光速の走り屋オオサキショウコ   作:まとら魔術

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ACT.3 DUSTWAY

 午前10時。

 おれと智姉さんは和食さいとうの玄関へ出ていた。

 

 ある場所へ向かうためだ。

 

「R35のガソリンを入れに行こうと思っている。オオサキもついて行かないか?」

 

「行きます!」

 

 おれは即答した。

 

 愛するの誘い人なんて、断ることなんて出来ない。

 

「ちなみに、R35の維持費は何円掛かるのか知っているのか?」

 

「何円ですか? スーパーカーだから高いかもしれませんね」

 

「答えは5万円だ。ちょっと高いだろう。もし大幅な減税が無ければ100万円したもんな。その中にガソリンも入っている」

 

 あなたたちの世界から見れば安いほうだが、本作品の中では高いほうだ。

 

 維持費が大幅に減税される政策を行われたため、その値段になっている。

 

 R35に乗り込み、出発の準備を整える。

 

「行くぞ。シートベルト付けておけよ」

 

 VR38を響かせながら、和食さいとうをドリフトで出ていく。

 

 ――Maebashiのとあるガソリンスタンド……。

 停まってきたR35の近くに店員がやってくる。

 

「なににしましょうか」

 

「ハイオク満タンで」

 

「かしこまりました」

 

 店員は車にハイオクガソリンを注入する。

 

 隣に、縦に白いストライブが巻かれた青い華麗なクーペもガソリンを入れていた。

 

 FD3S型RX-7、通称FDだ。

 

近くに練習バトルを観戦していたと思われる2人の女性が立つ。

 

「あれは朝の赤城を走っていた……斎藤智のR35……」

 

「伝説の走り屋、斎藤智!」

 

 FDの女性2人組は隣にいるR35を注目する。

 伝説の走り屋と称された智姉さんのことを知っているようだ。

 

 R35の元へ向かってくる。

 

 茶髪で青いジャケットの女が近づくと、智姉さんは運転席の窓を開ける。

 窓を開けると、勢い良く話しかけてきた。

 

「伝説の走り屋の斎藤智、ガソリンスタンドで会うとは偶然じゃねぇか!」

 

「別に……私はガソリンを入れに来ただけだ。赤城最速のチーム・DUSTWAYのリーダー、雨原芽来夜」

 

 赤城最速と伝説の走り屋ーー。

 2人が会ってしまった。

 

「朝走っていたのを見ていたぜ」

 

「見ていたのか、私の走っているところを」

 

「そうだ、本当に見ていたんだ。5連続ヘアピンの3つ目でお前が抜いている姿を見ていた所もな。お前でだけでなく、赤と白と黒のワンエイティも走っていたな。あれは誰だ?」

 

「それは私のオオサキだ。大崎翔子という私の弟子であり、私の妹分であり、同性だけど私の恋人でもある」

 

「おれは大崎翔子。智姉さんとは……」

 

 智姉さんから紹介されたことで、おれの頬は赤くなる

 

「へぇー、この娘がワンエイティのドライバーか。あんな車を運転できそうに見えないな。ちなみにあたしは雨原芽来夜。年は21歳で、DUSTWAYのリーダーをやっている」

 

 おれの姿を見てやや驚きながら、雨原は自己紹介した。

 

「幼く見えるけど、こう見えて16歳。免許持っているよ」

 

 雨原におれの自動車免許を見せる。

 

「取得日は2か月前か。免許取ったばかりとは言えない運転だったな。覚醒技を使っていたのを見たからな」

 

 ちなみにおれの運転免許証はオートマ限定の免許ではない。

 

「ウェヒヒ、実は智姉さんから教しえてもらったんだよ。覚醒技もね」

 

「あの伝説の走り屋から教わったんだな」

 

 話題を変える。

 

「今週の金曜日にドリフト走行会を開催するけど、興味あるか?」

 

「どういう大会なの?」

 

「DUSTWAYが開催する走行会さ。赤城の半分の道を使い、前半はダウンヒルと、後半はヒルクライムで峠を往復する。名前の通り、ギャラリーに華麗なドリフト見せるものだ。ただし今参加を予定している走り屋は少ないけどな――。覚醒技は使ってもいいぜ、どうだ、興味あるだろ?」

 

「ドリフト走行会?」

 

 おれの答えは?

