振り回され続けた『脇役』の話   作:楓本

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FGOの2部2章のシナリオのぐだぐだ感(悪い意味)とか、ぐだage、マシュageに我慢できず、色々と爆発した状態で書き殴った作品となります。当時2部3章から4章までの期間に書いたので、矛盾点や相互性はお察しください。
純粋にぐだとマシュを好きな人、ぐだマシュを好む人は閲覧しないことを勧めます。
あと批判、中傷はしないでください。無自覚の善意も悪意もいらないので


善意に振り回された『脇役』と人間嫌いの『人外』と計算高い『悪役』の話

 

 

「……これは一体どういう状況なのかしら?」

 

ある日の昼下がり。愛しい相手である項羽はサーヴァントを強化する種火を集めるためにレイシフトしており、友人である蘭陵王も……少し苦手な始皇帝もどこかへとレイシフトしていた。

カルデアに存在しているサーヴァントたちとそこまで仲良くならなくてもいいと考えている彼女、虞美人は時間を持て余していた。それはそれはもう、退屈過ぎて死んでしまいそうなくらいに。そこでふと思い出したのだ。自分を召喚したあの子供ではない、もう一人の方のマスター。一度見て、すぐに忘れてしまうくらいの見た目……言うなればそう、背景のモブのような少女。彼女のマイルームでは今、あのモリアーティがバーテンダーとして酒を振舞っていると。

あまりあのマスターと関わりはないが、モリアーティの振舞う酒には少しだけ興味がある。ならば行くか、と退屈しのぎのついでに、虞美人は文無影緋のマイルームへと向かって行った。

 

 

そして入って数秒で、冒頭のセリフが出た。

 

 

 

 

 

「おや、いらっしゃい。キミがここに来るなんて、珍しいこともあるものだネ」

「ふん、暇つぶしのために来ただけよ。……それより、そこでうーうー唸ってるアンタのマスターについて、何か言ったほうがいいのかしら?」

「あー……」

 

虞美人がマイルームに入って真っ先に目に入ったのは、このマイルームの主である影緋がバーカウンターに突っ伏し、唸っている姿だった。しかも片手には液体の入ったコップが。「ああ、酔っぱらっているのね」と呟いた声が聞こえたのか、モリアーティはふるふると首を横に振った。

 

「いいや、酔っぱらってるわけではないんだよ。いや、酔っぱらっているといっても、彼女の場合は空気に酔っているというか、今までのことで爆発したというか……」

「……すごくわかりづらいんだけど、とにかく酒を飲んでそんな状態になったわけではないのね?」

「そういうことになるネ。というか、私のマスターまだ未成年なんだから、飲ませるなんてもってのほかだヨ」

「悪属性名乗ってる割にはそこは守るのね」

「私としては、少しの酒くらい良いと思うんだけど、飲ませたらコワーイ人たちが私を追いかけてくるからネ……」

「ああ……」

 

このカルデアに召喚されてから、なんとなく目の前で唸っている少女が特定のサーヴァントたちに大切にされていることを知っている。……そして、自分を召喚したあの少年と、ずっと横にいる純粋無垢を絵に描いたような少女と仲が良くないことも。

と言っても、それは人間同士の勝手な争いだ。召喚された身としては気にするのが当たり前だろうが、生憎そんなくだらないことに思考を割かれるくらいなら、愛しい相手のことを考えたほうがずっといい。……と言っても、どうしても視界に入ってしまうため、嫌でも気にしてしまうのだが。

しょうがない、と溜め息を一つ。どかりと音を立てて隣に座り、適当な酒を頼む。そして運ばれてきたエル・ディアブロと酒の肴であるチーズが塗られたクラッカーを食すと、虞美人は面倒くさい、という態度を隠さぬまま、影緋に問いかけた。

 

「それで?突っ伏してるアンタに聞くけど、何があったのよ」

 

その問いに、ぴたりと影緋のうめき声が止まった。かと思えば、コップの中身をごくごくと音を立てて呑み込み、テーブルに叩きつけた。と言っても、割れない程度の強さで、だが。変なところで真面目だよネェ、と様子を見ていたモリアーティは心の中で呟いた。

 

