光速の走り屋オオサキショウコ   作:まとら魔術

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ACT.2 練習バトル

 時計の針は動いていき、山からお日様の顔が現れる。

 

 3月16日になり、時間は朝の6時だ。

 

 2人は車に乗り込み、赤城道路を暴れるように駆ける。

 先を走るおれのワンエイティ、あとを追う智姉さんのR35が赤城道路の最初の5連ヘアピンを上っていく。

 

 おれと智姉さんは数日に1回、赤城山の練習をしている。

 練習でありながら、本番のバトルのようで激しい。

 

 1つ目のヘアピンへ入ると2台ともドリフトしながら突っ込む。

 おれのドリフトは素早い突っ込みであり、しかもラインを外さない綺麗なドリフトだった。

 

 だが、おれより速いのは智姉さんのほうだ。

 智姉さんのR35は1720kgから1580kgへ軽量化されているものの、それでも重い車重だ。

 しかし、コーナーではおれより速いドリフトをしている。

 ワンエイティのフロントフェンダーに接触寸前突っ込みだ。

 

 手加減しているといえ、とても速い。

 さすが伝説の走り屋と呼ばれた腕だ。

 

 ドリフトの突っ込みは、普通なら4WDより旋回性能の高いFRのほうが向いている。。

 しかし、勝負は4WDのR35が制す。

 

 2つ目と3つ目のコーナーを次々に攻めていく。

 2つも智姉さんとR35が制し、おれのワンエイティは煽られっぱなしだ。

 

 4つ目に入ると、突っ込みで負けていたおれは技を発動させる!

 

「突っ込みで負けまくるなら……<コンパクト・メテオ>! イケイケイケイケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 

 透明のオーラに包みながら猛スピードでコーナーを駆け抜けていき、R35との距離を離す。

 差は車2台分となった。

 

「よし!」

 

 R35を上手く離したかのように見えた。

 

 しかし、次の5つ目のヘアピンにて智姉さんも透明なオーラが纏う。

 

「だが、無意味だ。私も使うぞ、<コンパクト・メテオ>!」

 

 技を使った高速ドリフトを披露した。

 智姉さんのドリフトはおれのドリフトより速い!

 

 前のヘアピンでおれが広げた距離は元に戻り、再びテール・トゥー・ノーズの差へ戻った。

 

 5つ目のヘアピンを抜けて第3高速セクション。

 R35は4WDの立ち上がりと600馬力の高出力を駆使して前のワンエイティを追い抜いていく!

 

「先行ってもいいのか、オオサキ!」

 

 R35はカタパルトのような加速力で去っていき、おれの眼から消えていった。 

 

「やっぱ速いです――智姉さん。本当に手加減しているのでしょうか」

 

 あの走りを見て、智姉さんは実は手加減していないとおれは考える。

 智姉さんのR35の先行を許した後、おれは<コンパクト・メテオ>を使っても差を縮めることはできず、ゴールまで彼女の車を見ることはなかった。

 

 智姉さんよりかなり遅れて、資料館前の駐車場に辿り着く。

 

「やっと来たな、オオサキ」

 

「手加減したって言った癖に、速すぎです」

 

 必死だったおれは焦った顔をしている。

 その口からため息が出ていた。

 

「たしかに、本気で走っていないが……オオサキを離してしまった」

 

 さすが伝説の走り屋と呼ばれた女性だ。

 

 こういう結果を受け、おれはある提案を智姉さんに出す。

 

「ダウンヒルではハンデを付けて走ってください。1分のハンデです。どうでしょう?」

 

 これぐらい智姉さんは速すぎたのだ。

 

「分かった。離してしまったから、これを受けようか」

 

 こんな提案だけど、引き受けてくれた。

 

 10分が経過し、休憩を終える。

 

 おれたちは再び車に乗りこみ、スタートラインの前へ立つ。

 

「じゃあ始めるぞ。ハンデを付けているから、お前が先に出発してくれ」

 

「はい、行きます!」

 

先におれがスタートした。

 

