成した。

 

 しかしこんなに軽量化されているのにも関わらずオーディオは残されている。

 音楽を聴くために残しているようだ。

 

「智姉さんとドライブするなんて――なんだかデートみたいです」

 

 こんな気分、ワクワク物だ。

 ワクワクして顔が紅くなってしまう……。

 

「そう言われると……私も照れる。

 私も――オオサキとドライブできて嬉しい」

 

 オオサキの言葉を聞いて嬉しくなるあまり、智も顔を赤くする。

 智が聞いていたのはオオサキの言葉だけではない。

 

「いい曲です。

 智姉さんが好きな桑島法子さんの曲を掛けながらドライブするのも良いことだと思います」

 

「私は桑島さんの声が大好きだ。すごい癒される声だ」

 

 智姉さんは、曲を歌っている声優の桑島法子さんの大ファンだ。

 もちろん声も好きであり、「綺麗な声」と評している。

 

 ドライブを開始して10分が経つ。

 R35が停まった場所は赤い鳥居が聳え立つ、赤城神社だ。

 長い橋の向こうに本殿がある。

 

「着いたぞ」

 

「うわあ、綺麗な橋がありますね」

 

 クルマからおれと智姉さんは降り、社のある中央の半島を結ぶ橋を渡りながら話をする。

 

「長い橋ですね。下には大きな大沼という湖があります。琵琶湖とどっちがおおきいでしょう?」

 

 この質問は小学生でも分かる程、馬鹿すぎる質問だが――。

 

「それは琵琶湖が大きい。こんなの当たり前だろ?」

 

「ウェヒヒ、冗談のつもりで質問しました。それは当たり前ですよね。」

 

「やれやれだな」

 

 日本に琵琶湖を超える湖なんて存在しない。

 

 いつの間にか本殿へ到着した。

 

 すぐ殿内に入ってそこでおれと智姉さんは参拝をすることにした。

 5円玉を2つ賽銭箱に入れ、両手を合わせて神社に祈る。

 

「運転が上手くなりますように、智姉さんと一緒に幸せになりますように――」

 

「私からも、オオサキと一緒に幸せになりますように――」

 

 果たして、おれたちのそれぞれの願いは神様に届くのだろうか――?

 

 この後、おれに悪夢が待っていることは知らなかった。

 

 赤城神社に男2組の男がやって来た。

 片割れの茶髪はおれたちに突然話かけてくる。

 

 何し来たんだ!?

 

「君たち、僕たちとしない?」

 

「そこの女の子、僕の彼女になってくれない?

 もし彼女になったら、欲しいものをなんでもあげるからね!」

 

 もう片方の金髪の男も続く。

 

 おれに対してナンパしてきた。 

 おれは男に対する耐性なんてない。

 

「お前たちは誰に話かけているんだ?」

 

「そこの赤い髪をした小さな女の子だよ」

 

 ナンパのターゲットにされたおれはすぐに怯えた顔になる。

 

「本当に可愛いね、年齢的には小学生なの!? 小学生なのに胸大きいし、タイツで黒く光る脚は綺麗だね!」

 

「僕のソーセージも大きくなりそう。君は理想の彼女だよ。僕の彼女になってよ!」

 

 おれのことを可愛いと言ってくれるのは嬉しいけど、ナンパされるのは嫌だよ!

 おまけに男性恐怖症だし、レズビアンだから智姉さんという恋人の女性がいる。

 

 おれは可愛らしく見られ、美少女の分類に入る容姿だ。

 顔のパーツだけでなく、小さい身体でありながらスタイルは抜群だ。

 

 そして注目すべきは脚だ。

 ふとももは色っぽい太さを表している。

 ふくらはぎは筋肉質にもかかわら細く素晴らしいラインをていて、夏でもタイツを履くことでさらなる美脚にしている。

 

 レズビアンであることをカミングアウトしたものの、効き目はなく、ナンパは続く。

 

「君可愛いから、レズでも構わないよ。世界に一人の女だよ! 身体は小さいのに巨乳だし、女の子なのに「おれ」というところも大好きだよ!」

 

「ナンパなんてやめてよ、冗談じゃあないよ!」

 

 嫌がったおれは助けを呼ぶために叫ぶッ!

 

「助けてェェェェェェェ智姉ェェェェさァァァァァァんッ!」

 

 悲鳴を聞き、智姉さんが立ち上がった!

 

「私のオオサキに、なにをするんだ。オオサキに近づくな!」

 

 怖がるおれを見て、淡河を切った。

 

「へぇ~、またかわいい女の子が現れたよ!」

 

「君もかわいいね。見た目から高校生かな?」

 

 智姉さんまでナンパしようした。

 

「私の年齢を聞くなんて失礼だぞ。私は高校生に間違われやすいが、年齢は秘密だ。私をナンパしようなど、100年早い!」

 

 智姉さんはそれを無視。

 

 叫びながら黒い脚に振り上げ、茶色い髪の男を狙う!