「虞美人は、シンから前の異聞帯の内情は知ってるよな?」

「ま、まあ、一応ね。興味なんて欠片もなかったけど、項羽様が知りたいっていうから、一緒に見たわよ」

「それでだな、シンの前の、ゲッテルデメルングで、まだ霊脈も見つかってない中、私とあの二人で原住民を探そうって話になったんだけど……」

「ちょ、ちょっと?」

 

そう言った瞬間、ごごご、と背後に不気味オーラを背負い始める。虞美人が思わず声をかけるが、返事はなく、更にオーラを黒く染めていく。その光景に、モリアーティも遠い目をした。

 

 

 

 

「本当にアイツらなんなんだ!?馬鹿か!?馬鹿なのか!?ただでさえ人員不足で戦える人少ないってのに、なんで正面からやりあおうとしてるんだ!?それじゃあ殺してくださいって言ってるもんだぞ!?あと私とあの二人を同立されんの本当に腹立つ!!同じ?二人と私が同じだって?もう一回言ってみろやカドック!!カルデアの職員とサーヴァントたちの対応よく見てみろや!!あいつら私のこと見向きもしてねぇからな!?むしろいない扱いか、邪魔者扱いが当たり前だったわ畜生!!」

 

「そしてゲッテルデメルングでの出来事!!自分たちが今どの立場にいるか分かってないだろ主人公とヒロイン!!他の世界の文化否定するとか何様のつもりだよ!!ロシアで嫌って程文化と価値観が違うって知ったんだから学べよ!!汎人類史の事情持ち出して希望与えようとすんな!!憐れむな!!結局消さなきゃいけない世界の人に希望与えるって、サイコパスかお前らは!!トドメに儀式関係!!あの世界の当たり前はああなんだから、外野がごちゃごちゃ言おうとすな!!せめて、せめて感情で動いてくれたならともかく、理屈で動くからこっちはイライラすんだよ!!冷静に高尚なこと言ってる暇あるなら戦力差を見ろ!!30体以上のワルキューレに勝てるわけないだろ!?そっちは主人公補正があるから平気だろうが、こっちにはそんなものないんだよ!!そっちの都合で私が殺される可能性があるんだよ!!あとお前らが吹っ掛けておきながら、私の名前叫ぶな!こっちにヘイト溜まって死ぬかと思ったわ!!最後まで責任はそっちで持てよ!!」

 

 

 

「私は主人公とヒロインのage要員じゃないんだぞ!!」

 

 

 

感情のままに振り下ろされた拳は、テーブルを殴り、だん、と大きな音を立てる。次いでその勢いのままテーブルに突っ伏せば、ごん、と鈍い音が鳴った。

 

「もう嫌だ……あいつらのage要員にされるの嫌だ……。なんでこっちがこんなに苦労しなきゃいけないんだ?なんであいつらのエゴにこっちが付き合わなきゃいけないんだ……。

尻拭いするのも諫めるのも私だし……。なのに、全然話聞いてくれないし、こっちの意見を取り入れようともしない……。もう嫌だ、なんでダ・ヴィンチちゃんもホームズも誰も怒らないんだ?怒ってくれよ、頼むから……」

 

切実すぎる言葉に、さすがの虞美人も少ししょっぱい顔をする。一方のモリアーティは似たような光景を何度も見てきたため、ああ、と納得したように何度もうなずいた。

 

「話には聞いてたけど、彼らまーたそんなことしてたんだ。まあ、あそこまでのエゴと無神経の塊だと、いつかはそうなるとは思ってたけどネ。それに、よくいるよねぇ、『私はこうなんだから、こう思ってるに違いない!!間違ってるはずがない!!』って感情のまま行動して、取り返しをつかなくする人」

「……一応、人理修復完了させた『仲間』のはずよね?」

「はははっ!仲間ならまずちゃんと話を聞くはずだし、第一、人間の自爆スイッチを仲間に押させようとはしないでしょ!」

「はあ!?なによそれ!?」

「まあ、新宿で色々とあってネ」

 