「1分間待ってやろうか」

 

 スタート地点から動くのは後ほどだ。

 

 まず、おれは長い直線を駆け抜けていく。

 

「たくさんマージンを作ろう、ワンエイティ!」

 

 愛車にそう言いながらアクセルを強く踏み込む。

 次に緩くて長い左高速ヘアピンを通って、S字からのヘアピンに突っ込んだ。

 

「<コンパクト・メテオ>!」

 

 ヘアピンを攻めている間はオーラを纏い、高速ドリフトで突き抜けていく。

 

 智姉さんとのマージンを広げるために、迫りくるコーナーたちを抜けていった。

 

 

スタート地点では……。

 

「1分が経過したか。

 出発する時だな」

 

 智姉さんのR35がようやく走り出す。

 

最初のロングストレートをおれのワンエイティより速く、カタパルトのような加速力で突っ走っていく。

 続いて緩い高速左コーナーを抜け、重い4WD車とは思えない高速ドリフトでS字からの左低速U字ヘアピンを攻めていった。

 

 一方、おれは第2高速セクション後のジグザグゾーンを攻めていた。

 

 遠くにいるため、智姉さんがスタートしたという情報は聞いていない。

 けど、感じることはある。

 

「なんか遠くから何か来そうだよ」

 

智姉さんが来るかもしれない。

 

 予感通り、進むほど距離が縮まっていく。

 今のところ智姉さんは、2連続ヘアピンを終え第1高速セクションにいる。

 

さっき同様に手加減した走りをしているものの、それでも速い。

 

R35のチューンした性能だろうか?

 

いや、性能ではない。

 

彼女は車に頼らず腕で走っている。

 

車だけではないんだ。

 

智姉さんも第1高速セクション後のS字コーナーを連続ドリフトで抜け、第2高速セクションへ入る。

 一方のおれは遥か遠くにある2連続ヘアピンの2つ目の前にいた。

 

「エンジン音が聞こえてくる! 智姉さんが来ているみたいだね!」

 

耳を澄ませてあの人が近づいてくると考えると、おれの心の中は戦慄が走っている。

 

赤城の下りにてワンエイティとR35の勝負になると、後半は直線が多いた馬力で負けるワンエイティは不利になる。

 

車の性能の差が出るためキツくなる後半、おれとワンエイティはどうやって逃げ切ることができるのだろうか⁉

 

「差を縮められているなら、<コンパクト・メテオ>! イケイケイケイケイケイケェー!」

 

オーラを纏い、高速ドリフトを使って2連続ヘアピンの後半を抜けていく!

 

 途中の緩いS字を加えた長い直線を突っ走る。

 次は低速U字右コーナーも抜け、左直角コーナーと緩い左高速ヘアピンも抜けていく。

 

 いよいよ下り最後のロングストレート、第3高速セクションに入った。

 

 第3高速セクションにておれと智姉さんの差は互いが大きく見えるほど縮まっていた。

 

「智姉さんが来た⁉」

 

「オオサキ、やっと見つけた! 終盤での追い抜きは得意だから、抜かせてもらうぞ!」

 

 前のワンエイティをプッシュするかのように、R35は後ろへピッタリ付いていく!

 

バトルはいよいよ下り最後のゾーン、5連ヘアピンへ突入した。

 

「逃げ切ってやりますよ!」

 

 まず1つ目だ。

 先攻するおれはドリフトで進入した。

 

「この勝負なら、負けないぞ」

 

 後攻する智姉さんもドリフトで進入し、おれを追っていく!

 やはり相手のほうが速く、また追い詰められた。

 

 もうすぐ、前に出すことを許しそうだ。

 

 次は2つ目へ突入する。

 さっき同様、2台共ドリフトで進入していく!

 先攻するおれが追い詰められていることも変わっていない。

 

 追い詰められたおれは次の3つ目で何か巻き返そうと考える。

 

「こうなったら、あれを使って逃げようか――」

 

 3つ目にて技を放つ。

 貯まりに溜まった気力を車にぶつけて突っ込む!

