ゼロの忠実な使い魔達   作:鉄 分

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第三話 鋼鉄の獣

 使い魔召喚の翌日、ルイズは自身の部屋のベットの上で目覚めると大きく伸びをする、

 窓から差し込む明るい日差しが、よく晴れた朝だということを教えてくれていた、

 ルイズはまだ半分寝ている頭を振りながらも日頃の習慣に従い、学院の制服に着替える。

 その様子は寝起きにも関わらず上機嫌だった。

 

 

 自身の身支度を済ませると朝食の時間が近づいていることに気づき、部屋の扉に手をかけた、

 ルイズが朝食を食べるために部屋の扉を開ける、

 すると隣の部屋からも人が出てきたことを確認した、

 

 

「おはよう。ルイズ。」

 

 

 燃えるように赤い髪が印象的な少女がそこにはいた、

 褐色の肌をした豊満な肉体、そしてほりの深い整った顔立ちは美しいと多くの人が感じずにはいられない、

 大きな胸を強調するようにしてブラウスのボタンを幾つも外しているその姿はやや過剰なほどの色気を周囲に振りまいている、

 

 

「おはよう。キュルケ。」

 

 

 かけられた声に気づいたルイズは少女のほうを向き挨拶を返す。

 その顔はやや不機嫌そうな色に染まっていた。

 

 声をかけてきた少女の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。

 トリステイン王国の隣国、帝政ゲルマニアの伯爵令嬢である。

 またツェルプストー家はルイズの実家であるヴァリエール公爵領と国境を挟んで向こう側にある。

 しかし、両家の間には因縁深い事件が多く二人は犬猿の仲にあった。

 

 

 またルイズはキュルケのプロポーションを少々妬んでいる事もあり特に仲が悪い。

 もっとも、その面白い反応からキュルケはルイズをからかう事はあれど悪い感情を持っているかどうかまでは分からないが。

 ルイズはキュルケに尋ねた。

 

 

「昨日はどうだったのよ、」

「私は一発で成功よ、しかも……フレイムーおいでー。」

 

 

 ルイズの問いに答えるようにキュルケは話を進めた。

 キュルケの部屋から呼び出したのは深紅の皮膚をもったトカゲだった。

 背は1メイルほどもあり、その大きな体を支える四つの足は力強く、太かった、尾の先からは揺らめく様にして炎が踊っている、

 

 

「見て立派な火トカゲでしょう。この見事な尻尾の炎、ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。 好事家に見せたら値段なんかつかないわ。」

「ふーん。」

「?」

 

 

 キュルケは拍子抜けたように首をかしげる。いつものルイズであれば悔しがるなど何らかの反応が見られるはずだが、いまのルイズからはそのような様子は欠片も見られない。

 むしろあり余る余裕すら感じられる。

 

 

 すると、キュルケは自らの使い魔であるフレイムの様子がおかしいことに気が付く。

 大きな身体を持ったサラマンダーが恐怖に身を震わせるなど、見たことが無い光景だった

 震えているフレイムに彼女は声をかけるが様子は変わらない。一体何が原因だろうか?

 その視線はルイズに釘付になっている。

 

 

 キュルケは再びルイズに目を向けるとヒッ、と軽い悲鳴をあげた。何故ならばルイズのすぐ傍から爛々と輝く巨大な赤い単眼が 覗いていたからだ。

 ルイズは震えるフレイムをニマニマと見つめると傍らに控える使い魔に声をかける。

 

 

 

「だめよー、ラヴィッジ。怯えちゃってるじゃない、この子は敵じゃないわ。」

 

 

 

  ラヴィッジと呼ばれたそれは巨大な獣のような何かだった、それは小柄だが人間であるルイズの肩口に届くほどの巨体を有している。メガトロンと同様に全身を装甲が覆い、身体の堅牢性が一目見て分かる。

 

 

 口にはのこぎりのような乱杭歯が無数に生えそろっており、歯を剥き出しにして目の前のサラマンダーを威嚇していた。背中の後脚部には一対の円筒形をした筒が取り付けられていて、その先端はキュルケに向けられている、長くしなやかな尾は人間の脊椎を想起させるS字状の形状をしており、先端には三つの棒状の物体がアンテナのように掲げられている。

 

 

「ふふふ、私の使い魔、ラヴィッジ、ふへへ」

 

 

 ややトリップ状態にあるルイズがそのジャガーの首筋を撫でるとジャガーも嬉しそうに巨大な単眼を細めて彼女にすり寄った。その様子を 口をパクパクさせながら眺めていたキュルケはルイズに話しかける。

 

 

 

「ちょちょっと……それ、何? 見たところ動いているようだけれど。」

「ラヴィッジよ、私の使い魔 甘えん坊でかわいいのよ。」

「で……でもそれ金属でできてるわよね?本当に生き物なの?」

「そうよ!ラヴィッジは生きてる。だってこんなにかわいいのよ!生き物じゃないなんてありえない。」

 

 

 

 どう見積もってもかわいいとは思えない凶悪な人相をしている獣を愛おしそうになでるルイズをみてキュルケは嘆息した。

 一人と一匹は朝食をとるために、アルヴィーズの食堂へと向かう

 そこは、食堂とは言えとても華やかな作りが施されたいかにも貴族趣味、といった建物である

 中も豪華絢爛という言葉がぴったり当てはまるほどの内装が施されていた、

 