 

 振り上げられた脚は剣のように鋭く襲い掛かり、茶髪の男の頭に命中した。

 

「ぐほ!」

 

 脚が頭に当たると、そのまま地面で倒れる。

 

「大丈夫か⁉」

 

 倒された茶髪の男のことを金髪の男は心配する。

 

 彼にも智姉さんの黒い脚による鉄槌を喰らい、

 

「ぐはッ!」

 

 倒れこむのだった。

 

 金髪の男まで蹴り飛ばした後は、頭を踏みながら説教を始める。

 

「私は彼女を大事にしている。今度お前らがナンパしているところ見たら、私は許さないぞ」

 

 脚を踏んでいた男を解放させた。

 

「もうしましぇーん!」

 

 お灸を吸われた2人組は言葉を捨てながら、赤城神社から素早く消えていく。

 こうしておれはナンパの魔の手から救われたのだった。

 

 ナンパから助け出されると、智姉さんに礼を言った。

 

「ありがとうございます。もうちょっとで犯されそうでした」

 

「犯されそうって、言い過ぎだぞ。また何かあったら助けてやるぞ」

 

 ちょっと18禁みたいなことを言ってしまったものの、ちゃっと礼を言っている。

 

 ちなみに智姉さんの性格は強いだけでなく、正義感と優しさを持ち、その性格におれは魅了された。

 

「その時はいつでも助けてくださいね。うわ!」

 

 智姉さんがおれの小さな体を力強く持ち上げる。

 

「どうだ、お姫様抱っこは!?」

 

「突然のお姫抱っこですが、最高です。智姉さんマジ王子様です。お姫様抱っこ気持ちいいです!」

 

 抱っこされたおれは顔を赤くするほどいい気分になっている。

 この後おれたちは赤城神社を離れ、他のスポットを歩き回り、R35の元へ戻った。

 

「帰ろうか、オオサキ」

 

「はい。帰りましょう」

 

「赤城の帰りのダウンヒルだが、本気出しても構わないか?」

 

「構いません。智姉さんの本気の走り、見たいですから!」

 

「そうこなくっちゃな」

 

 実は智姉さん、「伝説の走り屋」と呼ばれるほど最強の存在だ。

 その実力は、プロのドライバーでも不可能と言える赤城道路を2分切りで走り切ることができる。

 

 シートベルトを締めて、眠っていたエンジンを起こし、出発の準備をすえう。

 

「よし行くぞ。赤城道路をジェットコースターみたいに下るぞッ!」

 

「おれこんな村いやだ~♪」

 

「私が言ったのは吉幾三じゃあないぞ! やれやれだな」

 

 こんなこともあったもの、智姉さんはアクセルを踏んでR35を進ませる。

 猛獣のような加速で出発するR35は赤城神社から去っていった。

 

 走り始めたR35は時速60km/hとゆっくり走行していたものの、エネルギー資料館を通ると一気に加速し、180km/hを超える速度で道路を下っていく。

 

 この速いスピードで走るR35のシートにおれたちの身体は押さえつけられる。

 

「速い、速いです! さすが智姉さんのR35の加速力!」

 

「速いのはここだけではないぞ。ビビらず、R35の走りを見守ってくれ」

 

 智姉さんはアクセルを強く踏み、R35をさらに加速させていく。

 クルマは時速200km/hを超えるスピードで走行する。

 

 最初のストレートを抜けると、S字ヘアピンを通って第1ヘアピン。

 200km/hを超えるスピードのまま、突入していく。

 

 ここに突入した智姉さんはヒール・アンド・トゥでブレーキを力強く踏み、クルマを減速させながら、萌葱と白のオーラを車に包ませる!

 

 覚醒技を使うようだ!

 

「<コンパクト・メテオ>!」

 

 タキオン粒子のオーラに包まれたR35は高い速度を維持し、ドリフトで攻めていく!

 クルマは車体から1mmしか離れていなかったものの、車体に傷1つ付けることなく通過していった。

 

「いきなりですが、<コンパクトメテオ>来ました!ガードレールとキス寸前の距離で攻めてきましたね!」

 

 その智姉さんの走りを見て、おれは心臓が止まりそうだった。

 

「これぐらいは序章に過ぎない。どんどん本気を出すぞ!」

 

 しかし、この赤城のダウンヒルはまだ始まったばかりだから智姉さんにはまだまだぐらいしか感じていない。

 アクセルを強く踏み、ハイパワーなR35を進ませていく!

 

「“気力”が溜まり、時間が経過して技が使えるようになったらまた技を使うか」

 

 ちなみに<コンパクト・メテオ>を使った智姉さんだけど、消費したのは"気力"だ。

 覚醒技超人の“気力”が溜まれば技が使用可能だ。

 ただしそれが溜まっても、使用した後はしばらくの間(最低では5秒、最大では30秒以上。強力な技ほど長くなる)は技を使えなくなる。

 

 第1ヘアピンを抜けると道幅の広い右コーナーが差し掛かる。

 ブレーキを使わないドリフトで駆け抜けると、今度はやや長い直線に入っていく。

 約600馬力の出力と4WDの駆動力を駆使したカタパルトのような加速で進む。

 

 風のような加速を維持したまま、左低速ヘアピンから入る3連続ヘアピンに突入する。

 