 

「考えておくよ――。答え、後で言うから」

 

 検討しておくことにした。

 

「分かった。当日までいつでも聞くぜ。答えは考えて来いよ」

 

 雨原は一緒に来た黒髪の女と共にFDに乗り込んでガソリンスタンドを去っていた。

 去っていったFDは地面が割れるほどの強烈なロータリーサウンドを奏でた。

 

「オレの眼にオーラが見える……ワンエイティの走り屋に……オーラが見える……」

 

「サクラにも見えるのか、オオサキちゃんの覚醒技のオーラ」

 

「――そうだ……」

 

 オオサキのオーラが見えたってことは、雨原同様に彼女は覚醒技使いかもしれない。

 

「雨原芽来夜の言ってたドリフト走行会に参加するのか?」

 

「さぁ、どうしましょうねェ……」

 

 まだまだ考え中だ。 

 答えが思い付かない。

 

 R35もガソリンスタンドを出発し、家へ戻ってきたのだった。

 

 昼12時、和食のさいとうの1階の店内。

 おれと智姉さんはテーブルに座って昼食を取る。

 今日の昼食はMabashi名物の豚肉を使ったチャーシューが自慢の赤城山とんこつラーメンだ。

 

 2人の服装はえんじ色の和服になっていて、黒いタイツはそのままだ。

 

「ガソリンスタンドで出会った赤城最速と名乗る走り屋、雨原芽来夜って誰でしょうか?」

 

「お前が言った通り、本当に赤城最速の走り屋だ。本気出さなくてもバトルに勝ってしまう腕を持ち、最近の彼女は本気や覚醒技を出すことはなく、見た人はほとんどいないらしいな……。それでも速いらしく、ほとんど手加減して勝ってしまう」

 

「覚醒技をほとんど使わないほどですか……!?」

 

「赤城デビューしたのは17歳。速すぎる彼女が出現したことをキッカケに赤城の走り屋が外に流出してしまい、群馬県内の人口(特に県庁のMaebashi市)に支障をもたらしたほどだ。最速になったのは19歳の頃だ」

 

「赤城の走り屋を減らしてしまうほどですか……」

 

「赤城以外でも速く、草レースにも参加していて、しかもほとんど入賞という記録だ。雑誌にも載ったことはたくさんある」

 

 赤城最速と呼ばれていることに相応しく、とても速い走り屋だった。

 ちなみに雨原が載った雑誌とは、ロータリーの雑誌や草レースを特集した雑誌だ。

 

「雨原の愛車・FD3Sは恐ろしいクルマだ。ユーノス・コスモ用に搭載された量産車唯一の3ローター、20B-REWと呼ばれる3ローターエンジンを換装し、その20Bは465馬力にアップされている。中身は競技用パーツで武装され、車重はノーマルの1270kgから1080kgと車重を大幅に落としている」

 

「これぐらいモンスターマシンに乗っているとは……ロータリーサウンドが凄かったのは3ローターだったからしいですね――」

 

「私でも耳が壊れそうな音をしていたぞ」

 

 他にも20Bを積んだFDは欠点だったトルク不足を解消し、59kgという大トルクを実現している。

 回転数のピークは3000rpmという低速トルク重視のエンジンだ。

 

 次は雨原のチームの説明だ。

 

「雨原が率いるDUSTWAYはチームメンバーが全員女性のチームだ。お酒や薬、喫煙禁止、異性との恋愛は禁止というキツいルールはあるものの、赤城山を走る女の走り屋ならだれでも憧れの存在だ。所属するメンバーの数は50人ほどいる」

 

 DUSTWAYレプリカのステッカーを張った車、にせDUSTWAYも見かけるほど憧れるチームだ。

 もし厳格なルールを破ったときの罰については聞いてみた。

 

「キツいルールなんですが、破ったら切腹ですよね?」

 

「切腹という死刑は与えないと思うぞ? 新撰組じゃああるまいし。ルールを破ったら赤城山を走ることが禁止されるらしい。もし改善が見られない場合は……強制脱退させられるらしい」

 

「へぇ~! 強制脱退⁉ すごいキツい罰ですね~!」

 

 しかし、ルールを守ることができれば赤城最速のチームメンバーとしていられるようだ。

 

 会話しながら2人は昼ごはんを食べ続け、5分後に完食する。

 

 夜11時、赤城山にて。

 

 1台のDUSTWAYのステッカーを貼った黒いJZA80が道路を上りながら、前を走る黒いFD3Sを追いかける。

 ヒルクライム最後のヘアピンに入ると同時に追い抜き、ドリフトしながら相手のクルマの目から消えていった。

 