 

 

 中には百人はゆうに座る事ができるテーブルが幾つか並んでいた、

 学年別に分かれているらしく、ルイズはラヴィッジを連れて二年生所定の真中のテーブルへと進み、

 ルイズは自分の席へと進み着席すると朝食を食べ始める、

 

 

 ラヴィッジがルイズの周囲を油断なく歩き回る中、彼女は内心鼻高々であった。

 

 

 周囲からは自分の使い魔であるラヴィッジに対する 畏怖と関心の入り混じった声が聞こえてくる。彼を召喚したのが自分であるという自負が彼女を良い気分にさせているのかもしれない、

 朝食と周囲からの良い意味での注目をタップリ味わったルイズはラヴィッジをつれて教室へと向かうことにした、

 

 

 肩で風を切りながら廊下を進むルイズ、こんなにも一日が上機嫌で始まったのは生まれてから初めての経験だった、誰もが恐ろしい風貌の使い魔を伴ったルイズに道を空け、顔を逸らした、これまで蔑まれてきたルイズにとってはさながら天にも昇るような心持だった、まるで自分が皆から手放しで称賛されているような錯覚、自分が偉いものになったのではないかという誤解、

 その威容が張りぼてであり自分のものではないと分かっていても自然と嬉しく感じてしまうものなのだった

 

 

 ルイズは教室でラヴィッジを撫でながら教科担当の先生を待っていた。

 

 

 彼女に撫でられているこの巨大な獣の存在に初めて気づいたのはコルベールであった。メガトロンがルイズに使い魔としての忠誠を問いかけていた際に彼の巨体の陰に横たわっていたラヴィッジを発見したのだ。メガトロンはコミュニケートをとるとルイズにこの獣についての事実を話し始める、

 どうやらこの獣は自分に仕えているらしい、と。そして、自分はルイズに付き従うようなことはしない。代替としてこの獣をルイズの周囲に配すること、この獣はラヴィッジという名前を持っていることをルイズはメガトロンから通達される。

 

 

 

 メガトロンの命令を受諾したラヴィッジは今朝からルイズに付き従っている。当初は四足獣であるラヴィッジの見た目に押されていたルイズも自身に甲斐甲斐しく仕えるこのしもべに対する愛情が湧いてきたのだろうか、いまではラヴィッジを周囲が引いてしまうくらいに可愛がっている。

 ラヴィッジを可愛がっているのか、ラヴィッジが使い魔であるという恩恵を崇めているのかはルイズ自身も分らなかった、

 

 

 教室で待機していると他の生徒も自らの使い魔を引き連れてやってきた。教室内には様々な使い魔がいる、フクロウにキュルケのサラマンダー、モグラなど十人十色多種多様だ、ただしひときわ異彩を放っているルイズの使い魔・ラヴィッジを皆が恐れているという共通点を除いては、だが、

 

 教壇に中年の女が現れた、おそらく教師なのだろう、一旦教室が静かになる

 

 

「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。この赤土のシュヴルーズ、

 こうやって春の新学期に、皆様が召喚した様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみにしているのですよ。」

 

 

 と満足そうに生徒と使い魔を眺めるシュヴルーズは

 

 

「あらあら、な……中々変わった使い魔を召喚したようね、ミス・ヴァリエール」

 

 

 先ほどの喜びに上ずった様とはうって変わった様子で、シュブルーズはルイズとやや怯えながらルイズの傍に佇むラヴィッジを交互に見た、教室にそうだそうだと同意を主張する声が木霊したのも致し方が無いことなのかもしれない、紅の単眼を持った巨大な獣、ラヴィッジは異様を通り越して異常な存在である、これまでに見たことがない容姿であることにも加えて、金属で構築されている生物など、ハルケギニアの常識では考えられないからだ、

 

 

 「気持ちの悪いもんを召喚しやがって、檻にでも閉じ込めておけよ!!ゼロのルイズ!」

 

 

 ルイズは席を跳ねるように立ち上がりラヴィッジを宥め始める。見るとヤジを飛ばした少年―マリコルヌに今にも跳びかかろうと身構えるラヴィッジがいた、 おそらくルイズが止めなければラヴィッジは己の持つ鋭利な爪で彼をズタズタに引き裂いていたかもしれない、

 

 

 ラヴィッジが通達された命令はただルイズの周囲で無聊を囲うことだけではなかった。儀式の後に一応の主従関係を結んだメガトロンが主であるルイズの使い魔としての役目の一端を果たすこと、そのために配されたのがラヴィッジである。

 

 

 ラヴィッジにとっての主人はルイズではない。

 

だが下された命令を忠実に果たすためにラヴィッジはルイズの身辺を警護していた。故に彼女に何らかの危害が加わることは現状ありえない。下された命令を確実に遂行するだけの戦力をラヴィッジが有しており、ラヴィッジを脅かすだけの脅威も現状見当たらないからだ。

 自分が馬鹿にした少女によって命を救われたことを知らないマリコルヌはいまだにルイズを罵っていたが、

 

 

 ラヴィッジの巨大な単眼によって射竦められていた、

 加えて、「ミスタ・マリコルヌ。友達を馬鹿にするものではありません」

 というシュヴルーズの言葉とともに目の前に現れた赤土に口を満たされていた、

 

 

 

 

 

 

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