 しばらく技を使っていない。

 まだ智姉さんは気力を温存しているからだ。

 

 手足のように華麗なハンドル裁きと、地面に着くほど強く踏んだブレーキング。速度に合わせたシフトチェンジ。

 

これらの技術を使い、柵に接触寸前のドリフトで3つのヘアピンを抜けていく。

 

 直線を挟んでU字ヘアピンに入り、ガードレール接触寸前のドリフトで攻めていく。

 このコーナーでも技を使わなかった。

 

 また直線が挟んでくる。

 先にはS字ヘアピンが来る。

 この区間はブレーキを使わない連続逆ドリフトを使って、車重の重い4輪駆動車と思えない、軽快な走りで攻めていく。

 

 2連続ヘアピンに突入する。

 1つ目の右低速ヘアピン、ここはラリーを彷彿させるサイドブレーキドリフトで攻めていく。

 

 2つ目の左低速ヘアピン、

 このコーナーへ進むと、智姉さんはある走りを行うつもりだ。

 

「見てくれ……ここは限界まで決めてやるぞ。危険な技だから、気を付けて見てくれ」

 

「はい。気を付けますッ!」

 

 次のコーナーでのコーナリングはスゴいことになりそう。

 おれの身体は震えていく。

 

 智姉さんはコーナリングに入ると旋回と減速は一瞬だけしか行わなわずに、コーナリングの後半はなんとアクセルペダルを踏むだけのドリフトで攻めていく!

 

 アクセルとシフト操作のみでのドリフトであるが、車は上手く曲がっていて、柵に衝突する気配もない。

 ドライバーがハンドルを握らないまま走る車はヘアピンを進んでいく!!

 

 車は柵に一切接触せず、無事にヘアピンを抜けていった。

 

「すごい走りです! 智姉さん以外のドライバーには出来ない技です!」

 

 今の智姉さんの走りにおれはとても驚いている!

 体中に鳥肌が立ち、手足はとても痙攣したかのように震えていた。

 

「すごかっただろう。実は私でも怖いと思っている。車をぶつけてしまうからな」

 

おれだったら絶対にあの世へ行くかもしれない危険な技だ。

 

「ただし、この技は次も行く。今度は覚醒技の技も使ってな!」

  

 クルマは第1高速セクションに突入し、R35の600馬力と4輪駆動車特有の高いトラクションが力強く進ませる。

 勢いのある加速で進むR35は第1高速セクションを時速180km/h以上の速度で進んでいく。

 瞬きができないほど一瞬の加速で第1高速セクションをクリアすると、S字連続ヘアピンが見えてくる。

 

 シュモクザメの頭に似ていることから「ハンマーヘッド・ヘアピン」と言われている。

 

「S字連続ヘアピン突入だ。

 最初のところは覚醒技を使わず走る!」 

 

 智姉さんは弱めにフットブレーキペダルを踏み、サイドブレーキを引いたラリーのようなドリフトで駆け抜けていく。

 

「後半にて<フライミーソーハイ>で攻めるッ!」

 

「やってやりましょう、智姉さん!」

 

 さっき同様、フットブレーキとハンドルを一瞬だけ操作して突入し、

 アクセルとシフトだけで車を操作しながらヘアピンを走行し、智姉さんの精神力をタキオン粒子に置き換え、R35の車体に萌葱と白のオーラを発生させる

 

「小山田疾風流、<フライミーソーハイ>!」

 

 風のような速度でドリフトをしながら、ヘアピンを一瞬にして駆け抜けていく!

 出た後はオーラが消えた。

 

「す、すごいです!」

 

 このドリフトを見て、アドレナリン全開の叫びをした!

 

「さらにすごいドリフトでしたね。さっきと同じアクセルとシフト操作のみで行うドリフト。覚醒技を使っていることもあって、迫力あります!」

 

 今使った技は<フライ・ミー・ソー・ハイ>。

 小山田疾風流の技で、時速200km/hを超える速いドリフトでコーナリングする技だ。

 

 アドレナリンは冷めないまま、R35は赤城道路を凄まじい勢いで駆け抜けた。

 

 赤城道路を駆け抜けたR35は自宅の和食さいとうに着いた。

 猛烈な速度で赤城を下り終えた車からおれたちは降りる。

 

「着いたぞ、私たちの家にな」

 

「おれは帰ってきたよ、ワンエイティ」

 

 帰ってきたおれは愛車に挨拶をする。

 ただし、無機物は返事しない。

 

「今日は楽しいドリフトでした。アクセルだけのコーナリングする瞬間は最高です!」

 

 今でも目に焼き付いている。

 いつかやってみたいな……。

 

「オオサキ、明日の朝も赤城山へ行く日だぞ」

 

「そうでしたか」

 

思い出した。

 明日も赤城山を走るんだ。

 ただしこの時は智姉さんのクルマではなく、おれのクルマで行くつもりだ。

 

「明日は勝負する勢いで走ります!」

 

「練習だから手加減するけどな」

 

「でも、追いついてみませます!」

 

 しかし智姉さんは伝説の走り屋だ。

 あの人は手加減すると言いつつも、おれの腕では歯が立たないかもしれない。

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