 資料館前の駐車場……。

 ここに雨原たちほかのDUSTWAYのメンバーがいた。

 

「今戻ってきた……」

 

 JZA80から、ガソリンスタンドで雨原と一緒にいた片目の女が降りる。

 

「速いよ……サクラさん。私のFDはコーナリングが自慢なのに、コーナーで抜かれた。ノーマルのJZA80より10倍旋回性能がいいと言われて、それだけでなく腕があるから、重いクルマなのにコーナーでは速いね」

 

 サクラと名乗る片目が隠れた女性の前に、FD3S乗りのメンバーの女性が来る。

 先輩メンバーには敬語を使っていないが、DUSTWAYでは使わなくてもいいチームだ。

 

「やっぱお前のJZA80は速いよ。お前の腕があるから速いけど、ノーマルの10倍曲がると言われてるから下手が乗ってもコーナーが速いクルマだな」

 

 さらにはサクラのJZA80の車重は1380kgとノーマルより100kg以上軽量化されているから、コーナリングが速いのも納得だ。

 

 サクラの元へ雨原がやってきた。

 今日のガソリンスタンドの出来事について話し出す。

 

「サクラ、オオサキちゃんという小娘はどうだった?」

 

「近くで見ると……思ったよりスゴいオーラのある奴だった……だが……オオサキという小娘は16……負けたら恥になる……並みの走り屋より上手いが……オレより上手く走れるのだろうか……」

 

「そうだろ。ただし、まだ走行会に参加したと決めていないぜ。明日オオサキの答えを聞きに和食さいとうへ行こーか」

 

 2人はオオサキのことが気になっているようだ。 

 果たして彼女は参加するのだろうか?

 

 駐車場に3台の車がやってくる。

 

 車種は黒のZN6型86を先頭に、その後ろに黄色いCPV36型日産スカイラインクーペ、銀色のGRX130型マークXG'sだ。

 

 それらには「アース・ウインド・ファイヤー」と書かれた別チームのステッカーが貼られており、前後には舌のように出っ張ったパーツが付けられていた。

 

「あいつら、いたのかッ!」

 

「よぉ雨原芽来夜、来てやったよ」

 

 ZN6から降りた黒髪ツインテールの女は横柄な態度を取りながら、雨原に話しかけてくる。

 どんな関係だろうか?

 

「あたしたちも参加するッスよ!」

 

「当日ではあんたたちがビビるようなドリフトを見せてやるわ!」

 

 仲間である金髪セミロングと銀髪ストレートおさげが仲間に便乗し、淡河を切る。

 

「あたしたちに勝てると思うなよ……あんたたちの腕じゃあ、勝てないぜ。なぜなら、赤城最速で覚醒技超人だからな。速くなりたいなら勝てそうな走り屋をたくさん倒して経験値積んで来い!」

 

 しかし3人組の挑発は一蹴され、愛車の前へ戻っていく。

 

「く、まだあたしは雨原より下だってか……あたしはマンモス下手糞なドライバーか」

 

「そうッスね……」

 

「雨原は赤城最速の走り屋だわ」

 

 落ち込むのは束の間。

 リーダー格の黒髪ツインテールはあることを考える!

 

「なあ明日の朝、あたしたちがマンモス勝てそうな走り屋にバトルを挑もうぜ。弱い走り屋を倒してやろうよ!」

 

「うんうん、そうッスね!」

 

「賛成だわ」

 

 “経験値を稼いで来い”と言われたので、探すと考えるのだった。

 

 ちなみに黒髪ツインテールの少女が言っている「マンモス」とは、「非常に」という意味だ。

 

 3人組を一蹴した雨原は口を開く。

 

「アースウインドファイヤーは好きになれない。DUSTWAYを潰そうと考え、乗っ取ろうと考えているからな。あいつらはチームに所属していたけど、脱退した時はスッキリしたよ」

 

 3人のことを考えると不快感を表した。

 どうやら嫌いなようだった。

 

 翌日、3月17日の火曜日になった。

 

 今日は智姉さんより遅く起きる。

 

 起き上がったおれは1階へ降りた。

 服装をパジャマの全身タイツから、いつも来ている服へ着替える。

 

「おはようございます」

 

「おはよう、あれ顔が元気ないぞ」

 

「いやあ、昨日のドリフト走行会へ誘われたことが頭に残るんですよ……本当に参加すべきか迷っています……」

 

「好きにしたほうがいいぞ。

 する、しないかしないかはお前が決めたほうがいいと思う」

 