 

「上手く逃げてみる! <コンパクト・メテオ>! イケイケイケイケイケイケェー‼」

 

 オーラに包まれ、高速ドリフトでコーナリングする!

 

 しかし!

 

「逃げられないな。<コンパクト・メテオ>!」

 

 前に出ようと、智姉さんまで高速ドリフトを使うッ!

 

「智姉さんまで<コンパクト・メテオ>⁉」

 

 智姉さんのほうがドリフトの速度が高かったようだ。

 おれはもう後が無くなった。

 

<コンパクト・メテオ>同士の対決は智姉さんの勝利に終わり、ヘアピンから出ると立ち上がり加速でワンエイティを追い抜いた。

 4つ目を抜けるとおれの眼から見えなくなるほど距離が離れていく。

 

「すごく離されている! 技を使って縮めようとしても無理だよ!」

 

 差を縮めることはできず、ダウンヒルでも敗北した。

 

 

 ゴール地点の駐車場。

 遅れて入り、車から降りる。

 

「智姉さん速すぎです……」

 

「やれやれだな、また私が勝ってしまったな」

 

やっぱ本気で勝負しても勝てない。

 智姉さん速すぎる!

 

「気力が貯まっても技を使えるとは限らないぞ。技を使うと、しばらくの間使えなくなる」

 

 例えば、<コンパクト・メテオ>の場合は使用後5秒間使用不能だ。

 

「さぁ帰ろう、帰ったら朝ごはんだぞ」

 

「はい、智姉さんの朝ごはん大好きだから楽しみです!」

 

激しい練習を終えた後、和食さいとうへ帰っていった。

 

 同じ頃……。

 赤城道路の5連続ヘアピン3つ目にに2人の走り屋が立つ。

 背の高い茶髪ロングの女と、片目が黒い前髪で隠れた女だった。

 

「斎藤智のドリフトは見たか、あれはどうだった?」

 

「さすが伝説の走り屋だ……綺麗にスライドさせている」

 

この2人はさっきのオオサキと智の練習について会話しているようだ。

 

「そういえば、赤と白と黒の派手なカラーリングをした180SXという車も走っていたが……あれは見たことはないぜ。斎藤智に負けた割にはなかなかのドリフトをしていたな。彼女と同じオーラが現れていたし」

 

「ワンエイティのオーラを纏うドリフトも嫌いじゃあない……」

 

「ドライバーは子供だったな。車のエンジン音に違和感を感じた。SR20DETではなくRB26DETTの音がしていたな」

 

「RB26を積んだワンエイティとは面白い車だ……これも嫌いじゃあない」

 

 オオサキのことも智同様に褒めている。

 

「そういえば今週金曜日にうちのチーム主催のドリフト走行会を開くけど、ほかのチームからの参加者は事故で怪我をしたり、車が故障したりとトラブルが多くていい人材が集まらねーな」

 

「上手い参加者はうちのチームしかいないな……」

 

 彼女たちはとあるチームのメンバーらしい。

 

「思いついたぜ、あのワンエイティ乗りはどうだ? なかなか腕いいからよ、参加させたいぜ」

 

「しかし……オレはダメだ……興味ないな」

 

「なんでだ?」

 

 右目が隠れている女はオオサキをお勧めできない理由を語る。

 

「あいつは子供のくせに運転が上手く、最近の赤城の走り屋たちに比べる腕はいいと思うが……オレたちに敵わないかもな……あいつは手加減した斎藤智に簡単に倒された……」

 

 しかし、茶髪の女は彼女に対しての印象は良く、

 

「けど、いいと思うぜ。あたしたちより下手かもしれないけど、いい走り屋じゃん。あいつとバトルができれば久しぶりに本気で走れそうな予感がしてきたよ。あのワンエイティ乗りには覚醒技のオーラだけでなく走り屋としてのオーラが輝いて見える」

 

 と捉えたようだ。

 

 彼女たちにも覚醒技のオーラが見えるってことは、覚醒技超人かもしれない。

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