新宿であった出来事を話せば、虞美人は頭が痛い、と言わんばかりに頭を抱える。カルデアの職員たちが藤丸とマシュを大事にしているとは何となく感づいてはいたが、まさかここまで酷いとは思わなかった。ちらり、と影緋を見れば、うーうーと唸りながら突っ伏したままで、いまだに心の傷が癒えていないことは安易に想像できた。そしてぽつり、ぽつりと愚痴りだす。

 

「こっちはさ、味方もいない中頑張ったんだよ?なのに勝手にあっちが善意振り回して巻き込んできて、しかも隠れながら行動しようとしてたのに、こっち見て『フォローして』はなくね?おかげでヘイト溜まりまくって死ぬかと思ったわ。というか、下手しようがしまいが死んでたぞ、私」

「……本当にアンタ、良く生きてこれたわね。二年間くらい一緒にいたのに、チームプレイボロボロなのはどうかと私も思うんだけど」

「虞美人、いいことを教えてあげよう」

「?」

「『地獄への道は善意でできている』」

「ついでに私も付け加えようか。『主人公補正とヒロイン補正があれば、誰にでも愛される』」

「オッケー、理解したわ」

 

 

そう、全ては無自覚な善意なのだ。

たとえるなら、コンビニのレジで小銭をぶん投げて「これが世の中の厳しさよ」とどや顔で教えてくるおばさんのような。そしてそれによって店員が傷ついたとしても、にこにこ笑顔で「頑張ってるわね」と再びやって来た際、何も後悔していない様子で話しかけてくるようなものだ。

あっちとしては「自分がこうしたら良いと思ったから、教えてあげた」と言う善意しかないのだ。その善意で相手が傷つき、トラウマを植え付けたとしても。本人にとっては、「善意」で「してあげた」と言う解釈でしかない。

そしてそんな無意識の善意によって、文無影緋は振り回され続け、こうなったのだ。本当にいい迷惑としか言いようがない。それか、余計なお世話、と言うべきか?

主人公とヒロインに振り回されるために、自分はいるわけではないのに。

 

 

「……アイツ等、いい加減猪突猛進直さなきゃ、いずれ自分の感情と価値観に足元掬われるんじゃないの?」

「そしてその巻き添えになる私であった……。あはは、普通に想像できるなぁ……」

((だめだ、完全に心が死んでる))

 

黒色の目から光をなくし、力なく笑う影緋。いつかこの子の胃に穴が開くんじゃないだろうか。むしろ、その体に穴が開くのではないか。割とシャレにならない、むしろその可能性が提示された世界のことを知らずとも、そう考えてしまう。

あはは、と力なく笑う影緋を尻目に、モリアーティは虞美人に近づき、こっそり耳打ちする。

 

「すまないネ。マスターは私たちの前では意地を張りたがるから、中立の誰かが来てくれないと話したがらないんだ」

「……ほんっとうに面倒な性格してるわね、こいつ」

「そう言ってやらないでくれるかい。彼女はそうならざるとえない立場だったんだし……。それに、彼女の平穏な日常を壊すきっかけになった一人のキミには、そう言う資格はないはずだが?」

「……」

 

確かにモリアーティの言う通り、異性の神とクリプターのせいで、せっかく手に入るはずの平穏を奪われ、影緋はここまで傷ついたのだ。その一端を担っている虞美人には耳が痛い話。

「人間のことなんて知ったこっちゃない」と明言しているが、なんだかんだ言って人間のこともよく分かっているのも彼女の性で。仕方ない、と小さく息を吐く。ここまで来たのなら、愚痴に付き合ってやろう。ここで文句を言うなんて、子供みたいじゃないか。人間の愚痴に付き合うなんて、本当に、本当に仕方なくだが!!

 

「……こうなったら私も自棄になってやるわ。度数高いのよこしなさい!!」

「はーい、了解だヨ」

 

にこにこと笑いながら、注文されたとおりに度数の高い酒をふるまうモリアーティ。まるで彼の策略にハマった感じがするが、今回ばかりは目を瞑ろう。今回だけ、だけど!!

 

こうして『脇役』と『人外』と『悪役』の奇妙な飲み会は、酔っ払った虞美人を項羽が引き取るまで続いたのであった

 

 

 

 

善意に振り回された『脇役』と人間嫌いの『人外』と計算高い『悪役』の話

 




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