 つまり……自分の選択ですか。

 

 考えが決まらず、落ち着かないおれは、

 

「やっぱ、今日の朝は気分転換に走ってきます。落ち着きたいモノで」

 

 と言って、答えを見つけようと考える。

 

「走ってくるなら、早めに戻ってこいよ。あと、事故とマナーの悪い走り屋には気を付けろよ」

 

「気を付けます」

 

智姉さんに心配されながら、おれはキーを持って家に出る。

 外に置いてあるワンエイティに乗り込んだ。

 

「行くよ、ワンエイティ」

 

 RB26を起動させ、地面に響くような爆音を出す。

 ハンドリングを握ったおれは赤城道路に飛び出していった。

 

 上ったり、下ったり、と峠を往復していく。

 

 ダウンヒルのスタート前にある資料館前の駐車場。

 

 クルマが3台停まっている。

「アースウインドファイヤー」というステッカーを見ると、雨原のチームのクルマではない。

 

「全く来ないね、走り屋」

 

「朝だからッスよ」

 

「まぁ来るまで待ったほうがいいと思うわ」

 

「出て来い走り屋! あたしは経験値が欲しいよ!」

 

 そう黒髪ツインテールのリーダー格が叫ぶと、駐車場におれとワンエイティが来る。

 

「来たな走り屋! 国旗のような派手なカラーリング!」

 

 望み通りにターゲットの走り屋がやってきて3人組は喜んでいるようだ。

 おれが降りると、リーダー格が話しかけてきた。

 

「君、幼いのにこんな車に乗るとはね、父親の愛車なの?」

 

「いや、これはおれの愛車だよ」

 

ちなみにおれは親と離れて暮らしている。

 

「おれは大崎翔子、16歳だよ」

 

「年齢は16歳だけど……本当に運転できるのォ⁉」

 

 年齢を言うと運転できるのか聞いてきた。

 そして、口から笑みが浮かび、

 

「本当に……? クスクス、ウェヒヒッ!」

 

 リーダー格の女は笑いだした。

 

「なにがおかしいの!」

 

「ウェヒヒ、お前は16歳ッスッ! 葛西サクラはこいつに警戒するとは恥ずかしいことッス!」

 

「ふざけてんの、16歳が運転はうまいわけないでしょッ! ウェヒヒッ!」

 

 リーダー格に便乗して、残りの2人も笑い出す。

 

「なんなの、ムカッと来た! おれを馬鹿にことは智姉さんを馬鹿にすることだよ!」

 

 笑いだすリーダー格に女に、さすがにおれは堪忍袋の緒が切れる!

 

「久しぶりに大笑いしてもらったよ。最近のつまらない芸人気取りのタレントより笑ったよ、16歳なのに運転できるとはおかしーよ。悔しかったら、あたしたちを追いかけてきてよ」

 

 挑発セリフをかました後、3人組はそれぞれの愛車に乗り込む。

 

「調子に乗るなよ。あたしがすぐ離すから」

 

 そういって、3人組は去っていく。

 自信満々な笑みを見せるリーダー格は黒い86を加速させる。

 

「くそ、もう怒った! 追い抜いてやる!」

 

 馬鹿にされたおれはワンエイティに乗り込み、3人組を追いかけることにした。

 

 怒りに任せて出発し、まず直線を抜けて第1ヘアピンを通過し、幅の広いコーナ―に入る。

 

「あいつらは許せない。けどぶつけたくないし、体力や車への負担かけたくないから覚醒技を使いたくないな……」

 

 怒っていてもある程度冷静さは保っていた。

 

 直線にて、銀のGRX130マークXを発見した。

 

「来たわね。抜かさないわよ!」

 

 しかし、おれのほうが直線の加速が良いため、すぐ前に出る!

 

「速いわね、しかも次のコーナーで事故らないわ!

 なんなの小娘……怪物と呼ぶわ」

 

 マークXを追い抜いてすぐ、3連続ヘアピンを全てドリフトで攻めていき、直後のU字も抜けていく。

 ヘアピンを抜けたらV36型スカイラインクーペがいる。

 

「抜けるもんなら抜いてみなッス、あたしが離してやるッス!」

 

 と啖呵を切りつつも、次の右ヘアピンにて、特急並みの速さでドリフトしながら突っ込むおれを前へ出してしまう。

 

「速い、馬鹿にされた割に追い抜かれた!」

 

 V36を追い抜き、3人中2人を追い抜いた。

 最後はZN6に乗るリーダー格だ。

 バトルは第1高速セクションへ突入する。

 

「よく来たね。大崎翔子!」

 

 谷村にはおれの覚醒技のオーラが見えるようだ。

 もしかして、覚醒技超人か?

 

(こいつはさっきの2人より、強そうだよ)

 

 おれにも感じた。

 覚醒技超人としてではなく、走り屋としてのオーラだ。

 おれの考えはその通り、リーダー格は強敵だ。

 3人の中では強い。

 パワーのないZN6に乗っているものの、強さの証拠が見える。

 

 第1セクション後のコーナー、1つ目に入る。

 

「<コンパクト・メテオ>」

 

「<コンパクト・メテオ>……⁉」

 

 この技を使ったZN6はおれより素早いスピードでコーナーを駆け抜ける。

 

「また<コンパクト・メテオ>を使って、慣性ドリフトを行うよ!」

 

 次のコーナーでも<コンパクト・メテオによる>ドリフトを行い、慣性ドリフトを2つ発生させておれを離していく。

 

「オオサキ、あたしが離してやるよ! 見えなくなるほどね!」

 

 技を2回使っておれをさらに離そうと、リーダー格は考える。

 2台は今、第2高速セクションを走っている。

 

 曲線で技を使うリーダー格に負け、直線ではパワーで上回るこっちが勝っている。

 

「覚醒技を使わずにどうやって追い抜こうかな……。そうだ!」

 

 おれは考えた。

 

「抜けるもんなら、抜いてみなよ。ん? 煽っているね……」

 

 ZN6の後ろをおれは煽り始めた。

 

「覚醒技を使わずに抜くならこれしかないよ!」

 

 直線が速いワンエイティは、RB26のサウンドを流しながら前の86を煽りながら走る。

 

「運転するのが苦しい、なんだこのプレッシャー!」

 

 実は、おれの煽り行為は本当に覚醒技を使わず追い抜くための作戦だ。

 

 後ろを煽れば、プレッシャーから精神的ダメージを与えることができる。

 覚醒技超人でなくても有効だ。

 

 ただし、車の性能と腕が必要だ。

 

 リーダー格は苦しさを感じながら運転し、第2高速セクション終盤のジグザグゾーンに入る。

 ここに入った時、ZN6の挙動がふらついていた。

 

「すぐスピンするかもしれないね、あのZN6」

 

 挙動を見て、予感した。

 

 ジグザグゾーンを終えてすぐある、空から見ればナイフの刃の形をした右コーナーで的中する。

 

「うわ、突っ込みすぎたのかな!」

 

 ふらつきながら走行していたZN6はスピンし、おれに追い抜かれてしまった。

 

「あァ~スッキリした!」

 

 光景を見たおれは怒りが収まり、赤城山を突っ走ってく。

 

 オオサキが去った後、スピンしたリーダー格の女は……。

 

「16歳に離されるなんて、走り屋としてはあるまじき行為だよ!」

 

 ZN6はガードレールに当たってなかったようだ。

 仲間の2人が来る。

 

「谷村、大丈夫ッスか?」

 

「谷村自身、車にはケガないのね」

 

 2人はスピンした谷村と名乗るリーダー格の女を心配していた。

 

「大丈夫だよ、怪我してないから」

 

 身体には傷1つ付いていない。

 

「あと、あの大崎翔子という奴って……」

 

「か、怪物だわ……」

 

 さっき見かけによらず速い走りを見せた、オオサキに抜かれたことを思い出すと恐怖に襲われる。

 

「ギャアアアアアアア逃げろォォォォォォ!!」

 

 まるでホラー映画でゾンビを見たかのように怖がり始めてしまった。

 

 3人を追い抜いた道中、おれは考えていた。

 

「ワンエイティ、思ったんだ。あいつらには馬鹿にされたくないなって思ったから、見返してやろう!」

 

 あの3人を追い抜いたことから、決心が芽生え始める。

 そして……。

 

「よし、ドリフト走行会を頑張るよ!」

 

 おれは決意した。

 DUSTWAY主催のドリフト走行会に出ることを決意した。

 

 6時45分頃、おれは和食のさいとうへ戻ってきた。

 

「ただいま、智姉さん」

 

「おかえり、オオサキ」

 

「おれ、参加します。金曜日のドリフト走行会を頑張ります!」

 

「私のオオサキならやってくれると思うぞ」

 

 こうして、今日からおれはドリフト走行会に気合を入れるのだった。 

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